配送業務の使命を確実に遂行するためには、適切な配送計画が必須です。
本記事では、配送計画の最適化の概要、最適化に関する課題やメリット、企業における成功事例などを解説します。
1.配送計画の最適化とは?
ここでは、配送計画の最適化に関する概要とそれにおける課題を解説します。
(1)配送計画の最適化とは
配送計画の最適化とは、効率的に集荷・荷卸し・配送を行うために、最適なトラックや配送ルートを選定し、計画を立てることです。
従来の配送計画では、熟練ドライバーの経験や勘に頼るケースが多く、持続性を考慮すると必ずしも効率的とはいえません。
さらに、短期的に非効率な計画のまま運用を続けると、以下のような問題が発生します
物流コストの増加 | 無駄な走行距離や燃料費の増加 |
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業務負荷の増大 | ドライバーや従業員への過度な負担 |
業務の属人性を解消し、適切な配送計画を最適化するには、専用システムの導入が有効です。配送計画の作成に専用システムを導入することで、以下のメリットが期待できます。
- 誰でも最適な計画を立案
- 人的ミスによる計画ミスや配車漏れを排除
- 物流コストを最小限に抑える
- 少ない人員で業務を遂行
- 企業の経営基盤を強化
配送計画システムの導入により、業務の効率化とコスト削減を実現し、持続可能な物流体制の構築が可能になります。
(2)配送計画における課題
配送計画は、取引先の増加や取り扱う商品・製品の多様化により、トラックや配送ルートの選定が一層複雑になっています。
加えて、荷受・荷卸し場所の時間指定や施設ごとの規則が存在するため、緻密かつ柔軟な配送計画が求められます。
配送計画で考慮すべき主な課題は、以下のとおりです。
積載量 | トラックの容量に対する適切な荷物の配置 |
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荷姿・荷物の重量 | 荷物の形状や重量による積み込み方法の工夫 |
専属人員指定 | 特定のドライバーや担当者の割り当て |
有料道路の使用の有無 | コストと時間のバランスを考慮したルート選定 |
これらの課題をすべて考慮しながら、最適な配送計画を人の手だけで立案することは困難です。
プロフェッショナルな人材に頼らず、効率的に配送計画を最適化するためには、配送計画システムの導入が不可欠です。
2.配送計画の最適化が必要な背景
配送計画の最適化が求められる背景には、業務の属人化の防止に加えて、ドライバーの高齢化や配送コストの高騰といった、物流業界全体で解決が難しい課題が関わっています。
ここでは、配送計画の最適化が必要な背景を既存のデータも踏まえながら解説します。
(1)業務の属人化
従来の配車計画は、誰にでもできる業務ではなく、専門担当者の長年の経験と確かな知識によって支えられてきました。
これまでの方法は、職人技ともいえる高度な対応力が求められる一方で、現場ごとに最適化されているため、全体最適化という点では難しい状況も見られます。
実際のトラック事業者からも次のような声が寄せられています。
「配車管理はこれまで職人芸的に各事業所のベテランが勘と経験で対応してきた分野であり、事業所を跨いでの効率化という意識はほぼない」
データ元:関東圏内中小トラック事業者(トラック台数約40台規模)
デジタル技術を活用した配送システムを導入することで、ベテラン配車担当者の知識や経験をシステムに反映しつつ、業務の標準化や効率化を進めることができます。
これにより、これまでの現場単位での強みを生かしながら、事業所全体での効率化や配送計画の最適化を実現することが期待されます。
(2)ドライバーの高齢化と人手不足
運送業界では、ECサイトの利用増加に伴い配送需要が急増し、慢性的な人手不足が深刻化しています。
ドライバーの高齢化が進む一方で、少子高齢化による若年層の就業率低迷が続いており、将来的には現状のサービスを維持することが難しくなると懸念されています。
このような状況の中で、これまで物流を支え続けてきたベテランドライバーの知識や経験を生かしつつ、持続可能な物流体制を構築することが重要です。
配送計画の最適化やデジタル技術の導入を進めることで、ドライバーの負担軽減と効率的な配送網の整備が求められています。
(3)配送コスト
配送計画の最適化が求められる背景には、配送コストの増加が深く関わっています。特に燃料費の高騰は、運送業界にとって大きなコスト負担となっており、従来の非効率な配送計画のままではコスト削減が難しい状況です。
公益社団法人全日本トラック協会が行った軽油価格の推移によると、1990年頃の軽油価格は1リットル当たり72円でした。
しかし、2024年12月9日時点では、世界情勢や燃料需要の高まりを背景に、1リットル当たり155.4円まで大幅に値上がりしています。
さらに、令和4年度のデータによると、一般貨物運送業における配送コストの内訳は以下のとおりです。
