物流業界において、人手不足や消費者ニーズへの対応、法規制への対応等から配車の効率化が求められています。
この記事では配車効率化の概要や具体的な方法等について解説します。
1.配車の効率化とは?
ここでは、配車の効率化の概要や求められる背景等を解説します。
(1)配車の効率化とは?
配車の効率化とは、運送事業者における配車業務において、デジタルツールの活用等で配送効率を向上させることを指します。
配車の効率化に深く関わる配送効率は、実働率・実車率・積載率の3つの指標で数値化が可能であり、改善効果を数値で認識することが可能です。3つの指標と具体的な意味合いは以下のとおりです。
実働率 | 運行可能日数に対する稼働日数の割合 |
---|---|
実車率 | 全ての走行距離に対する荷物を積んで走った距離の割合 |
積載率 | 車両の最大積載量に対する積載量の割合 |
3つの指標が高ければ配送効率が良い状態にあるため、以前の状態との比較でどれくらい配車効率化を推進できているのかを具体的に認識することが可能です。
①配車表に記載される情報
配車表は、ドライバーや各車両のスケジュール等の情報が記載されています。配車表は、主に場所や時間等を記載します。
- 配送先
- 担当ドライバーおよび使用車両
- 出発時刻
- 到着時刻
- 所要時間
- 走行ルート
- 経由地など
配車表は物流や輸送業務を効率的に管理し、運行直前や運行中に活用することで、実務管理や関係者との情報共有を円滑にすることができます。
②配車を効率化するための方法
配車を効率化するための代表的な方法には、配車システムの活用や配送計画の見直し等があります。
方法 | 概要 |
---|---|
配車システムの活用 | 配送・運搬業務などに使用する車両を効率よく運用するために管理するシステムを活用する |
共同配送 | 異なる企業の荷物を同じトラックで配送し、高い積載率が目指せる |
配送計画の見直し | 高速道路の活用や物流拠点の再考等を行う |
倉庫管理システムの活用 | 倉庫内に保管している荷物などの情報管理を行う |
エクセルによる配車表の作成 | パソコンで配車表を簡易的にデジタル化する |
なかでも配車システムの活用は、配車表の作成を自動化できる手段として注目を集めています。
AIやアルゴリズムを活用することで、経験やノウハウに頼らず配車業務を遂行できるため、配車システムの導入により業務効率化と属人化の防止を同時に実現できます。
③エクセルによる配車表と配車システムの違い
配車業務に利用できるパソコンがあれば、エクセルで配車表を作ることも可能です。
ただし、エクセルでは手作業に依存するため、配車システムと比較すると手間がかかります。エクセルと配車システムには、配車表の作成において以下の違いがあります。
エクセル | 配車システム | |
---|---|---|
作成方法 | 手動で情報を入力して作成 | 配車計画を元に自動で作成 |
作業効率 | 修正や更新に時間がかかる | 修正や更新でも迅速 |
精度 | 人的ミスが発生しやすい | アルゴリズムやAIが計算するため高精度 |
コスト | 初期費用がほぼ不要 | 導入・運用費用がかかる |
分析・改善 | 手動で分析 | データ蓄積と分析が標準搭載 |
エクセルによる配車表は、手軽にデジタル化を推進したい企業やごく小規模な運送業務には適する場合があるものの、手動が前提となるため人的ミスが発生しやすく、配車業務の自動化や効率化を目指す場合には向いていません。
一方で配車システムは、配車表等の作成等の自動化を推進できるうえに、複数名でも情報共有がしやすく、変更等にも迅速に対応できます。複雑なルート管理や大量の配送件数でも、配車システムであれば高精度な配車表を作成することが可能です。
もしエクセルで配車表を作成する場合には、以下の動画が参考になります。
2.物流で配車の効率化が求められる理由
物流業において配車の効率化が求められる理由は、人手不足やニーズの変化等さまざまです。以下で配車の効率化が求められている理由を解説します。
(1)人手不足の解消
限られた人材を最大限に活用するために、配車業務の効率化が欠かせません。
労働環境が改善されれば、新規採用や定着率の向上にもつながります。
令和4年9月時点におけるトラック運転者の有効求人倍率は2.12で、求職者1人に対して2.12件の求人がある状況です。
全職業の平均と比較しても人手不足の傾向が強いため、物流業界におけるドライバー不足は特に深刻といえるでしょう。
(2)環境への配慮
2050年カーボンニュートラル実現に向けて、輸送に伴うCO₂排出量の削減や持続可能な社会の実現が求められている中、配車業務の効率化は移動距離の短縮や燃料消費の抑制を通じて、環境負荷の軽減に大きく貢献します。
(3)消費者ニーズの変化への対応
1990年から2021年にかけて、物流件数は13,656件から25,080件へと約1.84倍に増加しました。
一方で、ECの普及や消費者ニーズの多様化に伴い、1件あたりの貨物量は半減しています。さらに、2010年度以降、トラックの積載率は40%以下の低水準で推移しており、小口配送の増加や頻繁な配送ニーズの変化が、輸送効率を低下させる要因となっています。
