配送ルート最適化の方法を比較！無料手法やAIなどのアルゴリズムも

アルゴリズム等で配送ルートを最適化できるシステムを活用すると、配送先の位置情報や交通状況をもとに最適なルートを自動で算出することが可能です。

本記事では、配送ルート最適化が重要な背景やその手法、導入のメリットについて解説します。

1．配送ルート最適化とは？

ここでは、配送ルート最適化に関する基本情報と求められる背景について解説します。

（1）配送ルート最適化とは

配送ルート最適化とは、複数の配送先に対して、時間やコストを最小限に抑えられる最も効率的な配送ルートを計算・作成することです。

国土交通省が策定した「総合物流施策大綱（2021年度～2025年度）」では、単なるデジタル化・機械化ではなく、それによりオペレーション改善や働き方改革を実現し、物流産業のビジネスモデルそのものを革新させることで、これまでの物流のあり方を変革する「物流DX」を推進していくことが定められています。

配送ルート最適化は、この物流DXの中核技術として位置づけられており、業界全体の変革を支える重要な要素となっています。 また、物流効率化法では、「輸送網集約」、「モーダルシフト」、「輸配送の共同化」等の輸送の合理化により、流通業務の効率化を図ることが求められており、配送ルート最適化はこれらの法的要請に応える具体的手段として機能します。

配送の効率化を目的とし、特にアルゴリズムを用いたITツールを活用することで、配送時間やドライバーへの負担を考慮した無駄のない道順を高精度で算出できます。

配送ルートを最適化することで、以下の効果を期待できます。

コスト削減	燃料費や人件費を削減
競争力強化	サービスの質を向上
業務の負担軽減	・ドライバーへの負担軽減 ・安全な運行のサポート ・配送ルート選定にかかる時間を短縮
環境負荷の低減	CO2排出量を削減

（2）配送ルートの最適化が求められる背景

未充足求人数と物流業界の将来を踏まえると、配送ルートの最適化による業務効率化は重要度が高いといえます。

厚生労働省による産業別未充足求人の状況（４ 未充足求人の状況）では、令和5年6月時点で運輸業・郵便業の未充足求人が4万2,000人となっており、深刻な人手不足が顕在化しています。

さらに国土交通省の物流の現状と課題に関する調査（検討の背景②物流を取り巻く現状と課題）によると、物流業界における人手不足や法改正に対して具体的な対応を何も対応しなかった場合、輸送力が大幅に低下する可能性を公表しています。

また同検討会では、物流は「担い手不足の深刻化や2024年度からのトラックドライバーへの時間外労働の上限規制等の適用、カーボンニュートラルへの対応等も求められており、国民生活や経済活動に不可欠な物資が運べなくなる事態が起きかねない危機的な状況にある」と指摘しています。

具体的には、物流の適正化・生産性向上について対策を講じなければ、2024年度には輸送能力が約14％不足し、さらに、このまま推移すれば2030年度には約34％不足するという深刻な試算が示されています。

限られた人材で効率的に業務を遂行するためにも、配送ルート最適化による生産性向上が急務となっています。

このような危機的状況において、配送ルート最適化は単なる効率化手段ではなく、限られた輸送リソースを最大限活用し、社会インフラとしての物流機能を維持するための不可欠な技術となっています。

2．【無料の方法も！】配送ルート最適化の代表的な方法とメリット・課題

配送ルートを最適化するための代表的な方法には、システムの導入やエクセルでの配車ルート作成が挙げられます。ここでは、配送ルート最適化の代表的な方法を解説します。

（1）【無料でできる！】最適な配送ルートをエクセルで作成

エクセルによる配送ルートの最適化は手軽に始められることが大きなメリットです。配送先の住所や距離、配送順序などのデータを手動で入力して管理します。

一方で、以下のような課題も存在します。

業務量の平坦化が困難	手動でドライバーの業務量を平坦化する必要がある
手動管理による煩雑さ	配送先を効率よく組み合わせるには、高度な計算や調整が必要 （リアルタイム交通情報や、動的な条件変更など）
迅速な対応が難しい	臨機応変な対応はエクセルでは難しい （急な配送先の変更や、突発的事象での代替ルート計算などに未対応）

配送ルートをエクセルで計算するには、始点と終点と輸送量を数値化し、数列による演算を実行することで、最適な配送ルートを計算できます。

高度な数学を理解しなければならず、業務上での汎用性は低い傾向にあります。

エクセルの操作方法は、以下の動画を参考にしてください。

（2）アルゴリズムを活用した配送ルート最適化システムを利用

AI等のアルゴリズムを活用した配送ルート最適化システムは、たとえば以下のようなさまざまな条件を満たす最適な配送ルートを自動で計算し、瞬時に割り出すことができます。

