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2024年問題とダブルカウント|トラック運行管理と企業の対策とは

2024年問題による労働時間規制の強化において、新しく注目されている概念が「ダブルカウント」です。これは、勤務時間や休息時間の計算において特定条件下で時間を二重にカウントするルールであり、対応を誤れば改善基準告示違反となり、罰則や行政処分のリスクを高めます。

本記事では、2024年問題とダブルカウントの基本から、企業が取るべき具体的な管理術・システム導入のポイントまでをわかりやすく解説します。

目次

1.ダブルカウントがもたらす違反リスクと今すぐ対応すべき理由

「ダブルカウント」の正確な理解と適切な管理は、2024年問題におけるコンプライアンス遵守の要ですまずはダブルカウントがもたらす違反リスクと今すぐ対応すべき理由について解説します。

(1)ダブルカウントが違反・罰則リスクを高める理由

ダブルカウントとは、特定の勤務スケジュールにおいて労働時間や拘束時間を二重に算入する仕組みです。
このルールを正確に把握・管理できない場合、ドライバーの総拘束時間が法令上限を超過し、意図せず改善基準告示違反となるリスクが一気に高まります。

特にに2024年4月からの改正により、1日の拘束時間は原則13時間以内、延長しても15時間が上限となり、14時間を超える回数は1週に2回までと規制が強化されているため、より一層の注意が必要です。

引用:https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000977556.pdf

たとえば、夜間業務を終えた後に短時間の休息を挟み、翌朝すぐ別の運行を開始するケースを考えてみましょう。休息時間の計算方法によっては前後の拘束時間が重複してカウントされます。
この二重計上により、帳簿上の拘束時間が実態以上に膨らみ、基準超過が発生します。

違反が認定されれば、「文書警告、自動車の使用停止、事業停止、許可取消などの厳正な行政処分を行う」とされており、取引先からの信用低下や契約解除といった経営上の損失にも直結します。

出典:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice
出典:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/baseline.html

(2)企業が今すぐ対応を始めるべき根拠

改正された改善基準告示は2024年4月1日から全面施行され、企業には即時の遵守が求められます。今回の改正には猶予期間が一切設けられていないため、施行日以降に違反状態が発覚すれば、その時点で行政処分や罰則の対象となります。

さらに、ダブルカウントを正しく管理するためには、複数の準備工程が必要です。運行データの把握・システム設定・配車計画の見直し・ドライバー教育などが含まれます。

加えて、2024年10月からは行政処分の基準が厳格化され、同じ違反でもより重い処分を受けるリスクが高まっており、早期の対応がより重要となっています。
国土交通省の違反点数制度では、一度の違反が3年間累積されるため、初回違反であっても将来の事業運営に長期的な影響を与える可能性があります。

したがって、対応の先延ばしはそのまま違反リスクの高まりにつながります。改善基準告示はすでに施行されており、いまなお準備が整っていない企業は、即時の対策開始が事業継続のために不可欠です。

参考:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice
出典:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/baseline.html

2.改善基準告示で変わったダブルカウントのルール

ダブルカウントにより、実際の勤務より帳簿上の拘束時間が長くなるため、改善基準告示の上限を超過しやすくなるため、適切にルールを認識しておくことが重要です。ここでは、改善基準告示で変わったダブルカウントのルールについて解説します。

(1)運転の中断時における休憩の義務化

連続運転時間自体は従来と同じく4時間以内ですが、運転の中断時は「原則として休憩」を与えることが新たに義務化されました。以下で改正前後の比較をご確認いただけます。

改正前改正後
1回の連続運転時間4時間以内4時間以内 ※変更なし
運転の中断作業・休憩等なんでも可原則休憩
休憩取得要件10分以上、合計30分10分以上、合計30分※変更なし
出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/roudoujouken05/index.html

厚生労働省のパンフレット「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」では、連続運転時間に関する改正内容が明記されており、さらに厚生労働省の公式Q&Aでは、「『運転の中断』については、トラック運転者が運転の中断時に荷積み・荷卸し等の作業に従事することにより、十分な休憩が確保されない実態があるといったことを踏まえ、新告示において、運転の中断時には『原則として休憩』を与えるものとしました」と詳しく解説されています。

