\当サイトおすすめNo.1運行管理システム/


2024年4月に施行された改善基準告示の改正は、拘束時間や休息期間の厳格化をもたらし、企業による適切な管理体制が一層求められるようになりました。
この記事では、労働基準法と改善基準告示の基礎知識を押さえた上で、企業が実務で注意すべき休日管理のポイントや未払い残業代リスクの具体的対策、さらには違法な休日労働問題への対応策までをわかりやすく解説します。
ここでは、トラック運転手の休日に関わる労働基準法と改善基準告示の概要を解説します。
労働基準法は、すべての労働者に対して、心身の疲労を回復し健康を維持するための最低限の権利として、一定の休日を与えることを企業に義務付けています。具体的には、以下のいずれかの方法で休日を確保する必要があります。
これらを法定休日と呼びます。法定休日に労働させた場合、企業は通常の賃金に加えて1.35倍(※深夜の場合は1.60倍)の割増賃金(休日手当)を支払う義務があります。
トラック運転手は長時間労働や拘束時間が長くなりがちであるため、法定休日や所定休日、そして年次有給休暇を適切に付与し、運用することが、労働環境の改善や未払い残業代リスクの防止に直結します。以下に法定休日・所定休日・年次有給休暇の意味合いを整理します。
休日の種類 | 概要 |
---|---|
法定休日 | 労働基準法で定められている休日 |
所定休日 | 就業規則や会社のカレンダーで定められた休日 |
年次有給休暇 | 勤続期間と出勤率に応じて労働者に付与される有給の休暇 |
未払い残業代が発生しやすい典型例としては、法定休日労働の未払いと運転業務に付随する時間の未払いが挙げられます。
また厚生労働省によると、トラック運転手は全産業平均と比べて年間労働時間が2割程度長い状況にあり、荷物の積み卸し作業にかかる時間は1運行あたり3時間程度といわれています。こうした状況も踏まえ、企業はトラック運転手の休日管理を徹底し、荷役に関わる時間を削減できるよう務める必要があります。
出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html
出典:https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/var/rev0/0119/7559/4.pdf
出典:https://hatarakikatasusume.mhlw.go.jp/truck.html
改善基準告示とは、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」のことです。
トラック、バス、ハイヤー・タクシー等の自動車運転者について、自動車運転業務の特殊性を踏まえ、より詳細かつ厳格な労務管理ルールとして、拘束時間の上限や休息期間の基準が設けられています。これにより、拘束時間の上限や連続運転時間の制限、休息期間の確保などがこれまで以上に厳密に求められるようになっています。
改善基準告示は法律ではなく厚生労働大臣によって定められた告示ですが、労働基準監督署の監督指導により違反が認められた場合は、調査や指導の対象となります。また、改善基準告示の違反が荷主の関与で発生している場合は、荷主勧告制度に基づいて荷主名と事案の概要が公表される場合があります。
出典:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice
以下の動画では、改善基準告示における罰則についてわかりやすくご確認いただけます。
2024年4月の改正では、トラック運転者の労働環境改善と安全運転確保を目的に、拘束時間・運転時間・休息期間の基準が厳格化されました。
基準 | 基準内容 | 補足条件 |
---|---|---|
拘束時間 | 1日原則13時間以内 | 延長しても15時間まで、 14時間を超える場合は週2回以内 |
連続運転時間 | 最大4時間以内 | 30分以上の休憩必須、分割可 |
休息期間 | 勤務終了後は次の勤務まで原則11時間以上 | 最低9時間まで短縮可 |
企業はこれらの基準を遵守しつつ、労務管理体制の見直しや運用の徹底を図る必要があります。
以下の記事では、2024年における改善基準告示改正後のトラック運転手の運転時間について詳しく解説しています。
