混載便は企業にとって輸送効率とコスト削減を両立する有力な選択肢となっています。
本記事では、混載便の特徴やメリット・デメリットについて、チャーター便や路線便と比較しながらわかりやすく解説します。
1.混載便の概要

ここでは、混載便の基本的な仕組みと、類似する輸送方式との違いを解説します。
(1)混載便とは?
この方式では、荷物をエリアごとに集約し、中継拠点で仕分けを行った後、各配送拠点を経由して最終目的地へと届けられます。

混載便のメリットは主に輸送コストの最適化や環境負荷の軽減が挙げられますが、柔軟な物流ネットワークの構築にも適した手法であり、以下のような特徴があります。
コストをシェアする共同輸送方式 | ・1社単独ではなく、複数の企業が輸送コストを分担する ・小ロット輸送にも対応しやすい |
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配送ルートの最適化が可能 | ・荷物の配送先や積載状況に応じたルート設定が可能 ・幹線輸送+ラストマイル配送の組み合わせで、広範囲なエリアにも対応 |
物流ネットワークの柔軟性 | ・全国各地の小口貨物でも安定的に供給しやすい |
荷物の取り扱いに一定の制限がある | ・混載便では、サイズ・重量・形状の制限がある場合が多い ・割れ物や温度管理が必要な貨物などは、個別の取り扱い基準に従う必要がある |
混載便の需要が高まる背景として、小口多頻度化による積載率の低下が挙げられます。
国土交通省の調査によると、令和3年時点で貨物自動車の積載率は40%以下の低水準を推移しています。

また、柔軟な積載とルート最適化により、小口多頻度の配送ニーズにも対応しやすく、在庫負担の軽減やジャストインタイム配送の実現にも貢献します。
(2)チャーター便との違い

チャーター便では、専用のトラックとドライバーが荷主の貨物のみを輸送するため、配送の自由度が高いという特徴があります。
以下では、混載便とチャーター便の違いを比較表にまとめています。
混載便 | チャーター便 | |
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輸送形態 | 複数の荷主の貨物を1台のトラックに積み合わせて輸送 | 1社専用でトラックを貸し切り輸送 |
コスト | 荷物の量に応じた料金体系で、チャーター便よりも低コスト | トラック1台を貸し切るため、高コスト |
配送効率 | 複数の配送先に対応できるため、長距離配送でも効率的 | 1回の運行で1件の配送が基本で、長距離輸送では非効率になることも |
積み替え作業 | 中継拠点で仕分け・積み替えを行うため、輸送中の取り扱い回数が多い | 積み替え不要のため、荷物の破損リスクが低い |
配送スピード | 中継拠点を経由するため、チャーター便より時間がかかる場合がある | 直送が可能なため、最短時間での配送が可能 |
対応できる貨物 | 小口貨物向けで、サイズ・重量・形状に制限がある | 大型貨物や特殊貨物も対応可能 |
配送時間の指定 | 荷主の希望に沿えない場合がある | 細かい時間指定が可能 |
- コスト重視で小口貨物を効率的に配送したい場合→混載便
- 納期厳守や大型貨物の輸送が必要な場合→チャーター便
以下では、これらの違いを動画でご確認いただけます。
(3)路線便との違い
混載便と路線便はよく比較される輸送方式であり、どちらも複数の荷主の貨物をまとめて輸送する方式ですが、配送ルートの設計や荷物の取り扱い方法に大きな違いがあります。
①配送ルート
混載便は柔軟なルート設計が可能で、路線便は決まったルートで安定輸送ができるという特性があります。それぞれの違いを理解し、状況に応じた使い分けが求められます。
混載便 | 荷物を一旦中継拠点に集約し、振り分けを行った後に各配送先へ輸送 |
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路線便 | あらかじめ決められた経路を定期的に運行する |
混載便では、荷物を中継拠点に集約し、仕分けを行った後に各配送先へ輸送するため、配送状況に応じた配送ルートを柔軟に組み立てることが可能です。
一方、路線便は決められたルートを定期運行するため、安定した輸送が可能ですが、特定の経路に荷物が集中すると、遅延が発生するリスクがあるため注意が必要です。
このように、両者は異なる特性を持つため、それぞれの長所を活かした使い分けが求められます。
②荷物の取り扱い
混載便と路線便は、取り扱う荷物の特性において明確な違いがあるため、それぞれの特性を理解し、自社の物流ニーズに適したサービスを選択することが重要です。
混載便 | 異なる企業のさまざまな形状・サイズの荷物をまとめて輸送できる ※ただし、大型貨物や特殊貨物には制限がある |
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路線便 | 標準化された荷物(パレット積み・段ボール梱包)の輸送と好相性 |
混載便の特徴として、異なる企業の貨物をまとめて輸送できるため、小口配送やコスト削減に適している点が挙げられます。ただし、サイズや重量に制限があるため、大型貨物や特殊貨物には対応できないケースもあります。
一方、路線便は定期運行という特性上、標準化された荷物の輸送に適しており、企業間取引(BtoB)の大量輸送を得意としています。
ただし、一部の物流会社ではBtoC向けの配送にも対応しているため、用途に応じた選択が重要です。
2.混載便のメリット

