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運転日報は、ドライバーの運行状況や勤務実態を正確に記録・管理するための帳票であり、企業の安全運転管理や法令遵守の観点から欠かせない役割を果たします。なお、運転日報の効率的な運用を支えるアプリ・システムも注目されており、以下の記事でそれらを詳しく解説しています。
本記事では、運転日報の基礎知識から記載項目、法律上の義務や罰則などを解説します。
運転日報とは、業務で自動車(トラックや社用車)を使用する際に、ドライバーの氏名や走行距離、運行ルートなどを記録する帳票です。企業における安全運転管理の一環として活用されており、ドライバーの労務状況や運行実態を正確に把握・管理する目的で作成されます。
とくに、運送業を営む事業者や、一定台数以上の社用車を保有する企業に対しては、関係法令に基づき、運転日報の作成と保管が義務付けられています。
ここでは、運転日報に記載すべき具体的な項目や実際の記入例などをわかりやすく解説します。
運転日報には、法令で定められた項目を正確に記録する必要があります。ここでは、運送事業者と社用車を保有する企業に分けて、記載内容の要件を解説します。
運送業者は、「貨物自動車運送事業輸送安全規則」により、以下の7項目の記録が義務付けられています。
記載項目 | 内容 |
---|---|
ドライバー氏名 | 運転を行った者の氏名 |
車両情報 | 使用した事業用車両の登録番号、 または識別できる表示 |
乗務区間・時間 | 開始地点・終了地点、出発時刻・到着時刻、 経過地点、走行距離 |
運転交替 | 運転を交替した場合、その地点と時刻 |
休憩・仮眠 | 実施した場合の地点と時間 |
積載状況 | 車両総重量8t以上または最大積載量5t以上の場合、 貨物の積載状況 |
待機状況 | 上記の大型車両において、 集荷・配達地点での待機時間の状況 |
大型車両(最大積載量5トン以上または車両総重量8トン以上)を使用する場合は、以下の点にも注意が必要です。
これらの項目は、ドライバーの労働状況把握や法令順守の観点から重要であり、実地の巡回指導などでも確認される項目です。また、当然のことですが運転日報は乗務ごとに記録・保存することが義務づけられているため、業務を行った日ごとに提出が必要です。
社用車を保有している企業については、「道路交通法施行規則」に基づき、安全運転管理者の選任および運転日報の作成・保管が義務付けられています。
対象となるのは、以下のいずれにも該当する事業所です。
法人または個人事業主として車両を保有している | |
---|---|
次のいずれかを満たす | ・乗車定員11人以上の車両を1台以上保有 ・その他の自動車を5台以上保有(軽自動車含む) |
さらに対象車両が20台以上使用する事業所の場合は、副安全運転管理者の選任も必要です。
なお副運転管理者は20台~39台の使用で1人、以後20台ごとに1人の増員を要します。
該当する場合、以下の内容を日々の運転日報として記録する必要があります。
運転日報を義務付けられているのは、運送業を営む企業と社用車を保有している企業です。
どのような法律によって運転日報の記録・保管が義務付けられているのか、それぞれ解説します。
運送業の定義 | 貨物を有償で自動車により運送する事業を指す |
---|---|
遵守する法律 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則 |
概要 | 運転日報の記録・保存・運行管理者を事務所ごとに車両台数に応じた人数で配置し、運行管理者は運行管理や乗務記録の管理、アルコールチェックなどを行う |
貨物軽自動車運送事業の場合は、1台から開業できます。運送業では安全運転管理者ではなく、運行管理者の選任が必須です。
運送業を営む企業は貨物自動車運送事業輸送安全規則によって、運転日報の記録・保管が義務付けられています。貨物自動車運送事業輸送安全規則とは、自動車で貨物を運送する事業者が安全な輸送を行うために定められた規則です。
運送業では「運行管理者」を事務所ごとに車両台数に応じた人数を配置する必要があります。
運行管理者は出庫・帰庫時の点呼、運行管理や乗務記録の管理、アルコールチェックなどを行います。ほかにもドライバーのシフトや運行ルートの作成を行い、長時間運転によるドライバーの過労や、事故の防止をするなどの役割があります。
社用車を業務利用している企業であっても、一定の条件を満たす場合には、法律により運転日報の作成・管理が義務付けられます。根拠となるのは、道路交通法施行規則による安全運転管理者制度です。
