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トラック輸送にいま求められるのは、脱炭素と効率化を同時に進め、コスト最適化と企業価値向上を両立させる実装力です。
この記事では、トラック輸送における環境問題の現状を整理し、排出の主要因と課題を整理します。
業界のビジョンや国の政策動向を踏まえつつ、車両・燃料技術の革新、運行効率の向上、共同配送やモーダルシフト、カーボン・オフセットまで、実務で使える具体策も解説します。
ここからは、トラック輸送と環境問題の関係性、そして業界・国が掲げる削減目標について順に解説します。
日本のCO₂総排出量に占める運輸部門の割合は約19%にのぼり、その中でも自動車が約86%を占めています。とりわけ営業用貨物車と自家用貨物車を合わせた貨物自動車は運輸部門全体の38.3%、日本全体でも約7%を占めており、主要な排出源となっています。
さらに、輸送量当たりのCO₂排出量(旅客)と比較するとその差は一層明確であり、他の輸送方式と比較するとトラック輸送のCO₂排出量が多い傾向にあります。
また、環境省による2022年度のデータによると、運輸部門のCO2排出量は1億9,200万トンで、このうち貨物自動車は7,290万トン、自家用自動車は8,610万トンとなっています。
これは2013年度比で14.5%減少していますが、2021年度比では3.9%増加しており、新型コロナウイルス感染症の影響からの経済活動再開による輸送量回復が主な要因となっています。
そのため、脱炭素社会を実現する上でトラック輸送は優先的に改善が求められる分野の一つと位置付けられています。
参考:https://www.env.go.jp/content/000234564.pdf
トラック輸送は、2021年時点で国内貨物輸送のトンキロベースで約5割、重量ベースで約86%を占めており、短距離から長距離まで幅広い輸送ニーズに柔軟に対応できる点から、日本の物流を支える主役となっています。
一方で、環境負荷の観点では大きな課題があり、運輸部門では行動制限の緩和等により旅客輸送量が回復し排出量は720万トン(3.9%)増加しています。運輸部門からのエネルギー起源CO2排出量は約6割が旅客輸送、約4割が貨物輸送に起因しており、自家用自動車・貨物自動車に起因する排出量が全体の8割以上を占めています。
つまり、国内物流の中心であるトラック輸送は、経済活動に不可欠であると同時に、環境問題の解決において避けて通れない領域と位置づけられます。
参考:https://www.env.go.jp/content/000234474.pdf
全日本トラック協会が策定した「環境ビジョン2030」のビジョンの中心にあるのは、CO₂排出原単位を2005年度比で31%削減することがメイン目標です。これは単なる努力目標ではなく、2050年のカーボンニュートラルを目指し2030年を目標年とする業界全体の必達課題と位置づけられています。
サブ目標として「車両総重量8トン以下のトラックにおける電動車保有台数率を2030年までに10%に引き上げる」「各事業者が自社のCO₂排出量や原単位を把握する仕組みを構築する」など、企業が取り組むべき具体的な行動指針が掲げられています。ただし、2022年度の電動車保有割合は全国平均で2.69%にとどまっており 、目標達成には大幅な加速が必要な状況です。
出典:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/kankyo/kankyo_vision2030.pdf
日本政府は2020年10月、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言しました。「排出を全体としてゼロ」というのは、温室効果ガス(CO₂を含む)の排出量と吸収量を実質ゼロにするという目標を掲げています。これは、植林や森林管理などの吸収手段によって排出量を相殺し、社会・経済活動のすべてを含めた「人為的な実質排出ゼロ」を目指すものです。
パリ協定に基づく「世界の平均気温上昇を2℃未満、可能なら1.5℃に抑える」ための国際的枠組みとも整合しています。トラック輸送に関わる影響として、以下が挙げられます。
観点 | 内容 | 企業に求められる対応 |
---|---|---|
