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物流拠点集約のメリット・デメリットとは?概要・英語表記なども解説

物流拠点集約物流コスト削減効率化に貢献し、固定費削減や配送効率化、在庫精度向上といった効果が期待できます。しかし一方でリードタイム増大災害リスクといった注意点も存在します。

この記事では、物流拠点集約のメリットとリスクを解説し、さらに成功事例も解説します。

目次

1.物流拠点集約とは?導入の背景と基本的な考え方

物流拠点の集約は、効率化やコスト最適化を同時に実現できることから、多くの企業で導入が進んでいます。

まずは、物流拠点集約の導入の背景基本的な考え方について解説します。

(1)物流拠点集約の定義と意味|読み方と英語表記も紹介

物流拠点集約とは、複数の倉庫や配送センターなどを統合し、より少ない拠点に集めることで物流ネットワーク全体を効率化する取り組みを指します。

読み方は「ぶつりゅうきょてんしゅうやく」で、英語では “Logistics Base Consolidation”“Warehouse Consolidation” と表現されます。

(2)拠点集約が注目される背景

物流拠点集約が注目される理由は、2024年問題をはじめとした物流危機や、物流DXの進展により、従来の分散型運営では対応できない複合的な課題が浮き彫りになっているためです。
サプライチェーン最適化の観点からも、拠点集約は重要な経営戦略となっています。以下に、近年の物流を取り巻く代表的な背景と課題を整理します。

背景要因課題内容拠点集約が求められる理由
人件費や固定費の上昇人手不足や最低賃金の上昇で人件費が増加。倉庫賃料や光熱費などの固定費も拠点数に比例して膨らむ。拠点をまとめることで固定費を圧縮し、人的リソースを効率的に配置できる。
EC需要の拡大と配送サービス高度化当日・翌日配送などスピード配送ニーズが拡大。分散拠点では在庫偏在や欠品リスクが発生。在庫を一元化し、需要変動に柔軟に対応できる体制が必要。
ドライバー不足と2024年問題労働時間規制により長距離輸送や複雑な配送網の維持が困難に。集約拠点を基点にルート最適化を行い、効率的な輸配送を実現できる。

上記はいずれも企業の収益に直結する深刻な課題です。
特に「2024年問題」が物流に与える影響については、中小企業を対象とした調査で 「物流コストの増加」(90.5%) が最も多く挙げられており、次いで 「納期の延長」(39.4%)「物流の停滞による機会損失」(19.6%) も報告されています。

引用:https://www5.cao.go.jp/keizai3/monthly_topics/2024/1111/topics_074.pdf

この結果から、多くの企業がコスト負担の増大納期遵守の難しさに直面しており、従来の分散型拠点では限界があることが明らかです。
また、内閣府の分析によれば、物流費の10%上昇は物価全体を約0.2%押し上げる影響があるとされており、物流効率化は企業だけでなく、社会全体の課題となっています。物流拠点の集約は、輸送力不足やコスト増加といった課題を克服する有効な戦略として、注目されています。

参考:https://www5.cao.go.jp/keizai3/monthly_topics/2024/1111/topics_074.pdf

2.物流拠点集約のメリットと事例

ここでは、物流拠点集約のメリットについて解説します。

(1)コスト削減

物流拠点を集約する最大の効果のひとつが、固定費を中心としたコスト削減です。拠点集約にするコスト削減の主な効果は以下のとおりです。

  • 固定費(賃料・光熱費・人件費)の大幅削減
  • 輸送効率化による燃料費・車両費の削減
  • 在庫最適化による補完コスト削減
  • 管理業務の効率化による間接費削減

具体的な削減効果として、以下のような実績が報告されております。

実際の企業事例では、配送コストを4%削減し、トラック台数を月100台から40台へと60%削減した事例も報告されています。
複数の拠点を維持している場合、賃料・光熱費・設備保守といった費用が拠点数に応じて発生しますが、これらを統合すれば、単純に拠点数が減る分だけ負担を抑えられます

拠点集約は単なる一時的な節約ではなく、持続的なコスト最適化を実現する戦略的な手段です。東京都の物流効率化事例調査によると、拠点集約による効果として、燃料費削減、トラック輸送距離短縮、CO2排出量削減など、多面的なコスト削減効果が確認されています。

引用:https://t-butsuryu-biz.metro.tokyo.lg.jp/event/data/event_250128_shiryo03.pdf

実際に江戸川と市川の2拠点を船橋に統合(集約)した事例では、ドライバーの労働時間は1日あたり約1時間短くなり、業務負担が軽減しました。あわせて拠点の維持コストも抑えられ、多面的な働き方改革にもつながっています。

