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脱炭素物流とは?国交省の補助金・採択事例から学ぶ企業の実践ステップ

物流業界における脱炭素化は、環境対策にとどまらず、新たな事業機会企業価値の向上につながる経営テーマとして注目されています。
本記事では、先進事例をもとに企業の実践ステップを解説します。

目次

1.脱炭素物流とは?背景と定義

脱炭素物流とは、物流の各工程で発生するCO₂排出量を削減し、持続可能なサプライチェーンを構築する取り組みです。

ここでは、脱炭素物流の基本的な考え方と国際的な動向を整理し、今後の主要施策(モーダルシフト・電動化・再エネ活用など)につなげて解説します。

(1)国際潮流とGX(グリーン・トランスフォーメーション)について

脱炭素化は、いまや世界共通の経営課題となっています。
EUの「Fit for 55」やアメリカのクリーンエネルギー法、中国のカーボンピーク政策など、主要各国が2050年カーボンニュートラルに向けた移行を加速しています。
グローバルサプライチェーンに属する日本企業も、排出量削減や再エネ転換への対応を求められています。

こうした流れを受け、日本政府は「GX実現に向けた基本方針」を策定し、今後10年間で官民合わせて150兆円超のGX投資を実現する方針を掲げ、産業構造全体の転換を推進しています。中でも物流分野は、エネルギー多消費部門であり、GX推進の要と位置づけられています。

環境省「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(概要)」によると、2022年度の運輸部門におけるCO₂排出量は約1億9,200万トンで、日本全体のCO₂排出量(約10億3,700万トン)の約18.5% を占めています。運輸部門は産業部門(約3億5,200万トン)に次ぐ排出源であり、脱炭素化における重要セクターです。

項目概要
国際的潮流EU「Fit for 55」、米国クリーンエネルギー法、中国の排出ピーク政策など
日本の動き経産省「GX実現に向けた基本方針」(2023年)
物流の位置づけ運輸部門が国内CO₂排出の約18.5%(2022年度:約1億9,200万トン)
主な対応方向EV・FCトラック導入、モーダルシフト、再エネ電力の利用、データ連携

物流のGXは、省エネ施策にとどまらず、「企業価値を高めるための経営変革」です。
カーボンフットプリントの可視化や再エネ導入は、取引先や投資家からの信頼を高め、国際的な競争力にも直結します。脱炭素物流への対応は、環境対応と経営戦略を両立させる次のステージに入っています。

参考:https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/index.html

(2)国内物流の脱炭素化に向けた課題

日本の物流は、長距離輸送をトラックに大きく依存しており、これがCO₂排出量の増加要因となっています。鉄道・船舶など低炭素モードへの転換(モーダルシフト)は進みつつあるものの、インフラ整備や輸送効率の面では依然として課題が多い状況です。

一方で、物流業の大半を占める中小企業では、EVトラックの導入や再エネ設備投資に必要な資金・人材の不足が大きな壁となっています。
加えて、発荷主・運送事業者・倉庫業者などサプライチェーン全体での情報共有が不十分なため、全体最適を阻む構造的な課題も残っています。

国土交通白書2022によると、2019年度の運輸部門エネルギー消費量のうち貨物部門が約4割を占め、その大部分をトラックが担っています。一方、輸送量当たりのCO₂排出量は船舶が営業用貨物自動車の約5分の1、鉄道が約13分の1であり、モーダルシフトによる削減効果は明白です。

2030年度までに鉄道・海運貨物輸送量を増やすことで、合計約334.5万トンのCO₂削減を目指すとされています。

課題領域主な内容背景・要因
トラック依存構造長距離輸送の多くをトラックが担う鉄道・船舶との接続や中継拠点が限定的
設備・車両投資EV・FCトラック導入の初期コストが高い補助金制度はあるが中小企業には負担が大きい
モーダルシフト鉄道・船舶はトラックの13分の1~5分の1の排出量インフラ整備や輸送ネットワークの課題
人材・ノウハウ不足エネルギーマネジメントやデータ分析人材が不足現場主導の慣行が強く、IT化が進みにくい
サプライチェーン連携情報共有や排出量算定の仕組みが統一されていない各社が独自に管理しており、見える化が進まない