改善基準告示には、トラック運転手の多様な勤務形態に対応するため、通常の労働時間規制とは異なる特例規定が設けられています。これらは運転者の健康と安全を守りつつ、現実的な業務運用を可能にするための重要なルールです。代表的な特例には以下のようなものがあります。
特例規定 | 内容 | 注意点 |
---|---|---|
2人乗務 | 身体を伸ばして休息できる設備がある場合、拘束時間を20時間まで延長し、休息期間を4時間まで短縮可。 車両内ベッド(長さ198cm以上、幅80cm以上)がある場合は拘束時間を24時間まで延長可能。(8時間以上の仮眠時は28時間まで) | 交代中の休息管理を厳格に行う必要がある ※設備条件を満たさない場合は適用不可 |
隔日勤務 | 拘束時間は21時間まで延長可能。 事業場内の仮眠施設等で夜間に4時間以上仮眠を与える場合は、2週間中3回まで、2暦日における拘束時間を24時間まで延長できる | 勤務終了後の休息算定方法を正確に適用する必要がある |
フェリー特例 | フェリー乗船時間は原則休息期間として取扱。乗船時間が8時間(2人乗務の場合は4時間、隔日勤務の場合は20時間)を超える場合はフェリー下船時刻から次の勤務開始 | 乗船時間により適用条件が異なる |
これらの特例規定は、現場の実態に即した労働時間管理を可能にしますが、誤用は労務トラブルや法令違反につながるリスクがあります。したがって、企業は特例の内容を正確に理解し、運用ルールを明確化したうえで、管理体制を整備することが重要です。
出典:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000306033.pdf
トラック運転手の業務中には、予期せぬ渋滞や交通事故、悪天候、車両トラブルなど、さまざまな突発事象が発生します。改善基準告示でも、こうしたやむを得ない場合には拘束時間や休息期間の延長が認められる特例が規定されています。
2024年4月の改善基準告示改正では、災害や事故等の通常予期し得ない事象に遭遇し運行が遅延した場合、その対応に要した時間を1日の拘束時間、運転時間(2日平均)及び連続運転時間から除外できる新たな規定が設けられました。
企業は以下の対応体制を整備し、運転者の安全と法令遵守を両立させる必要があります。
対応体制 | 内容 | 2024年改正での記録要件 |
---|---|---|
初動対応 | 安全確保を最優先とし、速やかに会社へ報告できる体制を整備 | 運転日報に対応場所・事由・時刻を記録 |
代替手段 | 輸送スケジュール調整や代替輸送手段を確保 | – |
マニュアル整備 | 緊急時の連絡ルート、警察・救急への連絡方法、休息延長の判断基準を明文化 | 客観的資料の収集・保存手順を追加 |
事後処理 | 基準超過時の事後届出、労使協定の見直し手順を事前に確認 | 修理明細書、交通情報、気象情報等の証拠保全 |
これらを徹底することで、予期し得ない事象に直面した際も、現場の安全と業務継続を確保できます。
ここでは、法律に基づくトラック運転手の休日管理のポイントについて解説します。
以下では、法定休日と改善基準告示の休日管理について、休日労働時の対応や目的、対象などの観点から違いをご確認いただけます。
観点 | 法定休日 | 改善基準告示 |
---|---|---|
法的根拠 | 労働基準法第35条 | 厚生労働省告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」 |
主な内容 | 週1日または4週間に4日以上の休日確保義務 | 拘束時間・休息期間・連続運転時間など労働時間の細かな基準設定 |
休日労働時の対応 | 割増賃金の支払いが必要 | 基準を超える勤務は原則不可 (やむを得ない場合の特例あり) |
目的 | 労働者の基本的権利を保障 | 長時間労働抑制と安全運転確保 |
対象 | 全ての労働者 | 自動車運転者(貨物・旅客など職種別に基準あり) |
特徴 | 休日の日数確保に焦点 | トラック運転手の勤務実態に即した時間管理ルール |
企業はこの二つの規定を混同することなく、それぞれの役割を理解したうえで、法定休日の確保と改善基準告示に沿った労働時間管理の両面で適切な休日管理体制を構築することが重要です。
特に、改善基準告示違反は労働基準監督署の指導対象となるため、両方の基準を満たした管理が必要です。
これにより、法令違反による罰則や未払い賃金請求リスクを回避し、運転手の健康と安全を守りつつ、安定した業務運営を実現できます。
