配送業務の効率化を実現する方法として、ITツールを活用した共同配送システムを導入している企業が増えています。ITツールを活用することで、ルートの自動選出などによって効率的な共同配送を実現可能です。
本記事では、共同配送システムの概要やメリット・デメリット、導入の流れを紹介します。
1.共同配送システムとは?複数社の荷物を1度に運ぶ仕組みのこと

まずは、共同配送システムの概要と方式などの分類を解説します。
(1)共同配送システムの概要
共同配送システムを導入すると、車両の数や配送回数を減らし、効率的な物流を実現できます。
共同配送システムを活用することで、企業ごとに分散していた配送距離を短縮し、結果として全体のルートを最適化することが可能です。
これにより、輸送コストの削減や燃料消費の抑制が実現し、より効率的な物流体制を構築できます。
また、共同配送システムは連携による持続可能な物流が構築できる仕組みとして国土交通省も推奨しています。
以下は共同配送システムによる納品時間の平準化や物量・配送回数の平準化の成果であり、運送会社と荷主企業の双方にとって良い効果をもたらしていることを示しています。


(2)共同配送システムの方式

共同配送システムの種類は配送センター集約方式とミルクラン方式があります。
以下でそれぞれについて解説します。
①配送センター集約方式
配送センター集約方式とは、共同配送を行う企業が配送センターを共有する方式です。
配送前に各企業は荷物をセンターへまとめ、届け先ごとに荷物を仕分けして1度に配送します。
センターに荷物を集約することで、複数拠点へ転送する手間がなくなり、人件費や設備投資にかかる費用も削減できます。
②ミルクラン方式
ミルクラン方式は、巡回集荷とも呼ばれ、トラックが複数の企業や拠点を巡回しながら荷物を集荷する物流方式です。
この方式の名前は、牛乳メーカーが生乳を調達するために牧場を巡回していたことに由来しています。
メーカー側が自社車両を用意する必要がない場合が多いため、メーカーの車両維持費や運行コストの削減が期待できることが、全体の特徴として挙げられます。
また、運送会社としても複数の予定された拠点を一度に巡回することで、効率的な集荷と輸送が可能になり、配送業務の負担を軽減できる利点があります。
以下の動画では、ミルクラン方式の具体的な事例を解説していますので、詳しく知りたい方はご覧ください。
(3)共同配送システムの種類
一般的にいわれる共同配送システムとは、荷主共同配送と輸送業者共同配送の2種類です。
輸送業者間共同配送と荷主共同配送は、具体的なアプローチと解決したい課題の焦点などが異なります。
具体的なアプローチ | 解決したい課題の焦点 | |
---|---|---|
荷主共同配送 | ・複数の荷主が荷物をまとめて1社の配送業者に依頼・荷物を効率的に積載 | ・荷主側の配送コスト削減・荷主間で効率的な物流を実現 |
輸送業者共同配送 | ・配送業者がエリアを分担して配送・遠距離配送を途中で引き継ぐなど協力して効率化 | ・輸送業者間で負担を分散・広範囲配送や負担の大きいエリアの効率化 |
荷主共同配送は1社の配送業者が複数の荷主の荷物をまとめて配送する仕組みであるのに対し、輸送業者間共同配送は複数の配送業者が協力してエリアや業務を分担しながら配送を行う仕組みです。
以下ではそれぞれを詳しく解説します。
①荷主共同配送
荷主共同配送とは、複数の荷主がそれぞれの商品を1社の配送業者にまとめて委託し、共同で配送を行う物流方式です。
たとえば、異なるメーカーの商品が1台のトラックに積載(混載)され、最適なルートを経由して配送先に届けられます。
配送ルートは配送業者が一括して管理するため、配送車両やドライバーの稼働が効率化され、無駄な運行が削減されるのが特徴です。
以下は、荷主共同配送のメリットとデメリットです。
メリット | ・荷主企業の自社車両維持費や人件費を削減・空車走行や運行距離の削減・トラックの稼働台数の減少によるCO2排出量の削減・広範囲の配送ネットワークを利用できる |
---|---|
デメリット | ・各企業の納期や配送スケジュールを調整する必要がある・荷物の積載順や誤配送を防ぐための管理体制が求められる |
②輸送業者間共同配送
輸送業者間共同配送は、複数の配送業者が協力して配送業務を分担する形態です。
複数の配送業者が連携し、それぞれの得意エリアや特有のリソースを活用することで、全体の配送効率を高めることを目的としています。
輸送業者間共同配送のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット | ・業者ごとの業務負担が軽減・燃料費や人件費を抑えられる・広い配送エリアにも柔軟に対応しやすい・輸送における二酸化炭素排出量を削減 |
---|---|
デメリット | ・運行スケジュールや配送情報をスムーズに共有できる体制の構築・コストや利益の分配方法などのルールの構築が必要になる・サービスの一貫性を保つための調整が必要 |
輸送業者間共同配送では、複数の配送業者がエリアごとに担当を分けることで配送の効率化が可能です。
2.共同配送システムが求められる背景

