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トラックの稼働率とは?ツールによる計算方法、稼働率を上げる工夫も

稼働率は、トラック運送事業者の経営を左右する重要な指標です。
2024年問題によってトラックドライバーの労働時間規制が厳しくなる中、限られたリソースで最大の効果を得るために稼働率の向上は欠かせません

本記事では、トラックにおける稼働率の概要稼働率を上げる方法稼働率を向上させるメリットについてわかりやすく解説します。

目次

1.トラックにおける稼働率の概要

まずはトラックにおける稼働率の概要について解説します。

(1)トラックの稼働率とは?平均、実働率との違いも

引用:https://www2.kaiyodai.ac.jp/~kurokawa/study/thesis/201103/ns2010a.pdf

トラックの稼働率とは、トラックが利用可能な総時間に対して実際に業務で使用されている時間の割合を示す指標です。稼働率を正確に把握することで、車両の過不足や運用効率の問題点まで明確になるケースもあります。

一方で実働率は、運行可能な日数のうち実際に稼働した日数の割合を表すケースが多いですが、稼働率と同じ意味を指す場合もあります。

国立大学法人東京海洋大学の研究によると、業界の実態として、運送会社のトラック稼働率は平均50%程度が一般的であり、半分の時間は車両が活用されていない状況にあります。

稼働率を高めることは、限られた車両資源の有効活用につながり、最終的には物流コスト削減収益性の向上に貢献するでしょう。

(2)稼働率の計算方法

トラックにおける稼働率の計算式は以下のとおりです。

稼働率(%)=(実際の稼働時間 ÷ 利用可能な総時間)×100

あるトラック運送会社の保有する車両が、1か月(30日間)の中で20日間運行し、各日の運行時間が平均9時間だった場合の計算を見てみましょう。

1か月(30日間)の中で20日間運行し、各日の運行時間が平均9時間だった場合の計算

180時間(9時間×20日間)÷720時間(24時間×30日間)×100=25%

つまり、上記のケースではトラックが利用可能な時間の4分の1しか稼働しておらず、残りの75%は車庫に停車しているか、メンテナンスなどで使用できない状態となります。

(3)その他輸送効率の指標

輸送効率の指標は稼働率以外にも存在します。ここでは、稼働率以外の輸送効率に関わる指標について解説します。

①実車率

実車率はトラックの運行効率を測る指標の1つで、トラックが走行した総距離に対して、実際に荷物を積んで走った距離の割合を示します。計算方法は以下のとおりです。

 実車率(%)=荷物積載時の走行距離÷総走行距離×100

たとえば、あるトラックが1か月間で合計5,000kmを走行し、そのうち3,000kmは荷物を積載して運行していた場合、実車率は60%となります。

実車率の数値が高いほど、トラックの走行距離が有効に活用されていることを意味しており、運送業の収益性向上につながりやすいでしょう。反対に、空車で走る距離が多いと実車率は低下します。

②積載率

積載率は車両の最大積載能力に対して、実際に積み込んだ貨物の重量がどの程度の割合を占めているかを数値化したものです。積載率は次の計算式で表されます。

積載率(%)=実際の積載重量÷最大積載可能重量×100

例をあげると、最大積載量が4トンのトラックに3トンの荷物を積んだ場合、積載率は75%です。

積載率が高ければ高いほど、トラックの積載能力を有効に活用できていることを意味します。

しかし、実際の運送業務では、配送先で荷物を降ろした後の帰り道は空車になることが多く、その場合の積載率は0%です。

また、複数箇所での積み降ろしがある場合、運行の各時点で積載率は変動します。
このような変動を考慮して、運行全体の平均積載率を算出すると輸送プロセス全体の効率を評価することも可能です。

③空車率

空車率はトラックが走行した総距離のうち、荷物を積まずに空車状態で走った距離の割合を示す指標です。
実車率と反対の概念であり、効率的な物流オペレーションを目指すうえで重要な管理ポイントとなります。具体的な計算方法は以下のとおりです。

空車率(%)=空車走行距離÷総走行距離×100

実例をあげると、トラックが月間で5,000kmを走行し、そのうち2,000kmが荷物を積んでいない空車状態であった場合、空車率は40%です。

空車率は数値が低いほど、トラックの運行距離が効率的に活用されていることを意味します。
とくに、コスト削減や環境負荷の軽減を目指す現代の物流業界では、空車率を下げることが課題となっています。

