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【2025年版】業務前自動点呼とは?要件・対面点呼との違いなど

2025年4月30日の点呼告示改正により、業務前自動点呼が正式に解禁されました。
これにより、対面点呼と同等の効果を満たす機器・運用要件のもと、出庫前の点呼を自動化できます。

本記事では、業務前自動点呼の開始時期と背景、導入の必須要件などをわかりやすく解説します。

目次

1.業務前自動点呼とは?制度の概要と開始スケジュール

まずは、制度の目的や導入の背景、そして施行スケジュールを整理しながら、業務後自動点呼との違いを明確に解説します。

参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001844160.pdf

(1)業務前点呼の目的と重要性

業務前点呼とは、ドライバーが運行を開始する前に、体調や飲酒の有無、車両・携行品の確認状況などを運行管理者が確認する義務的な手続きです。

運送事業者においては、道路運送法や安全規則に基づき、乗務開始前に適切な点呼を行うことで、交通事故や健康起因事故の未然防止を図ることが求められています。

国土交通省の統計によると、令和5年の事業用トラックによる人身事故件数は14,173件発生しており、依然として高い水準で推移しています

一方で、近年はドライバー不足や長時間労働の是正など、いわゆる「2024年問題」を背景に、点呼の効率化と標準化が強く求められています。
対面点呼だけでは管理者の負担が大きく、拠点間の移動や夜間対応にも限界があるため、ICTを活用した自動点呼・遠隔点呼への移行しつつあるのが現状です。

業務前点呼によって、法令上の安全確保を維持しながら、業務負担を軽減し、運行管理の質を高めることが期待されています。

(2)2025年4月30日施行の解禁スケジュール

2025年4月30日に施行される点呼告示の改正により、業務前自動点呼の制度が正式に解禁されます。
これにより、ドライバーは営業所以外の場所(宿泊施設・休憩所・車両内など)でも業務前自動点呼を実施できるようになります。

この制度化に先立ち、国土交通省は2023年度から2025年3月まで先行実施を行い、全国411の運送事業者が参加しました。先行実施では業務前自動点呼の総実施回数43,581回のうち、中断・中止は合わせて53回(約0.12%)にとどまり、対面点呼と同等の安全性が確認されたことから、正式な制度導入に至っています

ただし、制度を利用するには一定の条件を満たす必要があります。主な要件は次のとおりです。

  • 点呼実施場所を事前に登録・記録しておくこと
  • 点呼時の様子を映像または静止画で記録すること
  • なりすまし防止や不正防止のため、カメラやICT機器を設置すること

これらの基準をクリアすることで、事業者は出庫前の安全確認を自動化しつつ、従来の対面点呼と同等の安全性を確保できるようになります。

(3)業務後自動点呼との違い・制度拡張の背景

業務前自動点呼は、すでに運用が定着している業務後自動点呼の仕組みを拡張した制度です。両者の基本構造は共通していますが、確認対象と運用目的に明確な違いがあります。

業務前自動点呼業務後自動点呼
実施タイミング乗務開始前乗務終了後
主な確認項目体調・酒気帯び・車両点検など、運行前の安全確認疲労・体調変化・事故やトラブルの有無など、運行後の状態確認
制度の目的事故防止・体調異常の早期発見運行結果の把握と安全管理の継続
運用開始時期2025年4月30日(令和6年改正で新設)2023年4月(令和5年改正で制度化済)

国土交通省によると、業務前自動点呼の先行実施に参加した事業者のうち、約半数が以前から業務後自動点呼を導入しており、先行実施期間中は大半の事業者が業務後の点呼についても自動点呼機器を使用しています。

このような背景から、出庫前点呼を自動化することでドライバーの健康起因事故防止と、運行管理者の業務効率化を両立できるとされてます。

2.業務前自動点呼の導入意義と注目される理由

ここでは、業務前自動点呼の導入が求められる社会的背景と、企業にとっての導入メリットを整理しながら、なぜ今この制度が必要とされているのかを解説します。

(1)ドライバー不足・2024年問題との関係

2024年4月に施行された働き方改革関連法により、自動車運転業務の時間外労働は年960時間までに制限されました。これにより、ドライバー1人あたりの稼働時間が減少し、業務効率の改善が喫緊の課題となっています。

従来の対面点呼では、ドライバーが出庫前に営業所へ立ち寄る必要があり、特に長距離・夜間運行の現場では、運行管理者の配置や点呼時間の調整が負担となり、労働時間削減の妨げになる悪循環が生じていました。

