小口配送の増加や慢性的な人手不足、物流コストの増加といった深刻な課題を抱える運送業界では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に注目が集まっています。
DX化を進めることで、業務効率化やコスト削減、ドライバーの負担軽減といった多くのメリットが期待できるでしょう。
本記事では、運送業におけるDX化が求められる背景から、具体的な導入方法やステップ、さらにDXを成功させた企業の事例まで解説します。
1.トラック輸送等の運送業においてDX化が求められる理由
DX(デジタルトランスフォーメーション)とはデータやAI・IoTといったデジタル技術を活用し、業務プロセスを改善しビジネスモデルそのものを変革させることです。
ここでは、トラック輸送等の運送業においてDX化が求められる理由を解説します。
(1)小口配送の増加
2016年からの5年間で、宅配便の取扱実績は約10.8億個増加しました。これは、近年のインターネットショッピングの普及により、消費者が少量の商品をオンラインで購入することが一般的になったことが背景にあります。
配送が多頻度化することで1回の配送で運べる荷物の量が減少し、トラックの積載率が低下しています。
効率的な配送計画が立てにくくなり、結果的に輸送効率の低下やドライバーの負担増加といった課題にもつながります。
(2)人手不足
統計によれば、2015年までの20年間で約20万人の運転従事者が減少し、2015年から2030年にはさらに3割の減少が見込まれています。
背景には、トラックドライバーという職業に対する長時間労働や業務負荷の高さといったネガティブなイメージが挙げられます。こうした要因から若年層の参入を妨げており、結果としてドライバーの平均年齢は全産業の平均よりも3〜6歳高い状況にあります。
さらに、道路貨物運送業では65歳以上の就業者の割合が全産業と比較して少なく、他産業に比べて高齢者の労働力活用が進んでいません。このままでは、人材不足に一層拍車がかかり、物流業界全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
(3)物流コストの増加
近年では、燃料費や車両維持費の上昇が物流業界に重い負担をかけており、従来の運用方法で効率的な配送を維持することが困難な状況にあります。
データからも物流コストの増加が明らかです。道路貨物輸送のサービス価格は2010年代後半にバブル期の水準を超え、過去最高水準に達しました。さらにJILSの物流コスト調査では、2021年度の売上高物流コスト比率が5.7%と、過去20年間で最大値を記録しています。
これらの数値は、エネルギー価格の高騰や輸送効率の低下が物流コストを直接押し上げていることを示しています。
(4)2024年問題への対応
2024年問題とは、トラックドライバーの労働時間の上限が年間960時間に制限されることにより、運送業界全体に影響を及ぼす問題です。トラックドライバーの年間労働時間は全産業平均に比べ約2割長いとされており、これを是正するために労働環境改善を目的とした上限規制が導入されました。
しかしトラックドライバーが働ける時間が少なくなることで、輸送力の低下や人手不足などの問題が生じ、従来の配送体制では業務の維持が困難となります。
2024年問題に対し、何も対策を行わなかった場合には2030年に34.1%の輸送能力が不足すると見込まれています。
トラックドライバーの労働時間短縮が進む中、限られたリソースで効率的に荷物を配送する方法を模索することが物流業界の課題となっています。
2.トラック輸送における運送業のDX化で期待できる効果
運送業におけるDX化は、デジタル技術を活用して業務を効率化し、コスト削減や人手不足といった課題を解決する手法です。トラック輸送においては、主に以下の効果が期待されます。
業務効率化 | 配送ルートの最適化や運行管理システムの導入による、移動時間の燃料消費を削減 |
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コスト削減 | 車両稼働率の向上や、手作業のデジタル化により運用コストの低減 |
人手不足への対応 | 自動化やAIの活用で労働負担を軽減し、労働環境の改善を実現 |
企業コンプライアンスの向上 | 労働時間管理のデジタル化やデータの一元管理を進めることで、法令順守を徹底できる |
