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2026年度から始まる次期「総合物流施策大綱」によって、日本の物流政策が転換点を迎えます。
この記事では、2026年以降に企業が直面する変化のポイント、対応が必要となる領域、実務的なロードマップ、活用できる支援制度、そして成功企業の取り組みから抽出できる実践ポイントを解説します。

2026年度からの新たな物流制度は、企業の物流運用・調達設計・取引モデルに多面的な影響を及ぼします。
ここでは、企業が直面する変化の焦点を整理し、今後対応すべき領域を順に解説していきます。
トラックドライバーの高齢化、新規人材の減少、そして2024年問題による労働時間規制の強化が重なり、物流業界では慢性的な人手不足が進行しています。
その結果、希望どおりの配送スケジュールが確保できない、繁忙期に応援車両が確保できない、依頼内容によっては断られるケースが増加するなど、企業間物流の安定性が揺らいでいます。
さらに2030年度には施策を講じない場合34%の輸送力不足が見込まれており、稼働時間の減少による便数減・遅延に加え、若年層(29歳以下)の割合が14.6%にとどまるなど、次世代の担い手確保が課題です。
| 指標 | 現状 | 物流への影響 |
|---|---|---|
| ドライバー平均年齢 | 49.0歳と高齢化傾向(全産業平均より高い) | 若手採用の難易度上昇・継続稼働の限界 |
| 10年後のドライバー不足見込み | 約27万人不足 | 長距離輸送・繁忙期の輸送力確保が困難に |
| 労働時間規制 | 残業時間上限960時間/年が適用 | 可動時間減少による配送遅延・便数減 |
| 配送依頼の断り件数 | 年々増加傾向 | 希望条件の配送が成立しにくい |
| 離職率 | 運輸・物流業は全産業平均より高い | 書類処理・現場負担が採用定着の阻害要因 |
今後は「依頼すれば運んでもらえる」ことを前提にできず、荷主企業も輸送力確保に向けた自助的な取り組みが不可欠となっています。
参考:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/yusosangyo2024.pdf
輸送力不足、労働時間上限規制、再配達削減といった要因が重なり、配送リードタイムは今後さらに長期化する見込みです。国土交通省の試算によれば、2024年度には輸送能力が約14%不足、2030年度には約34%不足する可能性があり、従来と同じリードタイムでの輸送維持が困難な状況です。結果、これまで当日・翌日配送を前提に組み立てられていた物流・生産・販売の各プロセスは、従来どおりの運用では維持が難しくなります。
リードタイム延伸は納期遅れにとどまらず、倉庫・在庫・生産計画・営業活動・顧客維持のいずれにも影響が連鎖的に波及し、事業リスクの増大につながるためです。以下のようなリスクが長期化されることが想定されます。
| 影響領域 | 想定されるリスク |
|---|---|
| 物流オペレーション | 倉庫滞留・積載非効率・緊急便の増加 |
| 在庫管理 | 欠品・発注点の機能不全・過剰在庫 |
| 生産・調達 | 部品供給遅延・サプライチェーンの乱れ |
| 営業・販売 | 希望納期に対応できない案件の増加 |
| 顧客関係ードタイムへの不満・解約リスク | リードタイムへの不満・解約リスク |
発注タイミング・納期提示基準・在庫水準・顧客コミュニケーションを含めた全体最適の視点で、リードタイム前提の再設計が不可欠です。内閣府の調査によれば、リードタイムを1日延長することで積載効率の向上や必要ドライバー数の削減など多くの改善効果が期待できるとされ、物流効率化の観点からもリードタイム延長が推進されています。
物流コストは、燃料費・人件費・車両関連費・外注費の上昇により、継続的な増加が避けられません。実際に、内閣府の調査では、物流の2024年問題によるマイナス影響として「物流コストの増加」を挙げた企業が約9割に上っています。
一方で、荷主側の要望を優先する商慣行や価格据え置き前提の取引が残る場合、物流事業者は利益率の悪化やサービス品質低下を余儀なくされ、結果的にサプライチェーン全体の安定性を損なう可能性があります。
