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トラックドライバーの残業時間は?実態や平均、2024年問題の影響

働き方改革関連法の改正2024年問題は、どちらも労働時間の上限規制年次有給休暇の取得義務に関する取り決めですが、結果としてトラックドライバーの残業時間に大きな影響を与えています。

本記事ではトラックドライバーにおける残業時間の実態平均2024年問題がトラックドライバーに与える影響、その対策についてをわかりやすく解説します。

目次

1.トラックドライバーの残業時間について

トラックドライバーは業務形態や労働環境などから、他業種よりも残業時間が多い傾向にあり、さらに少子高齢化や需要増加も相まって、ドライバー1人のマンパワーに頼った運営に偏っていました。

しかし令和2年度の厚生労働省の「過労死等の労災補償状況について」によると道路貨物運送業・郵便業の過労死等の労災請求件数、支給決定件数は他業種よりも多く、こういった重大な問題を背景に労働時間の上限規制が導入されました。

1週間あたり40時間を超える労働時間が⽉45時間を超えて⻑くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まると指摘されています。
参考:時間外労働の上限規制わかりやすい解説|厚生労働省

以下の動画では2010年代のトラックドライバーの状況に関する解説であり、すでに過労による危険性が問題になりながらも、そうせざるを得ない仕組みについて詳しく解説しています。

ここでは、トラックドライバーにおける残業時間の実態について、実際のデータをもとに解説します。

(1)トラックドライバーにおける残業時間の現状

1日の拘束時間は13時間以内を基本とし、延長する場合でも16時間を限度としています。

しかし以下の「トラック運転者の労働時間等に係る実態調査事業」の図では、令和2年時点で拘束時間の延長を行うトラック事業者66.3%であり、実態として長時間労働が常態化していることがわかります。

引用:https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000883704.pdf

トラックドライバーはその業務内容から拘束時間を延長せざるを得ない状況となりやすく必ずしも使用者に問題があるとは限りません拘束時間が延長する主な要因は以下のとおりです。

  • 交通渋滞
  • 荷待ち時間
  • 慢性的な人手不足
  • 悪天候による作業効率の低下

このような現象はトラック運転手やトラック事業者にとって対処が難しく、また、荷主との折り合いなど、残業時間が増えている背景にはさまざまな問題が関連しています。
また、長距離ドライバーは4時間おきに30分の休憩が義務付けられており、高速道路のサービスエリアでは休憩のトラックであふれ駐車スペースを確保するのに時間がかかるため、さらに拘束時間が延長する原因となっています。

(2)トラックドライバーの年間労働時間

拘束時間が長いことから、必然的にトラックドライバーの年間労働時間も長くなる傾向にあります。

厚生労働省の統計によれば、トラック運転業務に従事する労働者の年間総労働時間は、全産業平均を約400時間も上回っています。

引用:https://hatarakikatasusume.mhlw.go.jp/truck.html 

長時間労働の要因として、人手不足、荷主の協力不足、荷役能力の不足などいろいろありますが、特に、荷物の積み込みや荷降ろし時の待機時間が指摘されています。そのため、待機時間を短縮できれば、ドライバーの総労働時間削減に直結し、長時間労働による負担の軽減につながるともいえます。

以下の記事では、荷待ち時間の改善方法について幅広い状況を踏まえて解説しています。

2.労働基準法改正によるトラックドライバーの残業時間への影響

2019年4月1日からの段階的な働き方改革関連法の施行により、トラックドライバーの時間外労働も2024年4月から年間960時間という明確な上限が設定されました。

働き方改革関連法とは、労働基準法を含む複数の労働関連法の改正をまとめたものです。この規制は基本的にすべての労働者に適用されますが、運送業者に対しては時間外労働の上限規制に特例があります。

ここでは、労働基準法改正によるトラックドライバーの残業時間への影響について解説します。

(1)労働基準法改正前(2024年3月31日まで)

労働基準法が改正される前は、36協定を締結することで、以下のように週40時間を超える時間外労働が許可されていました。

通常時月45時間、年間360時間
特別条項付き年720時間、月100時間未満

通常の36協定では、時間外労働の上限は月45時間・年360時間とされていますが、業務が繁忙期などでどうしてもその上限を超える必要がある場合、特別条項を付けることで一時的な超過が可能でした。

さらに、2024年3月31日まではトラックドライバーなどの自動車運転者業務には、時間外労働の上限規制が適用されておらず、代わりに以下のような独自基準が設けられていました。

