積み付けを最適化する方法｜おすすめシステム、計算等も

2025年4月25日

適切な積み付けは荷崩れ防止だけでなく、限られたスペースを最大限活用することで輸送コストの削減にもつながります。

近年ではAIや専用システムの活用により、より高精度な積み付け計画が短時間で立てられるようになっています。

本記事では、積み付けの概要や最適化に活用できるおすすめシステムも紹介します。

1．積み付けの概要

荷物を限られたスペースにいかに無駄なく、安全に積み込むかは、運搬効率や商品の品質保持、作業者の安全性にも大きく影響を与えます。

しかし一方で、積み付けと積み込みの違いがあいまいになっている現場も多く、目的や重要性について正確に理解できていないケースも見受けられます。

ここでは、積み付けの基本的な定義を確認したうえで、積み込み作業との違い、役割や重要性について解説します。

（1）積み付けとは？

積み付けとは、トラックの荷台やコンテナ内といった限られたスペースに、多種多様な形状・サイズの貨物を効率的かつ安全に配置する作業を指します。適切な積み付けを行うことで、一度の輸送量を最大化できるほか、輸送コスト削減にも大きく寄与します。

積み付けにおいて特に重要なのは、重量バランスの管理です。

重さが偏った積み付けは車両の安定性を損ない、走行中のふらつきや横転リスクを高める恐れがあります。

さらに、積み付けた貨物は、以下のような器具を使って確実に固定することが不可欠です。

ストラップ（荷締めベルト）
ネット
ラッシングベルト
パレット用ラップフィルム

これにより、走行中の振動や急ブレーキによる荷崩れを防ぎ、貨物の損傷リスクや交通事故リスクを大幅に低減できます。

積み付けは、物流効率と輸送時の安全性を両立させる重要な要素であり、すべての物流現場で高い精度が求められています。

（2）積み付けと積み込みの違い

物流業界では「積み付け」と「積み込み」という似た用語が使われますが、その意味と目的には明確な違いがあります。両者の違いを整理すると、以下のようになります。

	意味	目的
積み付け	荷物の配置方法や積み方の工夫	安全性・効率性の最大化
積み込み	荷物をトラック・コンテナに搬入する作業	実作業の遂行

積み付けは、荷物をどのように配置するかを工夫する作業を指し、荷物の配置順序、向き、重量バランス、固定方法など、安全性と効率性を両立させるための計画・設計が求められます。

一方で積み込みは、荷物を実際にトラックやコンテナに搬入する作業そのものを意味します。

つまり、積み込みは何をするか（搬入作業）を指し、積み付けはどのようにするか（配置の工夫）を表す言葉です。

以下の動画ではトラックの積み込み風景をご確認いただけます。

（3）積み付けの重要性

積み付けは、限られた輸送スペースを最大限に活用し、輸送効率と安全性を両立するために重要な作業です。

適切な積み付けを行うことで、一度に運べる貨物量が増え、配送回数を減らしてコストを削減できます。積み付けによる主な効果は次のとおりです。

燃料費・人件費・車両稼働コストの削減
荷下ろし作業のスムーズ化による作業効率向上
労働負担の軽減とミス・トラブルの防止

積み付けは安全性の確保においても、極めて重要な役割を果たします。荷物の固定が不十分だと、走行中の振動や急ブレーキで荷崩れや車両の横転事故を招くリスクが高まります。

特に重量物を扱う場合は、重心バランスの崩れが重大な事故につながるため、慎重な積み付けが求められます。なお、重量物の運搬方法については以下の記事で詳しく解説しています。

2．積み付け計画の重要性

積み付けは、現場での臨機応変な対応に頼るのではなく、事前に計画を立てることが極めて重要です。ここでは、積み付け計画を立てる意義や、その具体的な効果についても解説します。

（1）積み付け計画とは？

積み付け計画では、荷物の重さ、形状、強度、配送順序といったさまざまな要素を総合的に考慮し、最適な積み付け方法を導き出す必要があります。

理想的な積み付け計画を作成するには、専門的な知識と豊富な現場経験が求められます。

そのため、多くの物流現場では、積み付け計画の作成が担当者の経験や勘に依存しているのが実情です。この属人化の課題を解決するため、近年では次のような取り組みが進められています。