このように、脱炭素化は「車両の電動化」だけでなく、物流構造・経営体制・業界全体の協働体制の再設計が求められるテーマです。

参考:https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r03/hakusho/r04/html/n1212000.html

2.物流脱炭素化促進事業の概要

国土交通省は、物流分野における温室効果ガス排出量削減を促進するため、「物流脱炭素化促進事業」を立ち上げました。
ここでは、物流脱炭素化促進事業の概要について解説します。

(1)国土交通省による物流脱炭素化促進事業の定義

国土交通省は、物流分野における温室効果ガス(GHG)排出量の削減を加速させるため、企業の脱炭素化を支援する「物流脱炭素化促進事業」を実施しています。
この事業は、カーボンニュートラル実現に向けて、物流事業者や荷主企業が行う設備投資・技術導入・実証事業などを幅広く支援する制度です。

具体的には、モーダルシフトや共同輸送の推進、EV・FCトラックなどの次世代車両導入、省エネルギー型倉庫の整備、再生可能エネルギーの活用支援といった多様な取り組みが対象となっています。

2025年度の本事業では、補助対象が[1]水素を活用した取組(補助率1/2以内、上限額2.5億円)[2]再生可能エネルギーを活用した取組(補助率1/2以内、上限額2億円)の2つに区分され、水素関連設備(水素製造・貯蔵・充填設備、FCV車両等)または再エネ関連設備(太陽光発電、大容量蓄電池、EV充電スタンド、EV車両等)の一体的な導入が支援されます。

取組分野主な内容期待される効果
モーダルシフトトラックから鉄道・船舶への転換長距離輸送のCO₂排出削減
共同配送事業者間での積載効率向上空車回送の削減・燃費効率化
次世代車両導入EV・FCトラック・ハイブリッド車の導入支援排出ガスゼロ化・騒音低減
省エネ倉庫高断熱・高効率照明・自動制御システム導入エネルギー使用量の削減
再エネ活用太陽光発電・再エネ電力の利用促進持続可能なエネルギー転換

この制度により、企業が脱炭素化に向けた投資を実行しやすい環境が整備され、個社単位では難しかったCO₂削減を業界全体の連携によって推進する仕組みが形成されています。
すなわち、物流の省エネ化」から「サプライチェーン全体の脱炭素化」へと視点を拡張することが、この事業の狙いといえます。

参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001726943.pdf

(2)物流脱炭素の補助金とは?

物流脱炭素の補助金とは、国が企業の脱炭素化への設備投資や取組を財政的に支援する制度です。CO₂排出量削減を進めるうえで障壁となる初期コストを軽減し、民間主導でGX(グリーン・トランスフォーメーション)を加速させることを目的としています。

対象となるのは、輸送手段・車両・倉庫設備など、物流全体のエネルギー効率向上に寄与する幅広い取り組みです。

国土交通省の令和7年度事業では、倉庫事業者、貨物運送事業者、貨物利用運送事業者、トラックターミナル事業者等が補助対象事業者として明記されています。事業期間は交付決定日から約7〜8ヶ月間で、令和8年1月20日までの完了が求められるため、計画的な設備導入スケジュールの策定が重要となります。

対象分野主な補助対象想定される効果
モーダルシフト鉄道コンテナ・RORO船などの導入トラック依存からの転換によるCO₂削減
次世代車両EV・FCトラック、ハイブリッド車排出ガス・燃料コストの削減
倉庫設備高効率空調・照明、断熱構造、省エネ管理システムエネルギー使用量の抑制・運営コスト低減
情報連携・デジタル化配送効率化システム、共同配送プラットフォーム積載率向上・空車回送の削減

