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物流の2025年の崖とは?法改正・人手不足への対応戦略、成功事例

物流業界では2025年深刻な人手不足と制度変更による大きな変化が予測されており、これを「2025年の崖」と呼ばれています。ドライバーの大量退職法改正による労働時間の制限は、物流の停滞だけでなく、サプライチェーン全体に影響を及ぼす恐れがあります。

本記事では2025年の崖について、法制度の背景人材構造の変化を踏まえて解説します。
同様の課題に直面しながらも先手を打って対応し、成果を上げている企業の具体的な取り組みも紹介しますので、今、何に備え、どのような打ち手を講じるべきかを考えるきっかけとして、ご活用ください。

目次

1.2025年の崖、物流業界への影響は?

2025年の崖は、老朽化した基幹業務システム(いわゆるレガシーシステム)が企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を阻害し、大規模な経済損失をもたらす可能性があると指摘された構造的な課題です。

物流業界において2025年の崖が注目される理由は、社会インフラを支える役割からその影響を大きく受けると予想されるためです。以下は、物流業界における主なリスクとその内容を整理しました。

システム障害レガシーシステムの複雑化により、
障害発生時の復旧が困難に
セキュリティリスク古いシステムはサイバー攻撃に脆弱
経済損失DXの遅れによる経済損失は年間最大12兆円と試算

なぜ2025年が問題なのかというと、多くの企業で使われている基幹システムのサポート終了時期が集中しているためです。
経済産業省の「DXレポート」では、こうした状況が放置された場合、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘しており、早急な対策が求められています。

2. 2025年の崖が物流業界にもたらす具体的な課題

2025年の崖が物流業界にもたらす具体的な課題は、以下のとおりです。

サイバーセキュリティリスクの増大従来のシステムは最新のセキュリティ対策に対応していないケースが多い
維持管理コストの増大故障やトラブルのリスクが高く、修理や復旧作業に多額の費用がかかる
システム改修の困難さ複雑にカスタマイズされたシステムの改修は非常に困難で時間とコストがかかる
柔軟な対応力の欠如市場や顧客ニーズへの迅速な対応が難しくなり、競争力を失う恐れ

以下では各課題について、解説します。

(1)サイバーセキュリティリスクの増大

老朽化したレガシーシステムは、現代のサイバー攻撃に対抗できるようなセキュリティ対策が施されていない場合が多く、脆弱性を抱えています。
システムのセキュリティホールを悪用した情報漏洩やランサムウェアによるシステムの乗っ取りといったリスクは、企業にとって大きな損害をもたらす可能性があります。

情報漏洩顧客情報、取引先情報、社内情報等の機密情報の流出
ランサムウェアシステムの乗っ取り、データの暗号化
システム停止サイバー攻撃によるシステム障害

(2)維持管理コストの増大

複雑化したレガシーシステムはセキュリティの問題を抱えるだけでなく、運用や保守に多くのリソースを必要とします。コスト増大要因として、以下のような内容が挙げられます。

  • 古いシステムを理解している技術者は少なく、高額な報酬となる場合がある
  • 老朽化したハードウェアの部品は入手困難であり、追加の投資が必要となる
  • システム障害が発生した場合、復旧に時間とコストがかかる

古いシステムを使い続けるほど、維持管理コストは増大していくため、早急な対応が求められます。
多くの企業がシステム刷新を検討していますが、費用対効果を慎重に見極めることが重要です。以下の記事では、運送業向けの基幹システムを比較・紹介しています。

(3)システム改修の困難さ

企業の基幹システムは、長年の運用の中で業務の変更や追加に合わせてカスタマイズが重ねられてきました。
これは一見、現場のニーズに合わせた柔軟な対応に見えますが、結果としてシステム全体を複雑化させ、ブラックボックス化を招いてしまう場合があります。

カスタマイズの履歴が不明瞭過去の改修内容が記録されていない、
または担当者が不在で引き継ぎが不十分な場合、
改修の影響範囲を特定することが困難に
複雑な依存関係各システムが複雑に絡み合っているため、
一部分の改修が予期せぬ不具合を引き起こす可能性がある
技術者の不足新しい技術を習得した技術者は、古いシステムの改修作業に魅力を感じないため、人材確保が難しい

