2024年問題により、トラックドライバーの労働時間短縮が急務となるなか、荷待ち時間の削減は業界全体で取り組むべき重要なテーマとなっています。
本記事では荷待ち時間の定義や現状、発生原因、そして具体的な改善方法までわかりやすく解説します。
1.トラックの荷待ち時間について

荷待ち問題によって、以下のようなCMが作成されるほど問題になっています。
ここでは、荷待ち時間の定義と実態について解説します。
(1)トラックの荷待ち時間の定義
トラックの荷待ち時間とは、物流拠点で荷物の積み込みや荷降ろしを行うためにトラックドライバーが待機する時間を指します。
荷待ち時間は、ドライバー自身ではコントロールできない要因によって発生するため、トラック輸送の効率性や収益性に大きな影響を与えているのが現状です。具体的な荷待ち時間の事例として、以下が挙げられます。
トラックの集中到着による混雑 | ・複数のトラックが同時に到着し、順番待ちが発生 ・物流センターや倉庫の出入り口が混雑し、長時間待機を強いられる |
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荷主側の準備不足による待ち時間 | ・荷役スタッフの不足や作業手順の遅延により、積み下ろし作業が滞る ・出荷準備が整わないことで、待機が長引く |
物流センターの荷役スペース混雑 | ・積み下ろし場所が限られているため、トラックが待機している間にスペースが空くのを待つ |
配送先の受入時間指定に伴う待ち時間 | ・配送先が受け入れを指定した時間より早く到着した ・受け入れ可能時間を過ぎた場合に発生 |
このような待機時間はドライバーの労働時間に入るため、トラック輸送の効率性や収益性に悪影響を与えます。
(2)荷待ち時間の現状と平均
物流業界で荷待ち時間が重大な問題と認識されるようになった背景には、具体的なデータによる実態の把握があります。
国土交通省による2021年の調査では、荷待ち時間は1運行あたり平均1時間34分に達していることが明らかになりました。つまり一般的な荷待ちが発生した場合、ドライバーの拘束時間は約2時間程度延長することになります。

さらに、深刻なのは運送業者と荷主企業での荷待ち時間に対する認識のギャップです。
2022年の調査によれば、運送業者側は半数以上が荷待ち時間を問題視している一方、荷主企業の多くはその状況を正確に把握していないことが判明しています。

このような状況を改善するため、国土交通省は2023年7月に「トラックGメン」を設置し、荷主に対する監視を強化しました。
2024年6月までに635件の働きかけと174件の要請、2件の勧告が実施され、荷主の意識改革を促す取り組みが進んでいます。
(3)トラックの荷待ち時間で生じる問題
①ドライバーの拘束時間が伸びる

荷待ち時間の増加は、単に時間が無駄になるだけでなく、ドライバーの拘束時間が大幅に延びるため、労働環境の悪化につながります。
荷待ち中のドライバーは、季節を問わず過酷な環境で待機を強いられるケースがあり、炎天下や寒冷環境の場合には、身体的・精神的ストレスが非常に高まります。
このような労働環境の悪化は、既存ドライバーの早期離職や新規人材の業界離れを加速させ、慢性的なドライバー不足という構造的問題をさらに深刻化させるでしょう。以下の記事では、トラックドライバーの勤怠管理について解説しています。

②運送会社のコスト増加
運送業界の収益構造は、限られた時間内に効率的に多くの輸送案件を処理することに依存しているため、荷待ち時間が長引くことは大きな経営リスクとなります。
ドライバーと車両が荷主先で非生産的に時間を費やすことで、1日に対応できる配送件数が減少し、売上の機会損失につながります。
また、間接的に未来への投資にも悪影響を及ぼし、運送業の経営を圧迫し、適正な設備投資や人材確保を困難にする悪循環を生み出します。
③業界全体の輸送効率の低下
トラックの荷待ち時間が長引くことで、運送会社やドライバー個々の問題にとどまらず、物流業界全体のパフォーマンスが大きく低下するため、個別企業の課題ではなく、業界全体が抱える構造的な問題として認識する必要があります。
さらに、非効率な輸送サイクルは物流コストの上昇を招き、最終的には消費者価格への転嫁や企業の競争力低下という形で、経済全体にネガティブな波及効果をもたらすでしょう。トラックの輸送効率については、以下の記事をご覧ください。

