MENU
物流の運行管理システムは?比較ポイント、無料を含むおすすめ15選

物流業界のAI活用とは?メリット・デメリットと企業の導入事例

ドライバー不足や2024年問題を背景に、物流現場ではAI活用が急速に進んでいます。配車最適化や倉庫ロボット、生成AIによる需要予測などにより、省人化と精度向上を同時に実現しています。

この記事では、物流AIとは何かを整理し、メリット・デメリットや用途別の導入事例、主要企業の動向などを解説します。

目次

1.物流AIとは?導入前に整理すべき基本構造

物流AIとは、物流分野におけるさまざまな業務プロセスに人工知能(AI)を組み込み、効率化・自動化・最適化を実現する技術を指します。

ここでは、物流AIの種類と仕組みを整理した上で、物流の基本構造と課題を明確化し、AIがそれらのどこに効果を発揮するのかを体系的に解説します。

(1)物流AIの種類と仕組み

物流AIとは、物流業務の中に人工知能(AI)技術を取り入れ、判断・制御・予測といった人の作業を代替・補助する仕組みを指します。

実際、国土交通省の「総合物流施策大綱(2021-2025年度)」では、物流DXの推進が重点施策として位置づけられており、AI・IoT等の先進技術の導入による生産性向上が国家戦略として掲げられています。

ただし、その役割や得意分野はさまざまで、現場では複数の技術を組み合わせて運用されます。

代表的なAIの種類を以下にまとめます。

種類主な目的・役割活用シーン
機械学習膨大なデータから傾向を学び、最適な判断や予測を行う配車計画、需要予測、在庫最適化、運賃設定
画像認識AIカメラ映像や画像から物体を識別し、自動動作を制御ピッキング・仕分け・検品・デバンニング作業
自然言語処理テキストや音声を理解し、指示や問い合わせに対応顧客対応、輸送指示、問い合わせチャットボット
生成AIデータや指示文から新しい文章や提案を生成報告書・配送計画書・マニュアル自動作成
ロボティクスAIロボットにAIを組み込み、自律動作・制御を実現自動倉庫・搬送ロボット・自律フォークリフト
強化学習AI試行錯誤を通じて最も効率的な行動を学習ルート最適化、倉庫レイアウト改善、配達経路計算

このように物流AIは、データをもとに考えるAIと、現場で動作する制御AIの2系統を中心に発展しています。

前者は需要予測や配車最適化など判断領域で活用され、後者はロボットや自動倉庫を支える制御技術として機能します。
さらに近年では、生成AIが登場し、事務作業や意思決定支援といった知的領域にもAI活用が広がりつつあります。

(2)物流AIが補う領域と効果の全体像

物流業務は「輸送・保管・荷役・包装・情報管理」という5大機能で構成されています。これらの各領域にAIを導入することで、従来の人手依存型プロセスからデータ駆動型の最適化プロセスへと転換し始めています。

物流機能主なAI活用領域期待できる効果
輸送配車最適化、ルート計算、動態管理AI積載率向上・燃費削減・遅延事前予測と代替ルート提案
保管自動倉庫、在庫ロボット、在庫予測AI棚卸作業の自動化・在庫過不足の削減
荷役ピッキングロボット、デバンニングAI労働負担の軽減・作業スピードと安全性の両立
包装画像認識による異常検知・サイズ判定AI梱包ミス防止・資材コストの削減
情報管理生成AIによるレポート作成・チャット応対事務工数削減・日報・配送レポートの自動作成による意思決定支援

このようにAIは、需要変動や交通状況、作業進捗などをリアルタイムで判断・最適化し、現場での俗人的な経験則を補完する役割を担い始めています。

AIを導入することで、現場の効率化だけでなく、経営レベルでの在庫最適化・コスト削減・リードタイム短縮といった成果を生み出すことが可能になります。

(3)物流のAI活用は物流業界における課題にどう役立つのか?