④運行効率

運行効率はトラックの総合的な輸送パフォーマンスを把握するための指標です。具体的には以下の計算式で表されます。

 運行効率(%)=実車率×稼働率×積載率×100

この計算によって、実際に荷物を運んでいる割合やトラックの稼働状況、積載の効率性を総合的に評価できます。

たとえば、あるトラック運送事業者の車両が実車率70%・稼働率70%・積載率70%であった場合、運行効率は34.3%と算出されます。

運行効率向上のためには、帰り荷の確保や車両の稼働時間の最適化、積載スペースの有効活用など、多角的なアプローチが求められるでしょう。

2.トラック稼働率の分析

ここからは、トラックにおける稼働率の読み解き方について解説します。

(1)稼働率が低い状態

トラックの稼働率が低い状態は、保有している車両資源が効果的に活用されていない状況を指します。
この状態は、トラックが本来生み出せるはずの収益機会を逃しており、事業効率の観点から大きな課題を抱えているでしょう。

低稼働率の背景には以下のような要因が考えられます。

  • 荷物の取扱量に対してトラックを過剰に保有している状況
  • 宿泊を伴うケースなど、トラックの稼働していない時間が長くなることで、効率が悪くなる状況

トラックを保有しているにもかかわらず十分に活用できていないことは、経営資源の非効率な配分を意味しており、長期的には企業の競争力低下につながるリスクがあります。

(2)稼働率が高い状態

トラックの稼働率が高い状態は、保有車両を効率的に運用できていることを表します。

理論上は稼働率100%が最も効率的ですが、物流業界においては高ければ高いほうがよいというわけではありません。

たとえば、月間稼働時間が160時間のところ、実際には200時間もトラックを稼働させている場合など、ドライバーの労働時間が過剰になることで疲労蓄積安全性の低下につながります。

また、車両自体にも過度な負荷がかかり、故障リスクの増加耐用年数の短縮を招く恐れもあります。
さらに、予期せぬ輸送需要緊急配送に対応するための余裕がなくなり、顧客対応の柔軟性も失われてしまうでしょう。

物流業界では持続可能な事業運営のバランスを考慮して、70%程度の稼働率を現実的な目標とする運送事業者が多いようです。

3.トラックの稼働率を向上させる方法

ここからは、トラックの稼働率をアップさせる4つの方法について解説します。

(1)中継輸送の採用

トラックの稼働率向上に対する効果的な戦略として、中継輸送方式の採用が注目されています。
中継輸送とは長距離の輸送を複数の短距離輸送に分割して、中間地点でドライバーや車両を交代させる方法です。

中継輸送には主に以下の形態があります。

ヘッド交換方式中継地点でトラクターを交換する方法
貨物積み替え方式中継地点で荷物自体を別のトラックに移し替える方法
ドライバー交代方式ドライバーが互いのトラックを交換して運転する方法

中継輸送における最大のメリットは、長距離運行に伴う宿泊を回避できるため、トラックの稼働時間を延ばせることです。さらにドライバーは日帰り運行が可能となり、労働環境の改善人材確保にもつながります。

ただし、信頼できるパートナー企業の発掘や、荷物の引き渡しに伴う責任範囲の明確化など、導入にあたっては対応すべき課題がある点に注意しましょう。

(2)システムの導入

トラックの稼働率向上において、システムの導入が重要となります。

現代の物流業界では、AI技術IoTを活用したシステムが登場しており、勘や経験に頼っていた配車や運行管理を効率化が促進されています。

たとえば、GPS技術を活用した動態管理システムでは、トラックの現在位置や運行状況をリアルタイムで把握できるため、急な配送依頼への柔軟な対応が可能です。

さらに、荷待ち時間を管理するシステムを導入することで、ドライバーの無駄な待機時間の削減につながり、荷主との時間調整も効率化できます。

システムの導入には初期投資が必要ですが、中長期的には人的ミスの削減やデータにもとづく継続的な業務改善によって、稼働率の向上が見込めるでしょう。

(3)定期的な車両メンテナンス

計画的な車両メンテナンスの実施は、トラックの稼働率を維持・向上させるうえで欠かせない取り組みです。
予期せぬ故障で運行できなくなった場合、配送の遅延顧客満足度の低下だけでなく、修理コストの増大稼働率の大幅な低下をもたらすでしょう。

