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物流総合効率化法をわかりやすく解説!改正内容、認定条件、事例等も

物流業界は今、ドライバー不足とデジタル化の遅れという大きな時代の転換点に立っています。この課題を成長のチャンスに変えるため、物流総合効率化法が2024年に大幅改正され、2025年から新たにスタートしました。

本記事では、DX・GX支援の拡充、事業者・荷主の協働強化、特定事業者制度など、改正法の核心ポイントをわかりやすく解説します。さらに、この法改正を活用して業界全体の明るい未来を築く具体的な道筋もご紹介します。

目次

1.物流総合効率化法とは?わかりやすく解説

2024年5月の改正によって、法律の名称が「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から 「物資の流通の効率化に関する法律(物流効率化法)」に変更しています。

ここでは、物流総合効率化法の概要についてわかりやすく解説します。

(1)物流総合効率化法の重要性

物流業界は、現状のままでは、輸送能力が2024年度には14%(4億トン相当)、2030年度には34%(9億トン相当)不足し、今のように運べなくなる可能性があると推計されています

※。この法律改正は国の危機感の強い表れで、荷主を巻き込み、物流業界が大きく変わっていく可能性を秘めています。

参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000029.html

物流総合効率化法は、より少ない労働力で、かつ環境負荷を抑えながら、持続的な物流の実現を目的とする支援措置です。これは業界全体の健全化を目的に、企業努力だけでは限界のある物流課題に対して、サプライチェーン全体での効率化を促進するものです。

以下の報道動画では、物流業界の人手不足に関する一次情報をご確認いただけます。

物流業界では、人手不足、労働環境の悪化、環境負荷の増大といった課題が深刻化しており、国内の物流を持続させるには荷主企業運送事業者などが協力し、抜本的かつ総合的な対策が求められています。

(2)2024年における改正の主なポイント

以下では、物流総合効率化法における2024年の改正内容を解説します。

①支援対象にDX・GX設備が追加

今回の改正では、物流業界のデジタル化(DX)脱炭素化(GX)を進めるための設備導入も、新たに支援対象となりました。

具体的には、物流施設の自動化を助けるロボットAIシステム省エネ性能の高い設備再生可能エネルギーの活用機器などです。

物流DXとは、アナログだった業務をデジタル技術で効率化する取り組みです。
たとえば、トラックの配車をAIで最適化したり、倉庫作業をロボットで自動化したりすることで、人手不足の解消コスト削減を目指します。荷主や物流事業者がデータを連携し、業界全体の生産性を高めることも重要な狙いです。

一方、GXは、環境に優しい物流を目指す取り組みです。
エネルギー効率の良い機器の導入や、再生可能エネルギーを活用した施設運営などにより、物流現場でのCO₂排出量を削減し、持続可能な物流体制の構築を後押しします。

②努力義務の追加

2024年の改正では、物流事業者と荷主の双方に新たな「努力義務」が追加されました。物流事業者と荷主企業には、以下の取り組みが努力義務として課されています。

物流事業者荷主企業
・輸送網の集約
拠点やルートを整理して、積載効率を高める
・配送の共同化
複数の企業で倉庫やトラックを共有し、輸送をまとめる
・ドライバーの負荷軽減
荷待ち時間や荷役時間の削減を推進する
物流事業者との連携強化
契約時に運賃や料金、付帯業務(荷役など)の内容を
明確にする など
・荷待ち時間・荷役時間の削減
倉庫作業の効率化や
受け渡しスケジュールの見直しを行う など

これまでの物流効率化法では、主に物流事業者側に対して効率化を促す内容が中心でしたが、今回の改正では荷主側にも積極的な協力が求められるようになっています。

努力義務とは言え、物流業界の労働環境改善に向けたチャンスといえます。荷主企業との建設的な協議を実現するには、客観的な輸送データの活用が不可欠です。

具体的には、以下のデータを基にした議論が求められます。

  • 待機時間の実態
  • 付帯業務の所要時間
  • 輸送コストの内訳

これらのデータを踏まえ、待機時間の削減、パレタイズ化、梱包方法の改善、積載率の改善運賃交渉など、積年の課題を荷主側と交渉するまたとないチャンスではないでしょうか。

③特定事業者が設定

2024年の改正では、一定規模以上の荷主物流事業者が特定事業者として指定される仕組みが新たに設けられました。特定事業者に指定により、中長期計画の作成進捗状況の定期報告等が義務付けられます。