重要なのは値上げ交渉ではなく、コスト構造の透明化、業務負荷の削減策、配送条件の見直し、共同配送など改善策とセットで合意形成を進め、双方の持続可能な物流体制を実現することです。内閣府の調査では、物流費増加分を価格転嫁できている企業は約3割にとどまり、原材料費増加分の転嫁率(約6割)と比べて低い水準です。一方で、内閣府の試算によれば、道路貨物輸送の価格が10%上昇した場合、飲食料品をはじめとする各種財・サービス価格への波及を通じて、物価全体を0.2%程度押し上げる可能性があるとされています。
長時間の荷待ち、無償付帯作業、急な納期変更、一方的な配送条件など、従来の取引慣行は物流現場の負担を増幅させ、輸送力不足を加速させる一因となってました。国土交通省の最新調査(2024年9-11月)によれば、1運行あたりの荷待ち・荷役時間は合計3時間2分に及び、2020年度調査からわずか1分しか改善していません。
その結果、荷役作業範囲、納品時間、待機発生時の費用負担、返品・再配達の扱いなどの項目を明確に組み込み、合意形成を前提とした取引が求められるようになりました。
2023年6月には経済産業省・農林水産省・国土交通省の連名で「荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール」を含むガイドラインが策定されており、荷主・物流事業者双方の取り組みが求められています。
こういった契約見直しは対立ではなく、安定輸送とサービス品質維持のための協働プロセスと捉え、データに基づく説明と改善策の提示を通じて双方の納得感を高めることが理想です。
脱炭素・ESGの潮流は物流領域にも直結しており、2026年以降は環境配慮の有無が企業評価や取引条件に影響する段階へ移行します。国土交通省のデータによれば、2023年度における日本のCO2総排出量のうち運輸部門が19.2%を占め、そのうち貨物自動車は38.3%を排出しています。輸送手段を船舶に切り替えた場合は約6分の1、鉄道では約11分の1にCO2排出量を削減できることが示されています。
大手荷主・グローバル企業では、サプライチェーン全体での排出量削減が求められるようになり、物流パートナー選定において環境対策実績が厳格に確認される傾向が強まっています。
政府は2030年の運輸部門におけるCO2排出量を2013年度比で35%削減する目標を掲げており、物流事業者には中長期的な脱炭素戦略の策定が求められています。
環境負荷低減に向けては、輸送モード・車両種類・配送頻度・倉庫運営・情報開示など、多領域で以下のような取り組みが必要となり、単発施策のみでは十分な効果が期待できません。
| 取り組み領域 | 代表的な内容 |
|---|---|
| 輸送手段の最適化 | モーダルシフト/共同輸送/幹線輸送の効率化 |
| 車両の脱炭素化 | EV・FCV・バイオ燃料トラックの導入 |
| 再配達削減 | 配送条件最適化/受取指定サービス/置き配の活用 |
| 倉庫運営の省エネ | LED化/太陽光発電/自動化・省エネ設備の導入 |
| 情報開示・可視化 | CO₂排出量可視化/排出量レポート・LCA算定 |
物流ネットワーク設計・在庫配置・輸送計画も含めた全体最適の視点で、環境基準に適合した物流体制へ転換していくことが企業が求められます。
物流DXは効率化のための選択肢から、制度対応を見据えた必須領域へ移行しています。
データ形式や管理方法が企業ごとに異なる状態では、配送計画の最適化や積載率の向上、荷待ち削減、コスト算定の透明性確保が困難となり、物流全体の非効率を助長します。国土交通省は2021年6月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」において、物流DXや物流標準化の推進をサプライチェーン全体の最適化に向けた重要施策と位置づけています。同年10月には経済産業省との協力のもと「物流情報標準ガイドライン」を策定し、データ連携の標準化を推進しています。
次期大綱では標準データによる情報連携、電子契約・電子配車・電子伝票などを前提とした運用が推進されるため、アナログ運用の継続は業務負荷・コスト・トラブル増大のリスクを高めます。
