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重量物物流とは?運搬方法、トラックの種類、業者の選び方も解説

工場設備大型機械建設資材など、数トンを超える重量物の輸送には、専門的な物流ノウハウと高度な技術が求められます。積み付けなどで人力で運搬する場合も労働基準法等の法令に遵守したうえで行う必要があります。

本記事では重量物の定義運搬方法利用するトラックの種類などを解説します。

目次

1.重量物とは?

重量物とは、一般的に持ち運びが困難なほど重い物を指す言葉で、明確な重量基準はありません

ただし重量物の不適切な取り扱いは、腰痛などの健康障害を引き起こす可能性があり、厚生労働省の調査によれば、業務上疾病による労働災害の約4割が腰痛によるものとされています。

このような背景から、重量物の安全な取り扱い労働安全衛生上の重要課題であり、年齢や性別に応じた基準労働基準法に基づく関連法令や通達で定められています。

2.労働基準法等での重量物に関する取り決め

重量物の取り扱いに関する基準は、労働者の健康を守るために法令によって細かく定められており、重量物を扱う作業では、年齢や性別、作業の継続性によって基準値が異なることが挙げられます。

これらの規定は、労働災害の予防過重労働の防止を目的としており、現場での作業計画人員配置にも大きく関わってきます。

ここでは、労働基準法および関連通達に基づき、重量物取り扱いに関する具体的な基準と、機械を使用する際の取り扱いルールについて解説します。

(1)年齢と性別で基準が定められている

重量物の取り扱いには、労働者の安全と健康を守るための法的な制限が設けられています。

この基準の根拠となるのが、労働基準法第62条第1項や労働基準規則などの法令・通達です。特に作業形態によって、断続作業継続作業で適用される制限が異なります。以下で具体的な制限について解説します。

①断続作業

断続作業とは、重量物を扱う作業とそうでない作業が交互に行われる作業形態のことです。たとえば、荷物をトラックに積み込んだあと運転を行い、到着後に荷下ろしを行うようなケースが該当します。

このような作業では、持ち上げ作業が連続しないため、比較的高めの重量制限が設けられています。断続作業における重量制限は、以下のとおりです。

男性女性
満16歳未満15kg12kg
満16歳以上満18歳未満30kg25kg
満18歳以上明確な上限規定はないが、通達により55kg以下が限度とされている30kg
※女性の制限値が男性よりも低く設定されているのは、一般的に筋肉量や筋力が男性より少ない傾向にあるため

②継続作業

継続作業とは、休憩を挟まずに重量物を繰り返し扱うような作業を指します。たとえば、荷物を台車に積み、トラックまで何度も往復して積み込むような作業です。

このように身体にかかる負荷が大きいため、以下のように断続作業よりも低い制限値が設けられています。

男性女性
満16歳未満10kg8kg
満16歳以上満18歳未満20kg15kg
満18歳以上法令上の明確な規定はないが、通達により体重の約40%以下が推奨されている20kg

(2)機械の場合は制限なし

人の手による重量物の取り扱いには厳しい制限が設けられていますが、フォークリフトや台車などの機械を使用する場合は、これらの人力に関する重量制限は適用されません。ただし、機械の場合にも安全上の積載制限が存在します。

たとえば、フォークリフトやクレーンには最大積載量が設定されており、その範囲を超えて使用すると機械の故障転倒事故などの重大なリスクにつながります。したがって、各機械の仕様安全基準を厳守することが重要です。

さらに注意すべき点として、荷物を機械に載せたり、降ろしたりする作業中に人力が関わる場合には、そのタイミングで人力に関する重量制限が適用される点があります。

そのため機械を使った作業や運搬の場合も、全工程を通して安全性を確保することが重要です。

3.重量物の運搬方法

運搬中の転倒・落下・衝突といった事故リスクを最小限に抑えるためには、適切な機材の選定安全対策の徹底が欠かせません。ここでは、重量物を安全かつ効率的に運ぶための運搬手段について解説します。

(1)クレーン

クレーンは、重量物の吊り上げや移動を専門に行う重機で、垂直方向・水平方向の両方に物体を移動させることができます。建設現場製造工場物流センターなどのさまざまな現場で利用されています。

