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改正貨物自動車運送事業法は2025年の改正によって 「安全確保」「適正運賃の確保」「多重下請けの抑制」 の3つを軸としており、運送会社だけでなく荷主企業にも契約・運行管理・許可更新・運賃交渉などの見直しが求められます。対応が遅れれば、罰則や契約解除、事業許可更新不可といった深刻なリスクにつながる可能性もあります。
本記事では、法改正の背景や目的、改正の主要ポイント、そして運送会社・荷主が取るべき具体的な対応策までを網羅的に解説します。
今回の改正により、運送会社だけでなく荷主企業においても、契約内容や運行管理体制、運賃交渉の方法など、多岐にわたる実務の見直しが不可欠となります。
ここでは、2025年に施行される貨物自動車運送事業法改正の全容を解説します。
2025年の貨物自動車運送事業法改正は、「安全確保」「適正運賃の確保」「多重下請けの抑制」の3つを軸に、業界構造そのものを見直すものです。
これまで長年指摘されてきた、長時間労働や低運賃、多層下請け構造による安全性低下といった課題に対し、以下の方向で是正が進みます。
内容 | |
---|---|
安全確保 | 過度な下請け依存を減らし、運送事業者が自社で実運送を担う割合を増やすことで、輸送品質とドライバーの安全を向上させる。 |
適正運賃 | 適正原価の告示などを通じ、持続可能な運賃水準を確保し、経営基盤の安定化を図る。 |
多重下請け抑制 | 二次請け以内の運送制限や管理簿の整備によって、取引の透明性を高め、不当なコスト圧縮や労働条件の悪化を防ぐ。 |
これらの改革は、単に運送会社だけでなく荷主企業にも影響を及ぼし、物流サプライチェーン全体で「持続可能性」と「生産性向上」を両立させる転換点となります。
上記の施策を講じることにより、荷待ち・荷役時間を年間125時間/人、積載率向上による輸送能力16%増加を見込んでいます。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001859865.pdf
今回の法改正では、物流業界が長年抱えてきた構造的な課題、すなわちドライバー不足、長時間労働、そして低運賃による経営体質の弱体化といった問題への対策が強化されます。これらの課題解決のため、改正法では以下のような点が具体的に求められています。
項目 | 概要 |
---|---|
契約内容の明確化 | 運送役務の内容はもちろん、附帯業務料や燃料サーチャージといった対価に関する事項を明確に記載した契約書の交付が義務付けられます。これにより、取引の透明性が高まり、予期せぬコスト発生やトラブルを防ぐことが期待される |
運行管理体制の整備 | 「実運送体制管理簿」の作成・備え付け義務が、これまで一定規模以上の事業者に限られていたものが、すべての貨物自動車運送事業者に拡大されます。これにより、自社便・委託便の運行状況、委託先の許可状況、請負階層などを正確に把握・記録することが求められる |
事業許可の更新制導入 | これまで原則無期限であった事業許可が、5年ごとの更新制へと変更されます。更新にあたっては、過去の事業実績、法令遵守状況、安全管理体制などが審査されるため、日頃からのコンプライアンス意識と記録管理が極めて重要に |
適正運賃の確保 | 国土交通省による「適正原価」の告示などを通じ、持続可能な運賃水準の確保が図られます。運送会社は告示基準に基づいた原価算定を行い、荷主へ提示することが必要となり、荷主側もそれに応じた運賃交渉と支払いが求められる |
荷主の責任強化 | 荷待ち・荷役時間の短縮や無理な運行依頼の禁止など、荷主に対しても法的責任が課せられる |
これらの変更点は、単なる事務手続きの変更にとどまらず、事業の継続性や取引関係そのものに直結する経営課題です。改正施行までの限られた期間で、自社の現状を正確に把握し、遅延なく改善計画に着手することが、事業リスクを回避するための最重要課題と言えます。
出典:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/kaiseijigyoho/text2025.pdf
今回の貨物自動車運送事業法改正による新しいルールへの対応が遅れると、運送事業者や荷主は深刻なリスクに直面する可能性があります。具体的には、以下のようなリスクが考えられます。
リスクの種類 | 具体的な内容 |
---|---|
罰則・行政処分 | 無許可業者への委託禁止違反や、再委託回数制限などの義務に違反した場合、是正命令や勧告、企業名の公表といった行政処分を受ける可能性があります。 |
契約解除 | 取引先(荷主)が許可証の確認を怠り、無許可業者と取引した場合、契約解除の対象となる可能性があります。また、運送会社側も、法令遵守状況や安全管理体制の不備により、取引先から契約を見直されるリスクがあります。 |
事業許可の更新不可 | 事業許可が5年ごとの更新制となるため、法令遵守状況、安全管理体制、労務環境、財務の健全性などの審査基準を満たせない場合、事業許可の更新が認められず、事業継続が困難になる可能性があります。特に、ドライバーの処遇改善が義務化されるため、これに対応できない企業は更新が難しくなるでしょう。 |
