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人手不足・運賃の高騰・燃料価格の変動など、物流を取り巻く環境は大きく変化しています。
そこで今注目されているのが、「物流コストの見える化」です。コストの内訳を数値として把握することで、無駄やボトルネックを可視化し、効率的な改善施策を講じることが可能になります。
本記事では、物流コストを見える化することで得られる経営的メリットや、実現に役立つツールの種類・選び方について、解説します。
物流コストの見える化は、単に数値を把握するだけではありません。コスト構造の全体像を把握し、何に、どこで、どれだけ費用がかかっているのかを明確にすることで、改善の方向性を可視化できるのが大きなメリットです。
加えて、現場や業務プロセスの中に潜む非効率やムダを浮き彫りにし、具体的な改善アクションにつなげやすくなります。
その結果、属人的な判断ではなく、データに基づいた経営判断やコストコントロールが実現できます。
ここでは、物流コストを見える化することで企業にもたらされる主な3つの効果について、順に解説します。
物流コストの見える化を行うと、これまで一括で管理されていた「物流費」を、運送費・保管費・荷役費・包装費・管理費などの費目ごとに分解して把握できるようになります。さらに、チャネル別・商品別・エリア別・拠点別といった切り口での分析も可能となり、どこにどれだけのコストが発生しているのかを定量的に捉えられます。
たとえば、以下のような課題が浮き彫りになり、ピンポイントでのコスト最適化が可能になります。
KPMGが作成した図表(上記)によれば、運送事業者の運送料は2010年度以降、上昇傾向を続けており、加えて荷主企業の売上高物流コスト比率も2020年度以降は増加傾向に転じていることがわかります。
この背景には、配送単価の上昇だけでなく、仕入構造や製品構成、販売管理費の変化など多くの要因が複雑に絡んでおり、「見える化」なしには正確なコストの把握と対策は困難です。
だからこそ、物流コストの内訳を明確にすることが、持続的なコスト削減と経営の意思決定に直結します。
物流コストの見える化は、費目の内訳を把握するだけでなく、業務プロセス全体に潜む非効率やムダを特定する手段としても極めて有効です。たとえば、以下のような構造的な問題が数値に表れ、可視化されます。
実際、大手企業もこうした業務のムダを数値で把握し、改善を進めています。
たとえばキリングループロジスティクスでは、ゴールデンウィーク前の配送集中を回避するために、「注意日」をあらかじめ設定し、得意先に対して出荷の前倒し・分散を依頼する取り組みを行っています(下図)。
このような出荷予測→注意日設定→営業・卸との共有→分散依頼という平準化フローを導入することで、運送事業者側の車両確保や人員配置も安定し、全体最適な物流運営と協力会社の離反防止にもつながります。
物流コストの見える化は、現場改善だけでなく、経営層による戦略的な意思決定や投資判断を支える土台にもなります。属人的な経験や過去の慣習に頼るのではなく、定量的なデータに基づいて意思決定を行うことで、より効果的なコスト削減や生産性向上を実現できます。
たとえば、以下のように物流KPI(配送回数、積載率、在庫回転率、物流コスト率など)を継続的に可視化・分析することで、中長期の経営判断に資する情報が得られます。
実際に、帝人が主導した医療材料分野の取り組みでは、病院ごとのバラバラな物流を見直し、近隣医療機関の共同院外倉庫とデータ基盤を構築しています。
これにより、受発注・出荷・消費といった情報をリアルタイムで共有可能とし、以下のような効果を上げました。
このように、見える化されたデータをベースに物流構造を再設計することで、投資判断の精度が高まり、結果的に企業の収益性・競争力の向上に直結します。
物流コストの見える化を実現するには、現場や管理部門に点在する情報を一元管理し、正確かつリアルタイムに可視化できる仕組みが欠かせません。そこで重要になるのが、物流管理ツールの導入です。ここでは、見える化を実現する物流管理ツールの種類と機能について解説します。
物流管理ツールには、対応する業務領域ごとに特化したシステムが存在します。自社の課題や改善したいポイントに応じて、最適なツールを選定することが重要です。以下は代表的なカテゴリとその主な機能です。
ツール名 | 対応領域 | 主な機能 | 主な効果 |