• 地理情報（道路規制情報、地形勾配データなど）
• 交通状況（リアルタイム渋滞情報、天候情報、工事・事故情報など）
• 配送先の優先度（納品時間枠制約、緊急・重要度など）
• 車両の空き具合（積載容量・車両サイズ制限、ドライバー稼働時間など）
• 時間指定（配送時間、ドライバー労働時間制限、荷待ち、荷役作業時間など）

エクセルでの手動作業と異なり、精度とスピードに優れていることが大きなメリットで、業務全体の効率化を期待できます。

このような技術革新は、物流業界が直面する人手不足や2024年問題への対応策としても重要な役割を果たしており、国としても物流DXの推進を通じた業界変革を積極的に支援しています。

一方で、費用がかかることや、導入初期は使い慣れない可能性があるなどの課題もあります。

3．配送ルート最適化システムの種類と仕組み

配送ルート最適化システムの種類は主に3種類あり、それぞれで仕組みが異なります。ここでは、配送ルート最適化システムの種類ごとの特徴等を解説します。

（1）AIタイプ

AIタイプのシステムは、AIのアルゴリズムを活用してリアルタイムの交通情報や配送先の条件、過去の運行情報などの複数条件を解析し、それらのデータを基に最も効率的なルートを提案します。
特徴は以下のとおりです。

機械学習による予測	過去の配送データを基に、混雑する時間帯や最も効率的なルートパターンを提案
リアルタイムのルート再計算	事故渋滞などが生じた際も、最適なルートをすぐに再提示
データ収集と解析	複雑な条件を考慮して最適なルートを選定

AIによる配送ルートの最適化は、高い学習能力が主な特徴です。

国土交通省の「総合物流施策大綱（2021年度～2025年度）」では、AIによる配送ルート最適化を物流DXの中核技術として位置付けています。実際に「物流・配送会社のための物流DX導入事例集」で多数の効率化事例が報告されており、ゼンリンデータコムが「令和4年度物流パートナーシップ優良事業者表彰」を受賞するなど、国からも高く評価されています。

AIのアルゴリズムによって、たとえば、過去のデータを基に、特定の時間帯に混雑する道路を避けるようにルートを自動で調整する等も可能となります。AIによる配車計画の作成については、以下の記事をご覧ください。

（2）シミュレーションタイプ

シミュレーションタイプは、アルゴリズムを活用して複数の配送ルートパターンから最適な配送ルートを検索することができます。

特徴は以下の通りです。

仮想シナリオの作成	異なる配送ルートや配送順序を仮想的に試算し、コストや時間を比較
シミュレーション条件の設定	異なる配送ルートや配送順序を仮想的に試算
結果の可視化と最適化	シミュレーション結果がグラフや地図等で可視化

アルゴリズムを活用してシミュレーションを行うことで、時間指定の配送や、ドライバーの休憩時間、荷物の積み下ろしにかかる時間など、さまざまな制約を満たせる配送ルートを割り出すことが可能となります。

日本ロジスティクスシステム協会の調査によると、物流コストは企業の売上高に対して平均5.00%を占めており、配送ルート最適化による効率化の経済効果は極めて大きいことが示されています。

また、2024年4月から施行されたトラックドライバーの時間外労働上限規制（年間960時間）により、シミュレーションタイプは限られた労働時間内で最大の配送効率を実現するための重要なツールとなっています。

（3）動態管理タイプ

動態管理タイプの配送ルート最適化システムは、変動の多い配送業務を行う場合に有効です。

特徴は以下の通りです。

リアルタイム位置情報の取得	ドライバーの現在地や走行状況をリアルタイムで監視
配送状況のモニタリング	異なる配送ルートや配送順序を仮想的に試算できる
動的ルート再計算	シミュレーション結果がグラフや地図等で可視化される

GPSなどの位置情報を活用してトラックやドライバーの状況を常に追跡し、実際の運行状況に基づいた最適な配送ルートを提案します。

国土交通省の令和3年度調査によると、宅配便大手3社（ヤマト運輸22億7562万個、佐川急便13億6918万個、日本郵便9億8858万個）の合計取扱個数は48億8206万個に達しており、各社が動態管理システムを活用した効率的な配送網を構築しています。

