トラックの積載率が高いほど、効率良く荷物を届けられていることを示します。
本記事では、トラックの積載率に関する基礎知識から向上させるメリットなどについて解説します。
1.トラックの積載率とは?計算方法、平均と推移
ここでは、トラックの積載率について、計算方法やその現状を踏まえて解説します。
(1)トラックの積載率とは
トラックの積載率とは、トラックが運べる最大積載量に対する実際に積み込まれている荷物の割合を表しています。
以下の表のように、積載率は輸送効率を測るための4つの指標のひとつとして、トラック運送の生産性を向上させるために活用されています。
積載率 | トラックの最大積載容量に対して、実際に積み込んだ荷物の割合 |
---|---|
実働率 | トラックの運行可能な日数のうち、実際に稼働した日数の割合 |
実車率(時間あたり) | 走行時間のうち、荷物を積んでいる時間の割合 |
実車率(距離あたり) | 走行距離のうち、荷物を積んでいる状態で走行した距離の割合 |
トラックの積載率が高いほど、多くの荷物を効率的に運ぶことができ、コスト削減や環境負荷の低減にもつながります。
一方で積載率が低い場合、トラックの空きスペースが多くなり、運送の効率が低下してしまいます。
そのため、運送会社にとって積載率の最適化は、収益性の向上や競争力の強化において欠かせない要素となっています。
(2)積載率の計算方法
積載率は、次の式で算出できます。
積載率 = (実際の積載重量 ÷ 最大積載重量)× 100(%)
例えば、最大積載量が10トンのトラックに対し6トンの荷物を積んだ場合、以下のように計算し、積載率は60%と求められます。
積載率=6トン÷10トン×100=60%
実際の積載重量とトラックの最大積載重量が把握できれば、積載率を求めることが可能です。
(3)トラックの積載率等の平均と推移
下図より、日本国内におけるトラックの積載率は2010年度以降、平均40%以下の低い水準で推移していることがわかります。
また、貨物1件当たりの貨物量や物流件数は、以下のように推移しています。
上記によると貨物1件あたりの平均貨物量が1990年の2.43トンから2021年には0.83トンまで3分の1近くまで減少していますが、物流件数はほぼ倍増していることがわかります。
積載率が低く、貨物1件当たりの貨物量も少ない一方、物流件数は大幅に増加していることから、積載率の低さがコストの増加やドライバーの長時間労働などの問題につながっていると考えられます。
また、これらの問題を解消するために、積載率を上げるための工夫が求められます。
2.トラックの積載率が減少している原因
トラックの積載率が減少している主な原因には、輸送の小口化とドライバーの高齢化による影響が挙げられます。
ここでは、トラックの積載率が減少している原因について解説します。
(1)輸送の小口化
輸送の小口化とは、1回の配送で運ぶ荷物の量が減少し、配送回数が増える現象を指します。多頻度小口輸送の増加と人口減による貨物量の減少が主な要因となり、輸送の小口化に至っています。
ここでは、多頻度小口輸送の増加と人口減による貨物量の減少について解説します。
①多頻度小口輸送の増加
多頻度小口輸送の増加は、EC市場の急拡大や配送ニーズの多様化によって生じています。
以下のグラフのように、インターネットの普及とスマートフォンの利用拡大により、個人の消費者向けのオンラインショッピングが急成長しました。
ECサイトから個人向けの注文が増えることで、企業は少量の荷物を個人へ迅速に届ける必要性が生じています。
また、企業は競争力向上のために個人向けの利便性を追求するサービス内容を展開しており、即日配送や翌日配送、特定の時間帯に合わせた配送などを行っています。
多頻度小口輸送が増加している背景には、個人向けオンラインショッピングにおける配送需要の高まりが大きく影響しています。
②人口減による貨物量の減少
少子高齢化による人口減少に伴い、消費活動が低下し、結果として輸送の小口化が進行しています。
消費が減少すると、地元企業の製品出荷量や生活物資の流通量も減り、トラックで運ぶ貨物量が減少するためです。
例えば過疎地へ荷物を輸送しても、貨物量が少ないことで実車率(走行時間のうち、荷物を積んでいる時間と距離の割合)や積載率が低く、空車率(トラックが荷物を積まずに走行する割合)も高くなります。
そのため、少子高齢化が進んでいる地域へ荷物を輸送するほど総合的な積載率も減少します。
(2)ドライバーの高齢化による影響