拘束時間1か月293時間以内(36協定を締結している場合は、年6回まで320時間が可能)
※2024年3月31日まで
休息時間連続して8時間以上確保
運転可能時間2日平均で1日あたり9時間以内

労働基準法の改正前まで、トラックドライバーが年960時間を超える残業をしても、使用者が罰則を受けることはありませんでした。

そのため長時間労働が常態化しやすい状況であり、また、長時間労働ありきの運営をしている運送会社も少なくありませんでした

(2)労働基準法改正後(2024年4月1日以降)

2024年4月1日以降には、時間外労働の上限規制勤務間インターバル制度が労働基準法の改正によって定められています。

①時間外労働時間の上限規制

2024年4月からの働き方改革関連法施行により、トラックドライバーにも時間外労働に年間960時間という明確な上限が設定されています。

ただし拘束時間を延長せざるを得ない理由には、災害や悪天候、交通渋滞などの制御が困難な要因もあることから「月100時間未満」「2〜6か月平均80時間以内」といった規制からトラックドライバーは除外されています。

この特例により、繁忙期には月100時間を超える残業も可能ですが、年間総量で960時間を超えないよう他の月で調整が必要となります。そして、これらの上限規制に違反した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。(参考:https://jsite.mhlw.go.jp/fukui-roudoukyoku/content/contents/001600695.pdf

以下でトラックドライバーの時間外労働時の上限規制に関する内容を年間・月間・1日あたりでまとめました。

年間960時間まで
月間100時間未満※2〜6か月平均80時間以内
1日拘束時間が13時間を超えないことを原則とし、最大でも15時間まで※14 時間超は週2回までが目安
参考:トラックドライバーの 新しい労働時間規制が始まります!|国土交通省

将来的には一般労働者と同様の規制適用が検討されていますが、現状の物流現場では困難です。当面は年間上限を守りながら、業界全体で段階的な労働環境改善が求められています。

②割増賃金の引き上げ

2023年4月1日の働き方改革関連法改正により、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は、中小企業においても50%以上に引き上げられました。

以下の図では、従来との違いを表しています。

2023年3月までは時間外労働が月60時間を超えた場合、中小企業が25%、大企業のみ50%でしたが、どの企業でも割増賃金率が一律となります。

たとえば月80時間の時間外労働をしていたドライバーの場合、60時間を超える20時間分の割増率が25%から50%へと倍増するため、企業の人件費は従来より増加します。

さらに、政府主導の賃上げによりベースの賃金が上がっていくことが、より人件費の高騰に拍車をかけるでしょう。
燃料価格高騰やインフレなど経営環境の厳しさを増す中、人件費増加は中小運送会社の経営を圧迫し、業界再編廃業の加速につながる恐れも懸念されています。

③勤務間インターバル制度

勤務間インターバル制度とは、ドライバーの健康維持と過労防止を目的に、連続勤務間に一定の休息時間を義務付ける取り決めです。従来は改善基準告示で「8時間以上」の休息確保が求められていましたが、新制度では9〜11時間という目標値が定められてます。

以下の図は、11時間のインターバルを確保する場合のスケジュール例です。

上記のスケジュール例では1日あたりの休息時間を3時間延長しており、単純計算で1日の稼働可能時間が3時間短縮されることを意味します。その結果、長距離運行や深夜配送を行う事業者は、運行スケジュールの維持が困難となる場合があります。

今までの生産性を維持するための具体的な対応策としては、以下のものがあげられます。

  • 労働時間そのものの短縮
  • 複数ドライバーによるリレー方式の導入(例:中継輸送や共同配送など)
  • 配送エリアの再編物流拠点の増設 など

輸送効率の向上に役立てられる共同配送については、以下の記事をご覧ください。

3.2024年問題によるトラックドライバーの残業時間への影響

2024年問題とは、働き方改革関連法によって懸念される、労働時間売上・利益の減少などの運送事業者全体に関わる問題です。働き方改革関連法と2024年問題は、対象業界施行開始時期などが異なります。

働き方改革関連法2024年問題
対象業界全業界(物流業界を含む)物流業界(特に自動車運転業務)
施行開始時期2019年4月から段階的に施行2024年4月に施行開始
主な規制内容労働時間の上限規制や年次有給休暇の取得義務

ここまでは労働基準法改正によるトラックドライバーの残業時間への影響を解説しましたので、ここからは運送事業者が2024年問題によって、具体的にどのような影響があるのかを解説します。