このような状況から、システム改修は困難を極め、結果として古いシステムを使い続けることになり、2025年の崖問題の深刻化につながっています。

(4)柔軟な対応力の欠如

老朽化・ブラックボックス化したシステムは、変化への対応を難しくします。物流業界では、需要変動、災害、法改正など、予期せぬ事態への柔軟な対応が求められます。しかし、旧式のシステムでは、迅速な改修や機能追加が難しく、変化への対応が遅れがちになります。

5. 2025年の崖を乗り越えるための対策

2025年の崖を乗り越えるためには、既存システムの問題点を見直し、新しいテクノロジーを積極的に活用していく必要があります。具体的には、以下の対策が有効です。

  • DX推進の必要性
  • 既存システムの刷新・モダナイゼーション
  • クラウドサービスの活用
  • AI、IoT、ロボティクス等の最新技術導入

これらの対策を総合的に実施することで、2025年の崖を乗り越え、持続的な成長を実現できるでしょう。ここでは、2025年の崖を乗り越えるための対策について解説します。

(1)DX推進の必要性

DX推進により、以下のような課題の解決が期待できます。

課題効果
老朽化したシステムとブラックボックス化最新のシステムへの移行、クラウドサービスの活用
サイバーセキュリティリスクの増大セキュリティ対策の強化
維持管理コストの増大クラウドサービスの活用によるコスト削減
システム改修の困難さ最新システムへの移行
柔軟な対応力の欠如最新システムへの移行

上記の課題を解決し、業務効率の向上、コスト削減、競争力の強化を実現できます。また、DXは、顧客満足度の向上にもつながります。

(2)既存システムの刷新・モダナイゼーション

既存システムの刷新、モダナイゼーションは2025年の崖を乗り越えるために重要な対策の一つです。老朽化し、ブラックボックス化したシステムを使い続けることは、様々なリスクを孕んでいます。具体的には、以下のような対策が有効です。

対策内容
システムの可視化システムの現状を把握し、問題点を明確にする
内製化の推進システム開発・運用を内製化することで、
柔軟なシステム改修を可能にする
現行踏襲の見直し既存システムの運用方法を見直し、
非効率な部分を改善する
標準化対応の検討システムの標準化を進めることで、
保守運用コストの削減とシステム連携の円滑化を図る
上流人材の育成・確保システム開発の上流工程を担える人材を
育成・確保することで、システム刷新を円滑に進める

これらの対策を、経営層が強く認識し、トップダウンで推進していくことが重要です。
また、個社で進めることが難しい場合は、他社との連携や業界全体での取り組みも有効です。

(3)クラウドサービスの活用

クラウドサービスは、インターネット経由でアクセスできるソフトウェア、データストレージ、コンピューティングパワーなどのITリソースを提供するサービスです。
物流業界においても、クラウドサービスの活用は2025年の崖を乗り越えるための重要な対策の一つです。オンプレミス型のシステムと比較して、クラウドサービスには下記のようなメリットがあります。

メリット詳細
コスト削減ハードウェアやソフトウェアの購入・保守費用が不要
導入期間の短縮インフラの構築が不要なため、
迅速にシステムを導入できる
保守運用の効率化システムの保守運用をクラウドベンダーに任せられる
セキュリティの向上最新のセキュリティ技術を常に適用することで、
サイバー攻撃のリスクを低減
拡張性・柔軟性必要に応じて容易にシステムの規模を
拡大・縮小できる
アクセシビリティの向上場所を選ばずにシステムにアクセスできる
最新技術への対応AIやIoTなどの最新技術を容易に活用できる

クラウドサービスの活用により、企業はシステムの運用コストを削減し、最新技術を迅速に導入することが可能になります。また、柔軟なシステム構築により、変化の激しい市場環境にも対応できます。

(4)AI、IoT、ロボティクス等の最新技術導入

2025年の崖を乗り越えるには、AI、IoT、ロボティクスなどの最新技術の導入が不可欠です。
具体的には、以下のような技術を活用することで、物流の効率化・省人化・最適化を実現できます。

