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トラックドライバー不足への解決策とは?2024年問題、原因

トラックドライバー不足はかねてより高齢化過酷な労働環境といった理由で深刻な問題とされてきました。さらに近年は、2024年問題によってその影響が一段と広がっています。

働き方改革関連法による労働時間上限の規制により、新たな人材の確保が難しくなり、現場からの人材流出も懸念されています。

本記事では、そのような課題も踏まえたトラックドライバー不足の具体的な解決策を幅広く解説します。

目次

1.トラックのドライバー不足の課題と2024年問題

トラックドライバーは日々過酷な労働環境に晒されており、長時間労働低賃金といった労働環境の問題が影響しています。

以下の動画では、現役トラックドライバーが現場目線での人材不足について言及しており、若手人材の獲得が困難なことや、法規制の厳格化以降の現場についても解説しています。

ここでは、トラックドライバー不足の実態2024年問題の概要などを解説します。

(1)トラックドライバー不足の実態

若者のトラック業界への就職意欲が低下し、高齢化が進む一方で、定年退職者が相次ぎ人手が減少しているのが現状です。

さらに、2024年問題として注目されている働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制が適用されます。これにより、既存のトラックドライバーが給与減少を理由に退職することも懸念されています。

帝国データバンクの調査によると、2024年度(11か月累計)の道路貨物運送業の倒産件数は328件にのぼり、そのうち38件が人手不足による倒産でした。倒産の主な要因は人手不足と物価高であり、特に軽油価格の上昇が経営を圧迫しています。

引用:帝国データバンク

2025年現在、トラックドライバー不足はますます深刻になっており、物価上昇の影響も重なって物流業界全体に大きな課題をもたらしています。

(2)2024年問題とは

2024年問題とは、働き方改革関連法によりトラックドライバーの労働時間が制限されることで生じる、さまざまな影響を指します。

時間外労働年間960時間までと上限が設定され、これまで長時間労働が常態化していた運送業界にとって大きな転換点となります。なお、トラックドライバーの残業時間(時間外労働)とその対策については、以下の記事でも詳しく解説しています。

これまでの運送業界では、人手不足を既存ドライバーの長時間労働で補う体制が一般的でした。しかし、それにより、労働負担が過剰になっているという問題もあります。そのような問題の解決のために、2024年問題(働き方改革関連法)が

実際に、道路貨物運送業は脳・心臓疾患に関する労災の請求件数・支給決定件数ともに全業種中で最多となっており、トラックドライバーの過重労働が健康被害の一因となっていると指摘されています。

引用:https://www.unyu.co.jp/news/detail/id=591

労災の認定基準などの詳細な内容は、以下の動画でご確認いただけます。

2.トラックドライバー不足への解決策

トラックドライバー不足の課題は多岐にわたるものの、抜本的な労働環境の改善が欠かせません。

ここでは、業務効率化に適した方法から人材確保に有効な方法などの、幅広いトラックドライバー不足の解決策を紹介します。

(1)システムの活用

運行管理システムや労務管理システムなどの導入により、業務効率化による労働環境の改善労働時間の適正化につながります。たとえば、以下のような効果が期待できます。

業務効率化・運行管理や労務管理を自動化
・正確な配車計画の作成で無駄な走行を削減
労務管理の適正化・労働時間や休憩時間を自動記録
・労働時間超過による罰則リスクを低減
安全性向上・安全運転をサポート
・事故リスクを低減
コスト削減・燃費管理や車両メンテナンスの適正化
業務の可視化・管理者が状況を即座に把握できる
・トラブルが発生しても迅速に対応可能
顧客満足度の向上荷主や顧客に対して配送状況を迅速に共有できる
・納期遅延のリスクを減らし、クレーム対応もスムーズになる

運行管理システムを活用すれば、リアルタイムでの車両位置管理運行状況の把握ができ、無駄な走行や待機時間を減らすことが可能です。

さらに労働時間休憩時間を自動記録し、法定上限を超えないよう管理することで、コンプライアンスリスクを低減できます。

ドライバー不足の解決策としてシステムを導入する際には、初期投資コストが課題となることもありますが、長期的なコスト削減や業務効率化を考慮すれば十分なメリットが得られます。