これにより、改正前の運転の中断は作業や休憩など、ドライバーが運転をしない時間であればどのような内容でも良かったことに対し、改正後は「休憩」でなければ運転の中断とみなされません。

企業は、この変更に対応するため、休憩ポイントの設定配車計画の見直しが不可欠です。
適切な運行計画を立てなければ、結果的に拘束時間ダブルカウントの発生要因となり、法令違反のリスクが高まります。改正の意図を理解した上で、運転スケジュールの再構築が求められます。

(2)休息期間の延長

休憩時間を単なる待機時間としてではなく、ドライバーが休息できる実質的な時間として確保できるような配慮が不可欠です。これにより、連続運転時間の超過を防ぐとともに、ダブルカウントの発生リスクを低減させることができます。

改善基準告示の改正により、ドライバーの休息時間確保に関する規定が見直されました。

運輸業・郵便業が全業種において最も脳・心臓疾患による労災支給決定件数の多い業種【令和3年度:59件(うち、死亡の件数は22件)】※ となっており、適切な休息時間確保の重要性が裏付けられています。特に、長時間拘束後の休息時間を従来より長く取ることが努力義務となっています。

改正前改正後
基本休息時間原則8時間以上原則8時間以上(変更なし)
長時間拘束後の追加休息明確な基準なし継続16時間以上の拘束時は、さらに2時間以上の休息付与を努力義務化

なお、16時間の拘束が認められるのは長距離貨物運送(450km以上)で住所地以外での休息となる場合のみで、週2回に限定されます。一般的な運行では最大15時間が上限です。 16時間拘束時は運行終了後に12時間以上の休息期間を与える必要があり、これによりドライバーの疲労回復と安全運行を確保します。

企業はこの変更に対応するため、長距離運行夜間運行のスケジュール見直しなどの取り組みが不可欠です。対応が不十分だと、拘束時間超過やダブルカウント発生の要因となり、結果的に法令違反のリスクが高まります。

※出典:https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/000955416.pdf

(3)1日の総拘束時間の短縮

改善基準告示の改正により、。原則13時間は維持されますが、特例として認められていた延長幅が短縮され、長時間拘束の抑制が強化されています。以下で改正前後の比較をご確認いただけます。

改正前改正後
1日の総拘束時間(原則)13時間以内13時間以内(変更なし)
延長の上限(特例)最大16時間まで最大15時間まで
(16時間は特定条件下のみ)
延長回数の制限15時間超:週2回まで14時間超:週2回まで(目安
出典:https://jta.or.jp/member/rodo/mhlw_kaizen.html

なお総拘束時間とは、始業から終業までの間に発生する運転・荷役・休憩・待機など、すべての時間を含みます。
今回の改正により、これまで可能だった長時間勤務パターンが一部制限され、従来の運行スケジュールでは違反となるケースが増える可能性があります。

拘束時間短縮はダブルカウントの影響と密接に関わるため、改正内容を踏まえた運行管理体制の構築が不可欠です。

(4)ダブルカウントの定義と発生条件

ダブルカウントとは、勤務時間や拘束時間を計算する際、翌日の始業時刻が前日より早くなった場合に、同じ時間帯が前日と当日の両方の拘束時間に算入される状態を指します。これにより、実際の勤務よりも帳簿上の拘束時間が長くなり、基準超過のリスクが高まります。発生しやすい条件としては、以下のようなケースがあります。

ケース概要
運転業務に連続する荷役や軽作業運転後すぐに事業所内で作業が発生し、
実質的に休憩になっていない
運転終了後の待機・連絡待ち指示を待つ間も業務から解放されず、
自由時間として扱えない
仮眠や休憩の自由制限場所や状況によって自由に外出や行動ができず、
休憩時間と認められにくい
始業時刻の前倒し前日5時開始→翌日3時開始で2時間重複

これらの時間はみなし労働時間として扱われ、運転時間・拘束時間の双方に算入される可能性があります。
特に始業時刻の前倒しによるダブルカウントは、改善基準告示において「始業時刻から24時間が1日」とする計算方法により発生します。当日と翌日の拘束時間が重なる場合、同じ時間帯が両日にカウントされるため注意が必要です。