積み付け計画のシステム化
AIによる積み付け最適化
現場データの蓄積と活用による標準化

こうしたデジタル化の動きにより、誰でも一定水準の積み付け計画が立案できる環境整備が進められています。

（2）積載率と積み付け

戦略的な積み付けによって積載率を向上させることで、物流現場には次のようなメリットがもたらされます。

輸送コストの削減
車両稼働率の改善
ドライバーの労働力の有効活用
燃料消費量の削減
CO₂排出量の抑制など

このように、積み付けの最適化は作業効率化にとどまらず、収益性向上と環境負荷軽減を同時に実現する物流戦略の要となる取り組みです。

以下の記事では、トラックの積載率について包括的な内容を解説しています。

（3）荷崩れの原因と積み付け

輸送中に発生する荷崩れの主な原因は、不適切な積み付けにあります。

走行中のトラックは、路面の凹凸、カーブ、急ブレーキなど、さまざまな方向から継続的に力を受けています。こうした環境下では、積み付けが不十分な場合、荷崩れが発生するリスクが高まります。

安全な輸送を実現するために、次のポイントを適切に管理することが求められます。

荷物の重心を車両中央に近づける
重量バランスを考慮して積載する
ストラップやラッシングベルトなど適切な資材で確実に固定する

とくにコンテナ輸送においては、コンテナ内部での荷物配置と、コンテナ自体の車両への固定という二重の安全確保が求められるため、より慎重な積み付け計画が不可欠です。

3．積み付けの種類

適切な積み付け方法を選択することは、輸送効率の向上や貨物の安全確保に直結する重要なポイントです。

ここでは、代表的な積み付けの種類と、それぞれの特徴について解説します。

（1）ブロック積み

ブロック積みは、すべての段において荷物を同じ方向に並べて積み上げる方法で、平積みとも呼ばれています。

単純な配置パターンであるため、作業効率が非常に高く、経験の浅い作業者でも短時間で多くの荷物を積むことが可能です。

ただし、ブロック積みは前後左右への振動や急ブレーキに対して構造的に弱く、荷崩れが発生しやすいという弱点も抱えています。

このような性質も踏まえて、ブロック積みは次のような条件に適しています。

強度のある段ボールや樹脂コンテナなど、外装がしっかりした荷物
振動や揺れの少ない短距離輸送
作業スピードが重視される現場

重量物や長距離輸送の場合には、より安定性の高い積み方（交互積み、レンガ積みなど）を検討する必要があります。

（2）ピンホール積み

ピンホール積みは、長方形の荷物を風車のように積み上げる方法で、風車積みやピンホイール積みとも呼ばれます。

ピンホール積みのメリットは、輸送中に発生する横方向の揺れや振動に対して非常に高い耐性を持つ点です。荷物同士が互い違いに支え合う構造となるため、ブロック積みと比べて荷崩れリスクが大幅に軽減されます。

ただし、中央部に空洞（デッドスペース）ができるため、積載効率がやや低下するという欠点があります。

ピンホール積みは特に次のような貨物に適しています。

冷蔵品や冷凍品など、低温保存が必要な商品
湿度管理が求められる精密機器や薬品類

ピンホイール積みは空洞部分で通気性を確保できるため、温度管理が必要な冷蔵品や低温保存が必要な商品の輸送・保管に適しています。

（3）レンガ積み

レンガ積みとは、各段の配置パターンを維持しつつ、段ごとに荷物の方向を180度反転させて積み上げる方法です。

荷物同士が互い違いにかみ合う構造をつくることで、輸送中の振動や衝撃に対する耐性を大幅に向上させる効果があります。さらに、レンガ積みでは荷物の側面が外側に露出するため、バーコードやラベルといった商品識別情報が視認しやすくなります。

ただし、レンガ積みは荷物の向きに左右されるため、正方形のパレットでは実施しにくいという課題があります。

このため、レンガ積みは主に長方形パレットやカゴ車を使用する輸送・保管場面に適しています。

（4）スプリット積み

引用：厚生労働省フォークリフト運転技能講習

スプリット積みとは、多様な形状やサイズの荷物を積載する際に用いられる積み付け方法です。

荷物を横向きに配置しながら、荷物同士の間に一定の隙間を設け、段ごとに180度方向を反転させて積み上げることで、全体の安定性を確保します。

この構造により、不揃いな荷物同士でも互いに支え合う力を生み出すことが可能となり、振動や衝撃への耐性が高まります。

注意点として、スプリット積みではパレットの外側に隙間を作ると、支えがなくなり荷崩れするリスクが高まることが挙げられます。

そのため、隙間は必ずパレットの内側に設定して、荷物全体がパレット面積内に収まるよう配慮する必要があります。標準的なパレットサイズに収まりきらない荷物がある際に効果的な積み方です。