国土交通省の調査によると、業務前自動点呼の先行実施に参加した566営業所のうち、90.6%が「点呼執行者の深夜、早朝、休日の労働時間削減」を導入意義として挙げています。実際の事例では、早朝の点呼のためだけに出勤後、一度帰宅し、夜間の点呼のために再度出勤していた運行管理者の負担が大幅に軽減されたケースも報告されています。

業務前自動点呼が導入されることで、ドライバーは宿泊先や休憩施設、車両内などから出庫前点呼を実施できるようになります。これにより、無駄な移動を省きながら安全確認を確実に行うことができ、労働時間の適正化と安全性の両立が期待されています。

(2)遠隔点呼の普及とデジタル化の加速

遠隔点呼は、運行管理者とドライバーが同じ場所にいなくても、ICT機器(カメラ・マイク・通信システムなど)を使って離れた場所で実施できる点呼のことです。国土交通省は2022年(令和4年)4月1日から遠隔点呼制度を開始し、営業所の優良性に関わらず、要件を満たす機器・システムを用いることで遠隔拠点間での点呼が可能となりました。

遠隔点呼の導入により、運行管理者が別拠点や本社からドライバーの点呼を実施できるようになり、複数拠点の一元管理や夜間・早朝点呼の省力化が進みました。これによって、従来は人手や時間に依存していた点呼業務がICT機器によって効率化され、現場の負担軽減につながっています。

こうした遠隔点呼の実施状況を踏まえ、国土交通省は2024年5月から「業務前自動点呼」の先行実施を開始し、2025年4月30日には制度化されました。遠隔点呼で培われた技術基盤を活用し、運行管理のデジタル化をさらに推進することが目的です。

(3)企業に求められる安全管理体制の高度化

近年、ドライバーの健康起因事故が社会問題となっています。国土交通省の統計によると、事業用自動車における健康起因事故は令和5年(2023年)に418件(全事業用自動車合計)と過去最多を記録し、そのうちトラックは136件で前年比約28%増加しました。心臓疾患・脳疾患・大動脈疾患が全体の約3割を占めており、事業者には「安全を仕組みで担保する体制づくり」が求められています。

業務前自動点呼を導入することで、映像・データ・ログによる客観的な管理が可能となり、点呼の実施記録を長期的に蓄積・検証できるようになります。これにより、異常の早期発見や再発防止策の立案など、安全管理をデータドリブンに改善できる環境が整います。

また、クラウド管理による統合運用が進むことで、複数拠点を横断した安全情報の共有や、経営層による安全方針のモニタリングも容易になります。

こうした仕組み化・可視化の流れは、企業の信頼性や社会的評価を高める要素にもつながっています。

3.業務前自動点呼を導入するための条件

2025年4月の制度施行から半年が経過し、業務前自動点呼の導入を検討する事業者が急速に増えています。

ここでは、業務前自動点呼の導入に必要な条件について解説します。

参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha02_hh_000690.html

(1)機器に関する要件|カメラ・体温計/血圧計の連携など

業務前自動点呼を導入する際には、国土交通省が定める認定要件を満たした専用機器を使用する必要があります。これは、対面点呼と同等の安全確認を確保するために設定された基準であり、映像・生体情報・通信機能を統合したICT機器が求められます。

国土交通省の「自動点呼機器認定要領」および「認定を受けた業務前自動点呼機器一覧(令和7年11月11日時点)」によると、機器には次のような要件が求められています。

要件区分概要
生体認証機能・点呼時のドライバー本人確認を行うため、顔認証または生体認証機能を搭載・なりすまし防止のため、点呼中の映像または静止画を自動記録する。
アルコール検知器連携・呼気中アルコール濃度をリアルタイムで計測し、測定結果を自動記録・送信できること・検知器の不正使用防止対策(機器認証、ログ管理)も必須
体温・血圧計との連携・ドライバーの体調異常を早期に把握するため、体温計・血圧計とシステム連携して測定データと運行管理者が設定した平時の値との差異を自動で記録できること。
通信・クラウド機能・測定結果・映像・ログをクラウド上に自動保存し、運行管理者が即時に確認・承認できる仕組みを備えること。・記録の修正・消去ができない、または修正前情報が保存される機能が必須
異常時の自動対応アルコール検知時や健康状態の異常判定時には、直ちに運行管理者へ警報または通知を発し、点呼を自動で中止・中断する機能を有すること

2025年11月時点では、これらの要件を満たした複数の機器が国交省の認定を受けており、顔認証や体温・血圧計連携機能を標準搭載したモデルも登場しています。

参考:https://www.ota.or.jp/wp-content/uploads/2025/06/%E8%87%AA%E5%8B%95%E7%82%B9%E5%91%BC%E6%A9%9F%E5%99%A8%E8%AA%8D%E5%AE%9A%E8%A6%81%E9%A0%98.pdf

