運行指示書は、安全運行の確保や法令遵守を支える基盤となります。
しかし、法規制に対応しながら膨大な情報を正確に管理する必要があるため、近年では運行指示書の作成に運行管理システムの活用が注目を集めています。
本記事では、ツールによる運行指示書の作成方法を解説します。
無料で手軽に取り入れられる方法から、運行指示書の作成を自動化できるシステムまで紹介しますのでぜひ参考にしてください。
1.運行指示書とは?わかりやすく解説
運行指示書とは、運行計画や具体的な指示を明示するための書類です。
運行計画が複雑になる場合や法令で作成が求められるときに、適切な運行指示書を作成します。運行指示書が必要な場合や義務対象等は、以下のとおりです。
運行指示書について | |
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作成者 | 運行管理者 |
対象の法令 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則 第9条の3 |
義務対象者 | トラック運送事業者を中心とする一般貨物自動車運送事業者等 |
ここでは、運行指示書の概要や必要な場合等をわかりやすく解説します。
(1)運行指示書とは?
運行指示書の作成は、安全運行や法令遵守を支える重要な業務のひとつです。
運行指示書には運行ルート、休憩地、経由地などの詳細が記載されており、安全運行の確保や法令遵守の徹底を目的に、運行指示書を作成します。
目的 | 具体例 |
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安全運行の確保 | ・休憩地や仮眠時間の明示で過労運転を防止 ・推奨ルートや経由地の指定で無駄な運行を防止 ・速度制限や危険物の取り扱い指示で事故リスクを最小限に |
法令遵守の徹底 | ・長距離輸送等の作成義務がある場合への対応 ・運行スケジュールの記載で法定労働時間を遵守 ・保管により監査や行政指導に対応 |
ドライバーとの連携強化 | ・ドライバーに必要な情報を一元化して提供 ・配送先や到着予定時間の明確化 ・業務の振り返りや改善に活用 |
作成義務が生じているにも関わらず運行指示書の作成を怠ったり、記入事項に不備がある場合には、貨物自動車運送事業輸送安全規則に基づき、車両停止や事業改善命令といった行政処分の対象となることがあります。
他にも、運行指示書の記載内容に不備があり、それが事故につながる一因と指摘されたケースもあります。そのため、運行指示書の適切な作成が改めて重要視されています。
たとえば、2016年に発生した軽井沢スキーバス転落事故では、入社間もないドライバーに手渡した運行指示書に、出発地と到着地のみしか記載されておらず、経路や休憩地点の指示が不足していました。
(2)運行指示書の記載内容と記入例
運行指示書に記載すべき項目は、貨物自動車運送事業輸送安全規則で以下の7項目が定められています。
- 運行の開始・終了地点および日時
- 乗務員の氏名
- 運行の経路と主な経由地における発車、到着の日時
- 運行の際に注意を要する箇所の位置
- 運行の途中で乗務員に休憩を与える場合は、休憩場所(地点)と休憩時間
- 乗務員の運転または業務の交代がある場合は、交代する地点
- その他運行の安全を確保するために必要な事項
上記の項目は、運転者の安全と効率的な運行を確保するために欠かせません。
とくに休憩時間と場所の指定は、運転者の疲労管理において重要な役割を果たします。
運行指示書の記入例は以下の画像を参考にしてください。
(3)運行指示書が必要な場合
乗務前点呼と乗務後点呼がともに対面で実施できない場合には、運行指示書の作成が義務付けられます。具体的には以下のような場面が該当します。
- 事前に2泊3日以上(48時間以上)の運行スケジュールが確定している
- 運行途中に予定が変更され、2泊3日以上(48時間以上)の行程となった
- 長距離輸送や変更が頻発する貸切バスの旅客輸送事業の場合
運転途中で急な運行変更が発生した際、時間がないという理由で運行指示書を適切に作成・携帯させないままドライバーを目的地へ向かわせることは、法令違反となる可能性があります。
ただし、あらかじめ法令に基づいた行先別のフォーマットを作成し、ベースとなる運行指示書を用意しておけば、フォーマットをコピーして正副2部を作成し、運転者に携帯させることが可能です。
2.運行指示書の作成方法
運行指示書の作成は、ツール等の活用で効率化することができます。
ここでは、主な運行指示書の作成方法を解説します。
(1)ツール等の活用
運行指示書作成の効率化と確実な管理のためには、専用システムの活用が効果的です。運行指示書の作成に専用システムを使うことで、主に以下のようなメリットがあります。