信用失墜・取引機会の喪失 | 違反事実が行政や業界内で公表されると、取引先や荷主からの信頼を失い、新規契約や入札への参加機会を喪失する恐れがあります。 |
これらのリスクを回避し、事業を継続するためには、法改正の内容を正確に理解し、速やかに実務対応を進めることが不可欠です。
出典:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/kaiseijigyoho/text2025.pdf
貨物自動車運送事業法の改正では、物流業界が抱える構造的な課題解決に向け、実効性のある措置が複数導入されます。それぞれのポイントが運送会社および荷主の実務にどのような影響を与えるのか、具体的に解説します。
2025年4月施行の改正により、実運送体制管理簿の作成義務対象が拡大されます。
これにより、真荷主から貨物の運送を受託し、利用運送を行う最上位の一般貨物自動車運送事業者(元請け事業者)だけでなく、貨物利用運送事業者にも作成義務が課せられるようになります。
実運送体制管理簿作成義務の変更点は、以下のとおりです。
対象事業者 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
元請け事業者(真荷主から運送を受託し、利用運送を行う最上位の一般貨物自動車運送事業者) | 作成義務あり | 作成義務あり |
貨物利用運送事業者(真荷主が貨物利用運送事業者である場合) | 作成義務なし | 作成義務あり |
その他(特定貨物自動車運送事業者、貨物軽自動車運送事業者、第一種・第二種貨物利用運送事業者) | 規定の準用なし | 実運送体制管理簿に関する規定が準用 |
この変更により、荷主はあらゆる案件で、貨物が実際にどの事業者に運送委託されているのか、いわゆる「請負階層」を正確に把握しやすくなります。真荷主は、元請け事業者に対し、業務取扱時間内であればいつでも実運送体制管理簿の閲覧・謄写を請求できるようになります。
なお、実運送体制管理簿は、運送完了日から1年間の保存が義務化されています。保存については紙媒体以外にデジタル保存も可能です。
参考:https://www.kyushu.meti.go.jp/seisaku/ryutsu/oshirase/250612_1_2.pdf
2025年4月施行の改正では、多重下請け構造是正のため、すべての貨物自動車運送事業者に「二次請け以内」への委託抑制が努力義務として課されます。
事業者は、自社で実運送を担う体制を基本とし、二次請け以降の委託を減らす方針を社内規程に明文化することが求められます。
また、契約時に請負階層を明確化し、委託先の許可状況を把握する体制整備が必要です。
荷主も輸送階層の把握や契約条項への制限明記、適正運賃の支払いを通じて、取引の透明性と安全性確保に協力することが求められます。
二次請け以降の委託に対する直接的な罰則は課されませんが、取引先評価において不利に働く可能性が高く、実質的に遵守が不可欠なルールとなるでしょう。
これまで、運送業界では過度な価格競争が起こりやすく、運送事業者が持続的に事業を行うための「標準的な運賃」が設定されていました。しかし、その強制力は弱く、荷主の理解を得るのが難しいケースも少なくありませんでした。
今回の改正では、この状況を改善するため、国土交通大臣が「適正原価」を告示することになります。これは、運賃やその他の料金について、事業運営に必要な費用を算定したものです。
変更点 | 内容 |
---|---|
標準的な運賃から適正原価へ | 事業運営に必要な費用を算定した「適正原価」が基準となる |
運賃・料金の最低ライン設定 | 一般貨物自動車運送事業者は、適正原価未満での運賃・料金受託が原則禁止 |
運賃上昇と荷主への影響 | 運賃上昇の流れの中で、多重下請け構造が残る案件では荷主の物流費が増加 |
荷主への対応 | 請負階層の可視化と多重下請け構造の改善への取り組みが不可欠 |
この「適正原価告示」により、運送事業者は適正な利益を確保しやすくなり、ドライバーの待遇改善や安全投資への原資確保が期待されます。一方で、荷主にとっては、運賃コストの上昇につながる可能性もあり、請負階層の確認や効率的な運送体制の構築がより一層重要となります。
なお、適正原価制度の導入は、公布から最大3年以内の2028年中に施行予定とされており、速やかな社内対応が望まれます。
参考:https://hacobu.jp/blog/archives/5548
これまで、貨物自動車運送事業の許可は一度取得すれば“終身有効”であり、経営状況や安全管理に問題があっても継続が可能でした。しかし、2025年の改正法により「5年ごと」の更新制が導入されることが決定しました。主な変更点と実務影響は以下のとおりです。
内容 | |
---|---|
許可更新対象 | 5年ごとに更新申請が必要 |
審査項目 | 法令遵守、安全管理体制、労務環境、財務の健全性などが想定される条件 |
更新不可のリスク | 条件未達成の場合、許可の更新が認められず、事業継続が困難になる可能性 |
財務状況に関する書類提出 | 直近5期程度の決算書や事業収支見積書、残高証明書が必要になる |