こうした多頻度小口配送に関する課題を解決するには、限られたリソースを最大限に活用し、効率的な運行を実現する配車効率化が必要不可欠です。配車効率化は、輸送コストの抑制だけでなく、環境負荷の軽減にも貢献し、持続可能な物流の実現を後押しします。
(4)2024年問題への対応
2024年問題とは、働き方改革関連法に基づくトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制の適用開始による、労働力不足や輸送効率の低下等が懸念される課題です。
働き方改革法案によってドライバーの労働時間に上限が設けられることで、長距離の配送等が難しくなります。
2024年問題に何も対処しなければ、2030年には約34%の輸送能力が不足する見込みです。いかに効率よく上限の時間内で配送できるかが課題となります。
2024年問題について、詳しく知りたい方は以下の記事をご確認ください。
3.配車効率化を進めるうえでの課題
配車効率化が求められる一方で、効率化を推進するにあたってはさまざまな課題もあります。ここでは具体的にどのような課題があるのか解説します。
(1)配車業務の属人化
属人化とは、特定の個人に業務が依存し、その人物の経験やスキルがなければ業務が滞ってしまう状況を指します。
配車業務は熟練者が手作業でスケジュールやルートを計画するケースが多く、この属人化が原因で効率化が進まないことが少なくありません。配車業務の属人化がもたらす影響には、主にリスクの増大や業務効率の低下があります。
リスクの増大 | 担当者の不在や退職においてスケジュールに支障をきたす |
---|---|
業務効率の低下 | 他のスタッフがサポートしづらい環境になる |
属人化が進むと、予期せぬトラブルへの対応が遅れやすく、顧客満足度の低下やコスト増加につながる場合があります。
(2)需要や条件が変動しやすい
配車業務は需要や条件が頻繁に変動するため、突発的な変化への対応が求められ、配車効率化の推進が課題となることがあります。
たとえば、配送先や納品時間の変更が頻繁に発生する場合には、スケジュールの再調整が必要です。これにより、計画の修正や確認作業に時間が取られ、効率的な運行計画を優先しづらい状況が生じます。
また、繁忙期や天候不良といった外部要因も加わると、条件を踏まえながら適切な配車計画を立てる難易度がさらに高まります。その結果、効率化が後回しになるケースがあります。
(3)荷待ち時間の発生
荷待ち時間とは、荷物の積み込みや荷下ろしのために倉庫や荷主先で長時間待機する状況であり、数時間にわたるケースもあります。
荷待ち時間が配車効率化において課題となる理由は、全体的な効率に悪影響を及ぼすためです。荷待ち時間は、配車効率化において以下の影響を与えます。
稼働率の低下 | 稼働できない時間が増える |
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配送スケジュールの乱れ | 計画的な配車を困難になる |
労働環境の悪化 | モチベーション低下や離職率の上昇につながる |
荷待ち時間によりトラックが予定より長く待機し、稼働できない時間が増えます。
トラックが1回の配送に想定以上に拘束されると、次の配送やスケジュールに影響が出るため、稼働率が低下し、全体の輸送効率が悪化します。
(4)運用コスト
配車効率化において、コストを懸念して導入に踏み切れない企業も少なくありません。
運用コストの全貌を把握し、自社に必要な機能を具体化することで、コスト面の課題を解消することが可能となります。
配車効率化による燃料費削減や空車運行の減少、人件費の最適化といった直接的なコスト削減効果を見込むことで、導入コストを中長期的な投資と捉えられます。
AIや自動化ツールを活用することで、ルートの最適化やスケジュール調整が効率化され、時間やリソースの節約にもつながるでしょう。
企業が競争力を維持・向上させるためには、単純なコスト削減ではなく、効率化による総合的なメリットを考慮し、導入に踏み切る判断が重要です。
4.配車の効率化にシステムを導入するメリット
配車の効率化にシステムを導入すると、精度の高い配車計画の自動作成や労務管理の効率化等のさまざまなメリットがあります。ここでは、配車の効率化にシステムを導入するメリットを解説します。
(1)急な計画変更に対応
配車システムは、道路状況や車両の位置、稼働状況をリアルタイムに把握し、自動で最適な車両割り当てを行うことができます。リアルタイム情報の取得と更新やルート最適化機能により、急な変化にも柔軟に対応でき、運行計画の迅速な再調整が可能です。
機能 | 詳細 |
---|---|
リアルタイム情報の取得 | 工事による通行止めなどをリアルタイムで取得 |
ルート最適化機能 | 新しい条件に基づく最短ルートを自動で再計算 |
予測分析とシミュレーション | 配送計画に与える影響を瞬時にシミュレーション |
ルート選定における確実性と瞬発力を備えるため、顧客への確実なサービス提供に役立てられます。
(2)効率的な配送ルートを短時間で作成