トラック運転手の拘束時間と休息期間を適切に管理するためには、まず日々の勤務状況を正確かつ詳細に記録する仕組みを以下のように整えることが不可欠です。
実務上は「荷待ち時間」や「休憩とみなしてよいか不明確な待機時間」が拘束時間にカウントされず、基準を超えてしまうケースが多くあります。厚生労働省の調査でも、荷待ち・荷役時間の長さが拘束時間増加の主要因とされています。こうした曖昧な時間を正しく記録・区分することが、法令遵守の第一歩です。
手法 | 概要 |
---|---|
タイムカード | 始業・終業時刻を打刻し、勤務時間の基本データを記録する。紙式・IC式などがあり、労務管理の基礎資料となる。 |
タコグラフ(アナログ) | 車両の速度・走行距離・運転時間を円盤型チャート紙に記録する装置。運転状況を客観的に把握できる。 |
デジタコ(デジタルタコグラフ) | 運転時間、速度、急加速・急減速などをデジタルデータとして記録・保存できる装置。解析や監査が容易。 |
GPS位置情報システム | 車両の位置や移動履歴をリアルタイムで取得し、運行状況や待機時間を正確に把握できる。 |
こうした日々の記録を基に、改善基準告示で定められた拘束時間の上限や勤務終了後の最低休息期間(通常は9時間以上)が守られているかを定期的に確認・監査する体制を構築しましょう。もし違反があれば早期に発見し、速やかな是正措置をとることが労務リスクの軽減につながります。
これらの管理は単なる記録作業にとどまらず、運転手の健康状態や安全運転の維持に直結するため、現場の声を反映しながら柔軟かつ実効性のある運用を心がけることが求められます。以下の記事では運送業における労務管理の効率化に役立てられるシステムを紹介しています。
運転時間および連続運転時間のルールが遵守されない場合、疲労の蓄積により事故リスクが高まるだけでなく、労働基準法違反となり、企業には罰則や未払い残業代の支払い命令が科される可能性があります。
管理業務の負担を軽減できる仕組みを導入するだけでなく、運転記録の改ざんがないか、定められた基準を超過していないかを定期的にチェックすることが重要です。
実際の現場では、渋滞や納品スケジュールの都合で休憩タイミングを逃すことも少なくありません。
こうした状況を防ぐには、デジタコや運行管理システムを活用して休憩取得をアラート表示し、運行管理者がダブルチェックする仕組みが有効です。
もし問題が発見された際には速やかに原因を調査し、仕組み上から改善策を実施することで、事故防止と労務リスク軽減を実現できます。
休日労働と時間外労働は別枠で計算されるため、両方が発生した場合は重複計算が必要になるケースもあります。休日労働と時間外労働の割増率は以下のとおりです。
概要 | 割増率 | |
---|---|---|
法定休日労働 | 週1日または4週間に4日以上の法定休日に勤務した場合に発生 | 通常賃金の35%以上 |
所定休日労働 | 会社が独自に定めた休日(例:土曜休み)に勤務した場合。法定休日ではないため「時間外労働」として扱われる | 通常賃金の25%以上 |
時間外労働(※60時間超過分) | 週40時間(1ヶ月おおむね160時間)を超える時間外労働が月60時間を超えた場合 | 通常賃金の50%以上 |
重複割増 | 法定休日労働が深夜労働や60時間超過分と重なった場合、それぞれの割増率が加算される | 例:法定休日労働35%+深夜25%=60%以上 |
正確な休日手当の計算と適正な支払いは、労使トラブルの予防と信頼関係の維持に必要なため、正確な把握が求められます。
出典:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyoroudoukyoku/content/contents/000501860.pdf
年次有給休暇は、運転者の心身のリフレッシュと健康維持に直結し、生産性向上や離職率低下といった企業側のメリットも大きい制度です。
2019年4月以降は、年5日以上の時季指定取得が義務付けられています。運輸業・郵便業の年間休日総数は「108.3日」と全産業平均の「112.1日」より少ない状況にあります。有給休暇取得促進と管理のポイントは以下の通りです。
ポイント | 内容 |
---|---|
取得希望の把握 | 運転者ごとの希望日を確認し、 業務運営に支障が出ないよう事前に調整する |
シフト・業務調整 | 代替要員の確保や配送計画の見直しで 休暇を取りやすい環境を構築する |