ここでは、共同配送システムが求められる背景を解説します。
(1)2024年問題
2024年問題とは、トラックドライバーの時間外労働が960時間に制限されることを起点に人材不足や輸送力の低下といった様々な問題が生じることを指します。
時間外労働の制限により労働環境の改善が期待される反面、ドライバーがこれまで通りに収入を得られなくなり、離職が進む可能性があります。
なぜなら現状のトラックドライバーの平均年齢は他業種よりも高く、給与の減少を不安視する声が多いためです。
以下は、トラックドライバーの平均年齢と時間外労働規制に対する意識調査の結果です。


共同配送システムは時間外労働の制限下でも限られた人材のリソースを有効活用できる手段として注目を集めています。
(2)コスト削減

物流業界を取り巻く問題として、燃料などの物流コスト高騰も挙げられます。
2023年には、1L当たりの軽油価格がリーマンショック時に匹敵する165.8円に達しました。
原油価格は世界情勢に大きく影響を受けており、直近5年間で上昇傾向にあります。
1度で複数企業の荷物を運ぶ共同配送システムは、空車率や積載率の改善に寄与するため燃料費の削減に役立てられます。
(3)環境問題への対応
共同配送システムで無駄な走行を抑制し、配送回数や距離を減らすことができれば、その分排気ガスの削減が可能です。
世間的に企業の社会的責任を重要視する声が高まり、脱炭素への取り組みを投資家へアピールする物流企業も増えています。
共同配送を導入することで、環境負荷の少ない効率的でサステナブルな配送を実現できます。
3.共同配送のメリット

共同配送には、配送の効率化や収益性の向上などのメリットがあります。
ここでは、共同配送の包括的なメリットを解説します。
(1)配送の効率化
共同配送では届け先が同じ複数社の荷物を1度に配送することができるため、積載率の向上と労働時間の削減による配送効率化につながります。
共同配送システムでは、トラックの積載率を向上させることが可能です。
1度で可能な限り多くの荷物を運べるため、空荷や少ない荷物しか載せずに配送が行われるリスクを回避できます。
また、共同配送システムは労働時間の短縮にも役立ちます。
荷物の届け先が同じであれば、配送用トラックは1つの配送ルートをたどって配送するのみで完了します。
無駄のない最適なルートで配送を行えるようになると、ドライバーの労働時間短縮が実現可能です。
(2)収益性向上
共同配送により効率的に荷物を集めることでトラックの稼働率を最大限に高められます。
さらに配送スピードが高まることで、納品までのリードタイムが短くなり、届け先の満足度が向上します。
最終的にはリピーターや新規顧客が増え、多面的な収益性向上につながるでしょう。
(3)人手不足の解消

帝国データバンクによると、物流業界では人手不足を感じる企業が、全業種と比べて約1.44倍となっています。
共同配送は稼働するトラック数やドライバーの労働時間を削減・短縮できるため、限られた人手でも効率よく仕事が進められる仕組みの構築を目指すことができます。
また、共同配送のために倉庫業務などを効率化するシステムを導入すると、荷物の集荷時間・待機時間の削減が可能です。
結果的に配送にかかる無駄な時間を削減し、ドライバーの負担が少ない労働環境実現につながります。
4.共同配送のデメリット

ここでは、導入前に抑えておくべき共同配送のデメリットを解説します。
(1)配送の計画・管理調整が難しい
共同配送システムの実現には、協力企業間での協力が必須となります。
複数の企業が荷主として関わるため、自社だけで配送計画を決定することができません。
共同配送の実施前に配送先・ルート・時間・費用などを事前に相談して確定する必要があり、場合によっては柔軟な計画・管理調整が困難になります。
またリアルタイムで荷物を追跡することが困難なため、トレーサビリティシステムの改修や共同利用が求められます。
(2)事故・イレギュラー対応がしにくい
先述の通り、共同配送システムでは事前に協力企業間で決めたスケジュールでの配送が行われる必要があります。
事故による責任の所在が不明瞭になる場合があり、想定しないトラブルが起こった場合の対応についても、協力企業間で話し合っておく必要があります。
5.共同配送システムの実現に役立つツールの活用事例
(1)荷主マッチングサービスの利用

荷主マッチングサービスは、配送ルートや費用感が類似している荷主同士を結びつけ、共同配送効率の最適化を目指します。
AIを利用して精度の高いマッチングを提供できるシステムも存在しており、共同配送の協力企業を探すのに役立ちます。
スポット配送を共同配送化したり、繁忙期の間だけ共同配送を行ったりと、柔軟な運用をすることが可能です。
(2)ハンディターミナルの活用