参考:https://t-butsuryu-biz.metro.tokyo.lg.jp/event/data/event_250128_shiryo03.pdf

(2)配送効率化

拠点を集約することで、輸送ルートの設計を最適化でき、トラックの積載率を高めることが可能になります。これにより、1回の配送あたりで運べる荷物の量が増え、無駄な走行を減らすことができます。結果として、燃料費の削減と輸送コストの低減に直結します。

実際に、国土交通省が認定した物流総合効率化法に基づく事例では、複数に分散していた保管拠点を集約することで、輻輳していた輸送網を整理し、CO2排出量を22.9%削減した実績があります。

引用:https://www.mlit.go.jp/common/001180308.pdf

名古屋港・中部国際空港からの物流を小牧グローバルロジスティクスセンターに集約した事例では、トラック台数の削減によって、積載効率を向上させています。
手待ち時間を80%削減でき、ドライバーの労働負担を軽減したほかにも、輸配送と保管業務の効率化により、物流品質の向上を実現しています。

参考:https://www.mlit.go.jp/common/001180308.pdf

(3)在庫管理の精度向上

物流拠点を集約することで、在庫情報を一元的に管理できるようになり、リアルタイムで正確な在庫把握が可能となります。これにより、過剰在庫による保管コストの増加や、欠品による販売機会損失を防ぐことができます。

引用:https://www.hitachi-solutions-east.co.jp/giho/giho19/phm0540000004u6k-att/giho322.pdf

実際の企業事例では、拠点集約による在庫適正化により、在庫金額を35%削減し、同時に欠品率を75%低下させることに成功した事例があります。A社では、札幌から福岡まで全国に10拠点を構えて在庫を分散管理していましたが、無駄な保管スペースが課題となっていたことから、物流拠点を4か所に集約し、特に米原を中心拠点として物流機能の約80%を集中させました。

この仕組みにより全国での在庫を一元管理できるようになり、製品在庫日数を51日から35日に短縮し、同業他社の中でも最も効率的な在庫管理を実現しました。無駄なスペースを削減し、在庫保管コストを大幅に低減する効果を実現しました。

参考:https://www.hitachi-solutions-east.co.jp/giho/giho19/phm0540000004u6k-att/giho322.pdf

3.物流拠点集約のデメリットとその対策

物流拠点の集約は効率化をもたらす反面、導入にあたって軽視できないリスクも伴います。これらを考慮せずに進めると、期待した成果が得られないだけでなく、事業継続に深刻な支障をきたす恐れがあります。

ここでは、物流拠点集約のデメリットとその対策について解説します。

(1)リードタイム増大のリスク

配送距離の延伸によってリードタイムが長くなると、納期遅延などの対応力低下によって直接的な競争力喪失につながる場合があります。このリスクを抑えるには、以下のような施策が有効です。

対策具体的内容
ラストワンマイル戦略集約拠点から距離のある地域に小規模なサテライトデポを設置し、最終配送を効率的に行う
顧客コミュニケーション配送スケジュールやリードタイムを事前に共有し、納期遵守への期待値を適切に調整する
段階的配送サービス当日・翌日・指定日多層のサービス

Amazonは拠点集約型の巨大物流網を持っていますが、リードタイム増大リスクを戦略的なラストワンマイル配送で克服しています。2024年から2025年にかけて日本全国に6つの新しいデリバリーステーション(DS)を開設し、全国47都道府県で700万点以上の商品の翌日配送を実現しています。

さらにフルフィルメントセンター(FC)の一部機能とDSの機能を組み合わせた新しい拠点を16か所で展開し、当日配送エリアの拡大を進めています。
お急ぎ便(即日・翌日配送)では追加料金やPrime会員特典でスピード重視の顧客ニーズに対応しており、配送日指定便では顧客の都合に合わせて受け取れる安心感を提供しています。
以下の動画では、新設されるAmazon デリバリーステーションの様子をご確認いただけます。

このように、拠点集約型でありながらラストワンマイルの配送網を戦略的に配置することで、配送スピードと効率性の両立が可能になります。

参考:https://www.aboutamazon.jp/news/delivery-and-logistics/amazon-expands-delivery-station-investment
参考:https://www.aboutamazon.jp/news/delivery-and-logistics/amazon-expands-delivery-station-investment

