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物流における2024年問題とは?企業の対策事例、発生する課題など

物流における2024年問題とは、働き方改革関連法によって懸念される、労働時間や売上・利益の減少などの運送事業者全体に関わる問題です。

本記事では、物流業界が直面する2024年問題について詳しく解説し、企業がどのように対策を講じるべきかを解説します。

目次

1.物流の2024年問題とは?わかりやすく解説

物流における2024年問題とは、2024年4月から適用される改善基準と働き方改革関連法の改正を起点に、物流業界に幅広い影響を及ぼすとされる問題です。

ここでは、改正改善基準告示と働き方改革関連法の改正に際してどのような影響があるのかをわかりやすく解説します。

2024年問題に関して、ペナルティなども含めて詳細な内容を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

(1)改正改善基準告示の改正

改善基準告示は、自動車運転者の労働条件の改善を目的とする重要な取り組みです。

運輸業・郵便業では脳・心臓疾患による労災が多発しており、令和5年度の「過労死等の労災補償状況」によると2023年度輸送・機械運転従事者における労災請求は200件もの請求が行われました。

改善基準告示は、このような自動車運転者の労働条件の改善を目的とする重要な取り組みです。

改善基準告示は1997年以降改正されていませんでしたが、ドライバーの健康を守るため、拘束時間や休息時間の規定が見直され、2024年4月に新たな基準が施行されました。2024年に改正された改善基準告示の主な内容は、以下のとおりです。




拘束時間における上限規制

1年の拘束時間
原則:3,300時間以内
例外:3,400時間以内
1か月の拘束時間原則:284時間以内
例外:310時間以内(※年間6ヵ月まで)

1日の休息期間
原則:継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らない
例外:長距離貨物運送で住所地以外の宿泊を伴う場合は週2回まで継続8時間以上まで短縮できる
参考:トラック運転者の改善基準告示|厚生労働省

(2)働き方改革関連法の改正

2024年4月から、運送業界にも働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が適用され、年間960時間が上限となります。

働き方改革に伴う労働基準法改正では、2019年に時間外労働の上限規制が導入されました。しかし、運送業界では直ちに適用すると業務に支障をきたす可能性があったため、5年間の猶予期間が設けられていました。

2024年4月以降は上限を超えて働いた場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰則が科される恐れ※ があります(参考:厚生労働省 時間外労働の上限規制)。

改善基準告示と働き方改革関連法の改正により、ドライバーの労働環境改善が期待される一方、労働時間の減少が労働力不足を招く懸念もあります。

2.物流の2024年問題で発生する課題

物流業界の2024年問題では、運送・物流企業、荷主企業、そしてトラックドライバーへの影響が課題として挙げられます。

ここでは、それぞれにどのような影響があるのかについて解説します。

(1)運送・物流企業の売上および利益の減少

トラックドライバーの労働時間減少により、運送業界の売上・利益の減少が懸念されています。

運送業は労働集約型のビジネスモデルであり、ドライバーの労働時間と企業の売上が直結するため、年間960時間という時間外労働の上限規制は、輸送量の減少を引き起こし、企業の収益に影響を及ぼすことが予想されます。

以下に示すデータは、令和元年度における全日本トラック協会の経営分析報告書に基づくものです。黒字事業者の割合は2019年時点で減少傾向にあり、2024年の規制施行後、さらに影響が拡大する可能性があります。

画像引用:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/keiei/R01gaiyo.pdf

2024年以降、現状と同じ売上や利益を維持するためには、ドライバー不足の解消や輸送効率の向上を図るための効果的な対策が急務となります。

(2)荷主のコスト負担が増大

2024年問題により、運送業界では運賃の値上げが避けにくい状況となり、荷主企業にも影響を及ぼす恐れがあります。

貨物自動車運送事業者のコスト構造では、営業費用に占める人件費の比率は2022年度時点で約4割半ばであり高い割合を占めているためです。

画像引用:https://www5.cao.go.jp/keizai3/monthly_topics/2024/1111/topics_074.pdf

労働時間規制と人材不足による影響で相対的にドライバーの人件費が上昇し、運送会社の利益を圧迫すると運賃値上げを検討しなければならない状況となります。

国土交通省による荷主企業を対象とするアンケートによると2024年問題による影響で運賃交渉を受けた荷主企業の割合は、令和4年時点で3割程度です。

画像引用:https://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/yg/yusou/sub3-9/sub3-9_siryou3%20.pdf

しかし労働時間規制の本格施行と従来から問題視されていたコスト増加人材不足などの根深い課題も影響するため、今後さらに運賃の値上げ交渉を受ける荷主企業が増加する可能性が高いと予想されます。

(3)ドライバーの収入減少

2024年問題による労働時間の規制により、トラックドライバーの収入減少が懸念されています。

時間外労働に依存して収入を得ているドライバーの場合、年間960時間の時間外労働上限規制により、月々の残業時間が減少し、手取り収入が大きく減少する恐れがあります。

公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会がトラックドライバーを対象に行った「時間外労働960時間規制に対するトラックドライバーの意識調査」では、約50%のトラックドライバーが規制による収入減少を懸念していると回答しています。