配車システムは、リアルタイムの交通情報や道路状況、車両の位置情報を瞬時に反映し、配送先やスケジュールに最適化されたルートを僅かな時間で計算します。
手動でのルート作成では数時間かかる場合もある複雑な配車計画でも、配車システムなら数分で完了させることも可能です。
時間短縮により配車担当者が他業務にリソースを割けるようになれば、業務全体の効率化や人件費削減にも役立てられます。
(3)問い合わせ対応の工数を削減
配車システムを活用すれば、車両の位置情報や配送にかかる時間、目的地への到着予定時刻をリアルタイムで確認することができるため、顧客からの問い合わせにもスムーズに対応可能です。
GPSを活用した車両追跡機能や配送状況の自動更新機能が搭載されているため、位置確認でドライバーに直接問い合わせる手間を省略できます。
機能 | 詳細 |
---|---|
GPSを活用した車両追跡機能 | リアルタイムで車両の現在地を正確に把握 |
配送状況の自動更新機能 | 配送車両の進行状況をリアルタイムで記録 |
システムの種類によっては、遅延の予測機能や自動通知機能により、配送の遅延が見込まれる場合でも事前に顧客へアラートを送信することも可能です。
トラブル発生時の対応が迅速化し、業務効率化と顧客への信頼確保を同時に実現します。
(4)労務管理の効率化
配車システムには、ドライバーの稼働時間をリアルタイムで可視化し、自動的に分析する機能が搭載されており、ドライバーごとの労働時間や休憩時間を正確に把握し、労務管理に役立てることが可能です。
たとえば、システムの労働時間監視機能は、法定労働時間の上限に近づいているドライバーを自動的に検出し、アラートを通知します。
また配車計画の最適化機能を利用することで、ドライバーの稼働時間を均等化し、特定のドライバーに負担が集中しない計画を立案することも可能です。
(5)業務の属人化の解消
配車システムには、自動ルート最適化機能や配送計画テンプレートの活用といった機能が搭載されており、これらを活用することで、ベテラン社員が蓄積してきたノウハウをシステム上に反映することが可能です。
過去の配送データの分析機能を活用することで、過去の計画や実績を参考にした新たな計画作成がスムーズに行えるため、ノウハウや経験に依存しない一貫性のある業務運営が実現します。
(6)業務の生産性向上
配車管理システムは、出荷依頼書や配送依頼書を自動生成する機能が搭載されているため、手作業での情報転記や手入力の手間を大幅に削減することが可能です。
機能 | 詳細 |
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受発注情報の一元管理 | 受発注情報を集約し、必要な情報を瞬時に取り出せる |
書類作成の自動化 | 登録された情報を基に書類を自動生成 |
電子送信機能の活用 | 配送計画に与える影響を瞬時にシミュレーション |
リアルタイム情報共有 | 情報を全関係者にリアルタイムで共有 |
4.配車効率化に適したシステムの種類
配車効率化を実現するためには、業務内容や規模に応じたシステムを選ぶことが重要です。
ここでは配車効率化に適したシステムの種類とその特徴を紹介します。
(1)配車管理システム
配車管理システムは、配車業務に関連する各種情報を一元的に管理し、効率化を図るためのシステムです。
配車だけでなく、運行計画の立案やスケジュールの調整にも対応しているケースが一般的で、経験やスキルに依存せず、誰でもスムーズに配車業務を行えるため、業務の属人化解消にも大きく貢献します。
特徴 | 配車や運行に関する計画を立てられる |
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主な機能 | ・配車管理機能 ・自動配車機能 ・車両管理機能など |
(2)自動配車システム
自動配車システムは、配送ルートやスケジュールを自動で作成してくれるシステムで、配車業務の効率化を強力にサポートします。
どの配送先にどの順番で回るべきか、何台の車両が必要なのかといった配車計画を瞬時に立案することが可能であり、配車担当者の負担を大幅に軽減し、業務効率を向上させます。
特徴 | 配送ルートを自動作成できる |
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主な機能 | ・受注管理機能 ・配車管理機能 ・配送ルート最適化機能など |
(3)車両管理システム
車両管理システムとは、車両の運行状況や位置情報、稼働状況を一元的に管理し、車両やドライバーの情報をリアルタイムで把握でき、配車計画や業務管理の効率化に貢献します。
稼働データを蓄積し、車両ごとの稼働率や運用効率を分析することで、運行計画の改善にも活用できます。
特徴 | 車両の運行管理や位置情報管理などができる |
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主な機能 | ・車両の予約管理機能 ・車両の稼働管理機能 ・ドライバーの情報管理機能 ・安全運転支援機能 ・配送ルート最適化機能など |
(4)倉庫管理システム