なお、複合的な機能性を求める場合には運送業向け基幹システムが適しています。カスタマイズ性に優れる基幹システムであれば、将来的な拡張性も見据えたシステムの導入が可能となります。

(2)モーダルシフト

モーダルシフトとは、長距離輸送をトラックから鉄道や船舶に切り替えることで、輸送効率を向上させる取り組みです。トラックが担当する区間を短縮し、ドライバー一人あたりの負担を減らすことができます。

コンテナパレット単位で貨物をまとめ、主要区間を鉄道やフェリーで輸送し、最終区間のみをトラックで配送する方式が一般的です。

燃料費高速料金の削減効果も期待でき、コスト面でもメリットがあります。
さらに環境負荷の軽減という観点でもモーダルシフトは評価されており、企業の社会的責任を果たす手段としても有効です。

モーダルシフトの導入には、鉄道や港湾設備との連携強化貨物積み替え作業の効率化が重要となります。

(3)共同配送

共同配送とは、複数の企業がそれぞれの荷物を1台のトラックにまとめて積載・配送する仕組みです。効率的な運行を実現することで、ドライバーの労働時間削減燃料コストの削減など、さまざまなメリットがあります。

同じエリアに向かう荷物を一括して運ぶことで、無駄な運行を減らし、積載率の向上も実現します。これは、改善基準告示(運転時間・休憩などに関するルール)への対応にもつながり、特に長距離輸送において有効とされています。

企業同士が物流ネットワークを共有し、共通の目標に向かって取り組むことで、トラックドライバー不足という業界全体の課題に対し、持続可能な解決策を構築していくことが可能です。

(4)中継輸送

中継輸送とは、一定の中継地点でトラックドライバーを交代し、別のドライバーが次の区間を担当する方式です。これにより、トラックドライバー一人あたりの運転時間を削減し、労働環境の改善につながります。

結果として、長距離運転による過労や事故リスクを減らすことができ、安全管理の面でも有効です。

中継輸送にはドライバー交代のタイミングや効率的な運行計画が求められ、物流管理の高度化が必要となりますが、近年ではコネクトパーキングといわれる中継輸送地が増設されており、これまでよりも参入障壁が低くなっています。

(5)物流拠点の最適化

物流拠点を適切に配置することで、ドライバーの負担を軽減しながら配送効率を向上させることができます。

たとえば拠点間を中継輸送でつなぎ、ドライバー交代を効率よく行うことで、働き方改革関連法への対応も可能となります。物流拠点の最適化に関する詳しい内容は、以下の記事をご覧ください。

拠点間の連携が強化されることで、自然災害などの突発的なトラブルにも迅速に対応でき、より強固な物流体制を築くことが可能です。

(6)荷役作業の自動化・効率化

トラックドライバーの業務には、運転だけでなく荷物の積み下ろし作業等も含まれており、これがドライバー不足を助長している要因の一つとなっています。

荷役作業を自動化・効率化することで、ドライバーの肉体的負担を軽減し、人件費の削減労働環境の改善につながります。

自動化の具体例として、フォークリフトの自動運転システムロボットアームなどの活用があります。その他にも、マテハン(マテリアルハンドリング)の活用も効率化に有効です。

荷役作業の自動化・効率化には初期投資が必要ですが、作業品質の向上や安全性の確保なども期待でき、人材不足解消以外の複合的な効果も見込めます。

(7)キャリアパスの整備

トラックドライバーは若年層の就業意欲が低下していますが、キャリア形成が見える仕組みを整えることで、若年層の人材獲得が見込めます。

たとえば、以下の動画の運送会社では、10代20代の社員が75%を占めています。

大型免許は21歳以上かつ運転経験が必要なため、18歳でトラックドライバーとして就職できる企業はほとんどありません。
しかし、この会社では引越し事業を併設することで、入社当初は引越し業務に従事し、社内で経験を積みながらトラックドライバーへとステップアップする道が用意されています。

