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運送会社の事故対策とは?安全への取り組みの重要性、事故の現状等も

運送会社における事故防止対策は、人命と信用に直結することから避けられない重要課題です。本記事では運送会社における交通事故の現状や、実践すべき事故防止対策についてもわかりやすく解説します。

目次

1.運送会社における交通事故の現状

(1)トラックの事故件数と内訳

引用:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/anzen/jiko_toukei_data/ITARDA_R5b.pdf

日本各地で日々発生しているトラック事故について、メディアで報道される事例は全体のごく一部に過ぎません。

全日本トラック協会の「2023年の交通事故統計分析結果」によれば、事業用貨物自動車の死亡・重傷事故は1,062件で、前年から103件増加していることがわかります。2023年における死亡・重傷事故の内訳を見てみると、人対車両の場合、5〜6割程度は道路横断中の事故です。

車両相互の場合、追突 駐・停車中と出会い頭衝突の割合が高く、あわせて4割程度を占めています。
また、死傷事故を起こしたドライバーの年齢層は、50歳以上が5割以上を占めており、免許取得年数は10年以上が9割近くを占めています。

(2)トラック事故のよくある原因

トラック事故の主な原因として、居眠り運転があげられます。
不規則な生活長時間労働に加え、深夜や単調な道路環境といった外的要因も相まって、ドライバーが意識を失うことで車両制御不能に陥り、重大事故を引き起こすのです。

また、漫然運転動静不注視もトラック事故の原因として挙げられます。

漫然運転とは、運転中に考え事をしたり、音楽やラジオに気を取られるなどで注意力が散漫になり、緊急時の判断能力が著しく低下している状態で運転していることです。
動静不注視は、信号が変わった際に「前の車は動くだろう」と思い込んだり、「相手が避けてくれるはず」という期待から適切な回避行動を取らなかったりする状態を指します。

2.運送会社における事故対策の重要性

ここでは、運送会社における事故対策の重要性について解説します。

(1)事故時のリスクが大きい

運送会社が直面する事故リスクは、他業種と比較して格段に大きいといえます。
トラックは一般乗用車と比較して車体が大型かつ重量があり、さらに積載物の重さも加わるため、衝突時のエネルギーは極めて大きくなります。

そのため、事故発生時には一般車両や歩行者、ドライバー自身にも深刻な被害をもたらします。
とくに、高速道路などでの事故では、複数台を巻き込む多重衝突に発展しやすく、人命損失のリスクも上がります。

以下の報道動画では、トラックドライバーが体調不良を訴えていたにも運転を強制させた疑いで運送会社元代表が書類送検されたニュースです。

車両や積荷の損傷、賠償責任、企業としての信用失墜といった多方面に負担が及ぶことから、企業としては継続的な安全教育と対策の見直しを行い、事故を起こさない体制づくりに全力で取り組む必要があります。

(2)安全対策そのものが企業の信用につながる

徹底した安全管理体制の構築は、取引先や顧客からの不動の信頼獲得につながる重要な差別化要因となります。
「安心して任せられる」という評価は、長期的な取引関係構築の基盤となるため、企業の競争優位性を高められます。

全日本トラック協会が実施する「貨物自動車運送事業安全性評価事業(Gマーク制度)」の取得は、第三者機関による客観的な安全性評価として大きな意味を持ちます。

Gマーク取得企業は保険料の割引優遇措置も受けられるため、経営面でも有利に働くでしょう。
このように短期的には負担に感じられる安全対策も、長期的には企業の持続的成長社会的評価向上をもたらす重要な経営判断といえます。

3.運送事業者が実践すべき事故防止対策

ここでは、運送事業者が実践すべき事故防止対策を解説します。

(1)運行計画に余裕を持たせる

トラック事故を未然に防ぐためには、現実的かつ余裕を持った運行計画の作成が不可欠です。
近年のEC市場拡大により、翌日配送などの時間指定サービスが増えていますが、スピードを意識するあまり、過密スケジュールを組んでしまう傾向にあります。