画像引用:https://www1.logistics.or.jp/Portals/0/pdf/Report%20on%20track%20driver%20survey2024.pdf

収入減少はドライバー不足の加速を招き、物流業界全体の運営に深刻な影響を与える可能性があるため、業界全体での基本給引き上げや運賃改定などの早急な対応が求められています。

(4)ドライバー不足の深刻化

2024年の労働時間規制により、トラックドライバーの人手不足がさらに深刻化することが懸念されています。

令和4年9月時点の有効求人倍率では、全職業平均が1.20倍であるのに対し、貨物自動車運転者は2.12倍と約2倍に達しており、業界全体での人材不足が顕著です。

画像引用:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/work

さらに、トラックドライバーの平均年齢構成を見ると、45~59歳の割合が45.3%と全産業平均を上回っており、この年齢層が引退することで、今後の人材不足が一層加速する可能性があります。

画像引用:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/work

このままでは物流業界の人手不足が急激に悪化し、社会全体の物流機能が停滞するリスクがあるため、労働環境の改善や待遇の見直しなど、抜本的な対策を早急に実施する必要があります。

3.物流の2024年問題への解決策

2024年問題は、労働環境の改善を目的とした取り組みから生じる影響です。

この問題を契機に、従来から存在する長時間労働人材不足といった根深い課題を解決するため、運送・物流企業には適切かつ持続可能な対応が求められています。

ここでは、物流の2024年問題への解決策を具体的な方法を解説します。

(1)システム・ツールの導入

労働時間が制限される中で、従来の業務量を維持しながら人手不足を補うためには、デジタル技術を活用した効率化が有効です。

具体的な導入例として以下のものが挙げられます。

システム・ツールの種類概要
予約受付管理システムトラックの入出庫や荷積みの予約を一元管理
配車システム配車業務をデジタル化し、最適な運行ルートや車両の割り当てを自動的に計算
車両管理システムトラックの稼働状況や位置情報をリアルタイムで把握
遠隔点呼システムドライバーの出発前点呼をオンラインで実施

上記のシステムはすでに多くの企業で導入が始まっており、着実な成果を上げており、業務効率化を図るだけでなく、労働環境の改善企業競争力の強化も期待されています。

(2)パレット標準化等の設備面での対応強化

日本ではJIS規格により標準サイズ(1,100mm×1,100mm×144mm)が定められていますが、日本物流団体連合会が2000年前後に実施したパレット利用実態では標準サイズの使用率は全体の約3割にとどまっています。

残りの約7割は、各企業や業界が独自のサイズを採用しており、100種類以上の異なるパレットが混在する状況であり、この多様なサイズが物流の効率化を妨げる要因となっています。

パレットの標準化は、以下のような多くの利点があります。

トラックドライバーの拘束時間短縮荷役作業の効率化により、ドライバーの待機時間が減少
積載率の向上パレット形状が統一されることで、トラックや倉庫内での空間活用が最適化
物流センターの集約化標準化された設備の運用により、物流拠点の効率的な統合が可能
物流コストの削減作業効率の向上とスペース利用の最適化により、全体的なコストを削減

パレットが標準化されれば、フォークリフトによる荷役作業が効率化し、作業時間の大幅な短縮が可能となります。

(3)共同輸送等の導入

共同輸送は、複数の物流会社が連携して配送を行うことで、輸送効率の向上とコスト削減を実現する手法です。

複数企業の荷物を同じトラックやコンテナで輸送することで、車両の稼働率が向上し、必要なトラック台数を削減できます。共同輸送には、以下のメリットと課題があります。

共同輸送
メリット・車両の稼働率向上
・トラック台数の削減により運用コストを抑制
・ドライバーの長時間労働が改善
・荷役作業の負担軽減
・トラック台数の削減によるCO₂排出量削減
課題・輸送ルートやスケジュールの調整に時間と労力がかかる
・コスト分担の不均衡が発生する可能性がある
・急な追加積載への対応が難しい
・荷物の追跡や到着予定時刻の把握が複雑化する可能性がある

共同輸送を成功させるには、参加企業間で綿密な連携体制を構築することが不可欠です。

輸送計画やITシステムを活用した情報共有の仕組みを整備することで、課題を克服し、共同輸送の効果を最大化することができます。

(4)モーダルシフトの実施

モーダルシフトは、トラック輸送から鉄道・船舶輸送への転換を図る取り組みで、環境負荷の低減とドライバー不足への対応策として注目されています。

鉄道や船舶は、トラックと比べて長距離・大量輸送が可能で、二酸化炭素排出量も少ないという特徴があります。

そのため、SDGsの観点からも環境にやさしい輸送手段として期待されているのです。

しかし、モーダルシフトには以下の課題もあります。

リードタイムが長い駅や港での積み替え作業が必要となり、トラック輸送に比べて発注から納品までの時間が長くなる
発着地点での運用体制の整備新たに品質管理や人員配置が必要となる場合がある