この補助金により、企業は初期投資のリスクを抑えながら脱炭素化を実行できる環境を整備でき、結果的に業界全体の排出削減・効率化の連鎖を促す効果が期待されます。

参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000887.html

(3)物流脱炭素化促進事業の採択について

物流脱炭素化促進事業では、国土交通省が公募に応じて提出された事業計画を審査し、CO₂削減効果や実現性の高い取り組みを採択します。評価は、事業の内容だけでなく、継続的な効果や業界全体への波及性など、GX推進に資するかどうかも重視されます。

本事業は例年、公募期間が約1ヶ月間(5月中旬~6月中旬)と短く、交付決定も公募終了後の6月下旬頃と迅速なスケジュールで運営されています。近年の公募では「申請者多数」との発表もあり、高い競争率が推測されます。そのため、CO₂削減の定量的根拠と実効性のある計画の提示が、採択の鍵となります。

審査項目主な評価ポイント
実現可能性スケジュールや資金計画、実施体制が現実的か
CO₂削減効果導入設備・システムの削減量や波及効果が明確か
持続可能性補助期間終了後も継続運用できる仕組みがあるか
事業の波及性他社・地域への展開や共同効果が期待できるか
先進性・モデル性技術や取組内容が他の模範となるか

公募期間や募集要領は、国土交通省のウェブサイトで毎年度発表されます。
採択率は年度によって異なるものの、CO₂削減の定量的根拠と、現場運用を見据えた実効性のある計画書を提示することが採択を左右する重要な要素であることは通年で共通しています。
補助金の利用を検討する企業は、過去の採択事例や評価傾向を踏まえ、早期の準備を進めることが望まれます。

(4)物流脱炭素化促進事業の執行団体とは

物流脱炭素化促進事業の執行団体とは、国土交通省から委託を受け、補助金制度の運営を実務的に担う機関のことです。申請受付から審査、交付決定、進捗・実績報告の確認までを一貫して管理し、事業の公正かつ円滑な実施を支えています。

主な業務内容
申請受付補助金の申請書類や必要書類の受付・確認
審査・評価国の評価基準に基づく審査および採択候補の選定
交付決定採択案件への補助金交付決定・通知
実績報告確認事業完了後の報告書確認・現地調査の実施
相談・支援申請者への問い合わせ対応や手続き支援

執行団体には、業界団体・研究機関・専門コンサルティング会社など、物流やエネルギー分野に精通した組織が指定されます。
これにより、制度運用の専門性と透明性が確保され、申請企業が安心して補助事業を進められる体制が整えられています。

参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000871.html

3.物流脱炭素化の主な具体的施策

物流業界における脱炭素化は、複数の施策を段階的かつ相互補完的に進めることが求められます。
国土交通省の「物流脱炭素化促進事業」などの公的支援を活用しながら、企業各社は自社の事業規模・輸送形態に応じた最適な手法を組み合わせて実践しています。

ここでは、物流脱炭素化の主な具体的施策について解説します。

(1)モーダルシフト/共同輸送

脱炭素物流の中核を担うのが、モーダルシフト共同輸送の推進です。
トラック輸送から鉄道・船舶などCO₂排出量の少ない輸送モードへ転換するモーダルシフトは、長距離幹線輸送における排出削減効果が大きく、国のGX政策でも重点施策として位置づけられています。

複数企業が連携して貨物をまとめて運ぶ「共同輸送」を組み合わせることで、トラックの積載率向上・運行回数削減・ドライバー負担軽減といった副次的な効果も得られます。

取組内容主な施策期待される効果
モーダルシフト鉄道コンテナ輸送、フェリー・RORO船の活用長距離輸送時のCO₂排出削減(約1/10〜1/5)
共同輸送異業種・異業態間での混載輸送や共同配送積載率向上、空車回送の削減、燃費効率化

これらの取り組みは、輸送手段の転換にとどまらず、業界を越えた協働や物流ネットワーク全体の再構築を促す動きとして位置づけられます。今後は、デジタルプラットフォームを活用した輸送マッチングやデータ共有を通じて、継続的かつ実効性のある脱炭素化を実現していくことが求められます。