---|---|---|---|
WMS (倉庫管理システム) | 保管・入出庫・棚卸 | ロケーション管理、ピッキング指示、棚卸進捗管理 | 庫内作業の効率化、在庫精度の向上、誤出荷防止 |
TMS (輸配送管理システム) | 輸配送・配車・進捗管理 | 配車計画の自動化、車両追跡、到着予定の可視化 | 運行効率の最大化、空車率低下、運賃削減 |
在庫管理システム | 在庫最適化・需給調整 | リアルタイム在庫把握、安全在庫算出、棚卸差異管理 | 過剰在庫・欠品の防止、キャッシュフロー改善 |
SCMシステム (サプライチェーン管理) | サプライチェーン全体の統合管理 | 需要予測、発注~製造~出荷の一元管理 | 部門間連携強化、納期遵守率向上、調達コスト削減 |
BIツール (ビジネスインテリジェンス) | データ分析・経営判断支援 | データ統合・可視化、KPIレポート作成 | コスト構造の分析、改善進捗の定量把握、迅速な意思決定 |
このように、各ツールは対象業務に特化して設計されており、それぞれの領域での「見える化」を実現します。複数のツールを連携させることで、物流全体の最適化や経営へのフィードバックも可能になるため、部分最適にとどまらないシステム設計が求められます。
物流管理ツールの提供形態によって、導入コストや運用負荷、柔軟性が大きく異なります。
導入形態 | 特徴 | メリット | デメリット | 活用のポイント |
---|---|---|---|---|
オンプレミス型(自社設置型) | 自社サーバーで運用し、構築・保守を社内で実施 | ・高度なカスタマイズが可能 ・自社のセキュリティ要件に適合しやすい | ・初期投資が高額・運用・保守の負担が大きい | 高度な個別要件や既存システムとの密接な連携が必要な企業向け |
クラウド型 (SaaS型) | インターネット経由で利用する月額課金型のサービス | ・初期コストが低く導入が容易 ・運用・保守が不要でスピーディ | ・カスタマイズに制約があることも・ネット環境への依存 | スモールスタートや短期導入を検討する企業、将来的な拡張性を重視する企業に最適 |
BIツール連携 | 複数の物流システムからデータを集約・可視化 | ・複数拠点・部門の情報を横断的に分析可能 ・KPIレポートの自動生成が可能 | ・初期設計にデータ整備が必要 ・運用には一定のデータリテラシーが必要 | 全社的なコスト分析・業務改善をデータドリブンで推進したい企業に有効 |
このように、導入形態や分析基盤との連携は、コスト・拡張性・活用レベルに直結する要素です。
自社のIT環境や将来的なスケーラビリティも踏まえて、最適な構成を選ぶことが重要です。
近年の物流管理ツールでは、単なるデータ集計にとどまらず、分析・レポート機能を標準搭載する製品が主流となっています。これにより、担当者は複雑なコスト構造や業務パフォーマンスを、より直感的かつ多角的に把握できるようになっています。主な機能例は以下の通りです。
分類 | 主な機能 | 主な用途 | 活用メリット |
---|---|---|---|
ダッシュボード表示 | ・KPI(配送コスト、在庫回転率、積載率など)のリアルタイム表示 ・拠点別・チャネル別のグラフ ・指標化 | 日次・週次での業務進捗確認/部門別パフォーマンス可視化 | ・現場~経営層まで視覚的に共有可能・異常値や傾向の早期発見 |
比較分析機能 | ・過去データとの数値比較・拠点 ・期間別の差異分析 | コスト増減要因の特定/トレンド把握/改善効果の評価 | ・原因分析の精度向上 ・施策のPDCAをデータで回せる |
将来予測・シミュレーション | ・需要予測に基づくコスト予測 ・改善施策ごとの効果予測 | 設備投資や体制変更の判断材料/長期戦略立案 | ・投資判断の合理化 ・複数シナリオから最適解を選択できる |
こうした分析機能により、単なる記録のためのデータを、意思決定のためのデータへと変換できます。
実際、多くのクラウド型TMS・WMS・SCMツールでは、こうした機能が標準装備またはオプションで提供されており、BIツールと連携すればより高度な分析や経営層向けレポート出力も可能です。
導入の際は、単に「使いやすい」だけでなく、現場・管理・経営がそれぞれの視点で意思決定に活用できる分析レベルかどうかも、選定基準に含めるべきです。