脱炭素対策 | 燃料消費を削減し、効率的な配送計画を立案することで、CO2排出量を削減する |
ここでは、トラック輸送における運送業のDX化がもたらす具体的な効果を解説します。
(1)業務効率化
運送業のDX化はデジタル技術の導入により、人的ミスの予防や自動化などが可能となります。以下で業務効率化における効果を詳しく解説します。
①生産性の向上
運送業がDX化に取り組むことで、生産性を大幅に向上させることが期待されます。従来、手作業で行っていた在庫管理や入出庫手続きなどの業務をデジタル技術で自動化することで、人為的なミスを防ぎ、作業効率が飛躍的に改善します。
在庫の入力ミスが発生すると、誤配送や配送遅延が生じ、業務全体の流れが滞る可能性があり、場合によっては顧客満足度の低下や企業イメージの損失といった二次的な影響につながります。
しかし、DX化により在庫管理をシステム化し、データ入力やチェックのプロセスを自動化することで、人為的なミスを防止し、正確かつ迅速な配送を実現します。
②業務負担の軽減
運送業におけるDX化は、従業員の業務負担を大幅に軽減し、離職率の低下や人材の確保につながる重要な取り組みです。
たとえば、自動ピッキングロボットの導入で、ピッキング作業をロボットに任せることが可能となります。従業員は、ロボットの操作や監視を行うだけで済むため、過度な肉体労働から解放されます。
業務効率の向上と同時に、従業員の疲労軽減や安全性の向上が期待できます。
③業務の属人化を予防
運送業におけるDX化は、業務の属人化を防ぎ、効率的かつ安定的な運営を実現するために有効な手段です。
DX化により、技術を活用して業務をデジタル化・標準化することで、経験を問わず誰でも一定の水準で業務を遂行できる環境が整います。
標準化されたプロセスを導入することで、属人化によるノウハウの流出や退職による業務停滞のリスクを大幅に削減でき、教育コストの削減や作業効率の向上につながるでしょう。
(2)コスト削減
運送業がDX化を進めることで、以下のコスト削減が実現します。
書類関連コスト | ペーパーレス化による印刷費・郵送費・保管スペースの削減 |
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人件費 | 作業負担軽減で従業員数の最適化が可能 |
誤配送・再配達コスト | デジタル管理による誤配送・再配達の減少で不要な追加コストを削減 |
燃料費 | 動態管理や効率的な配送ルートの計画による燃料消費の削減 |
車両維持費 | 配車効率向上により車両使用数が減少し、整備費用や車両保険料が削減 |
通信・連絡コスト | オンライン連絡ツールの活用で電話代や従来型システムの通信コストを抑える |
在庫管理コスト | 在庫情報のリアルタイム化により在庫量を最適化し、過剰在庫や欠品リスクを削減 |
労務管理コスト | 勤務記録やシフト管理の自動化により、管理業務の負担軽減およびミス削減を実現 |
多様なコストを削減することで、企業における競争率の向上や利益拡大に役立てることが可能です。
(3)人材の定着率向上
DX化を推進することで従業員の負担が軽減され、人材の定着率の向上が期待されます。
デジタル化により業務の柔軟性が高まることで、リモートワークの導入やシフト調整の柔軟化といった、働きやすい環境づくりも可能となるでしょう。
DX化によって、運送業界の労働環境を根本から改善を図ることが可能です。
(4)企業コンプライアンスの向上
DX化による業務効率化は、従業員の長時間労働を削減し、労働環境の改善を通じて企業の法令遵守を徹底させ、社会からの信頼性向上にもつながります。
DX化で作業の標準化や自動化が進むことで業務の負担が軽減され、労働環境が良好な企業として認知度を高められ、優秀な人材の確保や取引先からの評価向上につながります。
さらに、データのデジタル化と一元管理によって記録の透明性が高まり、法的トラブルへの対応能力も向上させることが可能です。
(5)脱炭素対策
運送業界では2050年のカーボンニュートラル達成を目指し、2030年までにCO2排出原単位を2005年度比で31%削減する目標を掲げています。
2022年度における日本全体の二酸化炭素排出量である10億3,700万トンのうち、運輸部門は18.5%で1億9,180万トンであり、そのうち貨物自動車は運輸部門の38.0%で日本全体の7.0%に相当します。