倉庫管理システムは倉庫内の作業を効率化し、物流全体のスムーズな運営をサポートするシステムです。
直接的に配車業務に関与するわけではありませんが、倉庫作業を最適化することで、荷待ち時間の削減や作業効率の向上に寄与し、結果的に配車業務の効率化を促進します。
特徴 | 倉庫内の在庫をリアルタイムで把握し、入出庫作業を効率化する |
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主な機能 | ・入荷管理機能 ・出荷管理機能 ・在庫管理機能 ・棚卸し管理機能 ・ピッキング最適化など |
(5)配送管理システム
配送管理システムは、配送業務全体を一元管理するシステムで、配送計画の立案や進捗の確認、トラブル発生時の対応までを包括的にサポートします。
配送業務の計画から進捗管理、トラブル対応までを一元管理することで、業務の効率化とサービス品質の向上を実現します。
特徴 | 出荷から配送までの工程を管理する |
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主な機能 | ・配車計画機能 ・運賃管理機能 ・動態管理機能など |
(6)顧客管理システム
顧客管理システムは、顧客情報やニーズを正確に把握し、配送サービスの品質向上や顧客満足度の向上を実現するツールです。
物流業務の効率化だけでなく、顧客との関係強化や収益性向上にも寄与し、データ分析によって顧客のニーズを正確に把握し、配送サービスの質を向上させる効果も期待できます。
特徴 | 顧客情報を一元管理できる |
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主な機能 | ・顧客情報の一元管理 ・配送ニーズの把握 ・問い合わせ対応の効率化 ・自動通知機能など |
5.配車効率化でシステムを比較するポイント
配車効率化のためにシステムを導入する際には、業務の特性やニーズに合ったシステムを選ぶことが重要です。
ここでは、配車効率化でシステムを比較する際の重要なポイントを解説します。
(1)必要な機能を備えているか
配車業務を効率化し、コスト削減や顧客満足度向上を実現するためには、以下のような機能が重要です。
配車計画の自動化 | 最適なルートの自動生成による運行効率の向上が目指せる |
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ルート最適化機能 | 最適ルートを通知し、無駄な移動や燃料消費を削減できる |
リアルタイム追跡 | 配送状況の把握で、急な変更やトラブルにも柔軟に対応できる |
配送進捗管理機能 | 遅延や未配送の問題を早期に発見し、迅速に対応できる |
労務管理機能 | 日々における事務処理の効率化 |
上記の機能を活用することで、配車業務の効率化やコスト削減、顧客対応の向上、そして全体的な物流の最適化を実現できます。
(2)管理画面の操作性
システムを選ぶ際には、管理画面の操作性を慎重に確認することが重要です。具体的には、以下のポイントで操作性を確認します。
直感的な操作性 | 直感的なデザインになっているか |
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画面構成のわかりやすさ | 必要な情報にアクセスできるか |
情報の集約度 | 必要な情報が1つの画面に集約されているか |
操作性の良し悪しは、導入後のスムーズな業務運用や現場での定着率に直結します。
現場担当者がストレスなく利用できるシステムを選ぶことで、効率化を実現しやすくなり、導入効果を最大化できます。
(3)ベンダーの実績は豊富か
システムを選ぶ際に提供するベンダーの実績を確認することで、信頼性やシステムの品質に関する不安を防止できます。ベンダー実績を確認するポイントは、以下のとおりです。
導入実績数 | 具体的な実績が明示されているか |
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提供先企業の規模や業界 | 同業他社や自社規模に近い企業での採用例があるかどうか |
運営会社の信頼性 | 継続的なアップデートやトラブル対応が期待できるかどうか |
信頼できるベンダーを選ぶことで、配車効率化の成功に一歩近づくでしょう。
(4)導入支援はあるか
システムを導入する際、スムーズな運用開始と現場での定着を実現するためにも、導入支援が充実しているかどうかを確認しましょう。導入支援が不十分だと、操作方法がわからなくなる可能性や現場に混乱が生じるなどのリスクがあります。
導入支援は、操作マニュアルやトレーニングの提供、初期設定のサポートを確認します。
簡潔で実用的な操作マニュアルやFAQがあれば、現場での疑問解消に役立てることが可能です。
既存の業務フローに適合させるためのカスタマイズや連携機能の設定がスムーズに行えるかどうかも確認しておくと、導入時の負担を軽減できます。
6.まとめ
今回は、配車効率化の概要や具体的な方法等について解説しました。
配車効率化を目指すには、自社にあった機能を備えるシステムの導入がおすすめです。