混載便のメリットには、コストの抑制や積載率の向上などが挙げられます。
(1)コストの抑制
混載便で複数荷主の荷物を1台のトラックで効率的に運ぶことで、燃料費や人件費などの輸送コストを下げられます。
また、荷物のサイズ・重量・配送距離に応じた料金体系となるため、小口配送時でも積載率を維持した効率的な配送にできる場合があります。
(2)積載率の向上
混載便では、異なる荷主の荷物を1台のトラックにまとめて輸送することで、空きスペースを最小限に抑え、積載率を向上させることができます。
具体的には、次のような効果が期待できます。
トラック台数の削減 | ・1台あたりの積載効率が向上 ・必要なトラック台数が削減 ・ドライバー不足の緩和 |
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環境負荷の軽減 | ・ESG経営への貢献 ・CO₂排出量の削減 ・燃料消費量の削減 |
物流コストの削減 | ・輸送コストの抑制 ・燃費効率の向上 |
このように、混載便の活用による積載効率の向上は、ドライバー不足の緩和、コスト削減、環境負荷の低減といった物流業界の主要な課題の解決に寄与します。トラックの積載率に関しては、以下の記事も参考にしてください。

(3)配送状況の確認を効率化
混載便による物流管理では、送り状システム(紙の送り状や電子送り状)が活用され、配送の透明性を確保し、信頼性の高い取引を実現します。
運送会社が発行する送り状には、配送日時・発送者・受取人・荷物の詳細情報などが記載されており、納入先へ事前に共有することで、スムーズな荷受けが可能になり、物流計画の最適化にも貢献します。
送り状が果たす役割は、以下のとおりです。
配送状況の可視化 | 荷主・受取人ともに荷物の動向をリアルタイムで把握 |
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納品証明書としての活用 | 企業間取引(BtoB)では、請求書との照合にも使用 |
取引履歴の記録 | 過去の取引情報を管理し、監査や顧客対応時にも活用可能 |
送り状システムは物流の円滑な運営を支える基盤として、配送プロセスの管理から取引記録の保管まで、幅広い用途で活用されています。
また、EDIを活用することで、送り状(インボイス)のデータを取引先に直接送信できます。以下の記事ではEDIシステムの概要を解説しています。