4．積み付け時に荷崩れを防ぐためのポイント

積み方や荷物の固定方法が適切でないと、走行中の振動や衝撃によって荷物が崩れ、貨物の破損だけでなく重大な事故を引き起こすリスクも高まります。

ここでは、荷崩れを防ぐために押さえておくべき具体的なポイントについて、解説します。

（1）重い荷物を下にする

異なる重さの荷物を積む際は、重い荷物を下に配置し、その上に軽量の荷物を積むことが基本です。
また、重い荷物をパレットの中心部に集中させれば、重心が中央に保たれるため、輸送中の安定性を高められるでしょう。

（2）ラップやバンドを活用する

ラップは高い伸縮性と適度な粘着力を持つ包装資材で、パレットに積まれた荷物全体を包み込むように巻きつけることで、荷物同士を一体化させる効果があります。
結束バンドは、強度に優れた固定方法であり、重量物や固定力が特に求められるケースに適しています。

固定資材の活用は、単に荷崩れを防止するだけでなく、次のような効果ももたらします。

商品破損リスクの低減
作業者の安全確保
荷役作業の効率化
輸送中の品質維持

固定資材の使用は単に荷崩れを防ぐだけでなく、商品の破損防止や作業者の安全確保、効率的な荷役作業の実現といった複数のメリットをもたらします。

（3）オーバーハングしないように積み込む

オーバーハングとは、積載した荷物がパレットの縁からはみ出している状態で、一見小さな問題のように思えますが、物流プロセス全体でさまざまなリスクを生み出します。

たとえば、物流倉庫内での荷役作業時にオーバーハングしている荷物は、倉庫内で他のパレットや設備と接触しやすく、商品破損のリスクが高まります。

トラック輸送において、オーバーハングした荷物はほかの荷物と干渉しやすく、たとえ緩衝材を設置していても、走行中の振動や急ブレーキによって荷物が損傷することもあります。

5．積み付けを最適化するためのシステム

（1）ULTRAFIX/積付計画

引用：https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/ss/logistics/products/tms/

NECソリューションイノベータが提供するULTRAFIX/積付計画は、貨物の寸法・重量・体積などの基本データを入力するだけで、重心や重量のバランスを考慮した最適な積み付けパターンを瞬時に自動計算できます。

また、3D表示機能により視覚的に積み付け状態を確認することも可能です。

作成された積み付け計画は現場作業者向けの指示書として出力可能で、ベテランでなくても最適な積み付けを行えるでしょう。

主な特徴	・3D表示機能・現場作業者向けの指示書として出力可能・最適な積み付けパターンを瞬時に自動計算
所在地	東京都江東区新木場一丁目18番7号
価格・料金プラン	こちらからお問い合わせ

（2）バンニングマスター

バンニングマスターは、自動車メーカー・食品・建材・官公庁まで幅広い分野で採用されており、高い汎用性を備えます。

複雑な形状の製品でも重量バランスや作業効率などの条件を組み込んだ計算により、最適な積み付けパターンを導き出します。

また、ハンディターミナルとの連携機能により、担当者は積載内容をチェックしながら作業を進められるため、作業ミスを防止できるでしょう。

主な特徴	・重量バランスや作業効率などの条件を組み込んだ計算・3Dシミュレーションで可視化・ハンディターミナルとの連携機能
所在地	東京都港区三田4丁目8番41号 NTGビル
価格・料金プラン	こちらからお問い合わせ

（3）PackingSim

PackingSimは、コンテナやパレットの種類、数をすばやく自動計算してくれるため、誰でも効率的に積載プランを作成できます。

また、高いカスタマイズ性も特徴で、長尺物のオーバーハング積みなど、業界特有の制約条件にも柔軟に対応可能です。

すでに複数の企業で積み付けの効率化に成功しており、信頼度も高いシステムといえるでしょう。

主な特徴	・柔軟性の高い積み付けアルゴリズム・業界特有の制約条件にも柔軟に対応可能・複数の企業で導入実績がある
所在地	東京都中野区本町4丁目38番13号日本ホルスタイン会館内
価格・料金プラン	こちらからお問い合わせ