効率的な輸送の推進により、運送業界は環境配慮型の産業として信頼を高めるだけでなく、脱炭素社会の実現に向けたリーダーシップを発揮できるでしょう。
3.運送業でDX化を推進する方法
運送業でDX化を推進する主な方法は、以下のとおりです。
手法 | 概要 |
---|---|
ペーパーレス化 | ・紙ベースの発注書や請求書をデジタル化 ・印刷代 ・切手代 ・保管スペースの削減 ・書類の検索 ・共有が容易に |
倉庫内作業の自動化 | ・ピッキングや梱包ロボットを導入 ・作業精度の向上と人手不足への対応 |
AIによるオペレーションの効率化 | ・配送ルートの最適化 ・配車業務の自動化 |
ブロックチェーン技術 | ・情報を一元管理し企業間での共有を容易化 ・リアルタイム追跡と進捗管理 |
システムによる配送の最適化 | ・配送管理システムでリアルタイム管理 ・道路状況を反映したルート最適化 |
ここからは、運送業でDX化を推進する主な方法を解説します。
(1)ペーパーレス化
ペーパーレス化を進めることで、印刷代や切手代などのコストを削減できます。
保管スペースの確保や検索時間の非効率性なども解消できるため、紙媒体の管理に際する時間や負担なども軽減することが可能です。
ペーパーレス化を推進する具体的な方法の一例は、以下のとおりです。
具体例 | 用途 |
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電子請求書システム | 請求書の発行・送信 |
クラウド型書類管理システム | 書類の一元管理 |
電子署名サービス | 契約書や同意書のオンライン署名 |
エクセルなどのツール | 在庫管理、顧客リスト、データ分析など |
各ツールやシステムにはそれぞれ異なる用途と利便性があるため、企業の規模や目的に合わせて最適なものを選定することが重要です。
電子請求システムや電子署名サービスは、初期コストや利用料金が発生する場合が多いものの、紙媒体の管理にかかる時間や手間を大幅に削減できます。その結果、効率的で持続可能な管理体制を構築することが可能になります。
(2)倉庫内作業の自動化
ロボットや専用システムを導入することで、倉庫内作業の自動化が進み、業務効率が飛躍的に向上します。具体的には以下のようなロボットやシステムがあります。
具体例 | 用途 |
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ピッキングロボット | 商品のピックアップを自動化 |
梱包ロボット | ダンボールの組み立て、封入、梱包作業を自動化 |
自動搬送ロボット(AGV) | 倉庫内の移動や物品の搬送を自動化 |
倉庫管理システム(WMS) | 在庫の入出庫管理、保管場所の一元管理 |
在庫追跡システム | RFIDやバーコードを利用による在庫状況の把握 |
AI予測システム | 需要予測や最適な在庫補充計画を自動作成 |
自動化を目的としたDX化では、ロボットやシステムの導入に初期投資が必要になることが一般的です。
しかし、これらを活用して各工程を最適化することで、作業負担の軽減や人件費の削減といった長期的なメリットを得られます。
導入当初のコストは高くても、効率化によるコスト削減や業務の安定性向上を通じて、結果的に高い費用対効果を実現できます。
(3)AIによるオペレーションの効率化
AIによる配送ルートの最適化や配車業務の効率化によって、無駄を排除した合理的なルートを自動で提案します。オペレーションの効率化を目的にAIを取り入れる方法には、以下があります。
具体例 | 用途 |
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配送ルート最適化システム | 道路状況、配送先、時間指定などの情報をもとに、効率的な配送ルートを自動算出 |
配車管理システム | 車両やドライバーのスケジュールをリアルタイムで管理し、最適な配車計画を作成 |
需要予測システム | 過去の需要データを分析し、特定地域や期間での需要を予測 |
AIを活用したこれらのシステムは、限られたリソースを効率的に配分するだけでなく、業務精度の向上や迅速な対応を実現します。結果として、企業の競争力強化や顧客満足度の向上に大きく寄与します。
(4)ブロックチェーン技術
ブロックチェーン技術は、業務の各工程で管理されていた情報を一元化するための技術で、運送業においてもその有用性が注目されています。