(2)災害リスクによる事業停止の可能性

たとえば、地震・豪雨・水害などの自然災害によって拠点が機能不全に陥った場合、代替拠点がなければ全国規模で物流網が寸断される恐れがあります。近年、自然災害が激甚化・頻発化する中で、令和2年7月豪雨令和3年1月に発生した大雪等により、サプライチェーンの寸断による国民生活への影響や経済活動の停滞が実際に生じています

ヤマト運輸では、こうした教訓を踏まえ、主要拠点とは別に「災害対応拠点」を全国に配置し、平時は通常業務を行いながら、災害時には被災地域の代替機能を果たす仕組みを構築しています。
具体的には、関東・関西・中部の3エリアで相互バックアップ体制を整備し、1拠点が被災しても48時間以内に代替拠点からの配送を開始できる体制を維持しています。
これは、供給遅延や顧客離れといった深刻な経営リスクに直結します。

また国土交通省の調査によると、現在物流事業者のBCP(事業継続計画)策定率は低く、物流業界におけるBCP対策は途上段階にあることから、このリスクを最小限に抑えるためには、以下のような備えが不可欠です。

対策具体的内容
BCP(事業継続計画)の策定災害発生時の対応手順や優先業務を事前に定め、迅速に復旧できる体制を構築する
サテライト拠点やバックアップ網の準備主要拠点以外に緊急稼働可能な施設を用意し、輸配送ルートを複線化してリスク分散する
引用:https://www.mlit.go.jp/common/001175319.pdf

佐川急便では、サテライト拠点を日立物流拠点内に設置し、協業化により集配車両の走行距離20kmから10kmへと50%削減し、CO2排出量を57%削減(27.3t-CO2/年)しています。このようなサテライト拠点の分散配置は、災害時のリスク分散効果に加えて、通常時の運営にも好影響を及ぼしています。

参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk2_000022.html
参考:https://www.yamato-hd.co.jp/csr/governance/
参考:https://www.mlit.go.jp/common/001087785.pdf

(3)地域特性への対応不足

全国規模で事業を展開する場合、地域ごとに需要や配送インフラの特性が大きく異なります。
都市部では慢性的な交通渋滞が課題となり、地方では配送エリアが広範にわたるため効率的なルート設計が難しくなります。こうした地域差を考慮せずに拠点を集約すると、サービス品質の低下や顧客満足度の低下を招くリスクがあります。

地域特性に応じた拠点展開は重要ですが、適切な対策を講じることで課題を改善できる場合があります。以下はその具体例です。

具体例概要
サテライトデポの設置集約拠点から距離のある地域に
小規模なデポを配置し、
ラストワンマイル配送を効率化する
エリア別配送オプション都市部は時間指定や小口配送、地方は
まとめ配送や大型車両を活用するなど、
地域特性に合わせた柔軟な配送方式を導入する
複数ルートの確保渋滞や災害による影響を避けるため、
主要エリアでは代替ルートを用意して
リスク分散を図る

ドローン配送は、交通渋滞の多い都市部や山間部などのアクセスが難しい地域における有効な解決策として注目されています。
国土交通省では、過疎地域等における物流課題解決に向け、2022年12月にレベル4飛行が解禁されたことを受けて、レベル4飛行に対応したドローン物流の実証実験を継続的に実施しています。

さらに、佐川急便では2024年2月から3月にかけて東京都内初のレベル3.5飛行による配送実証を実施し、地域住民の96%が「今後も利用したい」と回答するなど、高い支持を得ています。

ただし、法規制やコスト面の課題から商用化はまだ限定的です。

現時点ではサテライト拠点や配送オプションに比べ実用性は劣りますが、将来的には地域特性への対応を強化する有望な手段となり得るでしょう。

参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001598152.pdf
参考:https://www2.sagawa-exp.co.jp/newsrelease/detail/2024/0329_2224.html

(4)初期投資とROI回収リスクの長期化

拠点集約には、新拠点の設備投資既存拠点の閉鎖コストシステム統合費用など、多額の初期投資が必要です。
日本政策投資銀行の調査によると、設備投資を行う企業の多くが投資回収期間を重要な判断基準としており、特に中小企業では資本力の制約から、投資計画の慎重な検討が求められています。

投資回収期間については、一般的に中小企業では2年以内が目安とされていますが、物流拠点集約のような大規模投資では、予定よりも長期化するリスクがあります。これは、拠点運営の複雑さ予期しない追加コストの発生、市場環境の変化などが要因となります。