現在、国土交通省・経済産業省・農林水産省の連携による「官民物流標準化懇談会」が設置され、伝票・データ・パレットなど物流を構成する各種要素の標準化に向けた検討が進められており、2026年以降は標準化対応が取引要件となる可能性が高まっています。
DXはただIT導入ではなく、荷主・運送会社・倉庫事業者が共通のデータ基盤で連携し、サプライチェーン全体で最適化を実行してこそ効果を最大化できるものです。

2026年以降の物流制度は「努力目標から義務化・説明責任へ」と段階が変わり、遵守の有無が取引評価や競争力に直結します。
ここでは、企業が対応を求められる主要6領域を整理し、それぞれが事業運営・人材・取引・コストにどのような影響を及ぼすのかを解説します。
物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の選任は、次期大綱における企業の最重要テーマの一つです。
従来は物流・購買・生産管理・営業が個別に判断してきたため、取引条件の不透明化、コスト増、リードタイム悪化、現場負担の増大といった課題が発生していました。
CLOはこれらの領域を横断的に統括し、取引条件の適正化、配送計画と在庫計画の調整、DX・環境対応の推進、労働時間管理、パートナー企業との協働体制構築までを一元的に管理します。
2024年5月に改正物流効率化法が公布され、2026年4月から年間取扱貨物重量9万トン以上の特定荷主(約3,200社)に対してCLO選任が義務化されます。選任しない場合は100万円以下の罰金が科されるため、CLOの選任は企業の競争力に直結する施策であり、設置が遅れるほど対応遅延・コスト増・機会損失のリスクが高まります。
荷待ち・再配達の抑制は、次期大綱の中でも企業の実務に直接影響します。
国土交通省の2024年10月調査では、宅配便の再配達率は10.2%と、政府目標の6%には程遠い状況が続いています。また、2030年度までにドライバー1人あたり年間125時間の荷待ち・荷役時間削減が求められており、荷待ち・荷役作業を2時間以内に収める「2時間以内ルール」が設定されています。
これまで待機時間や突発的な再配達はドライバー側の努力で吸収されてきましたが、労働時間規制の強化により、企業が放置できないリスクとして顕在化しています。
今後は、納品予約システムの導入、受付体制や積卸条件の明確化、受取時間帯指定や宅配ボックスの活用など、荷主企業が配送効率維持に向けた仕組みを構築することが必要です。
労働環境改善・安定輸送・取引継続のすべてに寄与するため、取り組みを先送りすることは競争力低下につながります。
物流費の上昇が続く中、低運賃維持を前提とした商習慣は制度的にも持続不可能となり、運賃・料金の適正化と価格転嫁の実効性を確保することが国の政策として求められる段階に入っています。2024年3月、国土交通省は「標準的な運賃」を平均約8%引き上げるとともに、荷待ち・荷役の時間が合計2時間を超えた場合は割増率5割を加算することを告示しました。また、2025年4月施行の改正貨物自動車運送事業法では、運賃と料金の別建て契約および書面交付が義務化されます。
今後は、労務費・燃料費・設備投資・待機コストなどの要因を根拠とする運賃算定を説明できる体制が不可欠です。
合意内容を契約書・仕様書・KPI・稼働条件として文書化し、継続的に維持する仕組みが重要となります。また制度的な裏付けとして、運賃・料金の別建て契約と書面化が法的義務となったことで、企業は適正な運賃算定の根拠を明示し、取引条件を文書化する体制整備が求められています。
制度的な裏付けとして、運賃・料金の別建て契約と書面化が法的義務となったことで、企業は適正な運賃算定の根拠を明示し、取引条件を文書化する体制整備が求められています。
輸送体制の維持、人材確保、サービス品質の安定につながるため、荷主企業にとっても中長期的な競争力確保の前提条件となります。
従来の物流取引では、曖昧な指示・無償付帯作業・口頭依頼・突発対応の押し付けといった慣行が残り、現場負荷や費用超過の原因となってきました。
次期大綱ではこうした慣習の是正が求められ、荷主・物流事業者の双方に契約内容の透明性と説明責任が課される流れが明確になっています。