物流コストの見える化ツールは多種多様であり、自社の現状や目的に最適なシステムを選ぶことが重要です。ここでは、ツール選定時に考慮すべき主なポイントを解説します。これらのポイントを踏まえることで、導入効果を最大化し、継続的な物流改善に繋げることができます。
物流コスト見える化ツールの導入において最も重要なのは、「何のために導入するのか」という目的と、それに見合った効果が得られるかどうかを明確にすることです。
単に「可視化できるから」といった漠然とした理由でツールを選んでしまうと、導入後に運用の目的が曖昧になり、十分な成果が得られないリスクがあります。まずは以下の視点で、自社の課題とニーズを整理します。
観点 | 確認すべき内容 | 例 |
---|---|---|
目的の明確化 | 何を「見える化」したいのか?→ 配送コスト?倉庫内作業?在庫回転? | 例:繁忙期の配車コストの偏りを可視化したい |
課題の特定 | 自社の物流におけるボトルネックはどこか? | 例:在庫滞留、運送費の地域差、出荷集中 |
必要な機能 | どのような分析・レポートが必要か? | 例:拠点別KPIの比較、コスト削減シミュレーション |
費用対効果(ROI) | ツール導入で得られるコスト削減額は、導入費・運用費に見合っているか? | 例:年間100万円の運送費削減に対し、導入費用が50万円なら導入価値あり |
見える化ツールは「導入すること」がゴールではなく、「改善に使いこなせること」がゴールです。そのためには、自社の目的に対して定量的な成果を期待できる機能を持つかどうか、導入後に活用できる現場体制があるかどうか、まで見据えて選定する必要があります。
物流コストの見える化ツールを選定する際は、現在の業務に合うだけでなく、将来的な業務拡張や他システムとの連携が可能かどうかも重要な検討ポイントです。導入後に「別のシステムと連携できない」「データが統合できない」といった問題が起きると、十分な効果が得られず、かえって非効率を招く恐れもあります。チェックすべき主な観点は、以下のとおりです。
観点 | 確認ポイント | 具体例 |
---|---|---|
拡張性 | 将来的な業務拡大や機能追加に対応できるか? | 新たな拠点追加、配車管理→在庫管理への範囲拡張 |
システム連携性 | 販売管理・基幹システム(ERP)・WMS・TMSとの連携可否 | API・CSV連携、クラウドERPとの双方向通信 |
データ統合のしやすさ | 複数の情報源を一元管理できるか? | 例:販売実績×配送実績を横断的に分析 |
API・データ仕様 | 出力形式や接続方式が汎用的か? | REST API、CSV/Excel出力、Web連携機能など |
これらの項目を事前に確認しておくことで、入力作業の省力化やデータの一元管理が実現し、より正確で迅速なコスト分析が可能になります。
特に中長期的に業務やシステム環境が変化していくことが想定される企業では、単体で完結するツールよりも、他システムと柔軟に連携できる設計かどうかが、導入後の継続活用に大きく影響します。
物流コストの見える化ツールは、導入して終わりではなく、「導入後にいかに使いこなせるか」が成果を左右します。そのため、ベンダーのサポート体制や過去の導入実績は、ツール選定における非常に重要な判断基準となります。主に確認すべきポイントとして以下のような観点が挙げられます。
観点 | チェック内容 | なぜ重要か |
---|---|---|
導入支援体制 | ・初期設定のサポートがあるか・操作説明会や研修があるか | 導入時の立ち上がりをスムーズに進めるため |
運用サポート | ・トラブル時の問い合わせ体制(電話/メール)・マニュアルやFAQの充実度 | 継続的にツールを使いこなすための支援が得られるか |
導入実績 | ・自社と同業種・同規模での導入事例があるか・過去に成功事例を多数持っているか | 業界特有の運用課題やニーズへの理解があるかを判断できる |
対応力 | ・カスタマイズ対応や改善提案の柔軟性・継続的なバージョンアップ | 長期的な利用とともに進化するシステムを維持できるか |
物流業務は企業ごとに運用フローや委託範囲が異なるため、自社に近い業種・業態での導入実績があるベンダーを選ぶことが安心材料になります。業界知見のあるベンダーであれば、想定されるボトルネックへの対処法や、効果的な活用ノウハウも持っているため、導入後の成果につながりやすい傾向があります。
また、サポートの有無は現場への定着率にも直結するため、導入前に具体的なサポート内容を確認し、「使えるようにする」まで伴走してくれる体制が整っているかを重視しましょう。