取得状況のモニタリング | 定期的に取得率を確認し、 低い場合は声かけや改善策を実施する |
記録保存と計画的付与制度の活用 | 年次有給休暇管理簿を作成し3年間保存。 法定義務を満たしつつ、繁忙期と閑散期のバランスを取る |
年5日の有給休暇取得義務を守らない場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
出典:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000094019.pdf
こうした取り組みにより、法令遵守を果たしつつ運転者の健康とモチベーションを高め、安全運行と安定した人材定着を実現できます。
出典:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/newpage_00289.html
出典:https://jsite.mhlw.go.jp/gifu-roudoukyoku/content/contents/002209439.pdf
トラック運転手の勤務体系は大きく短距離・中距離・長距離に分かれ、以下のようにそれぞれの業務特性に応じた休日管理の工夫が必要です。
勤務体系 | 休日管理の主なポイント | 注意点 |
---|---|---|
短距離 | 法定休日・所定休日の確保が中心 | 配送回数が多く荷待ちや積卸し時間が長い場合、休息時間が圧迫される恐れがある |
中距離 | 拘束時間の上限・連続運転時間の遵守 | 日帰り可能な距離(平均500km)のため休日の予定が立てやすい渋滞や天候でスケジュールが乱れ、休日取得に影響する可能性があるため計画段階で調整が必要 |
長距離 | 拘束時間・連続運転時間の厳格管理、休息期間(原則11時間以上)の確保 | 片道300km以上で宿泊を伴うケースが多く、休日が不規則になりがち。フェリー利用や2人乗務など特例を活用し、突発的な事象にも対応できる柔軟な体制を整備する |
これらの管理を適切に行うことは、過重労働の防止、運転者の健康維持、安全運行、そして企業の法令遵守に直結します。
参考:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice
トラック業界では、長時間労働や特殊な勤務形態から、未払い残業代が発生しやすい状況が指摘されています。そのため、企業は未払い残業代リスクの実態を正確に把握し、適切な予防策を講じることが極めて重要となります。
ここでは、未払い残業代リスクの実態と具体的対策について解説します。
未払い残業代が発生しやすい典型例としては、法定休日労働の未払いと運転業務に付随する時間の未払いが挙げられます。それぞれの原因や注意点は以下のとおりです。
区分 | 概要 | 主な原因 | 注意点 |
---|---|---|---|
法定休日労働の未払い | 週1日または4週間に4日以上の法定休日に勤務しても、35%以上の割増賃金が支払われていないケース | 休日出勤手当の不支給、計算ミス | 割増率は労働基準法第37条で定められており、計算誤りは未払い賃金請求や行政指導の対象になる |
運転業務に付随する時間の未払い | 手待ち時間、車両点検・清掃、荷物の積み下ろし準備や後片付け、運行前後の事務作業などが労働時間としてカウントされていないケース | 記録漏れ、休憩時間との混同 | 判例・通達上、これらは労働時間に含まれる場合が多く、扱いを明確化し記録徹底が必要 |
企業は労働時間の定義と記録方法を徹底し、未払いリスクを事前に防ぐ体制を整える必要があります。
休日労働に対する賃金未払いは、企業に以下のような重大なリスクをもたらします。
リスク区分 | 概要 |
---|---|
行政処分・罰則 (労働基準法第120条) | 労働基準監督署からの行政指導や是正勧告を受け、改善が見られない場合は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性がある |
金銭的負担 | 未払い残業代は原則5年(当分の間は3年)に遡って請求可能。付加金(未払い賃金と同額)、年14.6%の遅延損害金、弁護士費用が追加で発生し、多額の一括支払いとなるリスクがある |
信用・事業リスク | 訴訟や報道によって企業イメージが低下し、取引先からの信頼を失い契約解除や取引縮小につながる恐れがある |
まず、未払いが判明すると労働基準監督署からの行政指導や是正勧告を受けることがあり、これにより、企業の社会的信用が失墜することも避けられません。