政府は2023年6月に3省ガイドラインを策定し、契約書への記載事項や商慣行見直しの具体例を示しました。さらに、トラック・物流Gメンによる調査・是正指導を通じて、荷主企業の商慣行改善を促す実効性担保の仕組みも整備されています。
今後は、契約書・仕様書・役割分担・稼働条件を文書化し、業務範囲・責任範囲・費用発生条件・例外対応を明確化することがトラブル防止の前提となります。
取引内容の明文化はコスト配分の合理化やリードタイム安定化にも直結し、交渉負担の軽減や働き方改革の推進にも寄与します。
長時間労働や連続稼働を前提とした配送計画・勤務設計は、今後は法的リスクとなり、企業には労働時間と休息確保を厳格に担保する体制が求められます。
2024年4月から適用された改善基準告示では、1日の拘束時間は原則13時間(最大15時間)、休息期間は継続11時間以上、時間外労働は年960時間以内と定められており、これらの基準を遵守するには正確な労働時間の記録と管理が必須となります。
特に、シフト・拘束時間・残業上限・休憩取得を可視化し、客観的に管理できる仕組みを整備することが不可欠です。
また、労務管理が不十分な企業は委託先として選ばれにくくなる可能性があり、外部評価や取引維持の観点からも早期対応が必要になります。
労働時間管理の厳格化を負担と捉えるのではなく、人的リソースの安定確保と持続的な物流運用を実現する基盤として位置づけることが重要です。
台帳管理・配送指示・在庫・契約・請求といった物流データの標準化は政策的に推進されており、手書き・FAX・属人的管理といった非デジタル運用は、今後は取引・監査の両面で大きな制約となります。
政府は官民物流標準化懇談会を通じて、伝票・外装表示・パレット・データ連携等の標準化を推進しており、2026年総合物流施策大綱でもデータ連携基盤の整備が重点施策として位置づけられています。
標準データを介したシステム連携が前提となる物流ネットワークにおいて、対応できない企業は委託・受託の双方で競争力を失うリスクが高まります。
重要なのは、部門横断で同一データを扱い、情報を一元管理する運用体制の定着です。
データ活用により配車・在庫・需要予測の精度が向上し、意思決定速度・コスト管理・キャパシティ平準化にも寄与します。

2026年以降の制度変更に対応するうえで鍵となるのは「何をどの順序で進めるか」を設計できるかどうかです。
ここからは、企業が混乱なく対応を進めるためのロードマップを解説します。
物流制度変更の影響は複数領域に波及するため、属人的判断ではなくどこにリスクが集中しているかを客観的に可視化することが最初のステップとなります。
荷主企業だけでなく、委託先・協力会社まで含めて評価することで、後手対応やムダな投資を防ぎ、体制構築・運賃交渉・DX導入など後続施策の精度を大きく高められます。
| 輸送力 | 配送キャパ不足・緊急便多発 | 物流費が急増し、顧客納期に直結するため |
|---|---|---|
| 契約内容 | 無償作業・曖昧指示・請求トラブル | 行政指導・価格転嫁失敗のリスクが高まるため |
| リードタイム | 荷待ち・遅延・クレーム増加 | 労働時間規制の影響を最も受けやすいため |
| 勤務設計 | 過重労働・離職・採用難 | 体制崩壊につながり回復に時間がかかるため |
| DX対応 | 情報遅延・紙運用による処理停滞 | ネットワーク連携できず取引から外れる可能性 |
初期のギャップ分析ができている企業ほど、優先順位の切り分けと予算計画がスムーズに進みます。
制度変更への対応は、単発の改善ではなく全社横断で継続的に進めるプロジェクトとして取り組む必要があります。
その中心となるのが物流統括管理者(CLO)を軸とした推進体制であり、CLOの権限・所管範囲・決裁範囲・KPIを明確にしたうえで、経営層・現場・取引先との調整と進捗管理を組織的に実行できる状態を整えることが不可欠です。
また、契約見直し・配送計画・DX・勤務設計など複数領域が関わるため、部署単位の部分最適や属人的対応を排し、役割分担と連携フローを文書化しておく必要があります。
誰が判断し、誰が実行し、誰が検証するのかが曖昧なままだと改善が形骸化し、行政指導・取引先トラブル・離職といったリスクも残ります。
制度変更により、従来の慣例ベースの依頼・依存関係に基づいた取引は成立しにくくなりつつあります。