ドライバーの高齢化が進むと、身体への負担軽減を重視する動きにより積載率の低下に影響を与えます。
身体への負担を考慮すると運行時間の短縮や荷役作業の負担を軽減する配慮が必要となるためです。
労働力調査(トラック運送業の現状等について|国土交通省)によると、道路貨物運送業の就業者の45.2%が40歳~54歳という結果がであり、全産業と比較しても40歳~54歳の割合が多い傾向にあることが下のグラフからわかります。
輸送効率を重視しつつも、ドライバーの健康を守るための配慮が必要とされるため、結果として積載率の低下につながっています。
3.トラックの積載率を向上させるメリット
トラックの積載率を向上させるとコストや生産性の向上などのメリットがあります。
ここでは、トラックの積載率を向上させるメリットについて解説します。
(1)コストの削減
トラックの積載率を向上させることは、運送会社の輸送コスト削減に直結します。効率的な運行により、燃料費や人件費、メンテナンスコストの低減につながります。
コスト削減は、企業の収益性を高めるだけでなく、競争力の強化のためにも重要です。
経費削減により、持続可能な経営基盤を構築しやすくなります。
(2)社内リソースの確保
トラックの積載率向上は、運送会社が社内リソースを確保するためにも効果的です。
効率的な運行により生産性が向上し、以下のようにドライバーや管理者などの業務効率化が期待できます。
ドライバーの業務負担を軽減 | ・トラック1台あたりの輸送効率が向上・ドライバーの休息時間を確保しやすくなる |
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管理業務の効率化 | ・配車計画や倉庫の入出庫管理の効率化につながる・時間外労働時間の削減 |
再投資の余力を確保 | ・余剰資金で車両やシステムの導入などに投資 |
(3)CO2排出量の削減
トラックの積載率の向上により、運行回数の削減など効率的な燃料使用につながり、CO2排出量の削減に役立てられます。
CO2排出量の削減につながる理由は、以下のとおりです。
- 運行回数の削減
- 空車率の低下
- 走行距離の短縮
排出量削減は環境目標達成の一環として評価され、社会的な企業イメージの向上にもつながります。
顧客や取引先に対して、環境に配慮した取り組みを行っていることを示すことで、企業の競争力強化にも寄与します。
積載率向上は、運送業務の効率化と環境負荷の低減を同時に目指す際に有効な手段といえるでしょう。
4.トラックの積載率向上を目指す方法
トラックの積載率を向上させるためには、運送業務の効率化が課題となります。
ここでは、トラックの積載率向上を目指すための方法について解説します。
(1)車両の運行状況の把握
車両の運行状況を把握することで無駄な走行や待機時間を減らし、トラックの積載率の向上を目指すことができます。
運行状況をリアルタイムで把握するには、システムの導入が有効な選択肢となります。
運行状況の把握に役立てられるシステムの種類と機能は、以下のとおりです。
運行管理システム | 車両の運行状況や積載状況を一元管理できる |
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車両管理システム | 車両の現在地や稼働状況を把握できる |
上記のシステムを活用することによって、リアルタイムでの運行状況の把握や積載効率を最大化するためのデータ分析が可能となります。
ドライバーと電話などで直接連絡をしなくても、管理側でいつでも状況や位置の把握ができるため、積載率向上に関するサポートを強力に行うことが可能です。
運行管理システムと車両管理システムについては、以下の記事を参考にしてください。
内部リンク:KW「運行管理システム 物流」
(2)パレットサイズ等の見直し
積載率を上げるためには、パレット等のハード面(資機材)におけるサイズの標準化を図ることも効果的です。
例えば、規格化されたパレットを使用することで、積み込み時に隙間が生じにくくなり、より多くの荷物を積むことが可能です。
また、パレットのサイズを統一することで積載パターンを標準化しやすくなり、作業者ごとに積載量が異なるといった作業のばらつきを予防可能です。誰が作業を行っても一定の積載効率を維持できるため、作業の安定性も向上します。
(3)共同配送
共同配送とは、複数の企業が同じ配送ルートやエリアに向けて荷物をまとめ、トラックをシェアして配送する方法です。空車率の低減や積載率の向上を図ることができます。