代表的なタイプのクレーンは以下の通りです。

天井クレーン工場などの屋内に設置され、天井に沿って走行するタイプ
ジブクレーン柱とアームで構成され、限られた範囲での荷物の移動に適している
橋形クレーン橋のような構造で大型重量物の運搬に適し、屋外でも使用される
トラッククレーン車両に搭載された移動式クレーンで、現場間の移動が可能
ラフテレーンクレーン不整地でも走行できる車両一体型クレーンで、建設現場などに多用される

吊り上げ能力も数百キログラムから数百トンまで幅広く、扱う重量物に応じた機種を選定することが可能です。

(2)フォークリフト

フォークリフトは、産業現場で代表的な運搬機器のひとつです。前部に取り付けられた2本の金属製フォーク(爪)をパレットの下に差し込み、油圧の力で重量物を持ち上げて運搬します。

倉庫や工場など屋内外問わず、パレット積みされた荷物の移動積み下ろしにおいて、不可欠な機械として広く使われています。運搬物環境にあわせた種類を選定することで、安全性と効率性の両立を図ることが可能になります。

種類特徴
カウンターバランスフォークリフト車体後部のカウンターウエイトでバランスを取り、操作は座って行う
リーチフォークリフトフォーク部分が前後にスライドし、小回りに優れる
オーダーピッキングトラック運転台がフォークと一緒に上下し、高所作業が可能
サイドローダーフォークリフト車体側面にフォークがあり、長尺物の積み降ろしに適している
ウォーキーフォークリフトコンパクトで小回りに優れる
マルチディレクショナルフォークリフト前後・左右すべての方向に移動可能

積載能力によって1トン未満の小型タイプから10トン以上の大型タイプまで、さまざまな種類があり、作業環境や扱う荷物に応じて選択されます。

(3)ジャッキ

ジャッキは、小さな力で大きな重量物を持ち上げることができる機械装置です。油圧テコの原理を利用することで、使用者が加えるわずかな力を増幅し、数トンの重量物でも持ち上げることが可能です。

重量物を少しだけ持ち上げたい場面据え付け作業メンテナンス時の使用に適しており、自動車整備建築現場などで広く活用されています。ジャッキには以下のタイプが存在します。

手動式ジャッキ軽量・シンプル構造で手動操作、携帯性に優れる
油圧式ジャッキ安定した油圧制御で、重量物の据え付け・調整作業に対応
エア式ジャッキ空気圧で作動、軽量で取り回しがしやすい
電動式ジャッキスイッチ操作で自動昇降、作業の効率化に効果的

用途や持ち上げる重量、作業環境に応じて最適なタイプを選定することが、効率的かつ安全な作業につながります。

(4)チルローラ

チルローラには、運搬方向や用途に応じて固定式と旋回式の2種類があります。それぞれの特性を理解して使い分けることで、より効率的かつ安全な重量物の移動が可能になります。

固定式ローラが進行方向に対して真っすぐしか動かない構造で、狭い通路での直進移動や大型機器の据え付けに適する
旋回式ローラが360度回転し、自由な方向へ移動可能で、複雑なルートの移動作業にも対応できる

作業時は、専用の台車・レール・ジャッキとの併用により、より安全かつ効率的な運搬が可能です。

(5)ゴンドラ

ゴンドラは、垂直方向への重量物搬送に特化した吊り下げ式の運搬装置です。

必要に応じて、開閉式タイプ・囲い付きタイプ・簡易足場一体型などのバリエーションから最適なモデルを選びましょう。

開閉式タイプ側面または床面が開閉可能で重量物の出し入れがしやすい
囲い付きタイプ人の乗降や精密機器など、安全管理が求められる現場にも対応しやすい
簡易足場一体型作業員が乗って作業できる構造で足場としても利用可能