今後は、契約内容・コスト構造・役割分担を客観的根拠に基づいて再設計することが不可欠です。
最初に取り組むべきは、契約書・仕様書・作業範囲・無償業務・指示フローの棚卸しにより、現場負担が発生している箇所を可視化することです。
| 業務範囲 | どこまでが物流事業者の担当か/無償業務の有無 | 曖昧なサービス扱いを残さず文書化 |
|---|---|---|
| 責任範囲 | イレギュラー発生時の判断者・費用負担先 | 個々の担当者判断に依存させない |
| 費用発生条件 | 荷待ち・夜間配送・突発対応の料金基準 | 料金テーブル化し誰でも判断可能に |
| 運賃算定根拠 | 工数・労務費・設備費・稼働率の裏付け | 感覚交渉ではなく数字で説明できる体制 |
| 交渉ルール | 交渉タイミング・見直し頻度・手順 | 年2回などルール化して例外を防ぐ |
業務範囲・責任範囲・費用発生条件を明確にし、運賃・料金は工数、労務費、設備費など根拠資料を示して説明できる状態を整えることが価格転嫁の実効性を高めます。
輸送力不足と労働時間規制の進行により、従来の短納期を前提とした配送オペレーションを維持することは難しくなっています。
配送頻度・在庫拠点・出荷タイミング・予約配送・共同配送といった複数要素を組み合わせ、需要変動と物流キャパシティの均衡を取れる設計が求められます。
特に、BtoB・ECのどちらの領域でもリードタイムの再設定は避けられず、顧客要求と自社オペレーションの妥協点を整理したうえで、事前説明と合意形成を進めることが重要です。また、在庫戦略は配送計画と不可分であり、在庫拠点の見直し、補充頻度の調整、需要予測精度の向上が配送効率・在庫コスト・顧客満足度のすべてに直結します。
法令遵守としての勤務管理だけでなく、休息時間の確保や勤務シフトの最適化を軸とした労働環境改善は、離職率低下と採用強化の双方に直結します。
拘束時間が制約される中では、限られた稼働時間で最大の生産性を発揮できる仕組みづくりが重要であり、そのためには技能レベルに応じた教育計画、評価制度と給与体系の連動、キャリアパスの提示が不可欠です。
現場の不満や疲弊を未然に防ぎながら、教育・評価・働き方を好循環させることができた企業ほど、定着率向上・採用力向上・品質改善につながっています。
配車・在庫・受発注・需要予測・輸送管理などのデータ連携が前提となる中、FAX・紙帳票・属人管理に依存する企業は、サプライチェーン全体の意思決定速度を阻害するリスクを抱えます。
DXではシステムを入れることが目的化しやすい一方、実際に成果を左右するのは運用定着であり、利用率・データ精度・入力習慣の確立が成果となります。
そのため、導入前に業務フローと責任分担を整理し、教育・マニュアル化・KPI設定を含むロードマップを設計することが不可欠です。
データ連携が進むほど運用負荷は減り、可視化された指標に基づく意思決定が可能となるため、一度の導入で終わらず継続改善できる体制づくりが長期的な競争力につながります。

物流改革は義務化・制度化の流れが進む一方で、企業がすべてを自社コストだけで対応する必要はありません。国の支援制度を適切に取り込むことで、契約見直し・DX・環境対応・労働環境改善などの取り組みを加速させながら、初期投資や運用負担を抑えることが可能です。ここでは、実行フェーズを支援する制度の種類と活用方法を解説します。
物流政策パッケージは、荷主・物流事業者間の不均衡な商慣行を是正し、適正な業務範囲・料金体系・契約内容へ移行するための有効な根拠として活用できます。
2023年6月に決定された「物流革新に向けた政策パッケージ」では、荷待ち・荷役時間の削減目標や取引適正化の具体策が示されており、経済産業省・農林水産省・国土交通省による「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」も併せて参照することで、契約見直しや商慣行改善の根拠として活用できます。
従来は改善が難しかった無償作業・口頭指示・急な納品指示といった慣行も、政策パッケージを参照することで自社の都合ではなく国の方針として説明できるため、取引先との合意形成が進めやすくなります。
