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トラックバースとは?プラットフォーム、ヤード、高さごとの種類など

トラックバースとは、荷物の積み下ろしや積み込みを行う際にトラックを駐停車するスペースです。

本記事では、トラックバースの概要課題効率化した事例について解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

1.トラックバースとは

ここでは、トラックバースの概要について解説しています。

(1)トラックバースとは?

トラックバースとは、物流業において荷物の積み下ろしをするため倉庫にトラックを駐車・停車しておくスペースです。
「バース(berth)」という言葉は本来、船舶が港で荷役作業を行うスペースを指しますが、物流現場では「荷役作業スペース」を意味する業界用語として使われており、略して「バース」とも呼ばれます。

なお、以下の記事では近年注目を集めている、トラックバースの効率化に有効な予約システムについて解説しています。

(2)トラックヤードやプラットフォームとの違い

トラックバースと混同しやすいものにトラックヤードプラットフォームがありますが、これらは役割機能が異なります。それぞれの意味合いは、以下のとおりです。

トラックバーストラックが積み下ろしを行う専用スペース
倉庫・物流センターに沿って配置
トラックヤード・荷物の積み下ろし作業等を行うスペース全体
・トラック以外の車両も待機できる広い駐車エリア
・トラックバースはトラックヤードの一部に含まれる
プラットフォーム荷台と倉庫の間で積み下ろしを行うための構造設備
トラックバースとの違い
  • トラックヤード:トラック以外の運輸方法に対応しているかどうか
  • プラットフォーム:スペースではなく構造設備かどうか

プラットフォームはトラックの荷台と倉庫をつなぎ、フォークリフトやパレットジャックなどで効率的に荷物を移動できるよう設計されています。

プラットフォームとトラックバースは、役割と用途が異なる設備と理解する必要があります。

(3)トラックバースと併用される倉庫の種類

トラックバースと併用される設備には、高床式倉庫低床式倉庫の2種類があります。ここでは、それぞれの特徴を解説します。

①高床式倉庫(プラットフォーム型)

高床式倉庫とは床面が高い倉庫です。トラックの荷台と倉庫の床面の高さが同じであるため、トラックバースに駐停車したら荷台から少ない負担で荷物を移すことができます。

メリット・荷物の積み下ろしが効率的
・段差がなくて安全性が高い
・作業者の負担を軽減できる
・埃が入りにくく、湿気の影響を受けにくい
デメリット・重機がそのまま倉庫内に入ることができない
・建築費が高くなりやすい
適する運用シーン・荷物の入出庫が頻繁で複雑な場合
・配送時間がタイトで迅速な対応が必要な場合
・大量の貨物を扱う場合

高床式倉庫は、効率性を重視する物流現場や荷物量の多い施設で多く使用されています。

②低床式倉庫

低床式倉庫は倉庫の床面が地面と同じ高さに位置しており、トラックやフォークリフトなどが出入りしやすいという特徴があります。

メリット・建設コストの低減
・保守・管理が容易
デメリット・荷役効率が悪い
・雨や悪天候の際に浸水被害を受けやすい
適する運用シーン・スペースに限りがある施設
・コスト重視で運用したい場合
・荷役が少量
・低頻度である場合

低床式倉庫は比較的低コストで設置できるため、季節や需要に応じた短期利用にも柔軟に対応できます。小規模施設やコスト重視の運用に向いており、特定の条件下で効率的に活用できます。

2.トラックバースにおける問題と課題

トラックバースは渋滞や荷待ち時間の発生など、さまざまな問題や課題が伴います。ここではトラックバースにおける問題と課題について解説します。

(1)トラックバース周辺で渋滞しやすい

トラックバース周辺はトラックの駐停車や待機が重なることで、敷地内外での渋滞が発生しやすくなります。トラックバース周辺で恒常的な渋滞が発生している場合、主に以下の要因が考えられます。