結果として、総拘束時間や運転時間の上限を意図せず超過し、改善基準告示違反や行政処分・罰則、取引先からの信頼低下などの負の連鎖につながる恐れがあります。
企業は、これらの時間の取り扱いルールを正しく理解し、運行管理システムや勤怠管理方法に反映させることが不可欠です。

3.ダブルカウントが企業に与える影響

ダブルカウントは、単なる時間計算の誤りにとどまりません。発生すれば改善基準告示違反として行政処分や罰金が科される可能性があり、企業にとって深刻なリスクとなります。

ここでは、こうしたダブルカウントが企業経営や運行体制に及ぼす具体的な影響について解説します。

(1)ダブルカウントの実態

国土交通省の「トラック輸送状況の実態調査結果」(令和3年度)によると、以下のような実態が明らかになっています。

こうした基準超過が発生する背景には、勤務と休息の境界管理の複雑さがあり、正確な労働時間把握ができていない場合、ダブルカウントのようなシステム上の計算ミスがさらなるリスク要因となる可能性があります。

これらの状況は、実際の運転時間・拘束時間の両方を押し上げ、基準超過や違反につながる温床となります。事業者は、日々の運行スケジュールと休息時間の実態を正確に把握し、システムやマニュアルに反映させる必要があります。

(2) 勤怠管理や配車計画への影響

ダブルカウントの発生を放置すれば、法令違反や業務効率の低下を招く構造的なリスクとなります。

項目勤怠管理への影響配車計画への影響
主な問題・拘束時間や残業時間の集計が複雑化し、正確な労働時間の把握が困難になる・休憩とされる時間が実質的に業務であれば、労働時間として重複計上される・残業代の過不足や時間外労働上限の意図しない超過が発生・記録の不整合が労務監査や行政調査での指摘対象となり、法令違反リスクが高まる・ダブルカウントを考慮せず拘束時間を過小評価すると過密スケジュールになりやすい・無理な配車がドライバーに過度な負荷をかけ、疲労蓄積から拘束時間超過や安全リスクが増大・計画修正が頻発し、輸送効率や顧客サービス品質が低下する
リスクの性質・労務管理上のコンプライアンス違反・賃金計算の誤り・運行の安全性低下・業務効率悪化・顧客対応品質の低下
対応の方向性・勤怠管理システムの設定を改修し、二重計上を自動検出・防止可能にする・拘束時間データを労務部門と運行管理部門で共有し、一元管理する・配車ソフトにダブルカウント判定機能を組み込み、拘束時間超過を自動警告・改正版基準に即したルート設計・シフト調整を行う
勤怠データの客観的保存厚労省が求める勤怠記録の3年間保存により、監査対応の信頼性が向上長期データを基に配車傾向を分析可能
過重労働予兆の検知拘束時間上限接近時にアラート、過重労働の予防配車計画の再調整で安全運行を確保
出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html
出典:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001608991.pdf

企業がダブルカウントによる管理ミスをきっかけに悪循環へ陥らないためには、勤怠管理システムや配車ソフトの設定を見直し、二重計上を自動で検出・防止できる体制を構築することが不可欠です。

(3)コンプライアンス違反による罰則・取引先評価低下の可能性

ダブルカウントによって拘束時間や運転時間が基準を超過すると、改善基準告示違反として労働基準監督署からの是正勧告や指導の対象となり、改善が見られない場合は行政処分(車両停止処分等)が科される可能性があります。違反が公表されれば、荷主や取引先からの評価が下がり、契約打ち切りや新規受注減少といった直接的な経営ダメージにつながります。(出典:https://www.mhlw.go.jp/content/001082040.pdf

2024年10月1日から、貨物自動車運送事業においても改善基準告示違反に対する行政処分量定が引き上げられました。国土交通省の「貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について」(令和6年9月19日)によると、改善基準告示違反(勤務時間等基準告示の遵守違反)について以下のように処分が強化されました。

  • 初違反:未遵守6件以上で未遵守1件あたり2日車
  • 再違反:未遵守6件以上で未遵守1件あたり4日車

従来は「未遵守6件以上16件以下で10日車、16件以上で20日車」という固定処分でしたが、改正により件数に比例した処分となり、多数の違反がある場合はより厳しい処分を受けることになります。