また、契約内容の透明化や責任範囲の明確化、荷待ち削減などの施策を推進する際、行政ガイドラインに沿って手順化することで、社内の抵抗や相手先との交渉負担を抑えつつ改善を実行できる体制をつくることが可能です。
物流DXや自動化は効果が大きい一方で初期投資が高額になりやすく、意思決定が遅れやすい領域です。
こうした課題に対し、国の補助金・税制優遇を活用することで投資負担を抑え、導入判断を後押しできます。
国土交通省の「物流施設におけるDX推進実証事業費補助金」では、システム構築に最大2,500万円、DX機器導入に最大1億1,500万円の支援が受けられます。
また、経済産業省の「IT導入補助金」は配車管理システムや運行管理システムの導入に活用でき、「中小企業省力化投資補助金」では無人搬送車(AGV・AMR)や自動倉庫などの省力化機器の導入を支援します。税制面では「カーボンニュートラル投資促進税制」により、脱炭素化設備の導入で最大10%の税額控除(中小企業は最大14%)または50%の特別償却が適用されます。
倉庫自動化、配車管理システム、需要予測AI、庫内ロボティクス、電子帳票などは支援対象となりやすく、補助金の利用は投資対象の妥当性を示す根拠にもなります。
また、税制優遇により減価償却負担を軽減でき、キャッシュフローの観点でも導入しやすくなります。
重要なのは、物流課題(コスト削減・リードタイム改善・人手不足対策)と結びついた投資計画の中で制度を位置づけることです。
労働時間・休息時間の確保、勤務設計、教育制度整備といった就労環境の改善は、法令対応という側面だけでなく、人材定着・採用力向上に直結する経営課題でもあります。
しかし制度改善には一定の工数やコストが伴うため、国の助成金を活用して勤務制度の再設計、研修導入、評価制度の刷新、健康支援施策などを支援対象として取り込むことで費用面の負担を軽減できます。
厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金」では労働時間削減や勤務間インターバル導入を支援し、「人材開発支援助成金」で研修・訓練費用を、「キャリアアップ助成金」で非正規雇用労働者の正社員化を支援します。
助成金活用のポイントは、制度改善の目的を離職率低下・採用力強化・生産性向と結びつけて設計することです。
労働環境改善と現場生産性向上を両立させるプロジェクトとして取り組むことで、採択可能性だけでなく経営効果も最大化できます。
設備更新や車両の電動化、共同輸送の仕組みづくり、新拠点の設計などは投資負担が大きく、意思決定が遅れやすい領域ですが、国の支援策を活用することで初期費用を抑えながら実行可能性を高められます。
特に、拠点再編・積載率向上・モーダルシフトに関する取り組みは、環境負荷低減と物流効率化を同時に実現できるため、補助金との相性が高いテーマです。
国土交通省の「モーダルシフト等推進事業」ではモーダルシフト・共同輸配送の実証に補助率最大1/2・上限1,000万円の支援が受けられ、「物流脱炭素化促進事業」では水素・再エネ設備やEV・FCV車両の導入に補助率1/2・上限最大2.5億円の支援が行われます。
また、環境対応は取引評価・調達評価で重要視される傾向が強まっており、支援制度を活用した取り組みが、結果的に商談拡大や価格競争からの脱却につながるケースも増えています。
企業が持続的な物流体制を構築するうえで、支援策を戦略的に組み込むことは有効な選択肢となります。
支援制度を十分に活用するためには、単に申請するのではなく、事業計画の中に制度活用を組み込む設計が欠かせません。
まず、対象施策・要件・募集期間・必要書類を把握し、導入を検討している設備や業務改革と照らし合わせて申請スケジュールを設計します。
また、申請書類の作成、費用計画、実績報告、効果測定は専門知識と工数を要するため、外部支援を活用することで工数削減と採択率向上の両方が期待できます。
特に、導入前の効果シミュレーションと導入後の改善指標の設定を初期段階から盛り込むことで、助成対象としての妥当性と経営効果の双方を高められます。
制度変更や支援制度を理解しても、成果の有無を左右するのは現場で定着できる仕組みとして設計できたかどうかです。
ここでは改革を成功させた企業の取り組みに共通する要素を整理し、どの順番で課題に取り組み、何を工夫したことで成果につながったのかを解説します。

