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【2025年版】改善基準告示とは?物流業界の課題と対策、改善例等

2024年4月、トラック、バス、タクシー運転手の働き方を大きく変える改善基準告示が改正されました。ドライバーの労働時間や休息期間が厳格化され、物流業界は新たな対応を迫られています。

本記事では、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示) と、企業が自社の労働環境をどのように改善していくべきかについて、詳しく解説しています。

目次

1.【2024年4月から適用】改善基準告示とは

自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(通称:改善基準告示)」は、トラック、バス、タクシーなどの自動車運転者の労働時間、休息期間、運転時間などについて、労働条件の向上を図るために定められた厚生労働大臣告示です。

2022年に改正が行われ、「働き方改革関連法」による時間外労働の上限規制(2024年4月から自動車運転業務にも適用され、原則として年960時間となります)や、過労死等の防止の観点から、より厳しい基準が2024年4月1日から適用されています。

ここでは改善基準告示にもとづく拘束時間と休憩時間について詳しく解説します。

(1)拘束時間について

拘束時間とは、労働時間と休憩時間を含む使用者に行動を制限される時間のことを指します。改善基準告示では、1日、1ヶ月、1年のそれぞれに上限が設けられています。

引用:https://jsite.mhlw.go.jp/nara-roudoukyoku/content/contents/001495605.pdf

①トラック運転者の拘束時間

改正後のトラック運転者の拘束時間は以下のようになります。

1日の拘束時間原則として13時間以内、最大15時間
1ヶ月の拘束時間原則として284時間以内
1年の拘束時間原則として3300時間以内

1日の拘束時間は原則13時間以内です。14時間を超えるのは、1週間につき2回が目安とされています。宿泊を伴う長距離貨物運送の場合(1週間の運行が全て長距離貨物運送で、一の運行における休息期間が住所地以外の場所である場合、かつ一の運行の走行距離が450km以上)、1週間につき2回に限り、最大16時間まで延長可能です。

1日の拘束時間について、13時間を超えて延長する場合は、14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努める必要があり、連続することも望ましくありません。

引用:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000306033.pdf

1ヶ月の拘束時間は原則として284時間以内です。労使協定がある場合でも、1年のうち6ヶ月までは310時間まで延長可能ですが、1年の総拘束時間は3400時間を超えないこと、284時間を超える月が連続3ヶ月を超えないこと、1ヶ月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努めることが求められます。労使協定がない場合は1ヶ月の拘束時間が284時間を超えること自体が違反となります。

1年の拘束時間は、3300時間以内です。労使協定がある場合は、3400時間まで延長可能です。労使協定がない場合は、3300時間を超えること自体が違反となります。

(2)休憩時間について

改善基準告示における休憩時間は、労働基準法第34条に定められた休憩時間とは別に、運転の中断として求められる場合があります。また、勤務と次の勤務の間の休息期間も重要な要素です。

①トラック運転者の休憩時間

改正後のトラック運転者の休息期間は以下のようになります。

1日の休息期間勤務終了後、継続して11時間以上与えること
宿泊を伴う長距離貨物運送の場合1週間につき2回に限り、継続8時間以上とすること

1日の休息期間は、勤務終了後、継続して11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らないことが決まっています。宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、1週間につき2回に限り、継続8時間以上とすることができます。ただし、この場合、一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与える必要があります。

休息期間のいずれかが9時間を下回る場合は、一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与える必要があります。特に長距離貨物運送の場合、住所地における休息期間が、それ以外の場所における休息期間よりも長く確保されるよう努める必要があります。

②フェリーの利用

トラック運転者が勤務の中途においてフェリーに乗船する場合、フェリーに乗船している時間は、原則として、休息期間として取り扱われます。ただし、減算後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回ってはなりません。フェリーの乗船時間が8時間(2人乗務の場合は4時間、隔日勤務の場合は20時間)を超える場合には、原則としてフェリー下船時刻から次の勤務が開始されます。バス運転者も同様に、フェリー乗船時間は原則として休息期間とすることができます。

(3)運転時間について

運転時間とは、1日の運行でドライバーがハンドルを握って運転する時間の合計のことをいい、1日平均の上限が設けられています。

①トラック運転者の運転時間

トラック運転者の運転時間については、現行の内容が維持されます。

2日を平均した1日あたり9時間以内

2日を平均した1日あたり9時間以内です。2週間を平均した1週間あたり44時間を超えない必要があります。

「2日平均で9時間」とは、特定の日を起算日として前後の2日間を区切った際に、いずれの2日間の平均も9時間を超えてはいけないという意味ではなく、特定日とその前日または翌日のいずれかの平均が9時間以内であれば違反とはなりません。

