車両管理台帳の作成は、法律で義務付けられているわけではありません。しかし、企業における安全運転管理やコスト削減の実現には欠かせないツールです。
本記事では、車両管理台帳の基礎知識から、効果的な作成・運用方法、さらに業務を効率化するおすすめのシステムについて詳しく解説します。
1.車両管理台帳とは?
登録情報、点検履歴、保険加入状況など、車両に関わるさまざまな情報を記録・管理することで、事故リスクの低減や運用効率の向上などに役立てられます。
ここでは、車両管理台帳の必要性と目的について詳しく解説します。
(1)車両管理台帳の必要性
車両管理台帳の作成自体は法律による義務ではありませんが、業務で車両を運用する企業には適切な管理が求められます。
車検切れや自賠責保険切れなどの状態で事故が発生した場合、企業の管理責任が問われ、重い処罰を受ける恐れがあるためです。
そのため企業は、車両管理台帳を作成して適切な車両管理を行うことで、従業員と車両の安全を確保する必要があります。
運送会社における車両管理の包括的な内容を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
(2)車両管理台帳を作成する目的
車両管理台帳を作成する目的は、リスク管理とコスト管理の2種類です。
リスク管理 | 車両の安全運用を確保し、事故や法令違反による企業責任を軽減 |
---|---|
コスト管理 | 車両の使用状況を正確に把握し、維持費や燃料費の削減、車両台数の最適化を実現 |
以下でより詳細な内容を解説します。
①リスク管理
業務での車両運用には、従業員の安全確保と企業の社会的信用を維持するという、二重の責任が伴います。
事故が発生すれば、人的・物的被害だけでなく、企業イメージの低下や取引先との信頼関係の損失といった深刻な影響を及ぼす可能性があります。
車両管理台帳を適切に活用することで以下のようなリスクを防ぐことができます。
- 車検切れや自賠責保険切れによる法令違反
- 整備不良が原因で発生する重大事故
台帳により車両の状態や保険状況を常に把握し、必要な整備や更新を計画的に実施することで、これらのリスクを事前に回避できます。
企業が車両管理台帳を作成・運用することは、事故防止策の一環として、従業員や社会への責任を果たす重要な取り組みとなります。
②コスト管理
社用車の運用には、燃料費や高速道路料金、駐車場代などさまざまなコストが発生します。近年の燃料費高騰は、企業の経営を圧迫する大きな要因です。
車両管理台帳を活用することで、以下のようなコストを適切に管理し、経営効率の向上を図ることができます。
燃料費 | 走行距離や燃費データを記録・分析することで、非効率な運行ルートや燃費の悪い運転習慣を特定し、改善につなげる |
---|---|
整備費用 | 車両ごとの点検や修理履歴を把握することで、過剰整備や整備漏れを防ぎ、計画的なメンテナンスを実現 |
保険料 | 車両の利用状況を元に、適切な保険プランへの見直しを検討することで、過剰な保険料負担を軽減 |
運行費用 | 高速道路料金や駐車場代を明確に把握し、無駄なコストを削減 |
このように、車両管理台帳を適切に運用することで、企業は運行コストの透明化と最適化を図り、経営効率の向上を図ることが可能となります。
2.車両管理台帳に記載すべき項目
車両管理台帳には、記載すべき項目が大きく分けて3つ存在します。
車両を特定するための項目 | 登録番号、車名、型式、車体番号など、車両を識別するための基本情報を記載 |
---|---|
車両の状態を把握するための項目 | 車検日、点検履歴、走行距離など、車両の状態や使用状況を管理するための情報を記載 |
車両の保険に関する項目 | 自賠責保険や任意保険の保険会社、証券番号、保険期間など、車両に関連する保険の詳細を記載 |
ここではそれぞれの項目について、詳しく解説します。
(1)車両を特定するための項目
効率的な車両管理のためには、各車両を正確に特定できる情報の記録が不可欠です。
以下は、車両を特定するための具体的な項目です。
項目 | 記載内容 |
---|---|
登録番号(車両番号) | ナンバープレートの番号 |
車名 | メーカーと車体の名称 |
色 | 車体のカラー |
形式 | モデルや車種などを分類した番号 |
車台番号 | 車検証に記載されている番号 |
登録年月と番号 | 運輸支局へ登録した年月 |
定員数 | 乗車定員数 |
購入年月日 | 購入した年月日 |
購入先 | 購入した店舗名 |
新車・中古車区分 | 新車か中古車かの区分 |
リース会社・担当者 | リースした契約会社やその担当者 |
これらの情報を正確に記録し、必要に応じて更新することで、車両の状態確認や緊急時の対応がスムーズになります。
また、社内の運用に応じた独自の識別情報を追加することで、管理の効率化がさらに向上します。