人的ミスの防止 | 社内でフォーマットを統一することで記載すべき項目が明確になる |
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業務の効率化 | 運行管理者の負担を大幅に軽減 |
コスト削減 | 用紙代や印刷代のランニングコストを削減 |
システム化することで、人的ミスを大幅に減らし、精度の高い運行指示書を迅速に作成できます。
作成者の経験や知識に頼らず、簡単な操作方法を覚えるだけで運行指示書を手早く完成させられます。システムを活用すれば特定の個人に依存しないため、担当者の退職におけるリスクを低減できるでしょう。
また、ペーパーレス化により紙に要するコストを削減することも可能です。
運行指示書をデータとして保管することで、紙の保管に必要なスペースを要さず、情報漏洩まで防止できます。
(2)手書き
運行指示書の作成はフォーマットを準備することで、手書きで行うことが可能です。
たとえば、東京都トラック運送事業協同組合連合会では、運行指示書の販売サービスが行われており、A4判2枚複写の1冊30組で税込594円で購入できます。
費用を抑えたかったり、手書きにこだわりがある場合に適しています。
(3)エクセル
エクセルを使用した運行指示書の作成は、手軽にデジタル化を推進できる方法です。
エクセルでの運行指示書の作成は、以下の動画が参考になります。
3.運行指示書の作成に役立つ運行管理システム5選
(1)物流基幹システムAIR
物流基幹システムAIRは、受注や配車・運転日報・請求・仕入れまで、物流に関わる多様な業務をワンストップで管理できるシステムです。
配車計画の自動最適化や、デポ経由の配送や傭車利用にも対応する等、運送業務に必要な機能を備えています。
以下では、多機能でありながらも直感的な操作性に優れたAIRの操作画面を紹介します。
メインメニュー | ・配送量やドライバーの状態をリアルタイムで監視 ・直感的に操作しやすいデザイン性 |
配送依頼登録 | ・登録業務の効率化 ・データアップロードによる登録も可能 |
配車計画 | ・配車後、地図で経路を確認可能 ・携帯アプリと連動し、配送進捗の確認ができる |
運転日報入力 | ・日報管理・入力の効率化 ・ドライバー用アプリの使用で運行情報が連携される |
請求 | ・輸送金額を荷主・明細単位ごとに確認できる ・確定後はExcel・PDFで請求書を出力可能 |
リアルタイムで各営業所と連動できるため、他営業所からの帰り便の活用や複数納入先への配送を効率的に行うことが可能です。AIRは、運行指示書を中心に他業務も一貫して効率化を強く推進したい場合に適しています。
主要機能 | ・物流業務の業務を一つのプラットフォームで管理 ・配車計画の自動最適化 ・リアルタイムでのデータ管理(複数営業所間での連携可能) |
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所在地 | 〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-2-1 岸本ビル |
料金 | こちらからお問い合わせできます |
(2)DiSynapse
DiSynapseは、運行管理や労務管理、点呼記録などの情報を一元管理できる総合管理システムです。自社で開発したシステムのため、企業ごとのニーズに応じた細かいカスタマイズにも対応できます。
また、同社の営業と開発者は、全員が運行管理者資格を保有しています。
現場の立場からシステムを作り、販売を行っているので、日常の業務で起きている問題に対して、より実態にあった提案をすることが可能です。
自社にあった、細かいカスタマイズを希望される方におすすめのシステムです。
主要機能 | ・運送業に必要な機能が豊富 ・自社開発のため、細かいカスタマイズにも対応可能 ・営業、開発担当者が運行管理資格を所持 |
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所在地 | 〒982-0024 宮城県仙台市太白区砂押南町2-3 日興ビル3F |
料金 | こちらからお問い合わせできます |
(3)GrowthBOX
GrowthBOXは、運行計画の作成と管理を一元化し、運行計画の作成と運行データの管理を一元化まで対応することが可能です。
コースマスタの事前作成機能により、定期的な運行計画も容易に立案可能です。
さらに、GrowthBOXでは、地図から運行指示書を作成できます。
目的地や経由地などを随時調べる必要がなく、地図ソフトからルートを自動で選べるため、時間短縮につながるでしょう。