特定事業者に指定される基準は、以下のとおりです。

区分指定基準(予定)
特定第一種荷主年間の取扱貨物量9万トン以上
特定第二種荷主年間の受け渡し貨物量9万トン以上
特定連鎖化事業者年間の加盟店受け取り貨物量9万トン以上
特定貨物自動車運送事業者等事業用自動車保有台数150台以上
特定倉庫業者年間保管貨物量70万トン以上
※2025年4月時点で国が示している仮の基準
特定事業者に課される義務の詳細(クリックで表示)
  • 中長期計画の作成
    積載効率の向上、荷待ち時間・荷役等時間の短縮などに向けた取り組みをまとめた計画を作成し、計画に変更がなければ、原則5年に一度提出
  • 定期報告の提出
    毎年度、計画に基づく取り組み状況を国に報告。積載効率や荷待ち時間の短縮状況、関連事業者との連携状況などを記載。
  • 物流統括管理者(CLO)の選任(※荷主・連鎖化事業者のみ)
    経営層から物流統括管理者を選び、社内外を調整しながら物流効率化をリード。

特定事業者に対し、物流効率化を計画的・持続的に推進することを求めることで、サプライチェーン全体の安定化、物流現場の負担軽減、脱炭素社会の実現を目指しています。

④罰則が追加

2024年の改正では、物流効率化法において初めて罰則規定が設けられました。

これまでは努力義務にとどまっていましたが、今回から、物流総合効率化の取り組みを確実に推進するため、違反時には罰則が科される仕組みが整備されています。対象となる行為と罰則内容は以下のとおりです。

違反内容罰則
計画書(中長期計画・定期報告)の未提出、
虚偽報告、立入検査の拒否・妨害
50万円以下の罰金
勧告に従わず、命令にも違反100万円以下の罰金

一見、企業にとって厳しい制度に見えますが、物流業界全体の効率化を確実に進める目的があります。

とくに、荷待ち時間や荷役時間の削減、積載率の向上といった取り組みは、結果的に企業自身の物流コスト削減やドライバー確保にもつながります。

2.【2024年改正】物流総合効率化法の認定基準

物流総合効率化法の支援を受けるためには、事業者が作成する「総合効率化計画」が、国の定めた認定基準を満たす必要があります。

ここでは、物流総合効率化法の認定基準を満たす事業認定の具体的な手続き内容について解説します。

(1)物流総合効率化法の認定基準を満たす事業とは

物流総合効率化法の認定を受けるためには、サプライチェーン全体に配慮した多角的な取り組みが求められます。認定のポイントは、以下8つの基準を満たしているかどうかです。

実施主体要件複数の異なる法人が連携して取り組むこと
総合化要件輸送・保管・荷役などを一体的に実施すること
効率化要件輸送網の集約、モーダルシフト、共同配送などで効率化を図ること
省力化要件労働投入量(手待ち時間など)を削減し、人手不足対策に貢献すること
環境負荷低減要件CO₂排出量を削減し、持続可能な社会に寄与すること
継続可能性補助金終了後も事業を自立・継続できる見込みがあること
実現可能性計画通りに確実に実行できること
独占禁止法への非抵触共同行為が市場競争を阻害しないこと

認定基準を満たすことで、事業者は物流効率化を推進し、持続可能な物流体制の構築に貢献できると認められ、様々な支援措置を受けられます。

(2)認定の具体的な手続き内容

物流総合効率化法の認定を受けるには、事業者が総合効率化計画を作成し、国土交通大臣または地方運輸局長に申請する必要があります。

ここでは上記5つのステップについて、解説します。

①事前相談

計画作成の初期段階で、地方運輸局の窓口などに事前相談を行うことが推奨されています。事前相談をすることで以下の内容について、確認・助言を受けられます。

  • 計画が認定対象に適合するか
  • 希望する支援措置に対応できるか
  • 他の法制度(例:開発許可、税制特例)との整合性はどうか

特に、税制特例や開発許可を受けたい場合は、早い段階で自治体の担当部局と調整することが重要です。

②計画の作成

事前相談を踏まえ、認定基準への適合性を再度確認し、具体的な事業計画を作成します。
計画には、事業の目的、実施体制、具体的な取り組み内容、効率化・省力化・環境負荷低減の効果、スケジュール、費用などを詳細に記載します。

③関係機関との調整

特定流通業務施設の整備で税制優遇や開発許可を得るには、自治体との連携が不可欠です。
開発許可は各自治体の判断(自治事務)となるため、総合効率化計画の申請準備とあわせて、事前に各自治体の開発許可担当部局等と十分調整を行うことが重要です。

