\当サイトおすすめNo.1運行管理システム/


運送業界では、ドライバーの長時間労働や人手不足が深刻化する中、2024年4月に時間外労働の上限規制が適用され、2024年問題として注目を集めました。これにより、2025年には物流の混乱が本格化する恐れがあり、業界全体に構造的な見直しが求められています。
本記事では、運送業における2025年問題について、その課題や対処法などをわかりやすく解説します。なお以下の記事でも運送業に関わる内容を解説しています。
2025年問題が深刻化する背景には、単なる人手不足にとどまらず、業務の属人化や法改正による労働環境の変化、物流コストの増加、さらには中小運送会社の倒産による供給力の減退といった、複合的な課題が存在します。
ここでは、運送業における2025年問題の課題をそれぞれ解説します。
物流業界の中でも運送業は特に採用難が深刻であり、長年にわたってトラックドライバーの人手不足が慢性化しています。
厚生労働省によると、令和4年9月時点におけるトラックドライバーの有効求人倍率は1.20であり、全職業平均の2.12を大きく下回る水準にとどまっています。
これは1件の求人に対し、わずか1.2人しか応募が見込めないことを意味し、企業にとって人材の確保がいかに困難であるかがうかがえます。
運送業界では、配車やルート設定、運行管理などの業務が、特定の担当者の経験や勘に依存する属人化が進んでいます。こうした状況では、担当者が退職・休職した場合に業務の引き継ぎが難しく、業務全体の停滞やミスの発生リスクが高まります。
また、新規人材の定着率にも悪影響を与えるため、様々な問題を派生的に引き起こします。
運送業において属人化しやすい業務内容として、以下のようなものが挙げられます。
配車業務 | 担当者の土地勘・ドライバーの性格・過去の対応履歴をもとに、暗黙のルールで最適化 |
---|---|
ルート設計 | 渋滞回避ルートや効率的な立ち寄り順などが明文化されていない |
日報・運行記録の管理 | 紙ベースやExcelなどで管理されており、フォーマットや記録方法が統一されていない |
なかでも配車業務は円滑に業務を遂行するために経験や慣れが必要であり、さらにドライバーにも影響を与えるため、属人化が進行しやすい傾向にあります。
以下の動画では、配車業務の難しさを現場目線で紹介しています。
2024年4月より施行された働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働に年間960時間の上限が設けられました。これにより、従来の長時間労働を前提とした運送業のビジネスモデルに大きな変革が求められています。
法改正による主な影響は、以下のとおりです。
時間外労働 | 年間960時間まで |
---|---|
拘束時間 | 原則:1日13時間以内例外:週2回まで14時間まで延長可能 |
内閣府ホームページの資料によると、2024年問題によってマイナスの影響があると回答した企業は84%にのぼり、そのうち約9割が物流コストの増加を最大の懸念として記載しています。
物流費の上昇は企業単体の問題にとどまらず、経済全体にも影響を及ぼします。
産業連関表を用いた分析では、物流費が10%上昇した場合、生産・流通段階を通じて各種の財・サービスに価格転嫁され、物価全体を0.2%程度押し上げる可能性があるとも試算されています。
運送業界の供給力は、多くの中小運送会社によって支えられています。
しかし、慢性的な人材不足や物流コストの上昇、車両維持費の負担増などにより、道路貨物運送業の倒産は増加傾向にあります。
株式会社帝国データバンクによる調査によると、2025年2月時点の道路貨物運送業者の倒産数は20件であり、2008年のリーマン・ショックと同水準となる見込みです。
以下は企業の倒産数に言及する報道動画です。
具体的な時期は明示されていませんが、2024年時点からしばらくは高水準で推移する見込みとも紹介されています。
2025年問題が表面化する背景には、運送業界が長年抱えてきた構造的な課題が複雑に絡み合っています。
過重労働や高齢化、人材不足といった慢性的な問題に加え、急増する宅配需要やデジタル対応の遅れが拍車をかけています。
ここでは、これらの要因がどのように2025年問題につながっているのかをそれぞれ解説します。