(2)車両の状態を把握するための項目
車両の安全性を保つには、車両の状態に関する詳細な情報を記録することが重要です。
主に以下の3つの項目に分けて管理します。
●車検・整備状況にかかわる項目
項目 | 記載内容 |
---|---|
車検有効期限 | 車検満了日 |
定期点検記録 | 点検の実施内容 |
整備工場名 | 整備を実施した工場名(住所・連絡先も記載) |
整備状況 | 整備の現状 |
●修理や事故のかかわる項目
項目 | 記載内容 |
---|---|
修理歴 | 修理箇所や修理の原因 |
事故発生日時 | 事故が発生した日時 |
事故概要 | 事故を起こした従業員名、発生原因、事故の状況 |
事故処理の結果 | 事故後の処理や結果 |
●使用・管理にかかわる項目
項目 | 記載内容 |
---|---|
使用部署 | 車両を使用している部署 |
運転者 | 車両を運転している従業員名 |
変更履歴 | 使用者・管理者の変更履歴 |
これらの項目を適切に記録・管理することで、車両の安全性を確保し、事故リスクの軽減や効率的な運用につなげることができます。
(3)車両の保険に関する項目
車両管理台帳に記載すべき内容は、自賠責保険と任意保険で異なるため、以下を参考にしてください。
項目 | 記載内容 |
---|---|
自賠責保険 | 保険年月日・保険会社・証券番号・保険金額 |
任意保険 | 保険期間・保険会社・証券番号・保険代理店・保険内容・保険金額 |
上記の情報を適切に記録することで、保険切れや内容不足といったリスクを未然に防ぎ、万が一の事故時にも迅速に対応できる体制を構築できます。
3.車両管理台帳の作成・運用方法
車両管理台帳の作成・運用方法には、主に以下が挙げられます。
車両管理台帳の作成・運用方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
紙媒体 | ・導入コストがほぼゼロ ・簡単に始められる | ・手作業が多く、ミスが発生しやすい ・保管スペースが必要 ・検索や更新が非効率 |
エクセル・Googleスプレッドシート | ・無料または低コストで運用可能 ・簡単にカスタマイズできる | ・データ量が増えると管理が煩雑 ・機能が限定的で運用効率が低下する場合がある |
システム・ツール | ・リアルタイムのデータ共有が可能 ・機能が豊富で効率的な運用が可能 | ・初期費用や月額料金が発生 ・導入や運用に一定の学習コストが必要 |
ここでは、それぞれのやり方と特徴を解説します。
(1)紙媒体
紙による車両管理台帳は基本的で手軽に始められる運用方法で、別な設備投資やITスキルが不要であり準備が簡単です。
しかし、保有車両が増加すると、情報の更新や検索に時間がかかり、保管スペースの確保も必要になるなど運用上の課題が発生してきます。
紙による車両管理台帳の運用面での課題は、以下のとおりです。
情報の更新・検索が非効率 | 保有車両が増加すると、台帳の更新作業や必要情報の抽出に時間がかかる |
---|---|
保管スペースが必要 | 長期間にわたり紙媒体で管理すると、保管スペースの確保が必要 |
データ活用が困難 | 稼働率レポートの作成や分析が必要な場合、紙台帳から情報を抽出しパソコンに入力する手間が発生する |
情報共有が不便 | 複数の担当者間でのデータ共有が難しく、ミスや連携不足のリスクが高まる |
紙媒体は、少ない車両数で運用を始める場合や、手軽さを重視する企業にとって有効な方法です。
ただし、事業拡大や管理する車両数が増えると、情報更新や共有に手間がかかることもあるため、将来的にはデジタル化を視野に入れることで、管理業務をより効率化できる可能性があります。
(2)エクセル・Googleスプレッドシート
エクセルやGoogleスプレッドシートを活用した車両管理は、無料のテンプレートも豊富に公開されているため、新たな投資をせずに効率的な管理を始められる場合が多いです。
ただし、以下の課題を考慮する必要があります。
- ネット環境に依存(Googleスプレッドシートの場合)
- 関数や操作に関する基本知識が必要(エクセル・Googleスプレッドシート共通)
シンプルな車両管理と基本的なデータ分析のみ行う場合や、試験的にデジタル化を取り入れる際には、費用対効果の高い選択肢となります。
(3)システム・ツール
クラウド型の車両管理システムを導入すれば、車両情報の一元管理に加え、運転日報や点検記録、保険情報など、車両に関するあらゆる情報をどこからでも統合的に管理することが可能です。
リアルタイムでのデータ更新や共有が可能で、セキュリティが充実しているシステムも多いため、安全かつ安心して運用できます。
ただし、以下の点に留意が必要です。
- 初期費用やランニングコストが発生する
- 導入時に操作方法や機能の習得が必要