④正式申請

必要書類を整えたうえで、正式に国土交通大臣または地方運輸局長に申請します。
申請後は申請内容の説明聴取や、もし必要書類の精査不備があった場合には補正指導などが行われ、計画区域が広域にまたがる場合は、本省(国交省本庁)での審査になる場合もあります。

⑤審査・認定

提出された計画について、認定基準への適合性などが審査されます。標準処理期間は2ヶ月です。

認定されると、事業者は物流総合効率化法の支援措置を受けられます。
総合効率化計画の認定申請時には、関連する各事業法に基づく登録や許可などの手続きも同時に行うことも可能です。

3.物流総合効率化法の認定を受けるメリット

物流総合効率化法の認定を受けることは、単なる形式的な制度利用にとどまらず、企業の経営基盤社会的信頼性を高める多くのメリットをもたらします。

ここでは、認定取得によって得られる主な利点を紹介します。

(1)補助金等を受けられる

物流総合効率化法の認定を受けた事業者は、国の各種支援措置を活用できます。これには、以下のような税制上の特例措置各種補助金制度などが含まれます。

税制特例固定資産税・都市計画税の課税標準を一定割合で軽減
補助金モーダルシフト等の物流の効率化や脱炭素化(GX)を目的とした取り組みにおいて、補助金が交付される場合がある

税制特例は、増設部分のみで税制基準を満たす必要があり、過去には一定期間の倉庫業用建物への所得税・法人税特例もありました。

これらの支援措置を活用することで、事業者は初期投資の負担を軽減し、効率化に向けた取り組みをより積極的に進められます。

(2)人手不足対策への波及効果

トラックドライバーや倉庫作業員の高齢化・離職が進み、労働力確保は年々深刻化しています。物流総合効率化法に基づく取り組みは、この構造的課題を解決する大きなチャンスです。

  • 省人化・自動化の推進:倉庫内ロボットやAIによる配車最適化で作業効率を向上
  • 労働環境の改善   :待機時間削減や荷役作業の軽減でドライバーの負担を軽減
  • 共同化による効率化 :複数企業での配送統合により、配送頻度と人員を最適化

具体的には、輸配送の効率化や待機時間の短縮によりドライバーの労働労働環境を大幅に改善できます。

これにより、限られた人員でより多くの業務を処理できるようになり、人手不足問題の解決に寄与します。

一方で、こうした効率化への取り組みを怠ると、競合他社との間で生産性格差が拡大し、人材確保や顧客獲得において競争劣位に陥るリスクがあります。物流効率化は、もはや「選択肢」ではなく「必須の経営戦略」といえるでしょう。

(3)環境へ配慮した事業運営を目指せる

物流総合効率化法は、環境負荷の低減につながる取り組みを積極的に支援しています。環境対応は単なるCSRではなく、中長期的な経営戦略の柱となり得ます。

環境配慮への姿勢は、ESG投資・取引先評価の指標としても注目されています。
また、脱炭素を掲げる物流体制の構築は、消費者や取引先からの信頼性向上にも直結します。

物流総合効率化法を活用することで、経済性と環境保全の両立を目指した事業運営が可能となります。

6.まとめ

改正物流総合効率化法は、物流業界の持続的発展を支援する重要な機会です。DX・GX投資への支援制度、事業者間の協働促進、特定事業者による計画的取り組みなど、これまでにない包括的な支援体制が整備されました。

この制度を積極的に活用する企業とそうでない企業との間では、中長期的に大きな差が生じる可能性があります。

効率化によるコスト削減、働き方改革による人材確保、環境配慮による企業価値向上─これらの成果を実現する具体的な道筋が、この法改正によって示されています。

  • 物流業界で働く全ての人々がより良い環境で働けるために
  • お客様により質の高いサービスを提供し続けるために
  • 次世代に持続可能な物流システムを引き継ぐために

改正物流総合効率化法の積極的な活用が重要です。各事業者におかれましては、自社の事業規模や特性を踏まえ、この機会を最大限に活かした取り組みを進められることをお勧めします。

制度の詳細については、地方運輸局等の相談窓口をご活用ください。

監修

貨物運行管理者および特定社会保険労務士の資格を有し、大手金融機関において30年間勤務、その間数多くの労務トラブル実務対応を経験。
現在は老舗企業の経営研究や人材定着支援に取り組み、働きやすい職場づくりに関する研修や制度設計に従事している。
運行管理と労務管理の双方において実務知識と現場感覚を兼ね備えており、信頼性の高い情報提供に努めている。

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