(8)採用ブランディングの強化

採用ブランディングとは、企業が求職者に対して、入社後の研修体制や働く環境、フォローアップ制度などの魅力を積極的に発信する取り組みを指します。

具体的には、以下のような手法が効果的です。

  • 入社後の研修制度やキャリア支援の紹介
  • 新人フォローアップの具体的な取り組みの可視化
  • 実際に働くドライバーや社長へのインタビュー動画の公開

これらを通じて、応募者は企業の一次情報を自ら確認でき、社風働く人の雰囲気に触れることで親しみや安心感を持つことができます。

(9)給与体系などの見直し

トラックドライバーの確保・定着を図るうえで、給与が労働時間や業務内容に見合っていないと感じられる限り、人材の流出や新規採用の困難さは解消されません。そのため、インセンティブ制度の導入などの正当に評価される仕組みを作ることが重要です。

たとえば、安全運転や配送効率などの指標を評価基準に組み込み、報奨金や表彰制度などを設けることで、ドライバーのモチベーション向上につながります。

また、長距離運転深夜勤務への手当を手厚くすることにより、厳しい労働条件に対する正当な対価を明確に示すこともできます。

3.トラックドライバー不足の影響

トラックドライバー不足は、以下のような問題を発生させ、最終的に輸送力低下に直結します。

  • 物流コストの増加
  • 配送品質の低下
  • 成長戦略上の制約

これらの影響は単に運送業界にとどまらず、サプライチェーン全体に広がり、取引先や消費者にまで影響を及ぼす恐れがあります。ここでは、トラックドライバー不足がもたらす深刻な影響を解説します。

(1)物流コストの増加

トラックドライバー不足が進行すると、運行可能なトラックの数が減り、物流の効率が低下します。

その結果、運送会社は限られた人員での対応を迫られ、運賃の値上げに踏み切らざるを得なくなります。これにより、荷主企業の物流コストが増大し、経営を圧迫する事態が発生します。

以下のグラフは、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によるトラック運転者の年間収入額の推移を示したものです。

引用:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/work

令和5年(2023年)時点で、大型トラック運転者の平均年収は485万円中小型トラック運転者は438万円となっており、いずれも過去数年にわたり増加傾向にあります。

また、ドライバーの確保を巡って運送会社間での人材獲得競争が激化しており、賃金水準の上昇福利厚生の拡充なども、企業側にとっては大きな負担となっています。

最終的にこれらのコスト増は、商品価格の上昇サービス品質の低下という形で、消費者にも直接的な影響を及ぼす可能性があります。

(2)配送品質の低下

ドライバー一人あたりの負担が増加し、長時間労働過密なスケジュールが常態化することで、疲労が蓄積しやすくなります。その結果、安全運転がおろそかになるリスクが高まり、交通事故や貨物の破損といったトラブルの発生につながります。

また、採算性の低いエリア深夜・早朝の配送業務から撤退する事業者も増えています。
これにより、地方や過疎地域での物流網の維持が困難となり、地域間の物流格差サービス格差の拡大も懸念されています。

こうした課題の一端は、以下の報道動画からも読み取ることができます。

2024年問題(働き方改革関連法)が施行されて1年が経過した現場の様子を取材したもので、ある運送会社の経営者は「運送会社は受け身にならざるを得ず、改善ポイントは荷主側の対応にある」と指摘しています。

これは、ドライバー不足や労働環境の問題が、業界内だけでは解決しきれない構造的な課題を抱えていることを示しています。

(3)成長戦略に制約がかかる

トラックドライバー不足は、企業の成長戦略そのものに制約を与える重大な要因となっています。

物流は、商品やサービスを顧客に届けるための不可欠なインフラであり、その機能が停滞すれば、新規事業の展開や販路の拡大、エリア進出のスピードに悪影響を及ぼします。

ドライバー不足によりこの体制が維持できなくなると、商品供給の遅延配送エリアの限定といった問題が発生し、ビジネスチャンスを逃すリスクが高まります。

また、配送能力の不足が長期化すれば、安定供給ができないことによる取引先からの信頼低下契約解除売上の減少といった経営への直接的な打撃にもつながるでしょう。

4.まとめ

トラックドライバー不足と2024年問題は、物流業界全体に深刻な影響を及ぼし、企業経営に多大なリスクをもたらしています。

これらの問題に対応するためには、労働環境の改善や業務効率化、人材確保に向けた取り組みが欠かせません。

ドライバー不足という厳しい現実に直面しながらも、柔軟な発想と革新的な手法を取り入れることで、安定した物流基盤を確立していきましょう。

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