以下の動画でも、EDIについてご確認いただけます。
3.混載便のデメリット

混載便のデメリットは、時間指定が困難になることや荷物の大きさや重量の制限などです。
(1)時間指定が困難
混載便では、複数の荷主の荷物をまとめて輸送するため、配送順序が変動しやすく、正確な到着時刻の予測が難しくなります。
そのため、時間指定のニーズがある場合は、利用を検討している運送業者に具体的な対応可能範囲を確認するようにしましょう。
(2)荷物の大きさや重量の制限
混載便では、荷物の大きさと重量に明確な上限が設けられています。これは、1台のトラックに複数荷主の荷物を効率よく積み合わせるための制限です。
一般的な制限値は以下の通りです。
長さ | 各辺 1.5m以内 |
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重量 | 1,000kg未満 |
容積 | 5m³以内 |
上記の制限を超える大型貨物を混載便で輸送すると、他の荷物のスペースを圧迫し、輸送に支障をきたす可能性があります。
そのため、基準を超える荷物を輸送する場合は、チャーター便など適した輸送手段を検討することが重要です。
(3)破損のリスク
混載便の配送プロセスでは、積み替え作業が発生するため、荷物の破損リスクが伴います。中継拠点を経由する際に積み替え作業が行われ、その過程で以下のような荷物が衝撃や圧迫を受ける可能性があるためです。
- 積み替え時の衝撃による破損
- 他の荷物との接触による圧迫や変形
- 梱包材の損傷による内容物へのダメージ
そのため、繊細な荷物で混載便を利用する際は、破損リスクを考慮し、緩衝材を用いた厳重な梱包などの対処を行うことが重要です。
4.チャーター便のメリット・デメリット

ここでは、チャーター便のメリットとデメリットを解説します。
(1)メリット
チャーター便のメリットには、配送の柔軟性と確実性などがあります。
発送元から配送先まで直接輸送できるため、中継地点での積み替えが不要となるため、時間指定の自由度が高く、緊急性の高い配送にも対応可能です。
時間指定の自由度が高い | 細かい時間帯の指定や深夜・早朝配送も可能 |
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積み替え不要で破損リスクを低減 | 荷物の損傷・汚損のリスクを抑えられる |
特殊貨物の輸送が可能 | 形状や重量に制限がある荷物にも対応 |
積み替え作業が発生しないため、荷物の破損や汚損のリスクも最小限に抑えられるでしょう。
(2)デメリット
チャーター便はトラック1台をまるごと借り上げる形態のため、荷台の使用率に関係なく定額料金が発生します。よって、以下のようなコスト面に関するデメリットが生じます。
コストが割高になりやすい | 積載率が低い場合は1個あたりの輸送コストが高くなる |
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長距離輸送のコスト増 | 往復料金が発生するケースが多く、短距離輸送よりコスト負担が大きくなる |
小口配送や少量の荷物を輸送する場合、余ったスペースができても料金は変わらず、結果として単位あたりの輸送コストが著しく高くなるでしょう。
チャーター便の利用を検討する際は、荷物量と配送条件を詳細に確認し、コストパフォーマンスについて慎重に判断することが重要です。
5.路線便のメリット・デメリット

路線便のメリットとデメリットを解説します。
(1)メリット
大手運送会社であれば、日本全国に物流センターや配送拠点を戦略的に配置しており、全国各地へのスムーズな配送を実現しています。
全国配送が可能 | 広範なネットワークがあれば、全国各地への安定した輸送が可能 |
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計画的な運行スケジュール | 定期的な配送を必要とする企業の物流管理に適している |
明確な料金体系 | 重量と距離に基づく料金計算方式で、物流コストの予測・管理がしやすい |
路線便は、安定した輸送網と明確な料金体系を活用したい企業にとって、計画的な物流管理を実現できる手段となるでしょう。
(2)デメリット
路線便を利用する際は、スケジュール調整や荷物の特性を考慮し、適した輸送手段かどうかを判断することが重要です。
緊急配送に対応しにくい | 定期運行のため、急な配送依頼の対応が困難 |
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スケジュール変更が困難 | 個別の配送調整が原則できない |
破損リスクがある | 中継拠点での積み替え作業により、荷物が衝撃を受ける可能性がある |
たとえば、配送日を変更したい場合でも、すでに確定した運行スケジュールを変更できないため、荷物の再調整が必要になることがあります。
スケジュールの変更や、特定の配送先へ優先的に届けるといった対応が難しい点に注意が必要です。
6.まとめ
ここまで、混載便の概要やメリット・デメリット、チャーター便や路線便との違いについて解説しました。
混載便にはコスト削減や積載率の向上など、物流の課題を改善してくれるメリットも多くありますが、時間指定が難しいなどのデメリットも存在します。
自社の荷物量や配送条件にあわせて、チャーター便や路線便とも比較した上で輸送サービスを選択しましょう。