効果的なメンテナンス体制の構築には、予防保全の考え方が重要です。
車両の状態を常に把握して、不具合が重大な故障に発展する前に対処することで、ダウンタイムを最小限に抑えられます。

具体的には、法定点検だけでなく、タイヤ・オイル・ブレーキといった消耗部品の状態を定期的にチェックして、メーカー推奨の交換時期を遵守することも大切です。

(4)人材の確保

トラックの稼働率向上において、質の高いドライバーの確保と定着も重要です。
ドライバー不足が深刻化する現代では、車両を動かす人材がいなければ、どれだけ優れた配車システム車両を保有していても意味がありません。

人材を確保するためには、労働環境の整備が求められます。
適正な労働時間の設定や休日の確保、快適な仮眠施設の提供など、ドライバーの心身の健康に配慮した職場づくりが求められます。

さらに、段階的なスキルアップ研修や、安全運転に応じたインセンティブ制度の導入は、ドライバーのモチベーション向上技術向上の両面で効果を発揮するでしょう。

トラックの稼働率は人材の質と量に直結するため、人材への投資は車両への投資と同等以上に重要といえます。

4.トラックの稼働率を向上させるメリット

ここでは、トラックの稼働率を向上させる4つのメリットについて解説します。

(1)コスト削減

物流事業では、トラック1台あたりに車両の取得費・自動車保険料・車検費用などの固定費用が発生しますが、稼働率が向上することでこのようなコストを分散させられます。

さらに、稼働率が向上すればトラックの配車もより効率的になり、無駄な空車走行迂回が減ることで、燃料消費量の削減にもつながるでしょう。

また、効率的な運行によって車両を適切に使用することで、メンテナンス費用の削減にも貢献します。
結果として、輸送単位あたりのトータルコストが大幅に削減され、運送事業の収益性向上に直結するのです。

(2)収益の向上

トラックの稼働率が高くなれば、1台あたりの運送可能回数や輸送量が増加するため、売上も必然的に上がるでしょう。稼働率の向上は単なる輸送量の増加だけでなく、サービスの多様化や付加価値提供の機会も拡大します。

たとえば、緊急配送や時間指定配送といったサービスにも柔軟に対応できるようになるため、単価も向上します。

運送事業の利益率を大幅に改善できるのが、稼働率向上の大きなメリットといえます。

(3)顧客満足度の向上

トラックの稼働率改善によって、高い稼働率を実現できれば、余裕を持った配車計画が可能になるため、配送遅延のリスクを下げられるでしょう。

また、稼働率が向上すれば、急な配送依頼や時間指定の変更にも対応できる余力が生まれます。緊急時の対応力は、顧客との長期的な信頼関係構築において重要な要素となるでしょう。

顧客満足度の向上は、結果として契約の継続や取引拡大など、企業に競争優位性をもたらします。

(4)環境への負荷を軽減

トラックの稼働率が向上すれば、同じ輸送量でも必要な走行距離が削減されるため、CO2排出量を抑えられるでしょう。

積載効率の向上と組み合わせることで、同じ貨物量を運ぶために必要なトラック台数そのものを削減できます。
さらに、計画的な運行管理により、アイドリング時間の短縮渋滞時間帯を避けた走行も可能になるため、平均燃費の改善にもつながるでしょう。

環境負荷軽減の取り組みは、SDGsへの貢献や企業の社会的責任(CSR)の観点からも重要なポイントです。

5.まとめ

トラック運送事業は厳しい競争環境の中で、労働力不足や規制強化など多くの課題に直面しています。
このような状況下で持続的に事業を発展させるためには、限られたリソースを最大限に活用することが不可欠です。

稼働率の向上は、事業発展の鍵となる取り組みの1つといえます。
中継輸送やシステム導入など、稼働率を向上させる方法を参考に、自社の状況にあった改善策を実施することで、生産性と競争力の向上につなげていただければ幸いです。

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