とくに、長距離輸送では連続運転による疲労蓄積が判断力低下を招き、重大事故につながるリスクが高まります。
適切な運行計画を立てる際には、交通渋滞や天候不良などの変動要素、配送先での作業時間、そして何よりもドライバーの体力的限界を考慮することが重要です。

そのため、法定の休憩時間はもちろん、ドライバーが十分な休息と睡眠を確保できるようなスケジュール設計が求められます。
また、安全運転を優先する組織文化を作り、ドライバーが無理な運転を選択しない環境づくりも大切です。

(2)点呼等でドライバーの状況を確認する

事故防止対策の基本となるのが、乗務前後の点呼などを通じたドライバーの体調管理です。
点呼は単なる形式的な作業ではなく、ドライバーの健康状態を客観的に評価する重要な機会となります。

乗務前点呼ではドライバーの表情声のトーン身だしなみなどから体調変化の兆候を見逃さないことが大切です。具体的な確認事項は以下のとおりです。

  • 十分な睡眠が取れているか
  • 体調不良の兆候はないか
  • 精神的な疲労や不安はないか
  • 飲酒をしていないか(アルコールチェッカーを使用)

点呼に関わらず、運行管理者がドライバーのわずかな変化も見逃さないよう、日頃からドライバー1人ひとりの個性を把握しておくことも重要です。

(3)車両管理を徹底する

いかに優れたドライバーでも、車両の不具合があれば事故リスクは高まります。
そのため、日常的な点検定期的なメンテナンスで車両状態を良好に保つ取り組みが欠かせません。
効果的な車両管理を実現するためには、以下のような体制を整えるとよいでしょう。

  • 明確な整備管理規定を設ける
  • 定期点検は整備工場などの専門業者に委託する
  • 急発進や急ブレーキなど、車両に負担をかけない運転方法をドライバーへ指導する
  • トラブルに備えて、必要な部品や工具を準備しておく

また、点検記録整備履歴を詳細に記録・保管することで、車両ごとの特性傾向を把握できるため、予防的なメンテナンスにつなげられます。

このように総合的な車両管理体制が、安全運行の基盤となります。なお、正確な車両管理には、自社にあった車両管理システムの活用がおすすめです。以下の記事では機能などにあわせて複数の車両管理システムを比較しているため、課題にあわせた車両管理システムの選定にお役立ていただけます。

(4)緊急時に連絡できる体制を構築する

事故防止の重要な対策として、緊急時に迅速な対応を可能にする連絡体制の構築があげられます。
ドライバーが運行中に体調不良や異変を感じた場合でも、運行調整プロセスをあらかじめ確立しておくことで、迅速かつ的確な対応が可能になります。

「迷惑をかけたくない」「代わりがいない」という心理から、体調不良にも関わらずドライバーが無理を重ねてしまうと事故リスクが向上します。
管理者側が安全最優先の姿勢を明確に示すことで、思わぬトラブルを未然に予防し、持続的な成長し続ける企業文化を作ることができるでしょう。

(5)運転技術向上に向けた研修を実施する

研修方法としては、集合研修だけでなく、ドライバーごとの運転特性にあわせた個別指導も効果的です。
研修カリキュラムには、プロドライバーとして必須の車両点検知識や、雨や雪などの特殊環境での運転テクニックなどが含まれます。

ドライブレコーダーの映像を活用した実践的なフィードバックなども、具体的な改善につながります。
さらに、国土交通省が公開している「安全教育・事故防止マニュアル」も、体系的な教育プログラムの構築に役立つでしょう。

総合的な技術向上への取り組みは、企業の安全性評価を高める重要な要素となります。

(6)今までの事故を分析する

日常業務に慣れてくると、いつも通りの感覚から潜在的リスクを見落としがちですが、他社の事故事例を学ぶことで、自社にも潜む見えないリスクに気づくきっかけとなります。とくに、自社では未経験の事故パターンについて学ぶことで、予防的な対策が可能です。