さらに、長時間拘束や休息不足が常態化すれば、ドライバーの健康悪化や過労による事故リスクが高まり、企業の社会的信用失墜や損害賠償責任の発生にも直結します。重大事故が報道されれば、ブランド価値や採用力にも長期的な悪影響を及ぼします。

したがって、企業は罰則回避だけを目的とするのではなく、ドライバーの健康と安全を守るための正確な労働時間管理体制の構築を最優先課題と位置付ける必要があります。

5.ダブルカウントを防ぐための運行管理術

ダブルカウントを防ぐためには、最新の勤怠管理システムを導入し、複雑な労働時間規制に対応した自動計算機能を活用することが第一歩となります。これにより、ヒューマンエラーによる法令違反リスクを低減できます。
ここでは、ダブルカウントを防ぐための運行管理について解説します。

(1) 勤怠管理システムによる拘束時間自動計算

勤怠管理システムによる拘束時間の自動計算は、運行記録や打刻データをもとに、運転時間・荷役時間・休憩・待機を正確に区分し、リアルタイムで拘束時間を算出できます。これによって、二重計上や上限超過のリスクを未然に防ぎます。勤怠管理システムの活用による主な効果は、以下のとおりです。

効果概要
法令遵守の確実化改善基準告示違反を防止し、コンプライアンスを確実に維持する
ドライバーの健康管理強化過重労働を抑制し、健康被害や疲労蓄積を防ぐ
監査対応の迅速化労務監査や行政調査に対し、正確な記録を即座に提示できる
管理負担の軽減二重計上の可能性がある勤務形態を自動で検出し、管理者の業務を効率化する
労働時間上限の自動管理システムが1日・1週・1月の労働時間上限を計算・警告し、時間外超過を防止
休憩時間確保のチェック運転間インターバルや休息時間を自動計算・アラート、改善基準告示に沿った休息確保を支援

導入時には、改善基準告示対応の計算ロジックを備えたシステムを選定し、運行管理システムや配車ソフトと連携させることが重要です。これにより、勤怠データを配車計画に反映させ、無理のない運行スケジュールを構築できます。

(2) 配車計画の最適化

配車計画の最適化によって、ドライバーごとの拘束時間を正確に把握し、連続運転時間の制限や休息期間の確保を前提にスケジュールを組むことで、二重計上や上限超過を未然に防ぎます。具体的な最適化ポイントは以下の通りです。

最適化ポイント概要
勤務状況に応じたシフト調整前日の拘束時間や運行パターンを考慮し、休息時間を十分に確保できるよう勤務開始時刻を調整する
生理的リズムを踏まえた運行夜間業務や連続勤務を避け、体内時計に沿った勤務サイクルを設定する
休憩ポイントの事前設定運行計画に休息取得を組み込み、拘束時間の重複や二重計上を防止する
勤怠履歴との連動による自動アラート前日の勤務履歴や累計運転時間を踏まえたアラートで、二重計上や過重労働を未然に防止

最適化された配車計画は、安全性の向上・違反防止・ドライバー定着率の改善に直結します。
勤怠管理システムと連動させることで、スケジュール作成時に自動でダブルカウントのリスクをチェックでき、管理精度をより向上させることも可能です。配車計画の最適化には、AIによる配車機能が搭載されたシステムが便利です。

(3)運行管理者・ドライバー双方への教育徹底

制度やシステムが整っていても、関係者全員の理解と運用が伴わなければ、違反リスクは解消されません。以下のような運行管理者・ドライバー双方への教育を徹底する必要があります。

対象教育内容目的
運行管理者・改正された改善基準告示の詳細と適用範囲
・ダブルカウントの発生条件と典型的パターン
・勤怠管理や配車計画における防止策と管理手順
日々のスケジュール作成や勤怠チェックで法令遵守とダブルカウント防止を実務レベルで実践できるよう習熟させる
ドライバー・自身の労働時間管理の重要性と正しい記録方法
・虚偽申告や申告漏れがもたらす法的・安全的リスク
・十分な休息確保が安全運転と健康維持に直結すること
現場での安全運行とルール遵守の意識を高め、ダブルカウント防止を現場レベルで浸透させる
共通・法改正や業務変更に応じた定期的な教育・更新
・理解度確認やフィードバックによる運用精度向上
最新情報に基づき、教育効果を最大化し法令遵守と安全運行の文化を定着させる

これらの教育は、定期研修・安全会議・eラーニングなど多様な方法で継続的に実施することが重要です。

理解度を定期的に確認し、制度改正や運行形態の変化に合わせて内容を更新することで、ダブルカウント防止の文化を社内に根付かせることができます。

6.ダブルカウントとあわせて知るべき2024年問題とは?