参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001911216.pdf

(2)設置施設に関する要件|通信環境/記録保存システムの要件

業務前自動点呼を実施するには、営業所以外でも同等の安全性を確保できる環境といった実施場所の通信環境や映像記録の保存体制も要件として定められています。

以下に主な設置要件を整理します。

要件区分内容
① 通信環境の安定性点呼データや映像をリアルタイムで送受信できる通信環境が必要。クラウド型システムを活用する場合は、通信障害時の代替手段(モバイル回線やバックアップサーバー)を設けることが推奨される。
② 実施場所の事前登録と記録点呼を行う場所は事前に社内で定め、記録簿等に登録することが求められる。営業所外で実施する場合は、日時・場所を自動でログに残し、追跡可能な状態にする必要がある。
③ 映像・静止画による記録保存点呼の様子を静止画または動画で記録し、事後に運行管理者が確認できる体制を整える。監視カメラの設置が難しい場合は、スマートフォンやクラウド型ドラレコの映像で代替可能。
④ データ保存・保管期間点呼記録(映像・音声・測定データ)は一定期間、改ざん防止措置を講じた上で保存すること。多くの事業者がクラウド上に自動保存し、運行管理者が遠隔から閲覧できる運用に移行している。

これらの要件は、点呼の信頼性と監査対応力を担保する仕組みとして位置づけられています。国土交通省の先行実施調査(令和6年度)では、411事業者が業務前自動点呼の先行実施に参加しており、通信環境の整備や撮影機器による記録体制の構築が進められています。

今後は、国交省による定期的な監査・ガイドライン改訂も想定されるため、導入企業は「記録の正確性」と「長期保全体制」の両立を意識したシステム構築が求められます。

参考:https://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/content/000327038.pdf

参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001869578.pdf

(3)運行管理者・社内体制の要件|承認手続き・記録確認のフロー

業務前自動点呼を導入により業務の省力化が進む一方で、「管理者の責任範囲を不明確にしない仕組みづくり」が重要とされています。

そのため、システム導入時には、自動判定結果をどう確認・承認するかを明文化した以下のような社内運用ルールが求められます。

運用ルール内容
① 権限管理と承認フローの明確化自動判定後の承認権限を誰が持つか(運行管理者・代行者など)を明示し、緊急時に即応できるようルール化する。
② 教育・訓練体制の整備運行管理者に対し、ICT点呼システムの操作方法、エラー対応、データ確認手順を周知する。国交省による研修制度の活用も推奨されている。
③ 定期的な運用点検と内部監査記録漏れや通信障害への対応を含め、運用状況を定期的にレビューし、改善を行う。実施内容は社内監査記録として残しておくことが望ましい。

国土交通省の先行実施調査(令和6年度)では、運転者の健康状態に関する測定結果や自己申告の結果、安全な運転ができないおそれがあると機器によって判定された場合には、運行管理者に警報・通知を発した上で点呼を中断させ、運行管理者がその内容を確認し運行の安全確保に支障がないと判断した場合に点呼を再開できる仕組みが求められています。

ここのように、業務前自動点呼では機器による自動判定と運行管理者による最終確認を組み合わせた体制が制度上求められており、安全性の担保が図られています。

参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000082.html

4.業務前自動点呼の導入前に必要な手続きと届出・申請の流れ

業務前自動点呼の導入に際して、機器を選定・設置するだけではなく、制度上の手続き・届出・スケジュール設計といった運用開始準備をきちんと整えておくことが欠かせません。

ここでは、業務前自動点呼の導入前に必要な手続きと届出・申請の流れを整理します。

(1)申請先と必要な手続き

業務前自動点呼を導入する場合、業務前自動点呼を開始しようとする14日前までに、国土交通省委託事業事務局への申請が必要です(先行実施期間中)。

なお、業務前自動点呼は現在「先行実施」段階であり、令和7年(2025年)3月31日までは先行実施事業として実施され、その後本格的な制度化が予定されています。
これは、安全性や通信安定性、運行管理体制が制度要件を満たしていることを確認する目的で行われます。

申請にあたっては、以下のような書類・添付資料が求められます。※状況などによって必要な書類が異なる場合がありますので、不明点があるときには届け出先にご確認ください。