物流コストは、運賃、荷役費、保管費、包装費、物流管理費など、多くの要素から構成されます。これらのコストが複数の部門や外部業者にまたがって発生・管理されているため、全体像を正確に把握することが困難です。ここでは、物流コストが見えにくい理由を詳しく解説します。
物流コストが「見えにくい」と言われる最大の要因は、コスト項目の種類が多く、それぞれが複数の部門や委託先で個別に管理されていることにあります。
コスト項目 | 概要 | 担当部門の例 |
---|---|---|
運賃(輸送費) | 輸配送にかかる費用 | 営業部門、物流部門 |
荷役費 | 倉庫内での積み下ろし、ピッキング等の作業費 | 倉庫オペレーション/委託先 |
保管費 | 在庫保有にかかるスペース・設備・人件費 | ロジスティクス部門 |
包装費 | 出荷用梱包・ラベル・パレット等の資材費 | 生産・出荷部門 |
物流管理費 | WMS・配車管理・人件費・管理間接費など | 経理、情報システム部門 |
これらの費用は、しばしば異なる部門や外部業者で個別に処理・管理されており、統一された形式で集計されることはまれです。その結果、以下のような課題が発生します。
このような管理体制では、どこでコストが発生し、どこに無駄があるのかを正確に特定するのは難しく、結果として改善アクションが後手に回りやすくなります。
したがって、物流コストの見える化にはまず、分散された情報を統合し、全体構造を可視化できる仕組みの整備が不可欠です。
物流コストが見えにくくなるもう一つの大きな要因は、部門間の情報連携の弱さと、担当者に依存した属人的な管理体制です。
多くの企業では、以下のように営業・物流・経理・購買など、部門ごとに異なる指標・目的で物流に関わっており、統一されたルールやフォーマットで情報を管理していないケースが少なくありません。
課題 | 内容 | リスク |
---|---|---|
個別ファイル管理 | 各部門がExcelや紙帳票で独自にデータを管理 | データの二重入力や転記ミス、集計工数の増加 |
連携の不在 | 部門間で情報が共有されておらず、横断的な可視化ができない | コスト構造の断片化、意思決定の遅れ |
属人化 | 特定の担当者だけがコストの詳細や集計手法を把握している | 異動・退職時にノウハウ喪失、業務の停滞 |
このような状況では、「誰が」「どこで」「どんな基準で」コストを把握しているのかが不透明になり、改善どころか現状の正確な把握すら困難になります。
特に属人化が進んでいる場合、担当者がいないと「何にどれだけコストがかかっていたか」が再現できず、改善施策や投資判断においてリスクとなることもあります。
したがって、見える化の第一歩として、部門を横断して情報を一元化できる仕組みの整備と、業務の標準化・ナレッジ共有の仕組みづくりが不可欠です。
物流コストは、社内の業務プロセスだけでなく、外部環境の変化にも大きく左右される性質があります。特に近年は、市況変動や取引契約の複雑化が進み、正確なコスト把握をさらに困難にする要因となっています。以下では、市況変動によるコストへの影響をまとめてみました。
外部要因 | 内容 | 影響の例 |
---|---|---|
燃料価格の変動 | 原油価格の高騰により、輸送費が季節・月次で変動 | 燃料サーチャージの増減によるコスト変動 |
人件費の上昇 | ドライバー不足や最低賃金改定に伴う運賃上昇 | 長距離配送や夜間便で特に影響大 |
需要波動・繁忙期 | 年末商戦や連休前などに物量が集中 | 一時的な倉庫増員・車両手配コストの上昇 |
こうした外部要因は、社内ではコントロールが難しい一方で、コスト全体に与えるインパクトが大きいため、見える化の対象として不可欠です。市況データの変動と契約単価を紐づけて管理・分析できる仕組みがないと、「なぜコストが上がったのか」が分からないまま放置されるリスクもあります。
そのため、見える化ツールを導入する際には、動的に変化する要因を可視化・記録できる柔軟な設計があるかどうかを確認することが重要です。
物流コストの見える化は、単なる業務効率化のためだけでなく、経営全体にかかわる喫緊の課題として注目を集めています。とりわけ、人手不足や法改正による輸送制約、燃料費の高騰などによって、物流コストの上昇は避けられない状況にあります。