実際の事例
厚生労働省の「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果」によると、監督指導を実施した33,218事業場のうち、42.6%に当たる14,147事業場で違法な時間外労働が確認されています。また、「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和4年)」では、全国で約121億円の未払い賃金の是正が行われています。
以上のように、休日労働に伴う賃金未払いは、法的処罰だけでなく、経済的損失や社会的信用の低下といった多重のリスクを伴うため、企業は未然防止に全力を尽くす必要があります。
参考:https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/chingin-c_h25_05.pdf
未払い残業代リスクを予防するには、労働時間管理の正確化が不可欠です。
勤怠管理システムを導入し、タコグラフやGPSと連携させることで、運転時間・休憩時間・拘束時間・休息期間の遵守状況をリアルタイムで把握できます。これにより、法定労働時間の超過や休憩不足などの問題を早期に発見し、未払い残業代の発生を未然に防止できます。
なお、国土交通省では運送事業者に対してデジタル式運行記録計(デジタコ)の導入支援を実施しており、現在では7トン以上または4トン以上の積載量を持つトラックにタコグラフ装着が義務付けられています。
また、給与計算の正確性確保には、専門家による勤怠データの検証や計算方法の適正化が有効です。
トラック運転手自身が、労働基準法や改善基準告示で定められた労働時間・休憩時間・休日のルールを正しく理解することは、企業のコンプライアンス遵守の第一歩です。
教育方法 | 概要 |
---|---|
定期研修 | 対面形式で実施し、最新の法改正や 社内ルールを直接説明する |
説明会 | 全社員や特定部門を対象に、 休日・労働時間管理の重要性や具体的運用方法を共有 |
eラーニング | オンライン上で学習可能にし、 場所や時間を問わず受講できる環境を提供する |
小冊子配布 | 法規や社内ルール、勤怠記録方法をまとめた冊子を配布し、必要な時に参照できるようにする |
教育は意識向上だけでなく、労使間の信頼関係を強化し、労務トラブルの未然防止、事故防止、離職率低下にも寄与します。継続的な教育の実施は、労働時間管理の適正化と安全運行、未払い残業代リスクの低減につながります。
企業は、労働時間管理や休日設定の状況を定期的に評価・見直しする仕組みを整えることが重要です。
評価項目 | 改善方法 |
---|---|
拘束時間・運転時間の遵守状況 | タコグラフやGPSでの実績データを定期的に分析し、基準超過が多い場合は運行計画の見直しや人員増員を検討する |
休息期間の確保率 | スケジュール作成時に休息期間(原則11時間以上)を確保する仕組みを導入し、例外運用の頻度を減らす |
休日取得率 | 取得状況を毎月モニタリングし、低い部署には代替要員確保や計画的付与制度の導入で取得を促進する |
従業員アンケート結果 | 不満点や要望を分析し、勤務シフトや休憩場所の改善、安全設備の導入など現場ニーズに基づく施策を実施する |
新たな法令や規制の導入に対応するため、定期的な見直しは不可欠です。見直しの結果を踏まえて、労働条件の改善策を具体的に立案・実行し、柔軟に労務環境をアップデートしていく姿勢も求められます。
ここでは、企業が押さえておくべき違法な休日労働や休日管理問題への対応策について体系的に解説します。
違法な休日労働とは、労働基準法で定められた法定休日(週1日または4週間に4日以上)に労働させながら、適正な休日手当を支払わなかったり、労働時間の規制を超える勤務を強いる行為を指します。
トラック運転手の現場での具体例は以下の通りです。
具体例 | 概要 |
---|---|
法定休日や所定休日に勤務させながら割増賃金を支払っていない | 労働基準法第35条や第37条で定められた 35%以上の休日手当を支払わずに勤務させるケース |
2人乗務の特例が適用できない状況で基準を超過 | 改善基準告示で定める拘束時間・連続運転時間の上限を、 交替要員がいても満たせない状態で超えて勤務させるケース |