モーダルシフトは環境保全とドライバー不足解消に有効な手段ですが、導入にあたってはリードタイムの長期化運用体制の整備など、課題への対策が不可欠です。

(5)労働環境の整備

2024年問題に対応するためには、物流業界全体で労働環境労働条件の改善に取り組む必要があります。

トラック運送業界の人手不足は、長時間労働給与水準の低さが主な原因です。

これらの問題に加え、2024年から適用される労働時間規制により、1人あたりの労働時間が制限されることで収入が減少し、人材確保がさらに困難になると予想されます。

労働環境の整備への具体的な対策として、以下の取り組みが有効です。

労働環境の整備への具体的な対策
柔軟な働き方の導入シフト制の導入や、家庭と仕事の両立が可能な勤務体系
賃金体系の見直し労働時間に依存しない給与体系の採用
有給休暇の取得促進有給休暇が取得しやすい職場づくりの推進
福利厚生制度の充実退職金制度や保険制度の拡充、休憩スペースの整備など

上記の取り組みは、新規ドライバーの確保既存ドライバーの定着率向上に直結し、労働環境の改善を通じて、持続可能な物流体制を構築し、2024年問題に対応することが可能となります。

4.物流の2024年問題の対策事例

ここからは、2024年問題への対策事例を8つ紹介します。

(1)一元的な共同輸送で積載効率が向上

画像引用:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-483.pdf

JA高知県園芸流通センターでは、パレット共同輸送を導入することで、小口多品目の物流効率化に取り組み、成果を上げています。複数の荷主や物流会社が協力してパレットを用いた輸送を共有する仕組みです。

また積載効率が低かった輸送を改善するために、センター機能を一元化し、運送会社2社と連携し、データ連携を活用した事前の配車計画により、満車率を向上させることにも成功しています。

(2)共同輸送とモーダルシフトで積載率が向上

画像引用:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-483.pdf

大分青果センターは、パレット共同輸送モーダルシフトを組み合わせた物流効率化により、積載率向上に成功しています。

JAグループ荷量の約4割を占める少量多品目の青果物について、生産者の負担運賃軽減と積載効率の向上が課題となっており、2019年から青果センターを設置し、共同輸送を実施しました。

さらなる取扱数量の拡大と積載率向上を目指し、2024年4月の稼働開始に向けてセンターの拡張工事を進めており、物流効率化の取り組みをいっそう強化しています。

(3)パレット輸送で荷役作業の削減

画像引用:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-483.pdf

ホクレンは、標準型プラスチックレンタルパレットの導入により、荷役作業の効率化と作業時間の短縮を目指し、青果物輸送の約3割でパレット化を実現しました。

産地での積込みから市場での荷下ろしまでの所要時間を平均150分から60分へ短縮する成果を上げており、バラ積みが主流だったかぼちゃについても、T11パレットに適合した段ボールを用いた輸送実証を行い、鉄道やフェリーを活用したモーダルシフトを実現しました。

(4)共同輸送による積載率の向上

画像引用:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-483.pdf

JAあいち経済連は、地域物流と幹線物流を分離した共同輸送を導入し、幹線便を3〜4台削減し、積載率を10%〜18%向上させる成果を上げています。

経済連グループの運送会社による輸送の一元管理や、地域集荷と幹線輸送の荷役場所を分離することでより効率化を図っています。

今後は尾張や西三河地域も対象に試験実施を進め、さらなる物流効率化を目指しています。

(5)パレット輸送とモーダルシフトで荷積み作業を効率化

画像引用:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-483.pdf

JAさがは、パレット輸送モーダルシフトによる労働力不足と物流効率化への対応として、パレット輸送により所要時間を半減し、パレタイザーで5分間に48箱(960kg)を積載する効率化を達成しています。

さらに、玉ねぎ輸送の7割をJR貨物で実施し、いちごについては冷蔵コンテナと防振パレットで品質を維持しています。

(6)バース予約・受付システムの導入により荷待ち時間の低減と物流効率の向上

画像引用:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf

福岡運輸は、物流集中時の待機車両による労働時間増加や周辺環境への影響を解消するため、バース状況をリアルタイムで把握・共有し、効率的な車両誘導を可能にしました。

倉庫周辺の待機車両削減や在庫状況の可視化を実現し、積み降ろし作業や保管スペースの効率化を促進しています。

また、バースの計画的運用により渋滞緩和にも寄与し、2020年には九州運輸局から表彰されています。

(7)自動点呼ロボットで運行管理者の負担を軽減

画像引用:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf

菱木運送では人手不足による労働時間の増加や、ドライバーの勤務状態把握の困難さから、働き方改革と安全対策の強化が急務となっており、運行管理者の業務負担軽減と安全管理の強化を目的に点呼支援ロボットを導入しました。

本人確認やアルコールチェック、免許証確認、体調管理、指示伝達を自動で行う点呼支援ロボットにより、点呼業務の正確性向上や情報伝達の効率化が実現し、運行管理の平準化と運行管理者の業務負担軽減が達成されました。

5.まとめ

物流における2024年問題は、業界全体に大きな影響を与える重要な課題です。

本記事で紹介したさまざまな対策事例が示すように、デジタル技術の活用や業務プロセスの改善により、課題を克服し根幹的な問題から対処する必要があります。

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