また同省では「適切な運行管理と安心経営のためのICT活用ガイドブック」において、運送事業者の運行管理に役立つICT技術として動態管理システムを推奨しています。

現在の技術では、リアルタイムでの位置情報取得、運行状況の自動記録、配送エリア管理などが実現されており、2024年問題への対応として、ドライバーの労働状況監視と法令遵守の両立を支援しています。

4．アルゴリズムによる配送ルート最適化を推進した事例

ここでは、アルゴリズムによる配送ルートの最適化を推し進めた事例をご紹介します。

（1）日本郵便

日本郵便は労働力不足・人件費単価の上昇等の課題への対処が課題となっていました。

自動ルーティングシステムの導入により、膨大な配送先の順番や、配送経路のルーティングなどの最適化や、配送中の状況の変化に応じて、配送ルートの再計算を行っています。

音声によるナビゲーション機能も備わっているので、ドライバーの不注意から、配送ルートを逸脱することも予防できます。

（2）ニトリグループ

ニトリグループでは、恒常的な人手不足への対処や企業全体での競争力強化が課題となっていました。

AIを活用した最適な配車計画を組めるシステムを行うことで、生産性の向上を図っています。

トラックの積載量やドライバー勤務時間、走行距離を考慮し、無駄の無い配送ルートを高速で計算することで、商品配送にかかるドライバーの負担を軽減できます。

（3）大栄環境グループ

大栄環境グループは主に産業廃棄物の回収や処理において、最適な回収ルートを算出するのに数時間かかっており、効率的な運行が課題となっていました。

廃棄物の回収ルートにアルゴリズムを駆使したシステムを導入することで、時間指定された回収先、ドライバーの作業時間、回収車の積載容量、コンテナの指定など複雑な制約を満たせる回収ルートの算出を数分で行うことに成功しています。

（4）ファミリーマート

ファミリーマートでは、2030年までに2017年度対比30%のCO2排出量削減を目標に掲げ、AIを活用した配送ルート最適化システムを導入して大幅な効率化を実現しています。

AI配送シミュレーターの導入効果 2022年10月から本格稼働を開始したAI配送シミュレーターにより、配送コースや車両台数を約10%削減することに成功しました。システムは段階的に適用範囲を拡大し、定温・チルド配送から冷凍食品、常温配送まで全温度帯に対応しています。

具体的な削減実績

• 2024年度の物流配送におけるCO2排出量：2017年度対比12.8%削減
• 走行距離：2017年度比で約5,300万キロ（約20%）削減
• 配送効率化により継続的な環境負荷低減を実現

システムの特徴 AIによる配送ルート最適化は、弁当やサンドイッチなど時間厳守が求められる商品配送において特に効果を発揮しており、全国約16,000店舗への安定供給を支える重要な技術基盤となっています。

ファミリーマートの取り組みは、配送効率化とCO2削減を同時に実現する配送ルート最適化の成功事例として、小売業界全体の脱炭素化推進に向けた先進モデルとなっています。

引用：https://www.family.co.jp/company/news_releases/2025/20250605_01.html

5．配送ルート最適化のおすすめアプリ・サービス5選を比較

ここでは、配送ルート最適化のおすすめアプリ・サービス5選を紹介します。以下は主要サービス3つの比較表です。

サービス名	トータル物流基幹システムAIR	LYNA 自動配車クラウド	ODIN配送計画
自動配車機能の有無
操作性	直観的な操作しやすさに配慮された操作画面	直感的なインターフェース	条件や数値の入力が容易
労務管理連携		公式サイトに情報なし
特徴	物流業務全体を見える化し、一元管理  受注から配車、運行管理に対応  運転日報の自動作成が可能（ドライバー用アプリが使用可能）	AIによる配送計画の作成  クラウドでの情報の共有  配車全体の見える化	89秒で配送ルートを作成  迅速に配送ルートを検出   条件や数値の入力が容易

ROI算出基準 導入効果の定量評価として、以下の計算式で投資回収期間を算出できます。

• 月間削減コスト =（燃料費削減 + 人件費削減 + 車両稼働効率向上）
• ROI = 年間削減効果 ÷ 初期導入費用

また、以下のような詳細な比較表も無料でご確認いただけます。

（1）トータル物流基幹システムAIR

トータル物流基幹システムAIRでは、配送ルートの最適化だけに留まらず、お客様からの受注、自動配車、スマホでの車両の勤怠管理など幅広くマネジメントできます。

以下で多機能でありながらも直感的な操作性にこだわったAIRの操作画面を紹介します。

メインメニュー	・配送量やドライバーの状態をリアルタイムで監視 ・直感的に操作しやすいデザイン性
配送依頼登録	・登録業務の効率化 ・データアップロードによる登録も可能
配車計画	・配車後、地図で経路を確認可能 ・携帯アプリと連動し、配送進捗の確認ができる
運転日報入力	・日報管理・入力の効率化 ・ドライバー用アプリの使用で運行情報が連携される
請求	・輸送金額を荷主・明細単位ごとに確認できる ・確定後はExcel・PDFで請求書を出力可能