ゴンドラは、一時的な垂直搬送ニーズ柔軟に対応できる点が最大の強みです。また、使用する際には安全帯の使用荷重制限の厳守吊り荷の安定性確保が重要となります。

4.重量物輸送に利用するトラックの種類

運ぶ物の形状重量搬出入環境に応じた種類のトラックを使用することで、作業全体の安全性とスピードが大きく向上します。

ここでは、重量物輸送で使用される代表的なトラックの種類と、それぞれの特徴・主な用途について解説します。

(1)トレーラー車

トレーラー車は長尺物や大重量貨物の輸送に特化した車両として、建設資材、産業機械、特殊装置などの搬送に広く利用されています。

動力部分のトラクター(牽引車)と、荷物を載せるトレーラー(被牽引車)で構成されており、高い運用効率を維持できます。

たとえばトラクターはトレーラーを荷主の元に置いたまま、別のトレーラーを連結して次の輸送業務に移動もできます。

特に繰り返し運行が必要な現場では、全体の物流効率を大きく改善する手段として有効です。

(2)ユニック車

ユニック車は、通常のトラックにクレーン機能を組み合わせた多機能車両で、トラッククレーンとも呼ばれます。荷物の運搬積み下ろし作業を1台で完結できる実用性の高さが特徴です。

ユニック車には以下のように複数の種類があり、クレーンの配置機能によって分類されます。

キャブバック型クレーンが運転席と荷台の間に設置されており、前方寄りで荷役が可能
ハイアウトリガー型荷台両側に広く支持脚(アウトリガー)を展開でき、作業時の安定性が高い

ユニック車は現場ごとに重機を呼ぶのが難しい中小規模の工事現場短時間作業において、圧倒的な実用性とコストパフォーマンスを発揮します。

(3)ポールトレーラー

ポールトレーラーは特殊な形状を持つトレーラー車の一種で、長尺物の輸送に特化した車両です。

通常のトラックでは積載できない大型・長尺の荷物に対応する構造であり、一般的なトレーラー車と違い、ポールトレーラーは分離できません。この特性によって長い積載物の重さを車両全体でバランスよく支えることが可能です。

また、ポールトレーラーの運転はこれらの特性を踏まえ、以下に対応する高度な運転技術が必要です。

  • カーブや交差点での取り回し
  • 適切なブレーキ操作
  • 坂道での安定走行

特殊な輸送ニーズに応えるポールトレーラーは、一般車両では対応できない現場で非常に重宝される存在です。事前の現地確認通行ルートの安全確保を徹底することで、より確実な輸送が実現します。

(4)ラフテレーンクレーン

ラフテレーンクレーン(ラフタークレーン)移動式クレーンの一種で、建設現場や不整地における重量物の運搬・吊り上げ作業に特化した専用車両です。

車体がコンパクトに設計されているため、狭い場所での旋回性能に優れており、限られたスペースでも効率的な作業ができます。このような特性を活かして、以下のような現場で活躍します。

  • 山間部や高低差のある地形での送電線・鉄塔工事
  • 仮設駐車場や建設現場での設備搬入
  • 資材置き場での仮設構造物の設置
  • 通路が狭くクレーン車の進入が難しい工場構内

5.重量物輸送における注意点

重量やサイズが大きい貨物は、少しの油断や誤判断で重大な事故やトラブルにつながる可能性があるため、関係者全員が一貫した安全基準と認識を持って取り組むことが重要です。

ここでは、重量物輸送における注意点を解説します。

(1)過積載

過積載とは、車両に法定で定められた最大積載量を超えて荷物を積載する行為のことを指し、これは道路交通法および道路運送車両法に違反する重大な違反行為です。

加えて、過積載は以下のようなリスクがあります。

  • 停止までに必要な距離が大幅に伸びる
  • カーブや傾斜での横転リスクが高まる
  • サスペンションやタイヤへの過剰負荷

また過積載は運転者だけでなく、運送会社や荷主にも法的責任が及ぶ可能性があり、重大事故時には損害賠償責任刑事責任が問われる恐れがあります。

積載量を超えないトラックを事前に手配し、出荷前に重量計測を実施するなどの安全とコンプライアンスを優先した輸送計画を立てることが重要です。

(2)積載物の落下

トラックから落下した積載物は、後続車両や歩行者に甚大な被害をもたらし、二次的な事故を引き起こすこともあります。このような危険を防止するためには、積載物の確実な固定が不可欠です。