2024年問題とは、2019年4月から施行された働き方改革関連法により、トラック運転手にも時間外労働の上限規制が適用されることに伴う、物流業界全体への影響を指します。
特に、ドライバーの労働時間管理が厳格化されるため、これまで以上に正確な勤務時間・拘束時間の把握が不可欠となります。ここでは2024年問題の概要について解説します。

(1)トラック運転手の長時間労働是正を目的とした働き方改革

2024年問題の核心は、トラック運転手にも一般労働者と同様の時間外労働上限規制が本格適用された点にあります。これまで運送業界には一定の猶予措置が取られてきましたが、規制適用によって、長時間労働の是正・健康確保・労働条件の改善が法的義務として強化されました。

その目的は、長時間労働の是正による運転手の健康確保と労働条件の改善、そして事故防止を含む安全輸送体制の確立にあります。

改革の目的詳細
ドライバーの健康維持と過労防止労働時間の上限規制や休息期間の確保により、疲労蓄積を防ぎ、心身の健康を守る
労働環境の改善による人材確保過酷な労働条件を是正し、既存ドライバーの定着率を高めるとともに、新規採用を促進する
事故防止を含む安全輸送体制の確立適正な運行スケジュールと十分な休息確保によって、運転中の注意力低下や事故発生リスクを低減する
業界全体の生産性向上と効率化長時間労働是正によりドライバーの健康が守られ、業務効率化や労働力の持続的確保が可能となる

なかでも、勤務時間や休息時間の計算方法に関わるダブルカウントは、改正によって顕在化しやすくなった新たな課題です。これは、制度上の遵守だけでなく、企業の信用や事業継続にも直結するため、早急な理解と対策が求められます。

出典:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001752073.pdf

(2)改善基準告示の改正と業界構造的な課題について

改善基準告示の改正は、深刻化するドライバー不足と高齢化という業界構造的な課題を背景にしています。国土交通省の調査でも、運転手の平均年齢は年々上昇し、若手人材の確保が困難な状況が続いています。主に改正された内容としては、下記の通りです。

  • 年間拘束時間:3,300時間以内(労使協定により3,400時間まで延長可能)
  • 月間拘束時間:284時間以内(労使協定により310時間まで延長可能)
  • 1日の拘束時間:原則13時間以内、延長時は15時間まで(特定条件下で16時間まで可能)
  • 休息期間:継続11時間以上(継続9時間以上)

こうした中で、労働環境の改善は業界全体の持続性を守るための最優先課題です。今回の改正では、長時間労働の是正や休息時間の確保を徹底し、健康面と安全面の双方からドライバーの就業環境を底上げする狙いがあります。

一方で、労働時間管理の厳格化は企業に高度な運行管理体制の構築を求めることになり、対応が遅れれば配車効率の低下拘束時間超過による違反リスクが高まります。その結果、待遇悪化や業務負担増が進み、さらなる人材流出を招く恐れも否定できません。

このまま課題改善が進まないと、2030年には輸送力の34%が不足すると予測されており、この課題解決には運送事業者だけでなく荷主企業の協力が不可欠です。

2025年4月から施行された物流効率化法により、荷主企業にも物流効率化への努力義務が課され、業界全体での取り組みが求められています。

出典:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001752073.pdf

8.まとめ

2024年問題とダブルカウントは、トラック業界にとって喫緊の課題です。
改善基準告示への対応は、単なるコンプライアンス遵守にとどまらず、ドライバーの健康維持、人材確保、そして企業の持続的な成長に不可欠です。今こそ、正確な勤怠管理システム導入や配車計画の最適化、従業員教育といった具体的な対策を講じ、業界全体の健全な発展を目指しましょう。

監修

10年にわたる物流会社での事務経験を持ち、現場実務に精通。2024年に貨物運行管理者資格を取得し、法令遵守と実務の両面から運行管理を支援しています。

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