AIRは配送ルートの作成を中心に複雑な物流業務を自動化し、効率的でコスト効果の高い配送を実現します。

運行コストを低減しつつ配送時間の短縮を実現することで、配送業務における自動化・最適化を目指すことが可能となるでしょう。

製品ページはこちら

主要機能	受注、配送計画の立案、運転日報の管理、請求書の管理、他のシステムとの連携、ドライバーアプリ機能、売上仕入れ管理など
所在地	東京都千代田区丸の内２−２−１岸本ビル10階
価格・料金プラン	こちらからお問い合わせいただけます

（2）LYNA 自動配車クラウド

LYNA自動配車クラウドは、 ドライバーの勤務時間や時間指定の配送、車両の積載量などの配送オーダーを入力するだけで、AIが車両一台一台の配送計画を立てられます。

• 配送計画をAIが瞬時に検出
• 導入コストの低さ
• シンプルなインターフェース

LYNAはクラウド上で運用できるため、配送管理者と配送員との間での配送計画の共有もスムーズに行えます。

製品ページはこちら

主要機能	AIによる配送計画の作成、クラウドでの情報の共有、配車全体の見える化など
所在地	千葉県市川市八幡3−4−8田中ビル４階
価格・料金プラン	月額50000円〜

（3）ODIN配送計画

ODIN配送計画は運送業や食品メーカーの配送業務まで、幅広い業界で利用されています。

• 必要情報を入力すると89秒で配送ルートを作成
• 複雑な制約のもとでも迅速に配送ルートを検出
• 条件や数値の入力が容易

ODIN配送計画は短時間で配送ルートを作成できるだけでなく、突発的な状況変更があった時に、配送ルートの手直しが簡単にできるという特徴もあります。

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主要機能	配送ルートの作成、配車表の作成機能、最短配送経路の作成、積載量計算機能など
所在地	神奈川県横浜市西区北幸２−１０−３９日総第５ビル９階
価格・料金プラン	月額料金：2000円/1ドライバー初期費用：16万5000円

（4）GuRutto

GuRuttoは、地図上にある複数の目的地を一筆書きのように配送ルートを作成できることをコンセプトとした、配送ルート最適化システムです。

• 配送ルートの作成が容易
• 配送ルート立案の自動化を促進
• 配送状態の記録が可能

GuRuttoは簡単に配送ルートを作成でき、機械による効率的なルート検出ができるため作業時間の圧縮も可能です。

製品ページはこちら

主要機能	配送ルートの作成、配送ルート管理、配送状態の管理など
所在地	富山県富山市千原崎１−７−１７
価格・料金プラン	無料プラン：月額0円ライトプラン：月額5500円スタンダードプラン：月額11000円プロプラン：月額33000円スーパープロプラン：要相談

（5）LogiSTAR配車管理簿

LogiSTAR配車管理簿は、物流における配送のタイミングや、配送の課題を見える化することで、物流の効率化を図ることが可能です。

• 業務の見える化を推し進め、無駄な業務を排除できる。
• その時間帯の交通渋滞の状況を把握し、最適な配送ルートを検索できる。
• 中央分離帯や一方通行などの道路交通規制などを考慮した配送計画を立てられる。

経験の浅い社員でも、無駄の無い配送計画を作成することができ、配送ルートの最適化を実施できます。

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主要機能	地域性や時間指定の配送への考慮機能、希望配送時間への配慮機能、優先度を考慮した配送計画の作成
所在地	福岡県福岡市博多区冷泉町２−１博多祇園MーSQUARE
価格・料金プラン	要お問い合わせ

7．まとめ

アルゴリズムによる配送ルートの最適化を目指せるシステムは、物流業界において効率化とコスト削減の重要な手段となっています。

システムの導入により、ドライバーの負担軽減や配送時間の短縮、燃料費の削減といった多くのメリットを享受できるでしょう。

特に2024年4月に施行された労働時間規制により、物流事業者には「働き方改革」と「配送品質維持」の両立が求められており、システム導入による業務効率化は、もはや経営戦略上の必須要件となっています。