AIは物流の5大機能(輸送・保管・荷役・包装・情報管理)に横断的に関与し、従来の人手では難しかった業務の最適化を実現します。物流業界の主要課題とAIによる解決アプローチは、以下のとおりです。

区分主な課題AIの活用による解決策
輸送ドライバー不足や非効率な配車・ルート計画AIが渋滞・積載率・走行距離を自動分析し、最短ルートや最適な配車計画を提示
保管在庫過多・欠品・棚卸作業の属人化需要予測AIや在庫管理AIがリアルタイムで出荷・補充データを分析し、過剰在庫や欠品を未然に防止
荷役高齢化による労働力不足・事故リスクロボティクスAIや画像認識AIがピッキング・仕分け・デバンニング作業を自動化
包装梱包資材コスト上昇・出荷ミス画像認識AIが商品サイズを自動判定し、最適な梱包サイズを提案
情報管理システム分断・データ共有の遅延生成AIが在庫や配送データを整理し、報告書や分析レポートを自動生成

AIの導入により、これまで現場依存だった判断や作業がデータドリブン化し、属人的なノウハウに頼らずとも安定的に業務を遂行できるようになります。
たとえば、輸送や倉庫業務では、AIがリアルタイムデータをもとに「次にすべき行動」を提案することで、従来の経験則に頼った判断から、データに基づく予測型の判断移行し始めています。

物流業界においてAIは、人手不足や業務負荷の増大といった構造的課題に対応するための、実用的な選択肢として広がり始めています。

2.物流AIの導入に関するメリット・デメリット

ここでは、物流AIの導入に関するメリットとデメリットを解説します。

(1)メリットは省人化・誤出荷削減・業務スピード向上

AIを導入する最大のメリットは、人手に依存していた物流業務を自動化・最適化することで、これまで難しかった省人化と効率化を同時に実現できることです。
人材不足が深刻な倉庫・輸配送領域では、AIが現場の判断や作業を代替することで、以下のような効果が期待できます。主な効果は、次の3点に整理できます。

省人化・人件費削減配車計画、倉庫内作業、検品などをAIが自動処理・支援
誤出荷・ミスの削減画像認識AIやセンサーにより検品精度を向上
業務スピード・処理能力の向上データ処理や意思決定をリアルタイムで最適化

たとえば、生成AIを活用すれば、在庫データや輸送実績を自動でレポート化でき、管理職が即座に改善策を検討できる環境が整います。

このように物流AIは、現場の作業負担を軽減するだけではなく、経営判断に必要なデータを迅速に提供することで、企業全体の生産性向上に貢献し始めています。

(2)デメリットは初期投資・データ整備・現場浸透の難しさ

物流AIの導入には大きな効果が期待できる一方で、初期費用の負担・データ環境の未整備・現場定着の難しさといった課題も存在します。これらを十分に理解し、段階的に導入を進めることが課題解決につながります。

物流AI導入の主なデメリットと課題を以下にまとめました。

初期投資・運用コストが高いAIシステムの導入、センサー・カメラ設置、ネットワーク整備などに規模によって数百万~数千万円の初期投資が必要
データ整備・システム連携の負担AIの学習には正確なデータが必要だが、紙やExcelでの管理が多い現場では整備に時間がかかる
現場への浸透と人材教育が難しい作業員がAIの操作や分析結果を活用できないと、導入効果が限定的になる

現場と管理部門の間で「誰がデータを扱い、どのように結果を評価するか」が曖昧なままだと、システムが形骸化してしまうケースも少なくありません。

そのため、運用当初は小規模な業務単位でAIを試験導入し、効果を数値化しながら段階的に拡大するのが有効です。

コスト・運用・人材の3つの課題を段階的にクリアしていくことで、AI導入の効果を最大化し、長期的な競争力強化につなげることができます。

3.物流AIの代表的な導入事例

(1)倉庫内のピッキング作業の効率化

引用:https://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2010s/2016/04/pdf/2016_04_05.pdf

日立製作所では、AI技術「Hitachi AI Technology/H」を活用し、倉庫内のピッキング作業を自動的に最適化しています。

過去の作業データをAIが分析し、最も効率的な動線や作業指示を導き出すことで、作業時間を平均8%短縮しました。現場の経験とAI分析を組み合わせることで、人とAIが協働する新しい倉庫運営モデルを実証しています。

(2)タンクローリーの配車計画の効率化

出光興産とアクセンチュアは、70名の配車担当者が手作業で立案していたプランを、AI+最適化モデルによって自動化し、配車計画の作成時間を25%削減しました。

過去10年分の販売データなどを基に需要予測モデルを作成し、タンクローリーの稼働時間・積載量・納入時間など複数条件を最適なルートと積載組み合わせを算出しています。

この取り組みにより、配車作成にかかる工数短縮だけでなく、熟練度に依存しない高品質な配車プランの量産性も達成可能になっています。

(3)購買物流AI活用によるコスト最適化

AIとデータ分析を活用した物流統合管理システムは、各拠点で個別に管理されていた在庫・人員・庫内作業データを共通基盤に統合し、最適な人員配置や在庫配置をAIが自動提案することで、倉庫運営の無駄を大幅に削減しています。