なお、以下の記事では2024年問題の解決策を解説していますので、具体的な影響よりも解決策にご興味のある場合にはご覧ください。

(1)残業時間の上限規制による労働時間の短縮

2024年4月から施行される働き方改革関連法により、トラックドライバーの残業時間上限が年間960時間(月平均80時間)に制限されます。その結果、1日の稼働時間が短縮され、特に長距離輸送業務では運行計画の見直しが不可欠です。

トラック事業者が直面する課題には、以下のようなものが挙げられます。

  • 配送体制の構築
  • 人件費などのコスト増加への対応
  • 荷主や顧客との調整

たとえば、これまで月100時間以上の残業が常態化していた事業者にとっては、大幅な労働時間削減が避けられません。特に長距離輸送業務では、運行計画の見直しが不可欠です。

以下の記事では長距離トラックの2日運行における効率化などを解説しています。

(2)労働時間短縮による売上・収入の減少

今までトラック運送業は長時間労働を前提とした事業モデルで成り立っていましたが、残業時間の上限規制によって輸送キャパシティの大幅な縮小は避けられません。
国の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」では、2024年問題に対して対策を講じない場合、2030年には輸送能力が34.1%不足する可能性があると試算されています。

輸送能力低下は直接的な売上減につながり、薄利多売型の中小運送会社には深刻な打撃となる恐れがあり、運賃適正化や配送方式の変更などの抜本的な経営改革が急務となります。
大手企業では宅配需要の増加を取り込み増収していますが、中小企業では利益を確保するのが難しい状況となっており、大手と中小の業績格差が広がっています。

売上高100億円以上は2.5%にとどまる一方で、5億円未満が58.1%を占めており、また、運送業全体の利益率は2.4%と苦しい状況となっています。(出典:https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201189_1527.html

(3)人手不足の深刻化と労働環境の悪化

時間外労働トラックドライバーの収入減少は、すでに深刻な人材不足にある状態により拍車をかける可能性があります。基本給に残業手当を上乗せすることで高い収入を得ていた既存のドライバーは、年間960時間の残業上限により、大幅に収入を落とすため、より条件の良い他業種への転職が加速する恐れがあります。

連鎖退職が止まらなければ、既存のドライバーへの業務負担が加速する悪循環に陥ります。とくに経験豊富なベテランドライバーの流出は、輸送品質低下にも直結する深刻な問題です。

また、若年層の早期離職も大きな課題となっています。
入社3年以内に、3人に1人が離職している状況で、物流業界の将来にも暗い影を落としています。

2024年に人手不足を原因とする倒産は、前年の260件を大きく上回る342件が発生し、そのうち物流業が46件で全業種の約13%を占めています。(出典:https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250109-laborshortage-br2024/

(4)運送コストの上昇による配達料金の高騰

ドライバーの残業時間制限による輸送能力低下と、人件費上昇という二重のコスト圧力を受け、多くの運送会社は運賃値上げを避けられない状況に直面しています。

コストの増加分は、最終的に配送料金として荷主企業や個人消費者に転嫁されるため、配達料金の高騰が避けられませんが、一方的な値上げは顧客離れを招く恐れがあります。

そのため、運送会社には単なる価格転嫁ではなく、配送効率化によるコスト削減新たな付加価値提供による差別化戦略が求められるでしょう。

もちろん、荷主側の理解を得る努力も必要です。また、2023年度に運賃見直しの議論が進められ、国土交通省により2024年6月1日から新しいトラックの標準的な運賃が施行され、見直し前の運賃と比べ、約8%の値上げとなりました。

(5)残業時間削減による宅配サービスの遅延・影響

トラックドライバーの労働時間規制により、物流業界全体の輸送キャパシティが縮小するため、時間指定や翌日配送といった配送サービスの質に変化が生じる可能性があります。

ネットショッピングの急速な普及により、消費者は迅速配送を求めるようになりましたが、このようなサービスはドライバーの長時間労働により支えられていた側面があります。よってドライバーの稼働時間が減少することによって、配送サービスの質にも影響を与える恐れがあります。

Amazonでは、通常の配送よりも数日遅れて配達されることを承諾することで商品代金が割引される「無料ゆっくり配達」が実施されています。
配送業者の負担を減らす観点から、このようなサービスは今後も広まっていく可能性があります。