対策具体的内容
段階的以降による投資分散一度に全拠点を統合せず、2~3年かけて段階的に移行し、資金負担を平準化
効果測定の定期実施四半期ごとに投資効果を検証し、計画との乖離があれば早期に軌道修正
リスクバッファーの設定初期投資計画に10~20%の予備費を組み込み、予期しない追加コストに対応

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/r_and_d_tax_system/pdf/001_06_00.pdf
参考:https://www.dbj.jp/pdf/investigate/equip/national/2024_summary.pdf

4.物流拠点集約を成功させるポイント

物流拠点の集約は、企業の実情に合わせた戦略的な設計と準備があってこそ、真の成果につながります。ここからは、成功に欠かせない具体的なポイントを順に解説します。

(1)現状分析と効果シミュレーション

物流拠点の集約を検討する際は、各拠点の稼働状況、保有設備、人件費、そして配送ルートにかかるコスト構造を詳細に可視化しましょう。
国土交通省が2025年4月に公表した「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」報告書でも、物流2024年問題等に対応するため、全体最適を見据えた政策的な物流拠点の配置の重要性が指摘されており、企業レベルでの戦略的分析の必要性が高まっています。

そのうえで、拠点集約後に想定されるコスト削減効果リードタイムの変化具体的にシミュレーションすることでどの部分に非効率が潜んでいるのかが明確になります。
客観的な数値に基づく試算によって、経営層への説得力も高まり、投資判断の根拠としても活用できます。主な取り組みポイントは以下のとおりです。

主な取り組みポイント概要
稼働状況・コスト構造の可視化各拠点の人件費、設備、配送ルートコストを
詳細に把握し、非効率な部分を明確化する
集約後のコスト・リードタイム試算集約によるコスト削減効果や配送時間の変化を
数値化し、シナリオごとの影響を試算する
拠点間の横持ち分析拠点間での在庫移動や転送コストを定量化し、
集約による削減効果を算出する
災害リスク・BCP影響評価集約によるリスク集中度合いと事業継続への影響を
評価し、対策コストを試算する

この分析プロセスを経ることで、感覚や経験に頼らず、データに基づいた意思決定が可能になります。結果として、集約効果を最大限に引き出しつつ、リスクを織り込んだ現実的な戦略立案へとつなげることができます。

参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu02_hh_000077.html

(2)最適な集約モデルの選定

物流拠点の集約には複数のアプローチが存在し、自社の状況に応じて最適なモデルを選択することが重要です。代表的なモデルは次のとおりです。

集約モデル完全集約型部分集約型ハブ&スポーク型
特徴複数の拠点を1拠点に統合一部の拠点を残しつつ統合基幹拠点(ハブ)から周辺拠点(スポーク)へ配送
メリット管理効率・コスト削減効果が大きい一定の効率化と地域対応力の両立が可能広域配送に適し効率的なネットワークを構築可能
注意点災害リスク・リードタイム増大の影響を受けやすい効果が限定的になりやすいハブに依存するため障害時の影響が大きい

いずれのモデルを選ぶにしても、事業規模・商材特性・配送エリアの広さ・顧客の納期要求を総合的に考慮することが重要です。
実際、国土交通省の「物流効率化法認定事業一覧」では、輸送網を集約した新設拠点モデルにより CO₂排出量を22.9%削減拠点での手待ち時間を80%削減したケースが認定されています。また、複数荷主による共同輸配送形式では、CO₂削減100%、ドライバー運転時間を33%削減した事例も報告されています。

ただし、実務上はシステム統合に伴う初期コストや拠点移転時の一時的な混乱を過小評価して計画が遅れるケースも少なくありません。特に現場オペレーションを担う担当者の声を初期段階から反映することが、導入後のトラブルを防ぎ、集約効果を安定的に発揮するための重要なポイントとなります。

参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001898275.pdf

(3)立地戦略の検討

物流拠点を集約する際に立地選定を誤ると、せっかくの集約効果が十分に発揮されないばかりか、輸送コスト増加や人材不足といった課題を招く可能性もあります。立地戦略を検討する際は、以下の観点が特に重要です。

観点内容
幹線道路・広域配送網へのアクセス・高速道路ICや主要幹線道路へのアクセスが良い立地を選定・渋滞リスクを回避できる複数ルートを確保
コスト条件(人件費・地代)・地域ごとの人件費水準や地代を比較し、固定費を抑制・長期的なコスト変動リスクも考慮
労働力条件(人材確保)・通勤可能圏内で、労働力を安定的に確保できるエリアを選定・派遣やパートタイム人材の供給状況も確認
災害対応・BCP・自然災害リスクの低い立地を選定し、代替輸送ルートを確保・災害時の緊急物質対応機能も考慮した拠点設計
政策適合性・国の基幹物流拠点要件との整合性を検討・自治体の産業政策との連携可能性