ハンディターミナルは、倉庫業務でよく使われる、バーコードスキャンやデータ入力が簡単に行える小型の機器です。
棚や荷物に貼り付けたバーコードをハンディターミナルで読み取り、ピッキングや検品を正確かつ迅速に行えます。
倉庫業務を効率化することで、共同配送を実施するまでのリードタイムを短縮できます。
ハンディターミナルを使えば、どの荷物がどの配送先に向かうのかを瞬時に確認できるため、人的ミスを減らし、スケジュール通りの配送を行えます。
加えて、リアルタイムで配送状況の確認が可能なため、各企業への情報連携がしやすい点も大きなメリットです。
(3)シャトル式自動倉庫の導入

シャトル式自動倉庫とは、シャトル台車を活用して入出庫を行う自動倉庫システムです。
台車が商品が保管されている棚と作業スタッフの間を往復し、自動で荷物が運ばれます。
倉庫スタッフの歩行距離が短くなると、迅速なピッキングが可能で、配送準備の時間短縮に寄与します。
共同配送システムでは、巨大な保管倉庫で複数企業の荷物を管理することが一般的です。
そのため、大量の荷物を効率的に保管できるシャトル式自動倉庫の活用が注目されています。
導入に際して初期コストがかかりますが、運用コスト削減と倉庫業務効率化による長期的な投資効果が期待できるシステムです。
(4)WMSクロスドッキングの導入

WMS(倉庫管理システム)とクロスドッキングを組み合わせることで、在庫管理の負担軽減と倉庫スペースの有効活用を実現できます。
WMSとは、倉庫や配送センターにおける在庫管理を効率化するためのソフトウェアシステムです。
WMSがあれば、商品名や配送先など荷物の情報を一元管理でき、需要予測データとの連携により、タイムリーな配送計画を立てられることで顧客満足度の向上にもつながります。
一方、クロスドッキングとは、荷物の保管を行わずに物流センターで仕分けして配送を行う仕組みです。
共同配送システムでは、各社が同じ配送センターへ荷物を集荷するため、倉庫業務を高速化することが重要です。
クロスドッキングを行うと、入出庫を円滑化し、荷物を次々に配送に回せるため、在庫の滞留を防ぎスピーディな物流を実現できます。
6.共同配送システムツール導入・運用の流れ

共同配送システムツール導入・運用の一般的な流れは、以下のとおりです。
- 要件定義・課題点の整理
- ベンダー(導入支援業者)選定
- 導入スケジュール作成・進行管理
- 実装・テスト
- 社員教育・運用開始
それぞれの順序を解説します。
(1)要件定義・課題点の整理
共同配送に際して、自社にとっては配送計画の立案が課題なのか、荷物の追跡が課題なのかを特定できれば、適切なシステム選びが可能です。
課題を把握することで、改善のインパクトを推定でき、社内の決裁者や利害関係者へシステムのメリットを具体的に伝えられます。
(2)ベンダー(導入支援業者)選定
共同配送システムツールの導入・運用は自社だけでは実現が困難なことが一般的なため、システムを外注して自社で利用可能な形にしなくてはなりません。
導入の方法としては、自社に合わせて開発するか、既に開発済みのシステムのパッケージを購入することが挙げられます。
なおツールの種類には、スマホからオンラインで配送管理ができるクラウド型や、自社の設備に設置した端末で運用するオンプレミス型があります。
自社にあった機能を確認し、複数のベンダー(導入支援業者)からシステムを選定することが重要です。
(3)導入スケジュール作成・進行管理
共同配送システムの導入にあたり、要件定義やベンダーとのやり取りから得た情報をもとに、導入プロジェクトの全体的なスケジュールを作成します。
システム導入に際して業務プロセスの変更がある場合、現場スタッフやベンダーの意見を反映させ、負担の少ない計画を立てましょう。
進行管理においては進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて計画を修正する柔軟性も求められます。
(4)実装・テスト
実装段階では、ベンダーが提供するシステムを自社の業務に適合させる作業が中心です。
倉庫での荷物管理や荷物追跡システムが自社の運用フローと合致するよう、カスタマイズが必要になる場合が考えられます。
実装が終われば、テスト運用を繰り返し、システムが想定通りに運用できるかを確認し、問題ないと判断でき次第、共同配送システムツールの本運用を開始しましょう。
(5)社員教育・運用開始
共同配送システムの本運用にあたり、現場で働く従業員が適切にツールを扱える必要があります。
適宜、研修やOJTなどを実施して社員教育を行い、ツールの利用を推進しましょう。
7.まとめ
共同配送システムで人手不足や効率的な配送の仕組みを整備するためには、企業間が協力し配送網を整えることが重要です。
共同配送システムの構築には、ITツールの利用が便利です。