結果として、在庫回転率の向上やコスト削減に加え、サプライチェーン全体の生産性向上を実現しています。

(4)デバン作業の自動化

AIによる画像認識技術を活用した荷役支援システムは、スマートフォンやタブレットで撮影した商品の画像をAIが自動解析し、検品・仕分け・荷下ろしの際に発生する目視確認作業を自動化します。

従来は人手に頼っていたデバン作業において、製品の識別や異常検知を即時に行えるようになり、導入現場では、検品作業時間を約30%短縮し、作業員の負担軽減とトラックの荷待ち時間削減にもつながっています。

(5)AI需要予測システムによる在庫管理の効率化

アスクルは、物流センター間の商品移動や補充管理を自動化するAI需要予測システム「ASKUL AI Demand Forecast」を導入しました。

このシステムは、過去の販売データや季節変動などを分析し、各物流センターの最適な在庫量を自動算出します。導入の結果、手作業による業務が約75%削減され、入出荷作業の工数は約30%、フォークリフト作業も約15%削減されました。

在庫の適正配置により、欠品リスクの低減と保管スペースの効率化を同時に実現し、物流センター全体の生産性向上につながっています。

(6)フォークリフトAI判定システムによる安全性向上

サントリーロジスティクスと富士通は、フォークリフトの運転状況をAIで監視・判定するシステムを導入しました。

従来、約200台のフォークリフトに設置されたドライブレコーダーの記録内容を目視で確認していましたが、年間500時間を要するだけでなく、評価者の疲労による見落としや基準のばらつきが課題でした。

AIによる映像解析を導入することで、「一旦停止」「ながら禁止」「静止確認」といった重要な安全操作を自動検知し、危険操作シーンのみをハイライト表示。評価工数を50%削減するとともに、客観的なデータに基づく安全指導が可能になりました。

4.AI物流を推進する主要企業と技術動向

(1)Amazon|ロボット導入と生成AI「DeepFleet」による次世代物流モデル

Amazonは、世界全体で100万台を超えるロボットを導入し、物流拠点の自動化を一段と推進しています。

生成AIを活用したロボット制御モデル「DeepFleet」は、倉庫内の数千台のロボットが互いの動きを学習・共有し、経路渋滞の回避や作業順序の最適化を自律的に行う仕組みで、作業効率の最大化とエネルギー消費の削減を両立しています。

これにより、Amazonは「個々のロボットの自動化」から「拠点全体の最適化」へと進化し、AIによる次世代物流モデルの実現に近づいています。

(2)ヤマトグループ|配送ネットワークとAI・画像認識の融合で路線最適化

ヤマトグループのシステム子会社であるヤマトシステム開発では、AIや画像認識を活用した物流ネットワーク全体の効率化を推進しています。

たとえば、倉庫や拠点の検品業務において、荷物サイズの自動検知や異常検出をAIが担う取り組みがすでに実用化されつつあります。

さらに、AIによる配送ルート最適化も将来的な課題として位置づけられており、交通情報・天候・荷物属性など多種多様なデータを用いたルート生成の研究も行われています。
このように、クロネコヤマトは荷役業務の自動化+配送ルート最適化という両面からAI物流を強化する姿勢を見せており、次世代物流体制の先鞭をつけようとしています。

(3)セブンイレブン|AI発注システムによる在庫最適化と業務負担の軽減

セブン-イレブンでは、全国の店舗でAI発注システムを導入し、販売実績・天候・曜日などのデータをもとに需要を自動予測しています。これにより、商品の過剰発注や欠品を防ぎ、最適な在庫管理と廃棄ロス削減を実現しました。

従来の手動発注方式に比べて発注業務の時間を約40%削減し、従業員が接客や売場改善といった付加価値業務に注力できるようになっています。

(4)日本通運|AIロボティクスとAI出荷予測で物流DXを推進

日本通運は、物流倉庫の省人化と在庫管理の効率化を目的に、AIを活用した複数の取り組みを推進しています。

倉庫業務では、自律協働型ピッキングロボット(AMR)を導入し、都内の物流センターでの実証実験において、ピッキング作業時間を20%削減しました。このロボットは既存倉庫のレイアウトを変更せずに導入できるため、全国の物流センターへの展開を進めています。