(2)車両電動化・低炭素燃料

物流の脱炭素化を進めるうえで、最も直接的なアプローチが車両の電動化と低炭素燃料の導入です。
トラックなどの商用車を電気自動車(EV)や燃料電池(FC)トラックへ切り替えることで、走行時のCO₂排出を実質ゼロにすることができます。
特に、都市内配送や短中距離輸送では、電動車両の稼働効率が高く、早期の導入効果が見込まれます。

また、バイオディーゼル燃料や合成燃料(e-fuel)などの低炭素燃料は、既存のディーゼル車を改修せずに利用できる点が特徴です。

技術分類主な内容導入効果
EVトラック電力駆動による走行、短〜中距離配送向き走行中CO₂排出ゼロ、騒音・振動低減
FCトラック水素燃料電池で発電し走行、長距離輸送向き長距離対応・充填時間短縮・CO₂排出ゼロ
バイオ燃料廃油・植物由来の燃料を利用既存車両で利用可、化石燃料依存の低減
合成燃料(e-fuel)再エネ由来の水素とCO₂から合成インフラ転換不要、段階的移行が可能

このように、電動化と低炭素燃料の併用は、企業規模や輸送距離に応じた柔軟な脱炭素戦略を構築するうえで有効です。
今後は、燃料供給インフラの整備や車両価格の低減が進むことで、より多くの事業者が導入を実現できる環境が整っていくと考えられます。

(3)倉庫の再エネ・省エネ

物流の脱炭素化は、輸送だけでなく倉庫(物流拠点)のエネルギー管理にも直結します。
倉庫は照明・空調・搬送設備などの電力使用量が多く、CO₂排出の削減余地が大きい分野です。
そのため、再生可能エネルギーの導入と省エネルギー化の両立が重要なテーマとなっています。

屋根への太陽光パネル設置LED照明への切り替え高断熱構造の採用といった取り組みは、比較的早期に効果を得やすい施策です。
さらに、再エネ由来の電力購入(グリーン電力証書など)や蓄電池の導入により、電力の自給自足やピークシフト運用を実現する企業も増えています。

取組領域主な施策効果・目的
再エネ導入屋上ソーラー設置、再エネ電力契約、蓄電池運用電力のクリーン化・電力コストの安定化
照明・空調LED照明、センサー制御、自然換気システム消費電力削減・稼働効率の最適化
建物構造高断熱パネル、反射塗料、防熱シャッター導入空調負荷の軽減・快適な作業環境の維持
エネルギーマネジメントBEMS(Building Energy Management System)導入使用電力の見える化・最適制御

こうした取り組みは、電力使用量削減と脱炭素化の両立だけでなく、電力価格高騰リスクの低減や、環境配慮型物流拠点としての企業ブランド向上にも寄与します。
物流のGXを支える基盤として、今後さらに注目が高まる領域です。

(4)TMS・動態管理・配車最適化

物流の脱炭素化を実現するうえで、ITによる輸送の最適化は最も効果的な手段の一つです。
輸送管理システム(TMS)や動態管理システムを導入すると、車両の位置情報・走行履歴・配送進捗をリアルタイムで把握でき、空車走行の削減や待機時間の短縮、燃料消費の最小化が可能になります。

AIを活用した自動配車・ルート最適化は、ドライバーの稼働状況や荷量データをもとに、最も効率的な配送計画を自動で立案します。

技術領域主な機能期待される効果
TMS(輸送管理システム)配送計画・コスト管理・運行実績の一元化輸送効率の向上・燃費管理の徹底
動態管理システムGPSやIoTによるリアルタイム車両監視空車回送・待機時間の削減、運行安全性の向上
AI配車・ルート最適化AIが走行データや積載情報を解析し最短経路を算出積載率向上・燃料消費削減・配送遅延の防止