菱木運送は、点呼支援ロボット「Tenko de unibo」を導入し、点呼・アルコールチェック・健康確認・免許証確認を自動化することで、運行管理者の業務負荷と記録ミスを大幅に削減しました。
従来は紙帳票と対面対応による属人化・伝達漏れ・情報反映の遅延が課題でしたが、導入後は各情報が即時システムへ連携され、勤怠・乗務状況をリアルタイムに把握できる体制を実現しました。
これにより安全指示の徹底や勤務計画の見直しが迅速化し、意思決定の速度も向上しています。
点呼のデジタル化にとどまらず、安全管理・勤怠管理・運行判断の標準化まで踏み込んだことで、業務効率化と安全性向上を両立した取組です。

大手メーカーは、国土交通省の物流革新に向けた政策パッケージを活用し、長距離幹線輸送をトラック依存から鉄道コンテナ・内航フェリーへ切り替えるモーダルシフトを推進しました。
31ftコンテナ対応や港湾側のシャーシ置き場整備などの支援策を活用し、トラックは工場〜駅・港間の集配送に特化させる輸送モデルへ転換しています。
環境配慮型の物流網を整備したことでESG評価やサプライチェーンのレジリエンスが向上し、環境要件を重視する企業からの取引選定につながるなど、物流改革が競争優位の源泉となった事例です。

ある中堅運送会社では、荷待ち時間や付帯作業が「サービス扱い」とされ、値上げ交渉ごとに荷主との関係が悪化する課題を抱えていました。
そこで、改正物流法と標準的運賃の考え方を踏まえ、荷主と共同で交渉ルールと料金テーブルを整備しました。
荷待ち・荷役時間の上限と有償化基準、燃料サーチャージの算定方法と見直し時期、繁忙期・夜間配送の割増条件、年2回の価格協議ルールをすべて文書化し、契約書・発注書・社内マニュアルに反映しました。
荷主側もコスト構造を把握しやすくなり、必要な価格転嫁の説明・合意が進み、ドライバー賃金の引き上げと長期的な取引継続の両立につながった事例です。

大手食品メーカーでは、リードタイム延伸の影響により欠品と緊急便が増加し、物流コストが高騰していました。
そこで、国土交通省の持続可能な物流の実現に向けた取組事例を参考に、需要変動の大きい商品をA・B・Cの3分類に整理し、安全在庫と補充サイクルを再設計しました。
また、卸拠点との在庫情報連携を強化し、出荷優先順位を標準化する運用フローを整備したことで、在庫過多と緊急配送を大幅に削減しています。
配送頻度を下げながらも欠品率は改善し、物流コスト抑制と顧客サービス維持を両立した事例です。

トラックドライバーの労働環境は、長時間労働・賃金水準の低さ・人材不足が複合し、離職率の高さが構造的課題となっていました。
ある企業では勤務設計を抜本的に見直し、拘束時間削減と賃金改善を同時に実行しました。荷待ち・荷役時間の抑制、休息時間の担保、ローテーションの最適化、評価制度の明確化、時間外労働の上限管理を一体で進めました。
結果として、労働時間を縮減しながら年収低下を回避し、稼働率・生産性・定着率・採用力の改善につながっています。
勤務設計の刷新を負担軽減にとどめず価値向上施策として扱った点が成果を生んだ事例です。

鈴与をはじめとする食品・日用品メーカー11社は、令和6年度グリーン物流パートナーシップ会議で国土交通大臣表彰を受賞しました。九州~関東間でT11パレット統一とフェリー混載輸送を実施し、神奈川県厚木市の食品拠点で事前出荷通知(ASN)を活用した検品レス納品を導入した結果、年間CO₂排出量615.6トン削減(34.4%減)、ドライバー拘束時間11,166時間削減、車両台数1,431台削減を達成しました。
異業種連携によりパレット規格・配送拠点を統一し、個社単独では困難だった輸送効率化を実現した取組です。
2026年度から始まる「総合物流施策大綱 2026」は、ドライバー不足、コスト増、脱炭素・DX義務化を踏まえた、日本の物流政策の大きな転換点です。
自社の契約、リードタイム、勤務設計、DX体制を整理し、ロードマップと支援制度を活用して具体的なアクションにつなげることで、この変化をリスクではなく競争優位の契機へと変えていけるでしょう。
10年にわたる物流会社での事務経験を持ち、現場実務に精通。2024年に貨物運行管理者資格を取得し、法令遵守と実務の両面から運行管理を支援しています。