一般事業所(白ナンバー)の定義 | 運送業などの特定事業ではなく、 自社の業務目的のために自動車(主に白ナンバー車) を保有・運用する企業や事業所 |
---|---|
遵守する法律 | 道路交通法施行規則 |
概要 | 一定条件で「安全運転管理者」の選任義務が発生 (運転日報やアルコールチェックの記録管理が 必要な場合あり) |
業務で車両を使っていても、社用車が4台以下で普通車のみの場合には運転日報の管理義務の対象外になるケースがあります。参考:安全運転管理者制度の概要|警視庁
ただし社用車を保有する企業にとって、「運送業ではないから関係ない」とは言い切れないのが運転日報の管理義務です。労務管理や法令遵守の観点からも、対象台数の確認と制度理解は欠かせません。
トラックの運転日報の記入例は、以下のとおりです。
項目 | 記入例 |
---|---|
ドライバー名 | 山田 太郎 |
車両ナンバー | 札幌 123 あ 4567 |
運行開始日時 | 2023年8月23日 8:00 |
運行終了日時 | 2023年8月23日 17:30 |
運行開始地点 | 札幌市中央区 |
運行終了地点 | 旭川市 |
総走行距離 | 180 km |
経過地点 | 札幌市中央区 → 江別市 → 岩見沢市 → 滝川市 → 旭川市 |
休憩地点1 | 江別市 |
休憩時間 | 10:00 – 10:15 (15分) |
積載貨物 | 工業用機械部品 |
積載量 | 4.5トン |
集荷地点1 | 札幌市中央区 |
荷積み開始 | 8:30 |
荷積み終了 | 9:00 |
配達地点1 | 旭川市 |
荷卸し開始 | 16:00 |
荷卸し終了 | 16:30 |
交通事故や遅延等の発生 | なし |
ほかにも運転日報には車両の安全を確保した証明である日常点検の記録を記載する必要があります。
点検は主に整備管理者が行い、運行管理者に報告する義務があります。
道路交通法施行規則第9条の10(安全運転管理者の業務)の改正によって、2022年4月からアルコールチェックが厳格化されました。
変更点として、義務の対象となる事業者の拡大とアルコールチェックに関する記録を保管する義務が挙げられます。
2022年4月以降 | 2022年4月以前 | |
---|---|---|
対象企業 | 緑ナンバーおよび一定台数以上の白ナンバー(自家用車)を保有する企業 | 緑ナンバー(事業用自動車)のみ |
アルコールチェック方法 | 目視等で運転者の酒気帯び確認(運転前後に実施) | 義務なし(緑ナンバーに限定) |
記録の保存 | アルコールチェック結果を記録し、1年間保存 | 義務なし |
アルコール検知器の使用 | 2022年10月以降、アルコール検知器を用いた酒気帯び確認とその記録(但し、2022年10月からの義務化は延期) | 義務なし |
2022年4月以降、アルコールチェックの義務が大幅に強化され、白ナンバーの車両を保有する企業にも義務が拡大されています。2022年10月からのアルコール検知器の使用義務も導入予定でしたが、こちらは延期されています。
ただし、緑ナンバーの運送業はアルコール検知器を用いたアルコールチェックが必須で、運行前と運行後の最低2回は行う必要があります。
ここでは、運転日報の保管期間と保管方法を解説します。
運転日報の保管期間は1年~5年であり、法律によって保管期間が異なる点に注意が必要です。
法律 | 運転日報の保管期間 |
---|---|
貨物自動車運送事業輸送安全規則・道路交通法施行規則 | 最低1年間 |
労働基準法 | 最低5年 |
運転日報は、貨物自動車運送事業輸送安全規則・道路交通法施行規則ともに、最低1年間保管することと決められています。運転日報以外にも、点呼記録やアルコールチェックの記録も1年間は保管義務があります。
一方で労働基準法では、重要な書類関係は5年間保存しなければならないと定められています。労働基準法に則り、5年は保存しておいたほうがいいという意見もあるようです。
参考:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第八条
参考:道路交通法施行規則第9条
参考:厚生労働省 改正労働基準法等に関するQ&A
手書き | 電子データ | |
---|---|---|
保管方法 | 実物の紙をファイルなどに保管 | クラウド上に保管 |
メリット | 自社の慣習にあわせて保管できる | ・保管スペースが不要 ・検索が容易 ・紛失リスクが低い ・劣化しない |
デメリット | ・保管スペースが必要 ・書類が劣化しやすい ・紛失や破損のリスクがある | ・コストがかかる ・データの改ざんリスクがある |