4.2024年問題やトラックドライバーの残業時間の削減に向けた対策

ここからは、2024年問題とトラックドライバーの残業時間を削減するための具体策について、システムの活用やリードタイムの調整を例に解説します。

(1)システムの活用

2024年問題を乗り越えるための最も効果的な対策のひとつが、ITシステムの導入による業務効率化です。

たとえばAIを活用した配車・配送計画システムでは、最適なルート設計積載効率の向上を自動化し、ドライバー1人あたりの生産性を飛躍的に高められます。

以下の記事では、そのような自動配車システムについて、具体的におすすめのシステムを含めて解説しています。

このようなシステムの導入には初期投資を要しますが、長期的には人件費削減業務効率化という二重の効果をもたらす戦略的投資といえるでしょう。

たとえば愛知県の豊田合成㈱の物流センターでは、AIカメラで荷台の積載率を解析し、1台当たりの積載率を100パーセントに近づけることにより、稼働台数を減らす取り組みがされています。(出典:https://www.toyoda-gosei.co.jp/news/details.php?id=1221

(2)リードタイムの調整

従来の物流スケジュールは、ドライバーの長時間労働を前提に組まれていたため、労働時間規制下では根本的な再構築が必要です。

たとえば、以前は毎日実施していた遠距離輸送について、隔日運行に切り替えることで、ドライバーは十分な休息時間を確保しながら法定労働時間内での運行が可能になります。

運行頻度の調整により、1回あたりの輸送量が増え、積載効率の向上コスト削減の両立も期待できるでしょう。

ただし、リードタイムの調整は荷主企業の理解と協力なしには実現できません。物流会社と荷主が共同でサプライチェーン全体の最適化を図り、輸送体制や生産体制などの見直しをする必要があります。
日本のほぼ中央に位置する愛知県では、物流センターが多数設置され、リレー輸送のハブとして機能しています。

(3)荷待ち時間の削減

荷待ち時間は、業務全体において非生産的かつドライバーの拘束時間を増加させる要因となっています。

そのため、荷待ち時間を削減することは間接的にドライバーの稼働時間を増加させることにつながります。

国土交通省の調査によれば、1運行あたり平均1時間34分もの荷待ち時間が発生しており、非生産的な時間を削減することが2024年問題への重要な対策です。

出典:国土交通省 トラック輸送状況の実態調査結果(概要版)

荷待ち時間の削減に有効な手段として、主に以下の方法が挙げられます。

  • バース予約受付システムの導入
  • パレット化の推進

バース予約受付システムを導入することで、トラックの到着時間が分散され、荷役作業のスケジュール化が可能になるため、無駄な待機時間を大幅に削減できるでしょう。

また、パレットを使用した荷役に移行することで、従来の手作業による積み降ろしよりも作業時間を削減できます。
株式会社NX総合研究所の2023年5月の資料によると、国全体のパレット化可能な貨物輸送量について、標準的な規格・運用のパレットの利用による年間効果は、コストが6,867億円(現状比16%)、作業時間が2.3億円(現状比32%)削減できる試算となっています。(出典:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/content/001611716.pdf

さらに、岡山市の鶴信運輸では、車体と荷台を分離できるスワップボディコンテナ車両を導入し、積み下ろしにかかる時間を4~5時間から20~30分へと10分の1にまで短縮できました。(出典:https://jsite.mhlw.go.jp/okayama-roudoukyoku/content/contents/002158524.pdf
このスワップボディコンテナ車両は通常のトラックと形状は変わらないので、トレーラーとは違いけん引免許が要らず、人材確保にも問題ありません。

(4)勤怠管理を強化する

年間960時間の時間外労働上限勤務間インターバル制度は、違反すれば罰金や罰則の対象になる恐れがあるため、より正確な労務管理が求められています。トラックドライバー独特の複雑な勤怠管理に対し、人的ミスを排除するには、GPSと連動したデジタル勤怠システムの導入が有効です。

車両の位置情報と連動した勤務記録により、リアルタイムで労働時間を把握でき、上限に近づいた際には自動アラートで管理者に通知する機能などを備えています。
他にも、生体認証(顔認証)機能付きのシステムでは不正打刻を防止でき、自動集計機能により集計作業の効率化や計算ミスの防止が可能になるなど、有益な機能がたくさんあります。

また、システムをアップデートすることにより、法改正や最新の制度にも適時対応できるので、法律に詳しくなくても安心して業務に取り組めます。
適切な勤怠管理は、法令遵守だけでなく、ドライバーの健康管理と安全運行にも直結する重要な取り組みとして重視されています。

5.まとめ

2024年問題をはじめとした人手不足が深刻化している物流業界において、物流業務の効率化は非常に重要です。
勤怠管理システムやバース予約受付システム、配車計画システムなどを導入することで、2024年問題の解消につなげましょう。

監修

宅配ドライバーとして10年以上ハンドルを握り、運行管理者(貨物)資格で培った安全運行・労務管理の知見をわかりやすくお届けします。

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