手続き内容概要
申請先国土交通省委託事業事務局(株式会社野村総合研究所)※先行実施期間中
提出期限業務前自動点呼を開始しようとする14日前まで
申請書類①参加申請書(様式1)
②機器要件に係る適合確認・宣誓書(様式2)
③施設及び社内体制に関する要件に係る適合確認・宣誓書(様式3)
使用機器の確認国土交通省の認定を受けた業務前自動点呼機器を使用すること。認定機器一覧は国交省ウェブサイトで公開されている。
事前準備運転者の平常時体温・血圧を10日分程度取得しておくこと。運行管理規程に業務前自動点呼の運用を明記し関係者に周知すること。
体制整備機器の使用方法について運転者、運行管理者が適切に使用できるよう教育体制を整えること。事業開始後1ヶ月間は運行管理者立会いのもとで実施すること。

業務前自動点呼を開始するにあたり、開始前までに運転者の健康状態に関する体温及び血圧の平常時の値を10日分程度取得し、業務前自動点呼で用いる運転者ごとの健康状態に関する平常時の値を把握しておくことが求められています。また、事業開始から1ヶ月が経過しない間、運行管理者の立会いのもとで業務前自動点呼を行うこととされています。

参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001754104.pdf

参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001894146.pdf

(2)先行実施制度の概要と利用条件

先行実施は、2024年5月〜2025年3月31日まで実施され、トラック・バス・ハイヤー・タクシー事業者などが対象となりました。
参加事業者は、実際の運行現場で業務前自動点呼を運用し、運行管理者の負担軽減や早朝点呼の効率化に効果があることが確認され、2025年4月の制度化につながっています。

先行実施時の要件は、現行制度にもほぼ引き継がれています。

区分条件内容
技術要件・国交省が認定した「自動点呼機器認定要領」に適合していること・映像・音声・データを自動で記録できる構成を備えること。
通信要件・点呼実施場所で安定した通信が確保され、切断時の自動再接続やバックアップ機能を備えていること
管理体制・運行管理者がドライバーの体調・飲酒状態・労務状況を適切に確認できる運用ルールを整備していること
記録・保存・点呼映像やアルコール検知結果を1年以上保存し、外部からの改ざんを防止する仕組みを有していること
報告義務・実施結果やトラブル発生状況を国交省へ報告(先行実施期間中は月次報告が義務付けられた)

先行実施には144事業者が参加し、2024年12月時点で業務前自動点呼の実施回数は累計43,581回に達しました。参加事業者からは、点呼執行者の労働時間削減(96.0%)、点呼の確実性向上(90.0%)、健康起因事故の防止(87.3%)などの効果が報告されています。

2025年11月時点では、営業所以外(宿泊施設・休憩所・車両内など)でも業務前自動点呼を実施できるよう告示が改正され、「遠隔点呼」「業務後自動点呼」に続く第三の選択肢として定着しつつあります。

参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001754104.pdf

参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001854590.pdf

(3)導入スケジュールの立て方

2025年4月30日に業務前自動点呼が制度化され、同年8月8日に認定機器が公表されました。今後導入を検討する事業者は、「要件確認 → 機器の選定・設置 → 社内整備 → 届出 → 試験運用 → 本格稼働」の流れを想定して、少なくとも3〜6か月程度の準備期間を確保することが望ましいとされています。

導入までの一般的な流れは以下のとおりです。

フェーズ概要目安期間
① 事前準備(要件確認)制度要件・対象条件の確認。使用予定の点呼機器が国土交通省の認定を受けているかを確認。運行管理体制や通信環境の見直しを実施。業務前自動点呼開始前に、運転者の健康状態(血圧・体温)の平常時数値を10日文取得する必要がある。約1か月
② 機器・システム選定国交省が要件化している「映像・音声記録」「バイタルチェック」「通信安定性」等の基準を満たす機器を比較・選定。ベンダーとの契約締結を行う。約1か月
③ 機器設置・社内整備点呼実施場所にカメラ・端末・通信環境を設置。運行管理者・ドライバーへの教育、社内規程(点呼実施要領)の改訂を実施。約1〜2か月
④ 届出・申請運輸支局に「自動点呼の実施に係る届出書」を提出。必要書類(機器構成図・通信環境・運行管理体制など)を添付。運用開始予定日の10日前までに提出が必要。約0.5か月
⑤ 試験運用・検証実際の運行条件下で点呼を試行し、通信途絶・誤判定・記録不備などを検証。運行管理者立会いのもとで1〜2週間程度テストを実施。約0.5〜1か月
⑥ 本格運用開始問題がなければ届出受理日以降に正式運用を開始。点呼記録の保存・報告体制を継続的に整備する。継続運用

なお、業務前自動点呼を実施するには、国土交通省が認定した機器を使用する必要があります。認定機器は国土交通省のウェブサイト「運行管理高度化ワーキンググループ」のページで随時公表されています。