また、自社で発生したヒヤリハット事例も貴重なデータソースです。
事故には至らなかったが危険を感じた事例を収集・分析することで、大きな事故に発展する前に対策できるでしょう。

一部の運行管理システムには、危険運転検知機能が備わっています。以下の記事では、運行管理システムを機能などで比較しており、自社の課題にあわせたシステム選定にお役立ていただけます。

4.事故防止のためにドライバーが実践すべき対策・心構え

次に、事故防止のためにドライバーが実践すべき対策や心構えについて解説します。

(1)十分な睡眠を取る

安全運転を確保するためには良質かつ適度な時間の睡眠が重要です。
運転業務は高度な集中力瞬時の判断力を要するため、睡眠不足状態での運転は重大な事故につながる恐れがあります。

また、浅い睡眠の場合、十分な時間寝ていても疲労回復効果は限定的とされています。
トラックドライバーは不規則な勤務形態に伴い睡眠リズムが乱れやすいため、意識的に睡眠の質を高める工夫が必要です。良質な睡眠を得るためには、以下の点を意識することが重要です。

  • 就寝前にはスマートフォンの使用を控える
  • 夜以降はカフェインの摂取を避ける
  • 寝室の温度や湿度を適切に保つ
  • 適度な運動
  • 規則正しい食事

ドライバー自身が睡眠の重要性を十分に理解して、生活習慣全体を見直すことが事故防止の土台となります。

(2)体調が悪い日は無理をしない

どれほど経験豊富なドライバーであっても、体調不良時には判断力や反応速度が著しく低下するため、そのようなときに事故リスクは大幅に高まります。
体調不良は外見からの判断が難しい場合もあるため、ドライバー自身が体調の変化に敏感になり、異変を感じた際には遠慮なく申告することが重要です。

また、管理者側が無理をさせないという明確な姿勢を示すことで、ドライバーが体調不良を報告できる環境を整えることも重要です。

体調不良などによって取り返しのつかない事故につながりやすいことを、組織全体で常に認識しておくことが大切です。

(3)運転中の油断や過信は禁物

長年無事故で走り続けていることや、同じルートを繰り返し運行することによって生じる慣れは、交通事故の大きな要因となります。

心理的な落とし穴を防ぐためには、常に初心を忘れずに運転することが重要です。
安全運転のプロとして、日々の点呼や研修の場で「慣れと過信」の危険性を繰り返し確認し、初心に立ち返る姿勢を保つことで、長期的な事故防止につながります。

(4)運転中は極力感情を制御する

焦りや怒り、興奮といった強い感情は、ドライバーの判断力や注意力を低下させ、事故を引き起こす直接的な原因となる場合があります。
よくある例としては、配送遅延の可能性によって焦りを感じてしまい、スピードの出し過ぎ無理な車線変更などの危険行動を取りやすくなることが挙げられます。

感情のコントロールが難しい状況では、深呼吸などで一旦気持ちを落ち着かせることが大切です。
遅延が生じた場合は無理に取り戻そうとするのではなく、運行管理者に状況を報告したうえで、安全を優先した運転を心がけましょう。

急ぎの配送でも安全を最優先する考えを持ち、どのような状況でも冷静な判断ができる自己管理能力を養うことが、事故防止の鍵となります。

5.まとめ

運送業界における事故防止対策は企業の社会的責任であり、持続可能な経営のためには重要な要素です。
効果的な事故防止対策として、余裕ある運行計画の作成やドライバーの体調確認、徹底した車両管理などがあげられます。

ドライバー自身も、十分な睡眠確保体調管理を徹底することが事故防止につながります。
このような対策を組織全体で継続的に実施することで、事故リスクが大幅に減り、企業の信頼性が向上するでしょう。

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