上記のデメリットはあるものの、車両数が多い場合や、より高度な管理や分析を求める企業にとっては、大きな投資効果を期待できます。
システム選定時には、搭載されている機能や運用規模との相性を確認し、自社のニーズに最適なものを選ぶことが重要です。
4.車両管理台帳の運用を効率化するおすすめのシステム
(1)物流基幹システムAIR
物流基幹システムAIRは、物流業務全般を一元管理できる統合型クラウドシステムです。
受注管理から配車計画、動態管理、請求処理まで、物流業務に必要な機能をワンストップで提供しています。
AIRの魅力は網羅的な機能性を備えながらも、直感的な操作性に優れることです。
以下では、AIRの操作画面と機能を紹介します。
メインメニュー | ・配送量やドライバーの状態をリアルタイムで監視 ・直感的に操作しやすいデザイン性 |
配送依頼登録 | ・登録業務の効率化 ・データアップロードによる登録も可能 |
配車計画 | ・配車後、地図で経路を確認可能 ・携帯アプリと連動し、配送進捗の確認ができる |
運転日報入力 | ・日報管理・入力の効率化 ・ドライバー用アプリの使用で運行情報が連携される |
請求 | ・輸送金額を荷主・明細単位ごとに確認できる ・確定後はExcel・PDFで請求書を出力可能 |
現場スタッフの使いやすさを追求した設計により、システムをスムーズに導入できます。
物流基幹システムAIRは、複雑な物流業務をシンプルに管理し、正確な配車計画と運行管理を実現します。
また、コスト削減だけでなく、顧客満足度の向上にもつながるため、業務の効率化と競争力強化を同時に実現することが可能です。
特徴 | ・配車計画から請求処理まで一元管理 ・自動配車機能とスマートフォンアプリ連携 ・複数営業所間でのリアルタイム情報共有・現場重視の設計 |
---|---|
所在地 | 〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-2-1 岸本ビル |
価格・料金プラン | こちらからお問い合わせできます |
(2)KIBACO
KIBACOは、車両情報をクラウドで一括管理でき、わかりやすいダッシュボード画面で、保険満期や点検予定などの重要タスクを自動で通知します。
さらにオプションによって、交通安全のラーニング機能を搭載させることも可能です。
毎週異なる危険予測動画をドライバーに視聴してもらうことで、危険予測能力の向上を狙うことができます。
特徴 | 直感的に操作できるUI・車両管理に必要な機能を網羅・交通安全のラーニング機能も搭載可能 |
---|---|
所在地 | 〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦3-8-32 |
価格・料金プラン | 標準機能:無料運転手オプション:550円(税込)/1アカウント※申込は10アカウントから |
(3)トラッカーズマネージャー
トラッカーズマネージャーは、運送業界に特化した直感的な操作性を備えており、デジタル機器に不慣れな方でも簡単に操作できる画面設計です。
車両と運送に関するすべての情報を一元管理することで、車両ごとの正確な収益管理が可能であり、具体的な数値に基づいて経営分析などを行えます。
さらにクラウド型システムのため、データの紛失や情報漏洩のリスクを軽減できます。
特徴 | システムに不慣れな方でも操作しやすい画面設計・車両ごとの正確な収益管理が可能・サポートサービスが充実 |
---|---|
所在地 | 〒105-0012東京都港区芝大門2-5-5 住友芝大門ビル 5F |
価格・料金プラン | 要お問い合わせ |
(4)Cariot
CariotはGPS位置情報更新により、車両の現在位置をリアルタイムで把握できます。
精密な位置情報を活用することで、配送指示や遅延への迅速な対応を可能にしています。
また、通過点の自動確認や到着時刻の記録、走行実績の自動集計、詳細な停車分析など運行管理に必要な機能が数多く搭載されています。
特徴 | GPS搭載・通過点の自動確認や到着時間の記録など、運行管理機能が充実・スマホによる運転日報の作成 |
---|---|
所在地 | 〒105-0004 東京都港区新橋5-13-4 YMG新橋ビル6F |
価格・料金プラン | 要お問い合わせ |
(5)SmartDrive Fleet
SmartDrive Fleetは、車両管理業務の効率化を支援する統合型クラウドシステムです。
専用ダッシュボードでは、パソコンやモバイル端末から車両の位置情報と稼働状況をリアルタイムで確認できるため、車両の状況が一目でわかります。
また、運転の特徴を総合的にスコアリングする安全運転診断機能により、危険な運転挙動を即座に検知して管理者に通知します。
さらに、シンプルで直感的な操作画面を採用し、定期的なアップデートで機能の追加や改善を実施してくれます。