2.トラックの荷待ち時間が発生する主な原因

荷待ち時間が生じてしまう原因には、効率化の遅れや荷主の協力不足などの問題が関わっています。ここでは、それらがどのようなものなのかを解説します。
(1)一定の時間に車両が集中
物流施設では処理能力に限界があるため、トラックが一斉に到着すると荷待ちが発生しやすくなります。物流施設におけるトラック集中には、以下のような要因が考えられます。
- 荷主側の出荷タイミングが集中
- 物流施設の受け入れキャパシティ不足
- ドライバーの到着時間が重なる
たとえば、4台のトラックが同時刻に到着しても、荷捌きスペースが2台分しかない場合、残りの2台は必然的に待機状態となります。
一時的な入場渋滞は、とくに繁忙期や月末・月初などの繁忙日に起こりやすく、荷待ち時間の長期化を招いています。
(2)物流拠点のキャパシティ不足
物流拠点の処理能力不足には、トラックバースの数や荷捌きスペースの広さ、保管エリアの容量といった物理的な制約が関わっています。
これらは短期間で増強できるものではないため、業務量の増加や繁忙期には処理能力が需要に追いつかないケースがあります。
また、物流業界全体が直面している人手不足も荷待ち時間を長引かせる要因となっています。
入出荷作業や検品、仕分け、ピッキングなどの作業に十分な人員を配置できず、オペレーション全体の遅延が発生しています。
(3)荷主の協力不足による効率化の遅れ
国土交通省の調査によれば、荷待ち時間の発生を認識している荷主はわずか20%前後に留まっており、運送業者との間に大きな認識ギャップが存在しています。認識ギャップが生じる背景には、荷待ち時間によるコスト負担が主に運送会社側で発生するという構造があります。
荷主企業には直接的な経済的ペナルティがないため、改善への動機付けが弱く、中には「荷待ちは運送業者の責任」と考えるケースもあり、積極的に改善策を講じようとしない傾向が見られます。
荷主側が消極的姿勢の場合には、荷待ち時間の問題の長期化を招く恐れがあります。以下の動画では、トラックの荷待ちの一例を確認いただけます。
(4)前工程の作業遅延による影響
サプライチェーン全体は相互に連結した工程の連なりであるため、上流での遅れが下流に大きな影響を与える構造になっています。
そのため、製造ラインでの生産遅延や原材料の入荷遅れ、パッケージングの不備などの前工程での作業遅延が発生すると、トラックが到着しても荷物が用意できていないという状況に陥り、荷待ち時間が長引くことがあります。
このような遅延の連鎖は、各工程間のコミュニケーション不足や、全体最適よりも部分最適を優先する組織文化によって悪化する傾向があります。
3.トラックの荷待ち時間削減に向けたガイドライン