運転日報は必要事項が記入できていれば、保存方法は手書き・電子データどちらでも問題ありません。運転日報の保管に手間や時間をかけたくない企業には、電子データでの保存がおすすめです。
ただし、手書きの運転日報の場合は、運輸支局の監査時に原本として提示可能というメリットもあります。
電子データであれば、日報を保管する場所や過去の日報を遡る手間を軽減できて、ペーパーレスでコストも削減できるなどさまざまなメリットがあります。
ほかにも電子データは集計がしやすく、ヒューマンエラーが起きにくいのも特徴です。
トラックの運転日報をペーパーレス化する方法は、以下の2つです。
ここでは、トラックの運転日報をペーパーレス化する方法を解説します。
運転日報をデジタル化することで、従来の手書きによる日報作成の煩雑さを大幅に軽減できます。メリットは、以下のとおりです。
メリット | アプリ・システムの機能 |
---|---|
記入ミスや情報漏れの防止 | GPSやデジタコから正確なデータを自動取得 |
業務効率の向上 | 日報の記録・回収・集計の自動化 |
正確な情報の把握 | 自動で取得・集計されたデータによるヒューマンエラーの減少 |
保管スペースの節約 | 物理的な保管スペースが不要 |
コスト削減 | 紙媒体の保管コストや書類整理にかかる業務負担を削減 |
アプリやシステムで運転日報を作成するには、自社にあったサービスを選定することが重要です。以下の記事では運転日報をペーパーレス化する方法を解説しています。
アプリは無料のものから有料のものまで多数ありますが、無料のものは車両台数制限やUIがわかりにくいなどのデメリットもあります。
有料のものは初心者でも使いやすく、他の基幹システムとも連携がしやすいなどのメリットがあります。
運転日報を完全自作したい場合は、以下の動画も参考になります。
ただし、Excelを用いる場合、日報ごとにファイルが分かれてしまうため、データの一元管理が難しくなるというデメリットがあります。特に、運転日報の管理が複数人に渡る場合や、膨大なデータを扱う場合には、ファイルの管理や検索が煩雑になる可能性があります。
ほかにもExcelだとファイルにトラブルが発生したときに、担当者しか対応できないことになりがちです。いざという時に他の人が対応できるよう対策を講じておく必要があるでしょう。
Excelで運転日報を作成すると、コストを抑えつつデジタル化を進められる利点がある一方で、運用面での工夫が必要です。
運転日報の作成・保存は法律で定められた義務ですが、怠った場合の明確な罰則はありません。
しかし、「安全管理者」や「運行管理者」に関する規則に違反した場合、罰則が科されるため注意しましょう。ここでは、安全運転管理者と運行管理者に関する罰則について解説します。
運転日報の作成・保存がされていなかったために、罰則が科されることはありません。しかし、一定台数以上の自動車を使用する事業所において以下に該当する場合、罰則が科されます。
違反内容 | 罰則 |
---|---|
安全運転管理者を選任していない | 50万円以下の罰金 |
安全運転管理者の選任・解任の届出を行っていない | 50万円以下の罰金 |
巡回指導の際に運転日報のチェックが行われるため、安全運転管理者を忘れずに配置しましょう。
安全運転管理者は白ナンバーの乗車定員11人以上の自動車の場合は1台以上、その他の自動車の場合は5台以上の際に必要になる人員です。
運送業者の場合は運行管理者が必須となります。
運送業においても運転日報の作成・保存が義務付けられていますが、それが行われていなかった場合の直接的な罰則はありません。しかし、調査の過程で以下の違反が発覚した場合、罰則が科される可能性があります。
違反内容 | 罰則 |
---|---|
運行管理者を選任していない | 150万円以下の罰金 |
運行管理者の選任・解任を届出ていない、または虚偽の届出をした | 100万円以下の罰金 |
運行管理者資格証の返納命令に従わなかった | 50万円以下の罰金 |
運行管理者の罰則は運転日報の適切な管理と労働時間の厳守を徹底し、法令遵守を徹底することで罰則を回避できます。
運転日報の作成・保管は、法律によって厳格に義務化されています。運転日報の作成・保管を怠った場合の罰則はありませんが、調査の過程で違反が発覚した場合に、罰則が科されるため注意しましょう。
運送業や営業活動で社用車を使用している企業では、運転日報の作成は欠かせません。正確なデータの記載はもちろんのこと、運行管理者や安全運転管理者のもとで正しい管理が行われていないと厳しい罰則になることも。正しい運用が行われていれば生産性の高い業務やドライバーの暗線運転の意識も高まっていくことでしょう。