これらのデジタル技術は、業務効率化にとどまらず、CO₂排出削減と経営改善を両立するGX施策として位置づけられています。
今後は、TMSと倉庫管理システム(WMS)や受発注システムを統合し、サプライチェーン全体の可視化と最適化を進める企業が増えると見込まれます。

(5)パレット標準化・物流標準化

物流の脱炭素化を進めるうえで、見落とされがちながら大きな効果を持つのが「パレット標準化」です。パレットとは、荷物を載せて運ぶための台のことで、トラック輸送や倉庫保管の基本単位となります。

現在、日本の物流現場では企業ごとに異なるサイズや素材のパレットが混在しており、積み替えや再配置が頻繁に発生することで、作業の手間・時間・エネルギーの無駄を生んでいます。

日本国内では**1100mm×1100mmの「JIS規格パレット(11型)」**が標準規格として定められており、この規格への統一により、積載効率の向上・作業の省力化・輸送回数の削減を通じたCO₂排出削減が実現します。

国土交通省は令和3年から「パレット標準化推進分科会」を設置し、令和6年6月に最終とりまとめを公表しました。さらに、2025年4月1日施行の改正物流効率化法により、荷主や物流事業者に対してパレットの導入や荷役時間の短縮が努力義務として課されています。

取組内容主な施策期待される効果
パレット規格統一JIS規格パレット(11型:1100mm×1100mm)の普及積載効率向上・積み替え作業削減
荷役作業効率化パレット単位での一貫輸送ドライバー負担軽減・CO₂削減
共同利用促進レンタルパレット事業者との連携パレット回収・管理の効率化

パレット標準化は、輸送効率化にとどまらず、CO₂排出削減と労働環境改善を同時に実現する基盤施策として位置づけられています。今後は、官民連携による補助金制度や設備改修支援を通じて、物流業界全体での標準化がさらに進展すると見込まれます。

4.脱炭素物流における企業事例

これまで述べてきた脱炭素化に向けた施策は、具体的な取り組みとして多くの企業で実践されています。ここでは、脱炭素物流における企業事例について解説します。

(1)モーダルシフトと共同輸送による幹線輸送のCO₂削減

サントリーを含む4社グループでは、自社便トラックによる東京〜大阪間の長距離輸送を、鉄道コンテナ輸送へ切り替えるとともに、同業他社や紙製品メーカーと協調し、31ftコンテナを共同利用して異業種のラウンド輸送を実施しています。この取り組みにより、62.1%(100.8トン-CO₂)の排出削減を達成しています。

取組内容実施概要効果
モーダルシフトトラック輸送から鉄道コンテナ輸送への転換長距離輸送のCO₂を大幅に削減
共同輸送異業種間でコンテナを共有利用積載率向上と運行回数の削減によるコスト低減
効率化空きスペースの最小化やルート再設計約100.8トン-CO₂削減、運転時間削減(1,771時間)

このように、サントリーグループ(飲料)+大王製紙(紙製品)という異業種間協調によるモーダルシフト・共同輸送の事例は、物流効率化と脱炭素化を同時に進めるモデルケースとして注目されています。

(2)EV・FCトラックの導入による都市内配送の脱炭素化

三菱商事・三菱倉庫・ユアスタンドの3社は、医薬品輸送で中型EVトラック(三菱ふそう「eCanter」)を導入し、走行から充電まで完全CO₂フリー化を実現しました。
再生可能エネルギー由来の電力を活用した充電設備を埼玉・三郷拠点に設置し、エネルギー供給段階を含むサプライチェーン全体で環境負荷を削減しています。

取組内容実施概要効果
EVトラック導入医薬品配送に「eCanter」を活用走行時CO₂排出ゼロ・騒音低減
再エネ電力による充電専用再エネプランで充電を運用充電から走行までCO₂フリーを実現
充電管理システム「Yourstand for Business」で可視化充電効率化・コスト削減