運送業界では、長時間の拘束、荷待ち、再配達対応などにより、トラックドライバーの過重労働が慢性化しています。荷待ち時間や長距離移動などが日常的に発生し、1日の拘束時間が12時間を超えるケースも珍しくありません。
こうした労働環境を支えてきたのは個人の努力や責任感による部分が大きく、構造的に無理のある働き方が温存されてきたといえます。
そのため、トラックドライバーの健康被害を防ぐためにも、法改正などによる過重労働の是正が強く求められています。
実際に、トラックドライバーは全職業の中でも労災支給認定件数が多く、脳・心臓疾患との因果関係が認められるケースも少なくありません。
以下では、厚生労働省による労働時間以外の要因別にみたトラック等運転手の脳・心臓疾患事案数の割合を確認できます。
また、こうした疾患の多くは走行中や事業所内での荷扱い中に発症しており、二次災害のリスクが高い業務環境であることも特徴といえます。
運送業界では、40代後半〜60代のドライバーが、2025年以降に相次いで定年や離職を迎えることから、業界全体の輸送力低下が懸念されています。
ベテラン人材の大量退職を前に若年層の雇用を推進することが課題となっています。
経済産業省や国土交通省の統計によると、宅配便の年間取扱数は右肩上がりで推移しており、特に個人向けの小口配送が急増しています。
宅配需要の拡大は今後も続くと見られるため、企業にとっては単なる業務量の増加としてではなく、物流体制そのものの再設計や自動化・外部連携の推進が重要な経営課題となりつつあります。
運送業界では、業務の多くが依然として紙や電話・FAXを中心としたアナログな手法に依存しており、デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れが大きな課題となっています。
また、古い基幹システムやオンプレミス環境を使用し続けている企業では、外部システムとの連携が難しく、新たなクラウドサービスやAIを活用した効率化ツールの導入が進みにくい現状があります。
このようなレガシーシステムの存在は、現場の業務効率を下げるだけでなく、属人化やミスの温床ともなり、競争力の低下まで招いています。
特に2024年の労働時間規制を受けて、人手不足の中で効率的に業務を回すためには、ITの活用が不可欠です。システム導入やデータ活用を進めることは、作業の標準化やドライバー管理の精度向上にもつながります。
2025年問題を乗り越えるためには、単に現場の努力に頼るのではなく、業界全体の構造的な見直しと企業ごとの戦略的な対応が求められます。
ここでは、具体的な解決策として期待される取り組みを紹介します。
2025年問題に対応するうえで、運送業界における業務の効率化・標準化は急務となっており、その中核がシステムの導入です。
配車管理や運行記録、労務・請求といった業務をシステム化することで、業務の標準化と可視化が進み、属人化やミスの削減、作業負担の軽減に寄与します。
さらに荷主との交渉や運賃の見直しの際に、定量的な根拠として活用できる場面もあります。
たとえば、自動配車システムの活用によって丸二日かかっていた配車の決定作業が数時間で行えるようになった事例があります。
ドライバーの健康と働きやすさを確保するためには、長時間労働の是正と休息時間の確保が不可欠です。
働き方の柔軟化に取り組むことで、ドライバーの定着率向上や新規採用の促進につながることが期待されます。
さらに荷役作業の負担軽減につながるパレット標準化も労働環境の改善に有効として、注目を集めています。
国土交通省のトラック輸送状況の実態調査によれば、荷主・元請・実運送のいずれにおいても手荷役の割合が依然として高く、作業負担や待機時間の増加につながっている状況が明らかになっています。
こうした背景から、荷役作業の効率化と、ドライバーの身体的負担や待機時間の軽減に直結し、労働環境の改善につながる有効な取り組みといえるでしょう。
物流の効率化を目的とした共同配送やモーダルシフトの導入が注目を集めています。
これらは、運送業界における人手不足や長距離輸送の負担軽減、CO₂排出量の削減といった、複数の課題に同時にアプローチできる有効な手段です。
共同配送 | 複数の企業が同一エリアへの配送をまとめて行う仕組み |
---|---|