ブロックチェーン技術の特性である改ざんが困難な点が運送業における情報の透明性向上に寄与しており、具体的には以下の効果が期待されます。
活用例 | 詳細 |
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輸送履歴の記録 | 商品の保管地点や輸送タイミングを正確に記録し、関係者が即時確認できる |
品質管理の強化 | 輸送中の温度や湿度の記録を残し、食品や医薬品の品質を確保する |
取引プロセスの透明化 | 請求書・納品書・配送状況などのデータを記録し、改ざんリスクを削減する |
情報共有の円滑化 | サプライチェーン全体でのリアルタイム情報共有を実現する |
ブロックチェーン技術の導入により、企業間の連携が強化され、サプライチェーン全体の最適化が期待されます。関係企業全体で効率化を図ることが可能になります。
(5)システムによる配送の最適化
配送管理システムやルート最適化システムなどを活用することで、出荷から配送に至る各工程をリアルタイムで管理でき、配送状況の即時確認や顧客からの問い合わせへの迅速な対応が可能です。
配送の最適化に活用できるシステムの主な機能は、以下のとおりです。
リアルタイム追跡機能 | 配送状況をリアルタイムで把握し、顧客や管理者が進捗を確認できる |
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GPS連動型ルート最適化 | 道路状況や交通渋滞を考慮し、最短かつ効率的なルートを自動提案 |
運行スケジュール管理機能 | ドライバーの稼働状況や配送スケジュールを一元管理 |
自動データ統合機能 | 出荷情報、配送先情報、過去の配送データを自動で収集・分析 |
顧客対応支援機能 | 問い合わせに迅速対応するためのデータ提供 |
4.運送業のDX化を進める手順
運送業のDX化を進める手順は、以下のとおりです。
- 現状の把握
- 課題に対する優先順位を決める
- デジタルツールの導入・運用
上記のステップを段階的かつ計画的に実施することで、効率的にDX化を進めることができます。ここからは、運送業のDX化を進める手順を解説します。
(1)現状の把握
DX化を進めるためには、運送業務や物流プロセス全体を見直し、どこに課題があるのかを明らかにすることが重要です。
具体的には、過去のデータを活用して以下のような分析を行います。
配送遅延の原因特定 | 配送に時間がかかる要因を洗い出す |
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ミスの発生箇所の特定 | どの業務プロセスでエラーや非効率が発生しているかを明確化にする |
たとえば、配送遅延や誤配送が課題となっている場合、過去のデータを詳細に分析し、問題の根本的な要因を特定する必要があります。
配送遅延に関しては、原因がルート選択の不適切さによるものなのか、それともスケジュールの乱れによるものなのかによって、効果的な対策が異なります。
要因を特定することで、最適な改善策を導き出すことが可能になります。
(2)課題に対する優先順位を決める
どの課題から優先的にDX化を進めるかを決定することで、効率的に業務効率の改善を進められます。コストや人材といったリソースを有効活用するためにも、以下のような判断基準でどこからDX化を推進すべきかを判断しましょう。
業務への影響度 | 課題解決によって、どの程度業務効率や顧客満足度が向上するか |
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緊急性 | 解決が遅れることで、損失やリスクが発生する範囲 |
実現可能性 | 現時点でのリソースや技術で、どの程度早期に対応が可能か |
費用対効果 | 解決にかかるコストと、それによって得られる効果のバランス |
たとえば、ドライバーの拘束時間が増加していることが課題の場合、人件費の増大やドライバーの離職率の上昇といったリスクを伴いますが、上記の判断基準をもとに他の課題と比較することが重要です。
影響度や緊急性の高い課題を優先的に解決することで、DX化の効果を最大化し、迅速な改善が可能になります。
場合によっては、一つの根深い課題を解決することで、関連する問題も同時に改善できる可能性があります。
(3)デジタルツールの導入・運用