また、遠隔点呼・業務後自動点呼を既に導入している場合は、同一通信基盤・カメラを活用できるため、準備期間を短縮できる場合もあります。

5.業務前自動点呼の導入メリットと注意点

ここでは、業務前自動点呼導入による具体的なメリットと注意点を整理します。

(1)業務効率化とドライバー負担の軽減

業務前自動点呼の先行実施に参加した事業者への調査では、導入の意義として「運行管理者等の労働時間削減」を挙げた事業者が90.6%に達し、「点呼の確実性向上(78.8%)」、「健康起因の事故防止(73.0%)」が続きました。自動点呼の導入により、運行管理者が不在の時間帯でも、機器を通じて必要な確認を自動化できるようになり、労務負担の平準化と人員配置の最適化が進みます。

ドライバー側にとっても、点呼待機時間が短縮され、出庫前の準備をスムーズに行えるという利点があります。アルコールチェック・健康状態の申告・日常点検結果の入力などを一体的に行えるため、点呼プロセスの一貫性も向上します。

これにより、運行管理者の業務を分析・最適化し、人的リソースの有効活用と安全管理の標準化を同時に実現できます。

(2)記録の正確性・コンプライアンス向上

従来の対面点呼では、記録の記入漏れ・誤記・保存不備などのヒューマンエラーが発生するケースもありましたが、自動点呼では点呼内容が電子的に自動保存されるため、以下のように正確かつ一貫した記録管理が可能になります。

区分主な内容効果先行実施実績
映像・音声記録点呼時のやり取りを自動保存。本人確認や異常時の対応履歴を客観的に証明できる。記録改ざん防止・監査対応強化先行実施144事業者で総計11,797回の点呼を実施し、全記録を自動保存
バイタルデータ連携体温・血圧などの測定値を自動記録。健康状態の経過を可視化できる。健康起因事故の予防・証跡化血圧・体温の異常値検知により0.093%で点呼中断、運行管理者が即座に確認・対応
データ保存と報告機能点呼記録を1年以上保存し、国土交通省への報告体制を整備。法令遵守の継続的管理が可能事故・運行中止ゼロを達成、記録の電子化により管理業務の効率化を実現

さらに、記録の電子化によって監査・内部統制・労働基準監督署の調査対応も容易になり、企業全体の安全管理レベルが向上します。

業務後自動点呼・遠隔点呼と同様に、業務前自動点呼でも客観的証跡の確保が制度設計の中核に位置づけられています。

(3)なりすまし・通信トラブルなどのリスク対策

ドライバー本人以外による不正な点呼(なりすまし)や、通信障害による点呼データの欠損・遅延が発覚すると、事故・行政処分・事業停止といった深刻な結果を招くおそれがあります。国土交通省は業務前自動点呼の制度化にあたり、こうしたリスクへの対策を機器要件・施設環境要件として義務化しました。

リスクごとの対策例は以下のとおりです。

リスク対策例先行実施での実績
なりすまし・他人点呼・顔認証や生体認証による本人確認機能を搭載・点呼中の映像(全身・周囲)を自動記録し、運行管理者が確認できる体制を整備411事業者の先行実施で顔認証等による不正防止を実現
アルコール検知器の不正使用・検知器とカメラを連動させ、測定時の映像を同時記録・動作ログ・クラウド連携機能により異常検知時は警告を発信先行実施でアルコール検知による点呼中止19件(0.044%)、全て適切に運行管理者が対応
通信トラブル・機器故障・定期メンテナンスと監視体制を整備・通信不可時は自動的に「対面点呼」へ切り替える運用を規定先行実施で機器故障43件超が発生したが、全て対面点呼へ切り替えて運行継続

こうしたリスクマネジメントを徹底することで、「安全性の担保」と「信頼性の確保」を両立させる仕組みづくりが可能となります。先行実施では43,581回の点呼のうち事故ゼロを達成しており、国が定める厳格な要件により、従来の対面点呼と同等以上の安全性が確保されています。

6.まとめ

2025年4月30日に施行された業務前自動点呼は、ドライバー不足や2024年問題といった喫緊の課題に対応し、安全管理体制の高度化を促進する画期的な制度です。導入には一定の要件が求められますが、企業は業務効率化、記録の正確性向上、コンプライアンス強化といった多岐にわたるメリットを享受できます。なりすましや通信トラブルといったリスクを適切に管理することで、安全性の担保と信頼性の確保を両立させ、持続可能な事業運営に繋がるでしょう。

監修

10年にわたる物流会社での事務経験を持ち、現場実務に精通。2024年に貨物運行管理者資格を取得し、法令遵守と実務の両面から運行管理を支援しています。

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