この更新制度は、適正な運行・経営体制を維持する事業者のみが許可を維持できる仕組みとして導入され、業界全体の信頼性と持続可能性の向上を想定したものです。
2025年の改正法では、無許可の貨物自動車運送事業者への委託が法律で明確に禁止されます。国土交通省の改正貨物自動車運送事業法に関する質疑応答の資料にも次のように記載されています。
「貨物自動車運送事業者は、国土交通大臣の許可を受けていない者に対して運送を委託してはならない。」
「荷主についても、無許可業者への委託に関して是正指導等の対象となる可能性がある。」
引用:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001860035.pdf
この改正により、荷主・運送会社の双方が委託先の許可状況を事前に確認する義務を負います。違反した場合、運送会社だけでなく荷主企業の両者とも、罰金、事業停止命令、許可取消しなどの行政処分の対象になる可能性があります。
実務では、契約前に許可証の写しを取得・保管し、更新期限や許可状況を定期的に確認する仕組みが必要です。また、発注フローや社内規程に「無許可業者排除」のチェックプロセスを組み込み、担当者任せにしない運用ルールを整備することが求められます。
ほかにも、多層下請けの可能性がある場合には、二次請け以降の再委託先まで遡って許可状況を確認する必要があります。
運送会社は、自社の管理体制を棚卸し、改定された条項に沿って契約内容や運行計画の見直しに着手する必要があります。
ここでは、運送会社・荷主が今すぐ取るべき対応について解説します。
改正への対応を円滑に進めるため、運送会社は以下のポイントを早期に着手する必要があります。
ポイント | 対応内容 | 優先度 | 担当部署 |
---|---|---|---|
実運送体制管理簿の整備・更新 | 現行の管理簿の記載範囲を見直し、全事業者対象化に対応。委託先・運行状況を正確に記録できる体制構築。 | 高 | 運行管理部 / 法務 |
二次請け以内での輸送体制構築 | 多重下請け構造の有無を点検し、二次請け以内に抑える契約条件を明文化し社内ルール化。 | 高 | 運行管理部 / 法務 |
適正原価の算定と運賃交渉準備 | 国交省告示基準で人件費・燃料費等を算定し、荷主への提示資料を作成。 | 中 | 経営企画 / 営業 |
事業許可の確認と更新準備 | 許可証の有効期限を把握し、5年ごとの更新に備えて法令遵守・実績・安全管理体制を整理。 | 中 | 法務 / 総務 |
委託先の許可確認体制の構築 | 全取引先(含二次請け)が正規許可業者か契約前に確認・記録するプロセスを確立。 | 高 | 法務 / 運行管理部 |
労働条件の改善 | 勤務時間管理、待機時間・附帯作業への適正対価支払い体制を整備し、採用・定着率向上を図る。 | 低〜中 | 人事 / 総務 |
社内教育の実施 | 法改正内容、無許可業者排除や二次請け抑制の重要性を全社員に周知。 | 高 | 人事 / 運行管理部 |
このチェックリストは、改正貨物自動車運送事業法に基づき、運送会社が優先的に取り組むべき対応項目を整理したものです。優先度は法的義務の強さや違反時のリスク、準備に要する期間を総合的に判断して設定しています。
改正後は、荷主も運送会社と同様に法令遵守体制の一端を担うことが求められます。
特に委託契約の締結前後で必要な確認や体制整備を行い、その後も継続的なモニタリングを欠かさないことが重要です。
例えば、実運送体制管理簿の確認や請負階層の変動チェック、運賃支払い状況の把握を定期的に実施することで、無許可業者への委託や二次請け超過のリスクを未然に防ぐことができます。
項目 | 対応内容 | 優先度 | 担当部署 |
---|---|---|---|
運送会社のコンプライアンス状況の確認 | 取引先が実運送体制管理簿の整備、二次請け以内での輸送体制、適正原価の算定・提示、事業許可の有効性、無許可業者排除の義務を遵守しているかを契約前に確認。 | 高 | 調達 / 法務 |
適正運賃の支払い体制整備 | 提示された適正原価を理解し、適正な運賃を支払える社内承認フロー・交渉ルールを構築。 | 中 | 経理 / 調達 |
二次請け以降の輸送実態の把握 | 委託が二次請け以降に及ぶ場合、階層構造と関与事業者の許可状況を把握。必要に応じ直接契約や再確認を実施。 | 高 | 調達 / ロジスティクス |
契約書・発注書への遵守条項明記 | 契約条件に無許可業者排除、二次請け制限、適正運賃確保に関する条項を盛り込み、違反時対応を明文化。 | 中 | 法務 / 調達 |
上記は、荷主として改正後に遵守すべき義務とリスク回避策を可視化したものです。優先度は、法令違反時の影響度や準備に要する時間を考慮して設定しています。
貨物自動車運送事業法改正は、運送業界全体の持続的な発展と、担い手であるドライバーの労働環境改善を目指すものです。
運送会社、荷主双方ともに、本改正の内容を正確に理解し、自社の実情に合わせた計画的な対応を進めることが、今後の事業継続と成長のために不可欠となります。早期の準備と着実な実行により、変化を機会として捉え、業界全体の健全化に貢献していきましょう。