国土交通省の調査(2021年)では営業用トラックの分担率が約85.5%まで高まっており、物流拠点の効率化が重要な課題となっています。
また、2025年に創設された「基幹物流拠点」制度では、高速道路ICへの直結・近接や災害時の緊急物資対応機能が認定要件とされ、自治体との連携による開発許可手続きの円滑化も重視されています。
立地戦略は長期的な事業継続性に直結する経営判断です。物流コストの最適化人材確保の両立を意識した選定こそが、集約後の運営を成功に導きます。

参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001883277.pdf

(4)システム・IT基盤の整備

物流拠点を集約した後、その効果を最大限に引き出すためにはシステムとIT基盤の整備が欠かせません。
なかでも倉庫管理システム(WMS)輸配送管理システム(TMS)の導入は、業務効率化と正確性の確保に直結します。主な取り組みポイントは以下のとおりです。

取り組みポイント内容
WMS・TMS導入とデータ連携在庫や配送状況をリアルタイムで一元管理し、欠品や誤出荷リスクを低減。
システム間のデータ連携で業務全体を効率化。
リアルタイム可視化による全体最適化サプライチェーン全体を可視化し、
需要変動への即応や的確な意思決定を支援。
物流情報標準化への対応国の物流情報標準ガイドラインに準拠したデータ形式で、企業間データ連携を円滑化。
共同輸配送や帰り荷確保等の効率化施策に対応。

国土交通省は「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」において、物流DXを「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と定義し、単なるシステム導入ではなく、ビジネスモデルそのものの革新を推進しています。特に2025年には物流情報標準ガイドラインがver.3.00に改訂され、企業間のデータ連携基盤構築に向けた支援策も強化されています。

これらのシステムはサプライヤーや顧客との情報共有を容易にし、サプライチェーン全体の信頼性とスピードを高めます。つまり、システム基盤は単なる「作業効率化ツール」ではなく、経営戦略の中核を支えるインフラとして機能します。

参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001464774.pdf
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001860795.pdf

(5)ステークホルダーとの連携

物流拠点の集約は、サプライヤーや配送パートナーといった社外関係者だけでなく、社内従業員にも直接的な影響を及ぼします。そのため、関係者間の緊密な連携組織的なコミュニケーション体制の構築は欠かせません。
特に導入初期の段階で十分な調整を行うことで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな移行を実現できます。主な取り組みポイントは以下のとおりです。

取り組みポイント内容
サプライヤー・配送パートナーとの調整配送スケジュールや在庫管理方法の変更を共有し、
共通ルールのもとで業務を進めることで
トラブルを未然に防ぐ。
従業員周知とリスキリング支援業務プロセス変化に対応できるよう、
周知徹底と新システム・業務フロー習得のための
リスキリングを実施。
法的要求事項への対応物流効率化法に基づく荷主・物流事業者との
連携体制構築。特定荷主は物流統括管理者選任と
中長期計画策定により、法的要求に適切に対応。

2025年4月に施行された物流効率化法では、荷主と物流事業者が連携して物流効率化に取り組むことが法的に求められており、「荷待ち・荷役時間を2時間以内、将来的には1時間以内」という具体的な目標が設定されています。
特に一定規模以上の荷主は、2026年4月から物流統括管理者(CLO)の選任中長期計画の策定が義務化されるため、戦略的なステークホルダー連携が不可欠となっています。

このように、社外・社内の双方で協力体制を築くことで、拠点集約の効果を最大化し、計画通りの成果を確実に実現できます。

参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/files/pdf/basic-policy-promoting-revised-logistics.pdf
参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/

6. まとめ

物流拠点集約は、コスト削減、配送効率化、在庫精度向上といった明確なメリットをもたらしますが、リードタイム増大や災害リスクといった潜在的な課題も存在します。
これらのリスクを最小限に抑え、成功に導くためには、現状分析に基づいた効果シミュレーション、最適な集約モデルと立地の選定、そしてIT基盤の整備とステークホルダーとの連携が不可欠です。
戦略的な物流拠点集約は、企業の競争力強化に大きく貢献する有効な手段となるでしょう。

監修

10年にわたる物流会社での事務経験を持ち、現場実務に精通。2024年に貨物運行管理者資格を取得し、法令遵守と実務の両面から運行管理を支援しています。

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