モーダルシフト | 鉄道や船舶などの環境負荷が少ない輸送手段に切り替える施策 |
これらの取り組みは、荷主企業・物流企業・地域自治体などの連携が前提となるため、大企業が主導して物流ネットワーク全体を最適化する視点が重要です。
物流の共同化は、個社単位では難しい課題に対し、業界全体で取り組むべき構造改革の一環といえるでしょう。
慢性的な人材不足に直面する運送業界において、若年層・女性・シニアといった国内の多様な人材に加え、外国人ドライバーの受け入れに対する期待も高まっています。
政府は自動車運送業を特定技能制度の対象分野に追加する方針を打ち出しました(参考:2024年3月の交通新聞より)。
これにより、今後は在留資格を持つ外国人がトラック運転業務に従事できる可能性が広がります。
一方で、外国人ドライバーの受け入れには課題も多く残されています。
たとえば、運転免許の切り替え手続きの煩雑さ、日本語能力や交通ルールの理解、さらに日本の高い物流サービス水準への適応といった、教育・育成コストや制度理解の難しさといった課題が企業側にのしかかります。
こうした教育を単独の企業が担うのは難しく、業界全体での支援体制の整備が不可欠です。
2025年問題は、運送業界の枠を超えて、物流業界全体の構造と安定性に大きな影響を及ぼす可能性があります。その中でも特に深刻とされるのが、ドライバーの労働時間規制による輸送力の制限です。
想定される主な影響は、以下のとおりです。
輸送能力の低下 | ドライバー1人あたりの運行距離・時間が制限され、従来の配送体制を維持することが困難に。 |
---|---|
地域間格差の拡大 | 地方や過疎地を中心に「モノが運べない地域」が発生し、生活インフラにも影響が及ぶ懸念。 |
運送会社の淘汰・撤退 | 労務管理コストや車両維持費の増加により、中小企業を中心に廃業・倒産が進む。 |
物流費の上昇と取引条件の見直し | 業界全体で運賃の引き上げが進み、荷主企業との契約見直し・価格交渉が加速。 |
すでにドライバー不足によって定期便の減便や運行停止の事例も報告されています。
これらの動きが一層加速すれば、業界横断的な物流再編を迫られる企業も増えるでしょう。
2025年問題の直接的な影響を最も強く受けるのが、現場で業務を担うトラックドライバーです。
長時間労働の是正や運行制限が導入される一方で、それに代わる支援体制や業務再設計が不十分なままでは、現場の負担はむしろ増す可能性があります。
ドライバー個人に降りかかる主な影響は、以下のとおりです。
収入減少のリスク | 従来の残業による収入構造が崩れ、収入が減少する |
---|---|
精神的・身体的ストレスの増加 | 短時間で同量の業務を求められるなど、現場でのプレッシャーが増す |
労働満足度・定着率の低下 | 新たな制約や混乱が生じ、離職やモチベーション低下につながる |
高齢ドライバーへの適応負担 | システム導入や業務手順の変更が心理的ハードルとなる |
トラックドライバーは制度変更の矛先となりやすい一方、十分な支援や調整がなければ現場離れが一層加速する懸念があります。
2025年問題の影響は、物流の担い手だけでなく、日常生活に直結する一般消費者層にも波及します。
物流機能が滞ることで、必要なモノが必要なときに届かない事態が現実のものとなる可能性があります。
以下のような影響が想定されています。
配達の遅延・時間指定の制限 | 希望時間帯に届かない・数日後にずれ込むケースが増加する |
---|---|
配送料・手数料の値上がり | EC利用やネットスーパーの利便性にコスト的制約が生まれる |
品薄や欠品の常態化 | 配送便の削減が供給遅延を招き、棚不足・欠品が恒常的になる |
企業にとって見逃せないのは、こうした変化が消費者の購買行動・ブランド評価にも直結する点です。
物流の遅延やコスト増は、サービス全体の印象を悪化させ、競合他社との差別化にも影響を与える可能性があります。
運送業における2025年問題は、単なるドライバー不足や規制強化にとどまらず、物流業界全体の構造を揺るがす深刻な転換点となります。
取引先の倒産や物流コストの増加などのサプライチェーン全体に波及する複合的なリスクへ迅速な対応が不可欠です。
早期に行動を起こすことで、2025年以降の事業継続と競争力の確保につながるでしょう。