以下の効果的な固定方法対策として参考にしてください。

高強度の固定具を使用するラッシングチェーン、ワイヤーロープ、ベルトスリングなど
補助具を併用するスリップ防止マットやコーナープロテクターの使用でズレを防止する
多方向から固定する前後・左右・上下すべての揺れに対応するため、複数箇所で荷物を押さえる
積載後の定期点検を実施する長距離輸送では、途中休憩時に固定具の緩みを確認・再締付けを行うことが重要

積載物の固定は、輸送全体の安全を左右する守りの工程です。些細な気の緩みが重大事故につながることを意識し、確実な固定作業を徹底しましょう。

(3)交通事故と品質事故

交通事故と品質事故はいずれも企業や荷主に重大な損失信頼低下をもたらすリスクがあるため、原因を正しく理解し、予防策を徹底することが重要です。

予防策
交通事故・車両ごとの法定積載量を厳守
・法定速度以下での運転を徹底
・急な加減速を避ける
品質事故・適切な養生処理を実施
・荷台内の固定具の使用方法を標準化する
・段差・悪路での徐行運転
・急ブレーキの回避により衝撃を抑制する

ヒューマンエラーと物理的衝撃の両方を最小限に抑える対策を取ることで、より信頼性の高い輸送が実現できます。

(4)確認不足による業務遅延

重量物輸送では、事前情報の不足が業務遅延や追加費用の原因となることがあります。

依頼時に曖昧な内容しか共有していない場合、運送業者は適切な車両・機材・人員の手配や正確な見積りができません。結果として、現地確認や作業当日になってから次のような問題が発覚するケースがあります。

  • 当初の見積額では対応不可
  • 必要な機材や人員が手配できていない
  • 車両が現場に入れない」

このような事態を防ぐために、運送会社は依頼者に対して以下の内容を確認することが重要です。

輸送物の詳細メーカー名、型番、寸法(縦×横×高さ)、重量など
設置状況固定方法、アンカー有無、解体・養生の必要性
搬出入経路出入口サイズ、階数、通路の幅・勾配、エレベーターの有無
作業場所の環境トラックの駐車可否、クレーン設置スペースの有無

事前に詳細な情報を把握することで、適切な車両や機材の手配・人員の配置・所要時間の見積りなどを正確に行えるため、スムーズな作業進行が可能になります。

6.重量物輸送における業者選びのポイント

最後に、重量物輸送における業者選びのポイントについて解説します。

(1)保有車両と機材の種類が豊富

重量物輸送業者を選ぶ際の評価基準として、保有車両と機材の充実度があげられます。豊富な設備を持つ業者は、実績対応範囲の広さ事業の安定性を裏付ける要素にもなります。

長尺物の輸送にはポールトレーラー、未舗装地での作業にはラフタークレーンというように、輸送する重量物の種類現場の状況によって最適な車両での運搬が期待できます。

(2)対応可能な商品と配送エリアの範囲

重量物輸送業者を選定する際は、取り扱い可能な商品の種類と配送エリアの対応範囲を必ず確認しましょう。輸送業者には得意分野専門とする重量物のタイプがあり、地理的にサービスを提供できる範囲も異なります。

確認すべきポイントを以下の表にまとめています。

対応可能な重量物の種類精密機器、長尺物、大型構造物、設備機器など
対応エリア自社対応の範囲か、協力会社を通じた広域対応か

(3)輸送実績が豊富

重量物輸送には現場ごとに異なる課題が付きものであり、実績の多い業者ほど多様なトラブルや制約への対応経験を持っています。

自社と似た業種・環境での実績があるかを確認することで、より自社に適した業者を選定しやすくなります。以下のような情報を参考にしましょう。

会社案内輸送事例、搬送対象、作業地域、工期など
写真付き事例紹介現場の様子、機材の使い方、対応した課題など
顧客の声・導入事例実際の依頼者からの評価や継続取引の有無など

業者の実績を確認する際は、まずWebサイトを確認しましょう。

7.まとめ

法令における重量物の定義や運搬方法、業者を選ぶ際のポイントについて解説しました。

重量物の輸送に使用する車両には、トレーラー車・ユニック車・ポールトレーラーなどがあり、それぞれ特性が異なります。

また、輸送時には過積載や積載物の落下、事故防止など、さまざまな注意点があることを忘れてはなりません。

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