主要機能 | ・運行計画の作成と管理を一元化 ・地図から運行指示書を作成することが可能 ・労務管理にも対応 |
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所在地 | 〒862-0913熊本県熊本市東区尾ノ上2-23-1 |
料金 | こちらからお問い合わせできます |
(4)指示楽ねっと
指示らくネットは、グーグルマップと連携して運行計画を簡単に作成できるシステムです。
グーグルマップ上で行き先を登録することで、そのまま運行指示書に反映されます。
検索した行き先を自動的にマスタに保存し、2回目以降は保存データを活用することで、より迅速な指示書作成が可能です。
運行指示書の出力には時間がかからず、エクセルでダウンロードされるため、自由に編集することも可能です。
主要機能 | ・Googleマップから運行指示書を作成可能 ・法令遵守チェック ・アラート機能搭載 ・運行指示書を簡単に出力できる |
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所在地 | 〒841-0048佐賀県鳥栖市藤木町1-48 |
料金 | こちらからお問い合わせできます |
(5)TRUSTAR
TRUSTARでは、車両の位置情報と作業状況をリアルタイムで把握できます。
配送管理が一目でわかる画面表示により、配送遅延や誤配の早期発見が可能となり、迅速な対応と的確な作業指示を実現します。
TRUSTARは業界で初めて、ながらスマホ検知機能を搭載しました。
スマートフォンのセンサーを活用し、運転中のスマートフォン使用を検知・記録します。
使用箇所を地図上で可視化することで、安全運転管理を強化しています。
交通事故防止と法令遵守を通じて、企業価値の向上に貢献してくれるでしょう。
主要機能 | ・GPS機能により、ドライバーの現在位置や作業内容を確認できる ・入力した作業実績から運転日報、運行指示書を自動作成 ・スマートフォンセンサーによるながらスマホ防止機能 |
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所在地 | 〒211-8550 神奈川県川崎市中原区市ノ坪150 |
料金 | こちらからお問い合わせできます |
4.運行指示書の注意点と罰則
運行指示書は、運行中の安全を守るための計画書であると同時に、必要な場合においては法令で作成が義務付けられた書類でもあります。
ここでは、運行指示書における主な注意点と、違反が発覚した際の罰則について解説します。
(1)運行指示書の注意点
運行指示書において気を付けたいのは、正副の扱い方や労働基準法等の法律があります。
以下では、運行指示書の注意点を解説します。
①正副の扱い方
運行指示書は運行管理者が責任をもって作成する必要があります。
正本と副本の2部を作成し、正本をドライバーに携帯させ、副本は営業所で保管します。それぞれの取り扱いをまとめると、以下の内容になります。
作成部数 | 正本と副本の2部を作成 |
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正本の取り扱い | ドライバーが携帯する |
副本の取り扱い | 営業所で保管する |
上記を徹底することにより、運行状況の把握と安全管理を確実に行うことが可能です。
正副の扱い方に関するその他の注意点は、以下のとおりです。
- 運行計画に変更が生じた場合、運行管理者が副本に変更内容を記載する
- ドライバーが帰社後、正本と副本を比較して変更内容と指示事項に相違がないか確認する
- 確認後は、正本と副本を営業所にて保管することで、記録と安全管理を徹底する
運行計画の変更時や最終確認等も含めて、正副の運行指示書を適切に管理する必要があります。
②労働基準法等の法律
労働基準法ではドライバーの労働時間に関する詳細な規定が設けられており、運行指示書もそれを遵守できるよう作成する必要があります。
ドライバーの拘束時間はあらかじめ上限が定められており、休息期間にも取り決めがあります。それぞれの定義は、以下のように定められています。
- 拘束時間:実際に働いている時間で運転時間や付帯業務の時間等
- 休息期間:その日の仕事が終わってから次の日の仕事が始まるまでの完全に解放された時間
2024年4月からは、以下の基準で運用する必要があります。
1年間の拘束時間 | 原則3,300時間 |
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1か月の拘束時間 | 原則284時間以内、最大310時間 |
1日の拘束時間 | 原則13時間以内、最大15時間(週2日に限り15時間を超えることが可能) |