(4)連続運転時間について

連続運転時間とは、一定の休憩を挟まずに連続して運転できる時間の上限を指します。

①トラック運転者の連続運転時間

トラック運転者の連続運転時間は4時間以内です。運転時間内には、1回あたり連続10分以上、かつ、合計30分以上の運転の中断が必要です。

10分未満の運転の中断は、3回以上連続してはいけません。運転の中断は、原則として休憩とすることとされましたが、業務の実態等を踏まえ、短期的には見直しが難しい等の特段の事情がある場合には、運転の中断時に必ず休憩を与えなければならないものではなく、荷積み・荷卸しや荷待ちを行ったとしても、直ちに改善基準告示違反となるものではありません。ただし、中断時に適切に休憩が確保されるような運行計画を作成することが使用者には要請されます。

高速道路等のサービスエリアまたはパーキングエリア等に駐車または停車できないことにより、やむを得ず連続運転時間が4時間を超える場合には、4時間30分まで延長することができます。特例は、一回の連続運転時間につき1回限りです。常態的に混雑していることを知りながら、連続運転時間が4時間となるような運行計画をあらかじめ作成することは認められません。サービスエリア等には、コンビニエンスストア、ガスステーション、道の駅も含まれ、高速道路に限らず一般国道などに併設されているものも対象となります。

(5)特例とその他

自動車運転業では、道路状況など様々な事情により、いくつかの特例が認められています。

①分割休息(休息期間の特例)

トラック運転者の場合、1ヶ月間程度をめどに、全勤務回数の2分の1を限度として、休息期間を拘束時間の途中および拘束時間の経過直後に分割して与えることができます。分割された休息期間は、1回当たり継続3時間以上とし、2分割または3分割とします。

2分割の場合の合計は10時間以上、3分割の場合は合計12時間以上の休息期間を与える必要があります。(例:3時間+7時間、3時間+4時間+5時間)休息期間を3分割する日が連続しないよう努める必要があります。

バス運転者の場合も、1ヶ月程度を限度とし、全勤務回数の2分の1を限度として分割休息が可能です。分割された休息期間は、1回当たり継続4時間以上とし、2分割の場合の合計は11時間以上とする必要があります。3回以上に分割することはできません。

②2人乗務(ツーマン運行)の特例

自動車に運転者が2人以上乗務し、車両内に身体を伸ばして休息できる設備(ベッドなど)がある場合、トラック運転者の1日の最大拘束時間を20時間まで延長でき、休息期間を4時間まで短縮できます。さらに、休息のためのベッドまたはそれに準ずる設備があり、勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を与える場合は、最大拘束時間を24時間まで延長できます。この場合において8時間以上の仮眠時間を与える場合には、拘束時間を28時間まで延長することができます。バス運転者の場合は、同様の条件で1日の最大拘束時間を29時間まで延長でき、休息期間を5時間まで短縮できます。

③隔日勤務の特例

引用:https://jsite.mhlw.go.jp/nara-roudoukyoku/content/contents/001495605.pdf

タクシー運転者の隔日勤務については、前述の拘束時間、休息期間の項目で解説した通り、特例的な基準が適用されます。トラック、バス運転者についても、業務の必要上やむを得ない場合に、一定の条件の下で隔日勤務に就かせることが認められています。

④予期しえない事象

新告示には、「予期し得ない事象」への対応が盛り込まれました。事故や故障、災害など、通常では予期しえない事象に遭遇し、一定の遅延が生じた場合について、対応した時間が一定の範囲で控除されます。

具体的には、客観的な記録が認められる場合に限り、予期しえない事象に対応に要した時間を、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間の規制から除くことができます。

次のいずれかの事象により生じた運行の遅延に対応するための時間が該当します。

1日の拘束時間運転中に乗務している車両が予期せず故障した場合
1ヶ月の拘束時間運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航した場合
1年の拘束時間運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖されたこと又は道路が渋滞した場合
4週間を平均した1週間の拘束時間異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となった場合

※当該事象は「通常予期し得ない」ものであり、平常時の交通状況から事前に発生を予測することが可能な道路渋滞等は該当しません。

2.改善基準告示に違反した場合の罰則

改善基準告示は、法律ではなく厚生労働大臣告示であるため、直接的な罰則の規定はありません。しかし、労働基準監督署の監督指導において改善基準告示違反が認められた場合、その是正について指導が行われます。今回は、罰則対象について紹介します。