車両電動化と再エネ活用を一体で進める都市物流モデルとして注目されており、荷主企業のScope3削減にも寄与しています。

(3)物流拠点の省エネ化と再エネ活用による拠点脱炭素モデル

プロロジスは、物流施設「プロロジスパーク草加」において、太陽光発電と蓄電池の併用による再エネ最適化モデルを構築しています。
経済産業省の「再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業」に採択され、発電予測の精度向上や余剰電力の最適活用を目的とした実証を進行中です。
蓄電池には岡山県で生産されたPowerX製20ftコンテナ型蓄電池(2.7MWh)を採用し、ピークカットや自家消費・自己託送の効率化を検証しています。

また、AIを用いたVPP(仮想発電所)制御により、複数施設間での電力融通とインバランス(需給誤差)低減を実現。今後、再エネと蓄電池を標準装備とする物流施設運営モデルとして展開が見込まれます。

取組内容実施概要効果
太陽光発電設備倉庫屋根に太陽光パネルを設置施設電力の再エネ化を推進
蓄電池導入2.7MWhのPowerX製蓄電池を設置ピークシフト・エネルギー効率向上
AI制御・VPP化発電・蓄電データをAIで最適制御需給バランス最適化・電力融通を実現

このように、再エネ発電・蓄電・AI制御を統合した拠点GXモデルは、エネルギー自給と電力安定供給を両立する新しい物流施設の形として注目されています。

(4)動態管理・TMSを活用した積載率向上と配送最適化

引用:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf

配車計画(TMS)と動態管理(GPS/実績)の連携によって、配車業務の標準化、積載率向上、空走・待機の削減が可能です。実践事例では、作業時間短縮や業務一元化、ダイヤ最適化によって、ルート改善・コスト削減・CO₂削減を同時に達成しています。

取組効果の要点
自動配車クラウド導入(例:スーパーレックス)手配車作業が丸二日 → 数時間に短縮
TMSと業務統合(例:湯浅運輸)受発注〜配車〜運行〜請求を一元管理、ペーパーレス化
動態データ活用(例:豊田自動織機)ダイヤ検証時間「12h → 6h」、遅延地点特定で走行距離抑制

このように、TMS × 動態管理の構成は、最短で改善サイクルを回しつつ、中小事業者でも導入しやすい手法です。

(5)地域連携によるサプライチェーン全体のカーボンニュートラル化

引用:https://pps-net.org/column/113655

脱炭素物流を実現するには、企業単独の努力だけでなく、地域全体での連携が欠かせません。自治体や物流事業者、製造・小売業が協働し、共同配送拠点や再エネ供給網を整備することで、地域スケールでのCO₂削減を進めることができます。
実例として、自治体主導で企業間の倉庫稼働情報や配送ルートを共有し、共同輸送・共同拠点化を進めた地域では、積載率の向上と燃料消費の削減を実現しています。
また、地域内で発電した太陽光電力や水素を物流拠点・EVトラックへ供給し、輸送とエネルギーの両面から脱炭素化を推進しています。

取組内容実施概要効果
共同配送・拠点連携企業間で倉庫・配送ルートを共有積載率向上・走行距離削減・CO₂排出抑制
地域再エネ活用自治体が太陽光・水素電力を供給拠点・車両へのクリーンエネルギー供給
情報共有基盤企業間で稼働・在庫情報を連携サプライチェーン全体の効率化・無駄削減

このような地域連携モデルは、スケールメリットを活かして中小企業を含む地域全体のGXを促進し、サプライチェーン全体のカーボンニュートラル化を現実的に後押しする仕組みとして注目されています。

(6)中継輸送による長距離ドライバー負担軽減とCO₂削減

鈴与株式会社は、業界を超えた荷主5社と連携し、千葉~大阪間の長距離輸送において、静岡県静岡市と愛知県小牧市の2拠点を活用した中継輸送を実施しています。荷台と車体の切り離しが可能なスワップボディ車を導入することで、500km以上の長距離輸送を廃止し、ドライバーが毎日自宅に帰宅して休息できる持続可能な運行を実現しました。