法規制の方向性 | 中長期的に排出量を「ゼロ」に近づける政策が進展 ※運輸部門は2030年度までに2013年度比35%削減目標 | 燃料転換、次世代車両導入、 排出量削減計画の策定 |
排出削減と吸収支援 | 削減努力に加え、森林保全や排出権購入などオフセット活用も必要 | 自社削減と並行し、 外部プロジェクトへの参画を検討 |
戦略的メリット | ESG評価向上、補助金・行政支援、取引先・消費者からの信頼獲得 | 環境対応を投資と捉え、 ブランド価値や資金調達に活かす |
カーボンニュートラル2050は、脱炭素社会を見据えた国家目標として、業界・企業にとっての指針であるとともに、地球的規模の気候リスクに備えるための行動を促す枠組みです。
出典:https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/
出典:https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r03/hakusho/r04/html/n1212000.html
トラック輸送における環境負荷を軽減に、燃料効率の改善や次世代車両の導入といった技術的な進歩に加え、AIを活用した配車効率化や共同配送などの仕組み改革も効果を発揮します。
ここでは、企業がトラック輸送のCO₂削減に実践できる代表的な具体策を紹介します。
燃料効率の改善は初期投資が比較的少なく、日々の運行管理に直結するため、中小零細企業の多いトラック運送業者において幅広い事業者にとって実践的な選択肢となります。
施策 | 内容 | 期待される効果 |
---|---|---|
低燃費タイヤの導入 | 転がり抵抗を抑える設計のタイヤを採用し、安全性を確保しつつ燃料消費を削減 | CO₂排出削減と燃料費の同時削減 |
エコドライブ | 急発進・急加速の抑制、適切なシフト操作、車間距離の維持を教育で定着 | 燃費改善率が1割程度向上 |
アイドリングストップの励行 | 荷待ちや停車中にエンジンを停止し、無駄な燃料消費を削減 | 都市部や港湾での待機時間に効果大 |
以下の動画では、川崎市環境局によるトラック向けエコドライブ講習会の内容をご確認いただけます。ドライバーの協力が必要ではあるものの、実質的に導入費用をかけずに燃料効率の改善を図ることができます。
参考:https://www.env.go.jp/content/000173734.pdf
従来型ディーゼル車への依存を続ける限り、CO₂削減には限界があるため、車両・燃料の転換に注目が集まっています。具体的には以下のような施策が挙げられます。
施策 | 内容 | 特徴 |
---|---|---|
EV・FCVトラックの普及 | 電気自動車(EV)や水素燃料電池車(FCV)の導入により、走行時の排出ガスをゼロ化 | 都市部や物流拠点の環境負荷を低減。EV:短距離配送に適正FCV:長距離輸送に適正 |
低燃費ディーゼル車の改良 | エンジン効率の向上や排ガス処理技術の進化 | CO₂削減と燃費改善を同時に実現。過渡期の選択肢として有効 |
カーボンニュートラル燃料の活用 | バイオ燃料・合成燃料を既存車両で利用 | 導入コストを抑えつつ脱炭素を推進。航空・海運で実証済み、トラック輸送でも期待大 |
なかでも水素を動力源とする燃料電池トラックは、走行時にCO₂を排出せず、水蒸気のみを排出するゼロエミッション車として注目されています。
車両メーカーと荷主企業、自治体等が協働し、小型商用車ではコンビニ配送等の近距離輸送を、大型商用車では長距離の幹線輸送をそれぞれ想定し、供給インフラとともに実証試験を実施しています。導入拡大が期待される背景には、優れた静粛性と加速性能が評価されている点も挙げられます。
ただし、実用化には課題もあります。現在の水素トラックの価格はディーゼルトラックのほぼ2倍で、水素ステーションの整備費は補助上限4.5億円+2億円(大規模2レーンの場合)とされており、一般の運送事業者までの普及は、まだ長い道のりです。中小零細事業者の多いトラック運送業界では、政府や業界団体による支援制度の活用が重要となります。
参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/mobility_hydrogen/pdf/001_04_00.pdf