(1)運送事業者への罰則

改善基準告示に違反した場合、直ちに罰金や懲役といった罰則が科されるわけではありません。改善基準告示違反が、道路運送法や貨物自動車運送事業法の運行管理に関する規定などに重大な違反の疑いがあるときは、その事案が地方運輸機関へ通報されることがあります。

さらに、改善基準告示を遵守しないことは、過労運転による事故のリスクを高め、企業の社会的信用を大きく損なう可能性があります。取引先や求職者からの信頼を失い、事業継続に悪影響を及ぼすことも考えられます。

令和4年の監督指導の状況を見ると、自動車運転者を使用する事業場のうち、44.9%で改善基準告示違反が認められており、主な違反事項は最大拘束時間、総拘束時間、連続運転時間などです。これは、改善基準告示違反が決して軽視されるものではなく、監督指導の対象となる可能性が高いことを示しています。

実際に、違法な時間外労働や改善基準告示の上限を超える運行に対し、労働基準監督署が是正勧告や指導を行っている事例も報告されています。

引用:https://jsite.mhlw.go.jp/nagano-roudoukyoku/content/contents/houdou5-25.pdf

(2)運行管理者への罰則

改善基準告示自体に運行管理者個人への直接的な罰則はありません。

しかし、運行管理者は、事業者が関係法令や改善基準告示を遵守し、安全な運行体制を構築する上で重要な役割を担っています。運行管理者の怠慢により、改善基準告示違反が常態化し、重大な事故が発生した場合などには、道路運送法や貨物自動車運送事業法に基づき、運行管理者資格の取消しや一定期間の業務禁止といった処分が科される可能性があります。

また、運行管理者が作成する運行計画が、意図的に改善基準告示に違反する内容であった場合や、違反を認識しながら是正を怠った場合には、事業主と同様に、地方運輸機関への通報や捜査機関による捜査の対象となる可能性も否定できません。

(3)ドライバーへの罰則

改善基準告示は、事業者が運転者の労働時間等を管理するための基準であり、ドライバー個人に対する直接的な罰則はありません。しかし、ドライバーが改善基準告示の規制時間を超えて運転した場合、事業者の運行管理義務違反に繋がる可能性があります。また、過労運転は道路交通法に違反する可能性があり、安全運転義務違反として罰則の対象となることがあります。

さらに、事業者の就業規則等において、改善基準告示を遵守することが義務付けられている場合、違反したドライバーに対して何らかの社内処分が科される可能性も考えられます。

3.改善基準告示の主な注意点

改善基準告示を遵守するためには、単に数値を守るだけでなく、背景にある考え方を理解し、日々の運行管理に活かすことが重要です。主な注意点を紹介します。

(1)運行計画と実際の労働時間の基準を実際に満たしているか

運行計画で改善基準告示の基準を守っていても、実際の労働時間が基準を超えている場合は違反となります。運行計画はあくまで目安であり、道路状況、交通状況、荷待ち時間など、予期せぬ要因によって実際の労働時間は変動します。そのため、運行中や運行後の記録をしっかりと確認し、必要に応じて運行計画を柔軟に修正することが重要です。

例えば、荷主都合による長時間の荷待ちは、ドライバーの拘束時間を不必要に長くする要因となります。事業者は、荷主に対して改善基準告示の内容を周知し、適切な着時刻や荷待ち時間の設定を求めるなど、連携を図る必要があります。厚生労働省も、発着荷主等に対する要請等の取組を開始しています。

また、「予期し得ない事象」への対応時間を除く特例がありますが、客観的な記録が必要であり、単に運転日報に記載するだけでは認められない場合があります。

(2)改善基準告示における期間の定義

改善基準告示では、「1日」「1ヶ月」単位で労働時間の基準が定められていますが、一般的な数え方とは異なる場合があることに注意が必要です。

「1日」は、始業開始から起算して24時間をいいます。そのため、始業時間によっては、労働時間が重複してカウントされる場合があります。例えば、月曜日の始業が8時、火曜日の始業が7時の場合、月曜日の8時から24時間後は火曜日の8時となり、火曜日の7時から8時までの1時間は、月曜日と火曜日の両方の拘束時間としてカウントされます。

「1ヶ月」は、原則として暦月をいいますが、就業規則や勤務割表等で特定の起算日が定められている場合には、その起算日から起算した1ヶ月となります。例えば、起算日が1日であれば月末までが1ヶ月となりますが、起算日が5日であれば、翌月の4日までを1ヶ月とします。労使協定における期間の起算日も同様に考えることができます。