休息期間の確保が不十分で過労運転が続いている | 原則11時間以上(最低9時間)必要な休息時間を確保せずに連続勤務させ、 疲労蓄積や安全性低下を招くケース |
休日出勤の回数制限違反 | トラック運転手の休日出勤は2週間に1回までと定められているが、 これを超えて勤務させるケース |
荷待ち時間を労働時間に算入していない | 平均1時間34分発生する荷待ち時間を休憩時間として扱い、 労働時間にカウントしていないケース |
上記の違法行為は、企業の労務管理上の重大な問題となり得ます。発見のためには、以下の方法が有効です。
これらの情報を総合的に分析し、記録と実態に乖離がないかを確認することが、違法な休日労働の早期発見につながります。
違法な休日労働や休日管理の問題を早期に発見・解決するためには、従業員が安心して相談できる環境づくりが不可欠です。公益通報者保護法に基づき、匿名で利用可能な内部通報制度や、第三者窓口を設置することが望まれます。
相談や通報があった場合は、迅速に一次対応を行い、速やかに事実関係の調査を開始します。調査ではタコグラフ等の記録確認や関係者ヒアリングを行い、以下のように問題の有無と原因を特定します。
調査内容 | 概要 |
---|---|
タコグラフ・デジタコ記録の確認 | 運転時間・拘束時間・休憩時間・休息期間の実績を基準値と照合し、超過や不足がないかを確認する |
勤務表・運行指示書の照合 | 記録と実際の勤務実態に乖離がないかを確認し、休日労働や時間外労働の有無を特定する |
関係者ヒアリング | 運転手本人や運行管理者、配車担当者などから事実経過や勤務状況について聞き取りを行う |
映像・記録機器の確認 | ドライブレコーダーやGPSのデータから、長時間運転や休息不足の兆候を把握する |
また、対応の透明性を保つために、関係者へ調査結果や対応内容を適切に説明し、説明責任を果たすことで信頼回復につなげます。
このような相談窓口と初期対応の仕組みは、労務トラブルの早期解決だけでなく、企業全体のコンプライアンス強化と職場環境の改善にも寄与します。
社内での問題解決が困難な場合や、より強力な是正措置が必要な場合には、労働基準監督署への相談や申告が有効な手段となります。
申告の手段は、最寄りの監督署への電話・窓口訪問のほか、インターネット経由(電子申告)も利用可能です。申告時に用意しておくとスムーズな書類は以下の通りです。
必要書類 | 用途・概要 |
---|---|
就業規則 | 労働条件や勤務ルールの基本を示す社内規定で、労働環境や勤務体系の法令適合性を確認するために使用される |
賃金台帳 | 従業員ごとの賃金支払い状況を記録した帳簿で、賃金計算の正確性や割増賃金支払いの有無を証明する |
タイムカード・勤怠記録 | 出退勤時刻や労働時間を客観的に示す証拠で、労働時間や休日労働の実態把握に活用される |
労働契約書・雇用条件通知書 | 個々の従業員との雇用契約内容や労働条件を明記した書類で、契約上の勤務条件と実態の比較・確認に使用される |
申告後、監督署は事実関係を調査し、違反が確認されれば改善指導や勧告、命令、罰則が科される場合があります。改善が見られない場合には刑事告発に至ることもあります。
企業としては、監督署から調査通知を受けた時点で速やかに社内調査と書類整備を行い、誠実に対応することが重要です。これにより、指導後の改善スピードを高め、信頼回復にもつながります。
未払い残業代請求や休日労働をめぐる紛争が予想される場合、訴訟になる前の段階で労働問題に詳しい弁護士へ相談することは、リスクを最小限に抑え、円滑な解決を図るうえで極めて有効です。
相談時には、就業規則・勤怠記録・賃金台帳・労働契約書などの関連資料を準備しておくと、状況把握が迅速に進みます。また、顧問契約やスポット相談契約など、自社に適した連携形態を事前に決めておくことで、緊急時にも即応できます。
トラック運転手の休日労働・労働時間管理は、労働基準法や改善基準告示といった厳格な法的枠組みの下で行う必要があります。企業は、まずこれらの法的規制を正確に理解し、自社の勤務体系や運行実態に即した適切な管理体制を構築することが不可欠です。
取組みを総合的かつ継続的に実施することで、企業はコンプライアンスを遵守しつつ、ドライバーの安全・健康を守り、健全な職場環境の維持と持続的な企業成長を両立させることができるでしょう。
10年にわたる物流会社での事務経験を持ち、現場実務に精通。2024年に貨物運行管理者資格を取得し、法令遵守と実務の両面から運行管理を支援しています。