特徴 | 車両の位置情報と稼働状況をリアルタイムで確認できる・運転の特徴を調べるための安全運転診断機能・操作性の高いシンプルな画面設計 |
---|---|
所在地 | 〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-1-2 日比谷三井タワー12階(東京ミッドタウン日比谷) |
価格・料金プラン | 要お問い合わせ |
(6)車両管理台帳システム
株式会社神奈中情報システムの車両管理台帳システムには、本社と営業所で車両情報をリアルタイムに共有できる一元管理機能が搭載されています。
本システムでは、直感的に操作できるユーザーインターフェースを採用しており、マスターデータの管理も利用者自身で行うことも可能です。
さらに、データセンターにてクラウドサービスを提供しているため、自社でのサーバー管理が不要で、低コストながら高いセキュリティを実現しています。
特徴 | 車両情報の一元管理が可能・直感的にシステムを操作できる・データセンターにてクラウドサービスを提供 |
---|---|
所在地 | 〒254-0034 神奈川県平塚市宝町3-1 平塚MNビル11F |
価格・料金プラン | 要お問い合わせ |
(7)ロジポケ
引用:X Mile株式会社
ロジポケは、車両の基本情報からリース契約・税金・保険・整備記録まで、すべての情報を添付ファイルと共に一元管理できます。
登録された期日情報をもとに、整備・点検計画のスケジュール表とアラートを自動生成できるため、管理工数を削減しながら、更新漏れなどのリスクも防止できます。
車両台帳と事故報告を紐づけたデジタル管理により、事故履歴の可視化と分析ができます。
特徴 | すべての車両情報を添付ファイルと共に一元管理可能・スケジュール表とアラートを自動生成・車両台帳と事故報告を紐づけることで、事故履歴を可視化できる |
---|---|
所在地 | 〒160-0022 東京都新宿区新宿6-27-30 新宿イーストサイドスクエア W7F |
価格・料金プラン | 要お問い合わせ |
5.車両管理台帳をシステム化するメリット
車両管理台帳のシステム化は、業務の効率化やリスク軽減だけでなく、経営判断のスピードアップやコスト削減にも直結します。ここでは、システム化がもたらす主なメリットを具体的に解説します。
(1)台帳管理の効率化と正確性の向上
車両管理台帳のシステム化によって、車両管理台帳の正確性と運用効率が劇的に向上します。
システムでは、車両の点検情報、保険内容、事故履歴などのデータを一元管理できるため、紙やExcelでの手作業にありがちな入力ミスや情報の抜け漏れが大幅に減少します。
さらに、入力データがリアルタイムで全社共有されるため、どの部署からでも最新の情報に即座にアクセス可能です。これにより、情報共有の手間が削減され、部署間の連携も円滑になります。
(2)情報更新のリアルタイム性
クラウド型のシステムを導入すれば、インターネット環境さえあればどこからでも必要な情報にアクセス可能です。これにより、台帳の更新や確認がスピーディーになり、従業員間のやり取りも効率化します。
また、検索・出力機能を使えば、必要な情報を瞬時に引き出せるため、これまで手間取っていたレポート作成や分析も簡単に行えるようになります
(3)データの見える化
車両管理台帳のシステム化により、燃料費や車両維持費、人件費などの詳細なデータをシステムで一括管理し、分析結果をもとに戦略的な運用を実現します。
たとえば、非効率な車両運用やコストの過剰発生を素早く特定し、適切な改善策を講じることで、運賃の見直しや車両の更新・売却判断を具体的な数値に基づいて迅速に行うことが可能です。
結果として、より効率的な車両運用を実現し、企業全体の収益性向上に貢献します。
(4)ヒューマンエラーの防止
手作業によるミスを削減し、業務を確実に遂行できます。
従来の運用では、情報の転記や確認漏れなどのヒューマンエラーが避けられませんでした。システム化により、各部署が直接入力したデータがそのまま全体に共有されるため、転記ミスや管理漏れがなくなります。
また、車両管理システムには、アラート機能や通知機能が搭載されているものが多く、車検や保険更新期限を事前に通知することで、重要な情報の見落としを防止します。
(5)コスト削減の実現
車両管理システムは、管理業務の効率化を通じてコスト削減を実現します。
自動化されたデータ入力や転記作業により、管理部門における人件費を削減できるだけでなく、車両台数の適正化や燃料費の削減にもつながります。
さらに、システムの活用で得られるコストデータの継続的な記録・分析により、運用全体を効率化し、さらなるコスト削減効果を期待できます。
6.まとめ
車両管理台帳は、企業の安全管理とコスト管理の両面で重要な役割を果たします。
車両台数が多い企業では、システムの導入により、正確な情報管理による事故リスクの低減や車両運用の最適化といった効果が期待できるでしょう。