参考:https://www.env.go.jp/content/000173734.pdf
参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/hyouka/content/001913312.pdf
参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/mobility_hydrogen/pdf/007_03_00.pdf
AIやデータを活用した配車システムの導入や、企業間での共同配送・物流拠点の共有は、無駄な走行距離や空荷走行を減らし、CO₂排出削減に直結します。トラック運送業界の「脱炭素社会への移行」のためには、共同配送、車両の大型化、モーダルシフト、再配達削減など、発荷主、着荷主、消費者をも巻き込んだ総合的な「物流の効率化」の取り組みも不可欠とされています。
取り組み | 内容 | 効果 |
---|---|---|
AI配車 | 車両稼働状況や交通情報をもとに最適ルートを自動算出 | 空荷走行削減、燃料効率改善 |
共同配送 | 複数企業で配送ルートを共有 | 積載率向上、走行距離短縮 |
物流拠点集約 | 倉庫・拠点を集約し一元管理 | 車両台数削減、待機時間短縮 |
積載率改善 | 空きスペースの有効活用 | 燃料消費抑制、輸送効率向上 |
AI配車は配車業務の属人化を脱却する手段としても有効であり、ベテラン人材の退職よって業務が滞るリスクを低減し、人材の定着率の向上まで期待できます。以下の記事ではAI配車機能が搭載されたシステムを機能ごとに比較し、詳しく解説しています。
トラック輸送において、港湾や物流拠点での荷待ちや都市部での交通渋滞は、無駄な燃料消費とCO₂排出を増大させる大きな要因です。トラックドライバーの長時間労働の主な要因としては、長時間の運転時間、荷待ち時間、荷役作業等が挙げられており、環境負荷だけでなく労働環境の改善も重要な課題となっています。また輸送コスト増にも直結します。
取り組み | 内容 | 効果 |
---|---|---|
予約受付システム | 荷役時間を事前調整し、荷待ちを分散 | アイドリング削減、CO₂排出抑制 |
ルート最適化 | 渋滞情報や交通状況を踏まえた効率的経路選択 | 走行時間短縮、燃料費削減 |
動態管理との連携 | 車両位置をリアルタイムで把握 | 配送精度向上、業務効率化 |
上記のような待機や渋滞を削減する取り組みは、環境負荷低減と輸送効率化を両立させるだけでなく、ドライバーの労働時間改善や顧客満足度向上まで網羅的に対応します。これらを一元的に実現するには、運送業向け基幹システムの導入が効果的です。自社に最適な基幹システムの選び方については、以下の記事をご参照ください。
石川県の浜庄運輸は、従来使用していたディーゼルトラックを更新する形で8トン未満のEVトラックを導入しました。国の「環境配慮型先進トラック導入事業」に基づく補助金(約733万円、掛かり増し経費の2/3補助)を活用しています。
導入の結果、年間CO₂排出量は事業実施前の9tから6tへと約3割削減され、約3t-CO₂の削減効果が確認されました。さらに、軽油から電力への切り替えにより、エネルギーコストも年間約26万円の削減を実現しています。
また、石川県で初めてのEVトラック導入であったことから、企業の環境対応力が広く認知され、ブランド価値の向上にも寄与しました。
神戸モーダルシフト推進協議会、ネスレ日本、全国通運、日本貨物鉄道は、2012年から鉄道・内航海運・トラックを組み合わせた総合的なモーダルシフトを推進しています。輸送距離に応じた最適な輸送モードを選定し、年間CO₂排出削減量は約2,464トン、削減率にして87.1%という大幅な成果を達成しています。
さらに、パレタイズ運用の標準化により積み下ろし作業の効率化を進め、ドライバーの業務負荷を大幅に軽減しました。モーダルシフトについては以下の記事で詳しく解説しています。
ヤマト運輸、西濃運輸、日本通運、日本郵便の4社は、関東〜関西間を結ぶ宅配貨物の幹線輸送において、25m級ダブル連結トラックを活用した共同輸送を実施しました。これにより、各社が個別に行っていた長距離幹線輸送を効率化しています。
導入の結果、通常の12m大型トラックに比べて21m超車両では、同じ輸送量を運ぶ際に必要なドライバー数を約5割削減でき、さらに、燃料消費量とCO₂排出量は約4割削減され、物流効率化と環境対応を同時に達成しています。