なお、「1日」でダブルカウントされた時間は、「1ヶ月」の集計には含まれません。「1週間」の起算日は、事業場の就業規則や労使協定等で定めた期間の初日となります。

これらの期間の定義を正しく理解し、日々の勤務管理や労働時間集計を行うことが、改善基準告示の遵守の第一歩となります。

4.改善基準告示を守るためのポイント

改善基準告示を遵守し、ドライバーの健康と安全を守るためには、事業者とドライバー双方の取り組みが不可欠です。以下に、主な取り組みについてご紹介します。

(1)ドライバーが自律的に基準を守る仕組み作り

事業者は、ドライバーに対して改善基準告示の内容を十分に周知徹底する必要があります。改正された点、特に拘束時間や休息期間の変更、連続運転時間の中断方法、予期し得ない事象への対応などを具体的に説明し、理解を深めることが重要です。

また、ドライバー自身が自分の労働時間を正確に把握し、自律的に基準を守れるような仕組み作りが必要です。運転日報の正確な記録の徹底:始業・終業時刻、運転時間、休憩時間、運転の中断時間、荷待ち時間などを詳細に記録することで、自身の労働時間を可視化できます。

無理のない運行計画の作成運行管理者とドライバーが連携し、余裕を持った無理のない運行計画を作成すること
休息時間の確保の意識向上休憩時間や休息期間は、疲労回復のために不可欠であることを理解し、積極的に確保する意識を持つこと
健康管理の重要性の認識日々の健康管理をしっかりと行い、過労運転を防止すること

運行管理者とドライバーが連携し、無理のない余裕を持った運行計画を作成することが重要です。また疲労回復に不可欠な休憩・休息時間の確保を意識し、日々の健康管理を徹底して過労運転を防止しましょう。分割休息制度の理解と活用も有効です。

(2)2人乗務特例の活用

長距離輸送における2人乗務の積極的な活用は、ドライバーの負担軽減と拘束時間短縮に繋がります。

引用:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000306033.pdf

長距離輸送では、一人のドライバーの運転時間が長時間に及び、疲労が蓄積しやすくなります。しかし、2人乗務であれば、ドライバーが交代で運転と休息を取ることが可能です。車両内に適切な休息設備(ベッドなど)を設けることで、拘束時間を延長しながらも、各ドライバーが十分な休息時間を確保できます。

疲労による運転ミスや事故のリスクを減らし、安全な運行を維持することができます。また、ドライバー一人当たりの運転時間が短縮されるため、心身への負担軽減にも繋がります。

ただし、2人乗務を行う場合でも、改善基準告示に定められた拘束時間、休息期間の特例を正しく理解し、遵守する必要があります。

(3)デジタル化による労働生産性の向上

デジタル技術を活用することで、運行管理の効率化、事務作業の負担軽減、情報共有の迅速化などを図り、結果的にドライバーの労働時間短縮に繋げることが期待できます。

運行管理システムの導入や運行計画の自動作成・最適化は、拘束時間や運転時間を適切に管理し、法令遵守を支援する上で非常に有効です。また、コミュニケーションツールの導入は、ドライバーと運行管理者間の連携を強化し、予期せぬ事態への迅速な対応や、運行状況の正確な把握に繋がります。

さらに、予約受付システムの導入や荷役作業の効率化は、トラック運転手の長時間労働の大きな要因の一つである荷待ち時間を削減するために重要な取り組みです。荷主との連携を図りながら、これらの効率化を進めることが、持続可能な物流の実現と自動車運転者の労働環境改善に不可欠であると言えます。

                               引用:五十鈴株式会社

トータル物流基幹システムAIRは、配車・請求・労務管理・車両管理を一気通貫で管理できる運送管理システムです。トータル物流基幹システムAIRは、運行計画の自動作成・最適化、荷役作業の効率化、そしてドライバーと運行管理者間の情報伝達の効率化に役立ちます。

デジタル化の取り組みは、労働生産性の向上だけでなく、ドライバーの負担軽減、安全性の向上にも繋がり、持続可能な物流の実現に貢献します。

5.まとめ

改善基準告示の遵守は、企業の社会的責任であり、ドライバーの健康と安全を守るための最低限のラインです。違反した場合、直接的な罰則がないとはいえ、労働基準監督署の指導や、道路運送法等に基づく行政処分の対象となる可能性があり、企業の信頼失墜にも繋がりかねません。

今一度、改正された改善基準告示の内容を関係者全体で確認し、それぞれの立場で適切な対策を講じることで、より安全で働きやすい自動車運転業務の実現を目指しましょう。

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