課題に応じたデジタルツールや技術を導入し、実際に運用を開始します。
ただし、市場には多種多様なツールが存在するため、以下のポイントを考慮して慎重に選定することが重要です。
課題解決力 | 自社の具体的な課題を効果的に解決できるか |
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使いやすさ | 従業員が直感的に操作でき、導入後の教育コストが抑えられるか |
コストパフォーマンス | 初期費用や運用コストが予算に見合い、導入効果が期待できるか |
拡張性と柔軟性 | 将来の業務拡大や新たな課題に対応できる設計になっているか |
選定したツールを導入するだけでなく、現場の運用状況に合わせてカスタマイズし、従業員からのフィードバックをもとに改善を重ねることで、さらにDX化を推進しやすくなります。
5.運送業の企業におけるDX化の導入事例
ここでは、運送業の企業におけるDX化の導入事例を紹介します。
(1)運行状況の可視化でダイヤ検証にかかる時間が半減
ある企業では、委託先の運送会社から運行実績を入手する際にダイヤ検証に時間がかかっており、自社で運行実績を確認する方法の確立に迫られていました。
そのような中で動態管理サービスの導入により、位置情報の取得や配送計画に対する実績、遅れなどがリアルタイムでの把握が可能となります。
毎月のダイヤ検証にかかる時間が12時間から6時間に半減したほか、車両の到着が遅れている場合の運行距離低減の見直しも図ることで業務効率化を推進しています。
(2)データ入力業務支援ツールの導入で月間400時間削減
ある企業では、従来のOCR(光学文字認識機能)を使用していましたが、手書き文字の読み取り精度が低く、帳票処理の多くを人力に頼らざるを得ない状況が続いていました。
そこでAIの学習機能を搭載したデータ入力業務支援ツールを導入し、手書き文字を正確に読み取ってデジタルデータ化する機能に加え、帳票の自動仕分けも可能となります。
導入の結果、点検記録や日報・請求書などのデータ入力業務にかかっていた作業時間を月400時間削減することに成功しました。また、従業員の精神的な負担が軽減され、業務の負担軽減にも寄与しています。
(3)バース予約・受付システムで荷待ち時間の低減
福岡運輸では、物流が集中するタイミングで積込みや荷下ろしに長時間の待機が発生しており、バースの効率的な運用が課題となっていました。
そこで、バース予約・受付システムを導入し、予約状況を可視化することで、関係者間での情報共有がスムーズになり、車両誘導が円滑に行えるようになりました。
システム導入後は、車両の待機状況がリアルタイムで可視化され、バース運用が秩序立てて管理できるようになりました。
待機時間が大幅に削減され、敷地内外での渋滞が緩和され、業務全体の円滑化につながっています。
(4)自動配車システムの導入で配車業務の標準化に成功
株式会社スーパーレックスでは、配送先の店舗数が変化したことで固定ルートの変更作業が頻繁に発生し、対応に多くの時間がかかっていました。さらに、配送ルートの設定には土地勘や経験が求められ、引き継ぎが難しいという課題も抱えていました。
こうした課題を解決するため、独自開発のAIを搭載した自動配車システムを導入し、コストや時間を最適化した配送ルートが作成できるようになりました。
それまで丸2日かかっていた配車計画作成が数時間で完了するようになり、配車業務が標準化され、当初の課題だった従業員間での引き継ぎの円滑化にも成功しています。
(5)倉庫管理システムの導入で生産性の向上
Johnstone Supplyは約450の卸販売店を展開しているものの、配送センター間で在庫点数などのデータに整合性が取れず、手作業による入力作業が増加していました。
そこで倉庫管理や労務管理に加え、3Dによるビジュアル分析機能などを備えたクラウド型の在庫管理システムを導入し、在庫管理から注文・調達・従業員管理まで、さまざまな業務情報を一元管理化しました。
導入により、在庫データの精度が99.9%にまで向上し、入力作業が削減され従業員の生産性が大幅に向上しました。
6.まとめ
ペーパーレス化や倉庫内作業の自動化に役立つロボットの導入、AIを活用した効率的な配送計画の立案など、多様な方法でDX化を推進できます。
人口減少による人手不足や、物流業界における法規制の強化といった避けられない未来に備えるためには、限られたリソースを有効活用することが不可欠です。