本取り組みは、令和6年度グリーン物流パートナーシップ会議において国土交通大臣表彰を受賞しており、2024年問題への対応モデルとして高く評価されています。

取組内容実施概要効果
中継輸送の導入静岡・愛知の2拠点でスワップボディによる中継実施500km超の長距離輸送を廃止、ドライバーの日帰り勤務を実現
パレット標準化1.1m型パレットの統一とモジュール化積載率向上による車両台数制限(年間1,602台削減)
DX活用運行進捗管理システム「Cargo NAvi」による可視化リアルタイムでの車両動態把握と中継先への迅速な指示
CO₂削減効果複数荷主間でのフェリー輸送の組み合わせ年間615.6トン-CO₂削減(34.5%削減)、拘束時間11,854時間削減

中継輸送は、長距離輸送を複数のドライバーでリレー形式で行うことで、ドライバー1人あたりの運転時間を短縮する手法です。

特に中継輸送を実施した運行区間では、CO₂排出量を37.8%削減する効果が確認されており、環境負荷低減と労働環境改善を同時に実現する脱炭素物流の先進モデルとして注目されています。

5.脱炭素物流の導入ステップ

脱炭素物流を実現するには、技術導入だけでなく、経営計画・契約設計・データ活用の各プロセスを段階的に整えることが重要です。
初期段階ではコストやリソースの制約も生じるため、短期的な成果にとらわれず、中長期的な視点で取り組む姿勢が求められます。

ここでは、実際に企業が脱炭素物流を導入する際に押さえておくべき4つの基本ステップを解説します。

(1)投資回収の考え方

脱炭素物流への設備投資は、一時的にはコスト増加を伴うものの、中長期的な経営効果を見据えた回収計画が重要です。
初期費用だけでなく、燃料費削減・運行効率の改善・補助金の活用といった定量的なコストメリットに加え、企業イメージ向上やESG評価の強化といった形資産の価値も総合的に考慮する必要があります。

評価項目内容想定される効果
補助金活用国や自治体の制度を活用して初期投資を軽減導入負担の軽減・投資回収期間の短縮
燃料費削減EV・FCトラック導入、ルート最適化による燃料使用量の低減継続的なコスト削減・利益率の改善
運行効率向上TMS・動態管理による稼働最適化積載率向上・残業削減・人件費抑制
ESG・ブランド価値環境対応企業としての信頼性向上取引拡大・ESG投資対象化・人材採用力の強化
カーボン規制対応2026年度から本格導入予定の炭素賦課金制度への先行対応将来的なコスト負担の回避・規制リスクの軽減

このように、定量面と定性面の双方から投資効果を評価することが、脱炭素化を持続的な成長戦略へ転換する鍵となります。
特に、燃料価格やカーボンプライシング制度の動向を見据えた長期的なROI(投資利益率)設計が求められます。

(2)共同配送・委託先との契約設計

共同配送や第三者への配送委託を行う際には、関係者間での明確な契約設計が欠かせません。
CO₂排出削減という共通目標のもと、責任分担・コスト配分・データ共有の範囲を明文化することで、トラブル防止と透明性の高い運用が可能になります。

削減効果の算定方法や、それに応じたインセンティブ設計・ペナルティ条項を盛り込むことは、持続的なパートナーシップを築く上で重要です。

契約項目主な内容目的・効果
CO₂削減目標の共有共同配送・委託業務での削減目標を明文化目標の一貫性・評価基準の明確化
責任分担発荷主・運送事業者・倉庫業者の役割を定義運用上の混乱防止・リスク回避
コスト配分投資・運用コストの分担ルールを設定公平性の確保・長期的な協働促進
データ共有積載率・燃料使用量などの情報を共有排出削減効果の見える化・改善提案
インセンティブ/ペナルティ削減成果に応じた報奨・未達時の対応を明記継続的な改善意欲の維持・契約履行の担保
Scope3排出量の算定・開示委託配送によるCO2排出量(Scope3)の算定方法と開示義務を明記TCFD対応・ESG評価向上・取引先選定基準への適合