技術活用例効果
AI需要予測、配送ルート最適化、
倉庫内作業の自動化
人件費削減、配送効率向上、
在庫最適化
IoT輸送状況のリアルタイム把握、荷物のトラッキング輸送の可視化、
配送状況の正確な把握
ロボティクス倉庫内ピッキング作業の自動化、
ラストワンマイル配送
人件費削減、配送効率向上
ドローン遠隔地への配送、在庫管理配送コスト削減、時間短縮

これらの技術は個別に導入するだけでなく、組み合わせて活用することで、より大きな効果を発揮します。
たとえば、IoTで取得したデータをAIで分析することで、需要予測の精度を高め、より効率的な配送計画を立てることが可能になります。また、ロボティクスとドローンを組み合わせることで、倉庫内作業からラストワンマイル配送までを自動化し、大幅な省人化を実現できます。
これらの最新技術を積極的に導入することで、物流業界は2025年の崖を乗り越え、持続可能な成長を実現できるでしょう。

6. 企業の成功事例から学ぶ生存戦略

2025年の崖という困難な状況下でも、先手を打って対応し、成果を上げている物流企業が存在します。これらの成功事例は、他の企業にとって貴重な示唆を与えてくれます。ここでは、企業の成功事例について紹介します。

参考:物流DX導入事例|国土交通省

(1)バース予約・受付システムで待機時間を短縮

引用:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf

福岡運輸は、物流効率の向上と乗務員の待機時間削減を目的に、2019年1月から自社開発したバース予約・受付システムを導入しました。このシステムは、携帯電話と連動させることで接車の順番が近づいた乗務員に自動で連絡を行い、待機時間を大幅に削減しています。システム導入により、以下の効果が得られました。

  • 効率的な車両誘導と貨物整理
  • 乗務員の待機時間を大幅に削減
  • 環境保全への貢献
  • 迅速な滞留・遅延対応

バース予約・受付システムの導入によって、倉庫周辺で待機しているトラックや倉庫内の貨物が可視化され、荷捌きや保管エリアでの整理が進み、バースの秩序だった運用が可能となりました。

(2)ロボット導入で複数品種ケースの荷下ろし作業を自動化

引用:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf

坂塲商店では、荷下ろしロボットを導入し、不規則に積まれた複数種類のケースを効率的に自動で荷下ろしする作業を実現しました。このロボットは、自ら最適な動作を判断して荷下ろし作業を行い、従来の手作業による負担を大幅に軽減しました。具体的な導入効果は以下の通りです。

処理能力の向上自律的に荷下ろし作業を行い、
1時間あたり平均400~450ケースを
安定して荷下ろすことが可能
労働環境の改善従来の手作業による負担を軽減し、
作業者の労働環境を改善
オペレーション負荷の軽減商品の事前登録やロボットのティーチングが不要で
運用に関わる負担が最小限

このロボットの処理能力により、物流業務の生産性が向上し、作業負担が大幅に軽減されました。

(3)自動配車クラウド導入で配車業務の標準化

引用:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf

スーパーレックスでは、車両の稼働状況をグラフで見える化し、手動で配送順番の変更も可能にすることで、配車業務の効率化と標準化を実現しました。AIアルゴリズムを搭載した自動配車クラウドによって、以下のような効果が得られました。

  • 配車計画作成時間の短縮
  • 配車業務の標準化
  • 細かい調整が容易

AIによる最適な配車計画の作成と、車両の稼働状況の見える化により、配車業務がスピードアップし、引き継ぎ作業も簡素化されました。AIによる配車計画作成は、自社にあったシステムの導入が重要です。以下の記事では、AI配車計画のシステムを機能などを比較して紹介しています。

7.まとめ

2025年の崖は、物流業界にシステム老朽化、DX遅れ、人材不足など深刻な課題を突きつけます。しかし、法改正への対応、DX推進、最新技術導入、外部支援の活用などを戦略的に進めることで、これらの課題を乗り越え、持続可能な物流体制を構築することが可能です。

監修

企業間物流に詳しい!運行管理のプロ監修「運行管理ナビ」編集部です。

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