  • トラックバース数の不足
  • 作業時間による非効率な運用
  • 待機場所の不足

たとえば積み下ろしを行うトラックの数がバースの許容範囲を超えている場合、順番待ちのトラックがバース周辺に停車するしかありません。またバース付近やトラックヤードにスペースがない場合、施設周辺道路での路上待機が発生し、近隣住民との往来の妨げとなります。
物流拠点の最適化については、以下の記事でご確認いただけます。

(2)荷待ち時間の発生

荷待ち時間の発生
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001409523.pdf

令和3年度に実施された、国土交通省によるトラック輸送状況の実態調査によると荷待ち1回あたりの待ち時間は30分~1時間が31.0%と最も多く、2時間超を超えているケースは12.9%です。

以下では、長時間の荷待ち時間から生じやすい問題について解説しています。

荷待ち時間の発生の要因の1つとして、非標準の荷姿による非効率な荷役作業が挙げられます。
近年は標準パレットを使用しフォークリフトなどでパレットごと荷降ろしを行う形態が一般化してきておりますが、車両の積載効率を上げる為にばら積みをし納品先でパレットへの積み替え作業が発生する形態も少なくはありません。その場合は人力での荷降ろしとなる為、荷役時間の増加・荷待ち時間の発生につながります。

また、以下の動画では荷待ち時間が長時間になってしまう事例のひとつをご確認いただけます。

①ドライバーの労働環境の悪化

積み下ろしの順番待ち等による長時間の待機は、ドライバーの身体的・精神的な負担を増大させます。ドライバーへの具体的な影響は、以下のとおりです。

  • 長時間拘束による疲労の蓄積
  • 休憩時間の不足
  • モチベーションや集中力の低下

長時間の待機によって実質的な労働時間が延びることで、休憩時間の確保が難しくなり、過労や健康への影響が懸念されます。これらは離職の原因となることもあります。ドライバーの離職が続けば負担はさらに大きくなり、人材不足や労働環境の悪化が進むでしょう。

厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」では、トラックドライバーの1日の拘束時間は「原則13時間以内(上限15時間)」となります。また荷待ち時間も拘束時間に含まれる為、注意が必要です。

ドライバーの連続運転時間と荷待ち時間については、以下の記事で詳しく解説しています。

②全体的な生産性の低下

荷待ち時間が長引くことで、スケジュールの遅延稼働率等の生産性にも悪影響を及ぼします。長時間の荷待ちによる業務への支障は、以下のとおりです。

配送スケジュールの遅延・他の配送先での遅延が生じる
・取引先企業からの信頼が低下
トラック稼働率の低下1台あたりの輸送件数が減少
コストの増加・人件費の増加
・燃料やメンテナンスコストの増加

荷待ち時間の発生は、物流業務全体の生産性に負の連鎖を及ぼし、コストの増加や業務効率の低下を招きます。

3.トラックバースの荷待ち時間を削減する方法

トラックバースの荷待ち時間を削減するには、トラックバースの数を増やす以外にもいくつか方法があります。

ここでは、トラックバースの荷待ち時間を削減する方法を紹介します。

(1)敷地内の動線を見直す

敷地内の動線を見直すことで移動にかかる時間を短縮でき、荷待ち時間の短縮につながります。動線見直しの一例は、以下のとおりです。

動線見直しの一例期待できる効果
進入・退場ルートの分離入退場の円滑化
一方通行規制対向車のすれ違いや交差を回避

入退場の分離一方通行規制により、円滑で安全性の高いルート設計が可能となります。さらにルート設計で標識やマーキングを導入することで、迷いや誤進入を予防する効果も期待できるでしょう。

(2)荷役機器の導入

荷物の積み下ろし作業を効率化できる荷役機器を導入することで、積み下ろし作業を迅速化し、待機時間を短縮することが可能です。

荷役機器ごとの効果も踏まえて選ぶことで、荷待ち時間の短縮を推進しやすくなります。

荷役機器の種類適する運用シーン
フォークリフト重量物の運搬がある場合
コンベヤーシステム小口配送が多い場合
ハンドリフトまたはハンドパレットトラック狭いスペースでの積み下ろしが必要な場合