このような契約設計は、委託関係を超えて、共創型のGXパートナーシップを築くための基盤となります。

(3)データ整備

脱炭素物流を効果的に進めるには、正確なCO₂排出量の可視化とデータ管理体制の整備が不可欠です。
輸送量・走行距離・燃料消費量・使用エネルギー量といったデータを継続的に収集・分析することで、どの工程で排出が多いのかを定量的に把握できます。

データ整備は業務効率化だけでなく、法令遵守の観点からも必須となっています。

温対法(地球温暖化対策推進法)では、エネルギー使用量が原油換算で年間1,500kl以上の 事業者に対して、温室効果ガス排出量の算定・報告が義務付けられています。 2023年度からは電子報告システム(EEGS)による報告が義務化され、正確なデータ管理体制の 構築が法的要件となっています。

また、社内の運行管理システムだけでなく、TMS・WMS・車載デバイス・外部APIとの連携を視野に入れたデータ統合基盤を構築することで、部門横断的な最適化が可能になります。

整備項目内容効果
データ収集輸送量・走行距離・燃料使用量・電力使用量の取得CO₂排出量を定量的に可視化
システム連携TMS・WMS・車載端末などとの連携データの自動収集・入力ミス防止
一元管理クラウド上でデータを統合・保存分析・報告業務の効率化
分析・可視化BIツールやダッシュボードによる見える化改善ポイントの特定・PDCAの高速化
法定報告対応温対法・省エネ法に基づく排出量の算定・報告コンプライアンス確保・罰則回避・行政への信頼性向上

このようなデータ基盤の整備は、管理業務の効率化にとどまらず、科学的根拠に基づくGX戦略立案の起点となります。

(4)スモールステップで開始する

脱炭素物流を進めるうえでは、初期段階から大規模な投資を行うよりも、効果を確認しやすい領域から段階的に着手することが重要です。
たとえば、一部車両のEV化や、特定ルートでの共同配送の試験導入といった限定的な取り組みを通じて、成果と課題を明確にしながら改善を重ねていきます。

こうしたスモールステップの積み重ねにより、現場の理解促進、ノウハウの蓄積、リスクの分散が可能になります。得られたデータや知見を基に他拠点・他部門へ展開することで、組織全体へ着実に脱炭素化を浸透させることができます。

ステップ主な取組内容期待される効果
第1段階EVトラック・再エネ活用など、限定的な実証実験投資リスク低減・効果測定の明確化
第2段階成果を基にエリア拡大・車両増強・共同配送の常態化ノウハウ共有・コスト最適化
第3段階全社的なGX戦略・データ連携の仕組み化継続的改善・サプライチェーン全体の最適化

また段階的なアプローチを後押しする公的支援制度も充実しています。

環境省「中小規模事業者向けの脱炭素経営導入 事例集」 では、物流業界における段階的導入の成功事例が紹介されています。

運送業のスタンダード運輸株式会社では、EVトラックをまず少数台で試験運用し、 航続距離や充電時間を実測することで運用適合性を検証しました。 同社は「机上の試算だけで判断しない」ことを重視し、小規模導入で 費用対効果を見極めた上で、共同輸配送の拠点設置など、 より大規模な取り組みへの展開を計画しています。

このように、「小さく始めて、確実に広げる」段階的アプローチが、実効性の高い脱炭素物流の導入を実現します。

6.まとめ

脱炭素物流は、環境対策にとどまらず、企業の持続的な成長に不可欠な経営戦略です。本記事で紹介した国土交通省の補助金制度や具体的な施策、成功事例、そして段階的な導入ステップを参考に、自社に合った脱炭素物流への取り組みを推進していくことが、将来の競争力強化に繋がるでしょう。

監修

10年にわたる物流会社での事務経験を持ち、現場実務に精通。2024年に貨物運行管理者資格を取得し、法令遵守と実務の両面から運行管理を支援しています。

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