2023年5月17日より、アサヒグループジャパン、西濃運輸、NEXT Logistics Japan、ヤマト運輸の4社が、日本初となる燃料電池大型トラックの走行実証を開始しました。国内商用車全体のCO2排出量の約7割を占める大型トラック領域におけるCO2排出削減を目指したもので、トヨタ自動車と日野自動車が共同開発した車両を使用しています。
トラック輸送における環境負荷を定量的に把握するためには、CO₂排出量を正確に算定することが重要です。ここでは、トラックのCO₂排出量計算方法について紹介します。
トラックのCO₂排出量は、燃料の使用状況や走行距離、輸送量に基づいて算定できます。主な方式には「燃料法(標準式)」「燃費法(準標準式)」「改良トンキロ法」があり、利用できるデータの種類に応じて選択されます。以下で代表的な算定式を紹介します。
燃料法(標準式) | 燃費法(準標準式) | 改良トンキロ法 | |
---|---|---|---|
算定式の概要 | 燃料使用量 × 燃料ごとのCO₂排出係数 | 走行距離 ÷ 燃費(km/L) × 燃料のCO₂排出係数 | 輸送量(トン) × 走行距離(km) × 排出原単位 |
主に必要なデータ | 燃料消費量、燃料種類(軽油、ガソリン等)、排出係数 | 走行距離、車両燃費、燃料種類と排出係数 | 輸送量、走行距離、排出原単位 |
適した状況 | 燃料データが正確に取れる場合。最も精度が高い | 燃料消費量のデータ取得が難しい場合 | 輸送量と距離の把握が中心となる場合。概算に便利 |
このような算定式を使うことで、トラック運送会社は自社におけるCO₂排出量を数値で把握でき、削減施策の効果を比較・評価できるようになります。
加えて、国土交通省が示す「貨物自動車輸送事業者におけるCO₂排出量算定方法」(改良トンキロ法等)は、業界標準として幅広く用いられています。この指針に基づくことで、事業間の比較や環境報告書への活用も可能となります。
出典:https://www.logistics.or.jp/green/report/pdf/06perform_2.pdf
参考:https://www.mlit.go.jp/pri/shiryou/press/pdf/shiryou110530_1-2.pdf
1kmあたりのCO₂排出量 = CO₂排出総量 ÷ 走行距離
上記の算定式で、トラックにおける1kmあたりのCO₂排出量を求めることが可能です。燃料使用量や走行距離などの実績データを組み合わせれば、自社の排出量を定量的に評価し、改善ポイントを特定することが可能です。
また、国土交通省の2023年度の試算では、営業用貨物車のCO₂ の排出量は「1トンの貨物を1km輸送する際に約 207g-CO₂ 」とされています。そのため、CO₂排出総量が不明な場合でも、この原単位を目安として推計することが可能です。
たとえば、営業用貨物車で1トンの貨物を150km輸送した場合、約31,000g(=31kg-CO₂) の排出量となります。このように距離と重量を掛け合わせることで、排出量のイメージを具体的に把握できます。
参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/modalshift.html
全日本トラック協会(JTA)では、事業者が自社の排出状況を簡便に算定できるよう「CO₂排出量計算ツール」を提供しており、燃料消費量や走行距離といった日常業務のデータを入力するだけで、営業用貨物車におけるCO₂排出量を自動で算出できます。各事業者が自社の車両のCO2排出総量またはCO2排出原単位を把握することを目指す業界の取り組みの一環として提供されています。
算定結果は、環境報告や顧客への説明資料、または社内の改善活動に活用できるため、企業の環境マネジメントを強化する有効な手段となります。
CO2排出量削減は、規制対応だけでなく、燃料コスト削減や企業価値向上に直結します。
技術革新、共同配送、モーダルシフトといった具体的な施策を計画的に導入し、環境問題への対応を進めることで、持続可能な物流システムを構築し、競争優位性を確立できるでしょう。
10年にわたる物流会社での事務経験を持ち、現場実務に精通。2024年に貨物運行管理者資格を取得し、法令遵守と実務の両面から運行管理を支援しています。