今、企業が持続的に利益を確保し、社会的責任やリスク管理にも対応するためには、物流コストの構造を定量的に把握し、根拠ある改善につなげる体制が不可欠です。
ここでは、見える化が求められる3つの背景を詳しく解説します。
2024年4月に施行された働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働が年間960時間に制限されました(いわゆる「2024年問題」)。この規制により、輸送能力の不足や人件費の高騰が一層深刻化し、多くの企業で輸送コストの上昇が避けられない状況となっています。
加えて、近年は燃料価格の高騰も物流コストを圧迫する大きな要因です。全日本トラック協会の試算によれば、燃料価格が1円上がるごとに、トラック業界全体で約150億円の負担が増加するとされています(下図参照)。
このような市況変動は、輸送事業者の経営だけでなく、荷主企業の調達・販売コストにも直接的な影響を及ぼします。このような背景を踏まえ、政府も燃料サーチャージ制度の告示などの制度整備を通じて、荷主との価格交渉を促進する環境が整えつつあります。
一方で、企業自らが物流コストの構造を可視化し、自社の実態を定量的に把握することがますます重要になっています。どのコストが、どの要因で、どの程度増加しているのかを明らかにすることで、燃料サーチャージ導入や価格交渉の根拠となるデータを持つことができます。
物流コストは、製造業・小売業・EC事業者など多くの業種において売上高に対する比率が高い費用項目です。そのため、物流コストの増減は営業利益率を大きく左右する重要な要因となります。
近年では、物流事業者からの値上げ要請が相次ぎ、2024年度の調査では、91.7%の企業が値上げ要請を受け、97.4%がそれに応じたと報告されています。また、売上高物流コスト比率の平均は5.45%と、過去20年で2番目に高い水準となっており、企業にとっては利益確保が一層難しい状況が続いています。
一方で、一部企業では売上高の伸びによって比率がやや下がったという調査結果もありますが、これは物流コストの改善によるものではなく、一時的な売上単価の上昇による影響とされています。つまり、根本的な利益体質を維持・強化していくためには、物流コストの構造そのものを見える化し、継続的な改善に取り組むことが不可欠です。
物流改善は、単なるコスト削減だけでなく、収益性向上の経営戦略として捉えるべき局面を迎えています。
出典:https://www1.logistics.or.jp/news/news-2084/
サステナビリティやリスクマネジメントの重要性が高まる中で、企業は財務指標だけでなく、ESG(環境・社会・ガバナンス)やBCP(事業継続計画)への対応も求められるようになっています。
物流領域では、温室効果ガス(GHG)排出量の削減やドライバーの労働環境改善が、ESGの観点から重視されています。これらの取り組みを適切に評価し、対外的に説明責任を果たすには、物流コストや輸送手段ごとのCO2排出量を正確に可視化する仕組みが必要不可欠です。たとえば「どのルートで・どの手段を使ったときに・どれだけの環境負荷があるか」を定量的に把握することで、脱炭素経営の推進やESG開示の質向上につながります。
また、自然災害・感染症流行・地政学リスクなどによってサプライチェーンが寸断されるリスクも高まっており、BCPの視点からも物流データの整備と分析は欠かせません。調達先や輸送ルートの依存度、代替手段の有無といった要素を定量的に把握することで、平時からリスク評価や迅速な意思決定が可能となります。
このように、物流データの可視化は、コスト削減や効率化のためだけではなく、企業の持続的成長と危機対応力を高める重要な基盤として機能します。
ここまで、物流コストを見える化することの重要性や、そのためのツール選びのポイント、そして現在の物流を取り巻く厳しい環境について解説しました。物流コストの正確な把握と分析は、競争力維持、利益率向上、そして持続可能な企業経営に不可欠な要素です。
2024年問題や燃料費の高騰といった外的要因に加え、企業価値の源泉が「非財務情報」に移行しつつある現在、物流を定量的に捉え、経営判断に活かす仕組みの整備は急務です。
可視化された物流コストは、単なる“費用”ではなく、経営の意思決定を支える戦略的な情報資産となります。
今こそ、自社の物流実態を正確に把握し、持続的な成長に向けた第一歩を踏み出すタイミングとなるでしょう。
企業間物流に詳しい!運行管理のプロ監修「運行管理ナビ」編集部です。