共同配送は、単に個別企業の積載率向上にとどまらず、物流業界全体の輸送効率を改善する手段としても注目されています。
各企業が協力して物流ネットワークを最適化することで、持続可能な物流体制を業界全体で目指すことができます。
(4)荷主企業との連携
荷主企業と情報を共有し、配送スケジュールや荷物の集約方法を調整するなどで、効率的な積載が実現しやすくなります。
以下のような、荷主企業との連携における具体的な取り組み事例があります。
配送スケジュールの調整 | 荷主側と事前に連携して、配送日時を調整する等 |
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荷物の集約 | 出発前に計画し、複数の荷主からの荷物をまとめてトラックに積み込む |
情報のリアルタイム共有 | 在庫状況や出荷情報をリアルタイムで共有する |
連携には調整が必要な場合もありますが、適切なコミュニケーションと協力ができれば、大きな効果が期待できるでしょう。
5.トラックの積載率向上におすすめの運行管理システム3選
(1)トータル物流基幹システムAIR
トータル物流基幹システムAIRは、物流業務の効率化を強力に支援するクラウド型システムです。
自動配車機能により、最適な配送ルートを瞬時に算出し、無駄な走行を削減することで積載率の向上に貢献します。
- 物流業務の見える化と連動性
- どこからでもブラウザを通じて操作可能
- 自動配車機能による効率化のサポート
AIRは多機能でありながらも、操作性に配慮された管理画面を備えていることが魅力です。
以下でAIRの操作画面の一部をご紹介します。
メインメニュー | ・配送量やドライバーの状態をリアルタイムで監視 ・直感的に操作しやすいデザイン性 |
配送依頼登録 | ・登録業務の効率化 ・データアップロードによる登録も可能 |
配車計画 | ・配車後、地図で経路を確認可能 ・携帯アプリと連動し、配送進捗の確認ができる |
運転日報入力 | ・日報管理・入力の効率化 ・ドライバー用アプリの使用で運行情報が連携される |
請求 | ・輸送金額を荷主・明細単位ごとに確認できる ・確定後はExcel・PDFで請求書を出力可能 |
トラックの積載効率に悩む企業にとって、AIRは物流業務のスマート化を推進する有効な選択肢となるでしょう。
主要機能 | ・受注、配車、運転日報、請求などに対応した網羅的な機能 ・クラウドベースでどこからでもアクセスできる ・直感的な操作性にこだわった操作画面 |
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所在地 | 東京都千代田区丸の内2-2-1 岸本ビル10階 |
価格・料金プラン | こちらからお問い合わせできます |
(2)Cariot
Cariotは3秒に1回のライブ中継を行うことにより、全車両の位置情報と状態がリアルタイムで可視化されます。
- アルコールチェッカーの機能
- ライブ中継でさまざまな情報がリアルタイムで可視化
- 運転日報のデジタル化
危険運転の自動記録もできるため、安全運転の指導も行いやすくなります。
主要機能 | ・アルコールチェッカーBluetooth連携 ・ライブ中継 ・走行データの分析・蓄積 |
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所在地 | 東京都港区新橋5丁目13番4号 YMG新橋ビル6F |
価格・料金プラン | 契約台数とアカウントに応じた月額費用 |
(3)Loogia
Loogiaは高精度な経路探索によって配車計画の通りに自動配車ができるシステムです。
- 自動配車機能による効率化
- 配車計画・配送ルートの最適化
- シンプルな操作画面
計画通りに走行できない事態を発生させず、複雑な配送計画問題を解決して配車計画と配送ルートを最適化することで車両台数と人件費を削減します。
主要機能 | ・配送先の一括入力 ・配車計画の作成・修正 ・リアルタイムな配送進捗管理 |
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所在地 | 愛知県名古屋市中区栄2丁目11番30号セントラルビル9F |
価格・料金プラン | 初期費用15万円(税別)+月額費用20万円(税別) |
6.まとめ
トラックの積載率向上により、輸送コストや業務負担の削減やCO2排出量の削減などが可能です。
本記事で紹介している積載率向上に向けた方法を、取り入れやすいものから始めてみてはいかがでしょうか。