さらに、D2C向け物流Webアプリ「DCX」では、AIを活用した出荷予測サービスを提供しています。過去の出荷データをもとに最大3カ月先までの出荷数量を予測し、在庫管理の属人化を解消しています。

このように、日本通運は倉庫作業の自動化と在庫管理の最適化という両面からAI物流を強化し、業界全体のDX推進をリードしています。

5.AI物流の未来と進化の方向性

物流業界におけるAI活用は、作業自動化の段階を超え、システム全体の知能化・最適化へと進化しつつあります。

国土交通省の「総合物流施策大綱(2021-2025年度)」では、物流DXの推進が重点施策として掲げられており、自動運転技術やドローン配送、AIを活用した物流ネットワーク全体の最適化が、2030年に向けた重要な取り組みとして位置づけられています。

また、経済産業省が公表した「自動走行ビジネス検討会」の報告書では、2025年以降、限定地域での自動運転トラックの商用化が本格化し、2030年には高速道路での隊列走行(プラトーニング)が実用段階に入ると予測されています。

ここでは、AI物流の未来と進化の方向性について解説します。

(1)自律走行・自動倉庫の普及が加速

AI技術の進化により、倉庫内ではAGV(無人搬送車)AMR(自律走行ロボット)が人の代わりに棚を運搬し、作業効率と安全性を大幅に向上。輸配送の分野でも、トラックの自動運転実証や車群走行(プラトーニング)といった将来を見据えた技術開発が進められています。

これらの技術は、ドライバー不足や作業人員の減少といった課題に対する実用的な解決策として注目されており、AIによる最適ルート制御・障害物検知・動的スケジューリングの精度向上によって、大手企業を中心に今後さらに導入が拡大していくと見込まれます。

(2)物流生成AIの登場で「意思決定支援」へ進化

従来のAIが最適な答えを選ぶことに特化していたのに対し、生成AIは状況に応じた新しいシナリオや改善策を提案できる点が特徴です。
たとえば、需要変動や交通状況、天候などのデータを学習し、配送ルートや積載計画を自動で再構築するほか、経営層向けに「コスト削減策」「リードタイム短縮案」といった意思決定支援を行うことも可能です。

先ほどの導入事例の通り、Amazonの「DeepFleet」は倉庫内のロボット動作を最適化し、セブン-イレブンのAI発注システムは需要予測により発注業務を40%削減しています。

今後はこうした技術が、倉庫や店舗単位から配送ネットワーク全体へと拡大し、「突発的な交通渋滞時の代替ルート案」「需要急増時の在庫配置シミュレーション」といった、より高度な意思決定支援が期待されています。

こうした生成AIの導入により、現場担当者は日々の業務判断を、経営層は中長期的な戦略立案を、それぞれAIの支援を受けながら進められるようになると見込まれます。

(3)サプライチェーン全体の「連携最適化」への拡張

経済産業省の「2024年版ものづくり白書」では、サプライチェーン全体の最適化に向けたデータ連携の重要性が強調されています。ヨーロッパでは自動車産業を中心に企業間でCO₂排出量などのデータを共有する「Catena-X」が稼働しており、日本でも「ウラノス・エコシステム」などの産業データ連携基盤の構築が始まっています。

企業ごとに分断されていた調達・生産・輸送・販売のデータをAIで統合し、サプライチェーン全体を最適化する取り組みが、先進企業を中心に始まっています。
具体的には、IoTによる在庫・温度・位置情報の取得と、生成AIによる需要予測を組み合わせることで、過剰在庫や輸送ロスを抑えながらより効率的な物流網の構築が可能になります。
さらに、こうしたデータ連携により輸送ルートや積載率、燃料消費量などをリアルタイムで把握できるため、CO₂排出量の可視化やトレーサビリティ確保にもつながり、脱炭素経営やサステナブル物流の基盤としての役割も期待されています。

6.まとめ

生成AIの登場によって、物流データから新たな改善策を導き出す「考えるAI」へと進化しており、今後はサプライチェーン全体を俯瞰した連携最適化や脱炭素化への貢献が期待されます。
AI物流は、企業の競争力と持続可能性を高める戦略的投資領域として位置づけられる時代を迎えるでしょう。

監修

10年にわたる物流会社での事務経験を持ち、現場実務に精通。2024年に貨物運行管理者資格を取得し、法令遵守と実務の両面から運行管理を支援しています。

目次