荷待ち時間の削減に向けて、荷主や運送業者が守るべきガイドラインを国が定めています。
ここでは、荷待ち時間に関する主なルールや策定義務について解説します。
(1)荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール
トラックの荷待ち時間削減を推進するため、経済産業省・農林水産省・国土交通省は2023年6月に共同で「荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール」を策定しました。
これが物流効率化と働き方改革を両立させるためのガイドラインとして位置づけられています。
ガイドラインの目的は物流効率化と働き方改革の推進であり、荷主事業者に対し、トラック運転者の荷待ち時間と荷役作業時間の合計を2時間以内に抑えることを求めています。すでに2時間以内を達成している荷主には、1時間以内というさらなる短縮目標も設定されています。
また、ガイドラインの実効性を高めるために、標準的な運賃の改正も進められており、2時間を超過した場合には5割増しの料金設定が導入される見込みです。
これにより荷主側の積極的な改善を促す狙いがあります。
(2)荷待ち・荷役時間短縮計画の策定義務
物流効率化への取り組みが法的な力を持つ段階に入り、2024年2月の閣議決定により、荷待ち時間削減計画の策定が制度化されました。
新たに義務化された荷待ち・荷役時間短縮計画の策定は、物流効率化と労働環境改善を目的としたものです。
この制度は、一定規模以上の物流に関わる事業者を対象としており、具体的には約3,000社の大手荷主企業と約400社の大規模トラック運送事業者が対象となる予定です。
義務化に伴い、実効性を確保するための罰則規定も導入されています。
計画策定が不十分と判断された事業者には、国から勧告が行われ、それでも改善が見られない場合には以下の措置が取られます。
是正命令 | 荷待ち・荷役時間短縮計画の見直しを求められる |
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社名公表 | 是正命令を無視した場合には、社名を公表し、社会的信用の失墜につながる |
罰金の適用 | 是正命令違反時には最大100万円の罰金が科される |
規制強化により、荷主企業も荷待ち・荷役時間の短縮について真剣に取り組まざるを得ない状況となっています。
(3)荷待ち時間の記録義務
荷待ち時間の実態把握と改善のため、2017年7月より「貨物自動車運送事業輸送安全規則」が改正され、30分以上発生した荷待ち時間の正確な記録と報告が義務となりました。
車両で発生した荷待ち時間について、いつ・どこで・どれだけの時間待機したかを正確に記録・保存する必要があります。
記録した情報は1年間の保存が義務付けられており、監査時に提示を求められることもあります。
荷待ち時間の記録義務は、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の中型車および大型車が対象です。
軽トラックや小型トラックなど、規定サイズ未満の車両については法的な記録義務はありませんが、自主的に記録管理を行う事業者が増加しています。
4.トラックの荷待ち時間の改善を目指す方法

ここからは、トラックの荷待ち時間の改善を目指す方法について解説します。
(1)バース予約受付システムの導入
バース予約受付システムとは物流施設における荷積み・荷降ろし場所の利用時間を事前に予約・管理できる仕組みであり、計画的な車両入場を実現します。
従来の「先着順」や「指定時間の集中」によるバース待ちの問題を解消し、トラックの長時間待機を回避できる効果が期待されています。
また、事前予約を行うことで、物流施設側でも効率的な庫内作業が可能となり、トラックが到着してからの作業時間短縮にもつながります。
バース予約システムは荷主と運送会社の双方にメリットをもたらす有効なツールです。
トラックバース予約システムについては、以下の記事で詳しく解説しています。

(2)パレットの活用
従来のバラ積み・バラ降ろし方式では、商品ひとつひとつを手作業で運搬する必要がありましたが、パレット化により複数の荷物をまとめて一度に移動できるようになります。
これにより、荷役作業の時間短縮と作業者の負担軽減が実現し、以下のように物流全体の生産性が向上します。
荷役作業の効率化 | ・作業スピードが飛躍的に向上 ・待機時間が大幅に短縮 |
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作業者の負担軽減 | ・作業者の身体的負担が軽減 ・労働災害リスクの低減 |
商品破損リスクの低減 | ・個別運搬による落下や破損リスクが軽減 ・品質保持の面でも有利となる |
物流全体の生産性向上と持続可能性の観点から見れば、業界全体でのパレット活用は荷待ち時間削減の重要な施策となるでしょう。
(3)荷主と事業者間のコミュニケーション強化

荷主と運送会社が物流プロセスを共有し、スムーズな情報交換を実現するためには、以下のポイントが重要です。
出荷・入荷スケジュールの事前共有 | 物流拠点の混雑を避けるため、事前にスケジュールを調整し、到着時刻を明確に伝達 |
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配送量の変動予測 | 繁忙期や特定イベント時の出荷量増加を見越して、事前に情報を共有し、トラック確保の計画を立てる |
到着予定時刻の正確な伝達 | GPSや配車管理システムを活用し、到着状況を低負担でタイムリーに伝える |
荷待ち時間削減を継続的に推進するためには、信頼関係の構築が不可欠です。
荷主と運送会社がパートナーシップを持って問題解決に取り組むことで、物流効率化の土台が築かれます。
5.まとめ
荷待ち時間の発生は、ドライバーの長時間労働や運送会社のコスト増加、業界全体の輸送効率低下などの問題を引き起こしています。
すべての関係者が危機感を持ち、それぞれの立場でできることから改善に着手していくことが重要となります。