状況に見合った荷役機器を導入することで、限られた人員でもスムーズな運用を目指すことが可能です。
改正物流効率化法物流効率化のために取り組むべき措置として、下記内容をもとに荷役等の効率化を図るよう、努力義務が課されています。

  • パレットその他の荷役の効率化に資する輸送用器具を導入
  • 一貫パレチゼーション(輸送→荷役又は保 管おいて同一パレットを使用)の実現のため 標準仕様パレット(縦1.1メートル、横1.1メートルのパレット)を使用する

(3)システムの導入

システムを活用することで、トラックの到着・出発の管理や、積み下ろし作業のスケジューリングを容易に行えるようになります。以下では、荷待ち時間の短縮に有効なシステムの種類を紹介します。

①バース予約管理システム

バース予約管理システムは、トラックの到着時間を事前に予約することで、バースの稼働率を高められます。

バース予約管理システムの導入効果
システム導入前の平均待機時間が83分から、導入後は24分と約70%の削減が実現したとされています。 また、倉庫側の業務効率としても取扱貨物量が約20%改善されています。
出典:https://www.mlit.go.jp/common/001182131.pdf

到着するタイミングとトラックバースの空き状況をリアルタイムで把握できるため、渋滞の発生を予防する効果も期待できます。

②配車システム

配車システムは、配送ルートの最適化や運行スケジュールの自動調整を行うことができます。配送先の場所や交通状況、時間帯などの複雑条件に応じた最適なルートを自動で提案するため、配車業務の効率化を推進することが可能です。

配車システムの取り組み事例
高知県を中心に全国配送を担う南国運送では、導入後1ヶ月で積み下ろし、待機時間が193時間(24.7%)の削減となりました。
出典:https://jta.or.jp/wp-content/uploads/2025/01/course2024dx.pdf

自動配車システムについて、詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

③輸送管理システム

輸配送管理システム(TMS)は、トラックや荷物の輸送状況を一元管理し、効率的な配車や配送ルートの最適化、リアルタイムでの車両追跡を行うシステムです。

輸送管理システムの導入事例
産業車両の大手豊田自動織機社では、システム導入により毎月の運行ダイヤ変更時に関係各所と調整に月間12時間費やしていたものが、6時間へと半減し業務効率化につながっています。
出典:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf

4.トラックバースの運用をシステムで効率化した事例

(1)六甲物流センター

引用:https://www.mlit.go.jp/common/001182131.pdf

六甲物流センターでは専用のウェブサイトを開設し、トラックバースを予約できる時間を提示できるようにしました。トラックの到着時間にあわせて荷役準備をすることで、待ち時間の短縮を図っています。

(2)株式会社 大田花き

引用:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-486.pdf

株式会社 大田花きでは、バース予約システムをもとにデータを分析し、ピークとなる時間とオフピークの時間を明確化しました。

ドライバーにオフピークの時間を目安にトラックバースに到着するよう誘導できるようになり、荷待ち時間の短縮につなげてます。

(3)福岡運輸株式会社

引用:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf

福岡運輸株式会社では積込みや荷下ろし待ちが課題となっていましたが、自社開発のトラックバースの予約・受付システムでリアルタイム情報の共有車両誘導を行うことで待機時間の削減および業務効率化につなげています。

同社のシステムは携帯電話との連動で順番が近づくとドライバーに連絡が届く仕組みになっています。

5.まとめ

トラックバースの運用効率を高め、荷待ち時間を削減するためには、システムの導入が有効です。
また「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」によれば、単なるデジタル化・機械化ではなく、それによりオペレーション改善や働き方改革を実現し、物流産業のビジネスモデルそのものを革新させることで、これまでの物流のあり方を変革する「物流DX」を推進していくこととしています。配送ルートの全貌を踏まえた効率的な動線設定により、待機時間の削減業務効率の向上につながります。

監修

10年にわたる物流会社での事務経験を持ち、現場実務に精通。2024年に貨物運行管理者資格を取得し、法令遵守と実務の両面から運行管理を支援しています。

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