1日の休息期間 | 継続11時間を基本とし、下限は9時間 |
その他にも、連続運転時間や最大拘束時間の例外等にも注意する必要があります。連続運転時間に関して詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
③保存期間
運行指示書は、運行終了日から1年間の保存が義務付けられています。
正本と副本の両方を営業所で適切に保管する必要があり、この保存期間を守らない場合も行政処分の対象となります。
(2)運行指示書の罰則
運行指示書に関する違反には、以下のような行政処分が科されます。
違反行為 | 件数 | 初違反 | 再違反 |
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作成、指示、携行の義務違反 | ~5件 | 警告 | 10日 |
6〜15件 | 10日車 | 20日 | |
16件〜 | 20日車 | 40日 | |
記載事項等の不備 | ー | 警告 | 10日車 |
運行指示書や写しの保存義務違反 | ー | 20日車 | 40日車 |
出典:「貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為および日車数等について 別表」
「日車」とは、1日あたりの車両使用停止処分を意味します。
違反で10日車を命じられた場合、10日間はトラック1台が使用できません。
違反点数の仕組みは以下の通りです。
- 10日×車1台分の違反で1点
- 違反点数は3年間記録に残る
また使用停止処分は、営業所で所持している車両台数に応じて、使用できなくなる車両台数が異なります。たとえば、営業所が15台の車両を保有している場合、20日車の処分が行われると、トラック2台が10日間使用できなくなります。
5.運行指示書の作成ツールにおける比較ポイント
(1)グーグルマップ等と連携できるか
グーグルマップと連携することで、検索した目的地を運行指示書に自動的に反映することが可能です。この機能により、入力作業を簡略化し、指示書作成のスピードが向上します。
再入力の手間を省略 | 同じ目的地を再度検索がなく、マスタから呼び出せる |
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変更等に迅速に対応 | 作成したルートの変更や追加、保存が行える |
例えば、配送中に新しい経由地が指定された場合でも、システム内で柔軟に修正できるでしょう。
運行指示書の作成ツールにグーグルマップなどの地図アプリと連携できる機能があると、目的地設定やルート作成が簡単になり、業務効率の向上とミス防止に大きく貢献します。
(2)予算内で運用できるか
運行管理システムの価格帯は幅広く、導入時には予算に応じた選択が重要です。初期費用とランニングコストを抑えたい場合のポイントは、以下のとおりです。
ポイント | |
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初期費用 | クラウド型:サーバーの購入費用や保守が不要アプリ型:専用機器を購入せずに利用を開始できる |
ランニングコスト | システムの機能範囲や使用台数によって異なる |
クラウド型やアプリ型は柔軟な料金体系を提供しており、初めて導入を検討する企業も予算に合ったプランを選択しやすいです。
クラウド型やアプリ型のシステムには、利用に伴う月額料金が必要であり、システムの機能範囲や使用台数によって異なるため、導入前に事前確認が重要です。
初期費用とランニングコストを把握し、自社に適したコストパフォーマンスのシステムを選択しましょう。
(3)日常業務の負担が軽減されるか
日常業務の負担軽減効果を最大化するには、自社の業務フローに合ったツールを選択することが重要です。
ツールが提供する自動化機能や、法令遵守をサポートする仕組みが充実しているかを確認する必要があります。業務フローをサポートする機能の一例は、以下のとおりです。
自動化機能 | 目的地やルート情報を自動で入力できる機能が搭載されているか |
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法令遵守の仕組み | 法令で定められた休憩地点や拘束時間等の項目をチェックする機能があるか |
負担が軽減されれば、運行管理者の時間を他の重要な業務に充てられるようになり、全体の業務効率が向上します。
6.まとめ
今回は運行指示書の作成方法を中心に、おすすめの運行管理システム等を解説しました。
物流業界において、運行指示書は安全な運行を実現する基盤となる重要な書類です。
運行指示書の作成をツールで行うなら、システムの導入がおすすめです。