これらを合わせると、全体の半分以上を占めており、特に燃料費は30年前と比較して2倍以上に高騰しています。
軽油価格が下がれば、約7%のコスト削減が可能ですが、現状では燃料費の減少が見込めず、人件費の賃上げも重なり、配送コストは今後さらに増大する恐れがあります。
このような状況下で配送コストを抑えるためには、配送ルートの最適化や積載効率の向上が必要不可欠です。無駄な走行距離や燃料消費を抑えることで、物流業界全体のコスト削減が期待できるでしょう。
(4)2024年問題
2019年に施行された働き方改革関連法により、2024年4月から運送業界における時間外労働の上限が年間960時間に制限されます。
慢性的な長時間労働の改善を目的としていますが、一方で労働時間の減少に伴うドライバー不足や配送遅延など、物流業界全体に深刻な影響を及ぼすと懸念されています。
また、時間外労働の上限規制に違反した場合、企業や代表者には以下の罰則が科せられる可能性があります。
- 6か月以下の懲役
- 30万円以下の罰金
参考:労働基準法 第140条|e-Gov法令検索
2024年問題は運送業界にとって深刻な課題であり、規制への対応として業務効率化とデジタル技術の導入が有効です。
3.配送計画を最適化するメリット
配送計画を最適化するメリットとして、コスト削減や労働環境の整備などが挙げられます。
ここでは、配送計画を最適化するメリットを解説します。
(1)コスト削減が可能
配送計画を最適化することで業務効率が向上し、人件費や燃料費を削減できます。
人件費の削減 | 最適な配送計画により配送時間を短縮し、残業時間を削減 |
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燃料費の抑制 | 無駄な走行距離を削減し、燃料費を抑える |
車両稼働台数の削減 | 効率的な配送によって、必要な車両台数を減らせる |
車両維持費の削減 | 稼働台数の減少により、車両の保有数を抑え、維持管理コストを削減 |
システムにより配送計画を自動化・最適化することで、効率的な業務運営と大幅なコスト削減が期待できます。
以下の記事ではおすすめの自動配車システムを紹介しています。
(2)カーボンニュートラルへの貢献
CO₂排出量の多くは、化石燃料の使用によるものであり、輸送に関する貨物、鉄道、船舶などの動力源にも使われています。
日本全体のCO₂排出量のうち、約2割が運輸部門から排出されており、その中でも営業用トラックが占める割合はさらに2割に達しています。トラック輸送は物流の重要なインフラである一方で、環境負荷の軽減が課題となっています。
CO₂排出の増加は地球温暖化の一因とされ、異常気象や自然災害に関連するとの指摘があり、世界的にカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)を目指す取り組みが進められています。
環境負荷の低いトラック導入や配送業務の効率化によって、持続可能な社会の実現に向けた基盤づくりが進むと同時に、物流業界全体の競争力強化が期待されています。
(3)労働環境の整備
配送計画の適正化はドライバーの労働環境改善にも効果的であり、以下の効果が期待できます。
業務時間の短縮 | 効率的な業務運営により残業時間の削減や定時退社を実現 |
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従業員のモチベーション向上 | 時間短縮によって得られた利益を給与改善や福利厚生に充てることで、従業員満足度や仕事への意欲が向上 |
離職率の低下 | 労働環境の改善により、ドライバーの定着率が向上 |
配送計画の適正化を進めることで、働きやすい環境を整え、従業員の定着率向上や業務効率の最大化が実現します。
(4)属人化の解消
従来の配送計画は、熟練の担当者による経験と勘に頼って作成しているため、特定の人に業務が集中しています。また、同じ職場内でも、担当が違うだけで、早めに業務を終える人もいます。
この違いは、個人の作業スキルだけでなく、業務内容の過密さにも問題があり、配送計画を属人化していることが原因です。
そのため、誰にでも配送計画を作成できるように適正化を図り、配送に特化したシステムを導入すれば属人化を解消できます。
(5)生産性の向上
配送計画を誰でも作成できる仕組みにするためには、配送システムの導入が効果的です。
配送に特化したシステムを活用することで、以下の効果が期待されます。
業務の標準化 | 個人のスキルに依存せず、誰でも最適な配送計画を作成 |
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業務負担の平準化 | 作業の偏りをなくし、効率的な計画を立てられる |
業務効率の向上 | 計画作成時間を短縮し、他業務への時間を確保 |
配送計画の属人化を解消することで、組織全体での業務効率の向上と労働環境の改善が実現します。
4.配送計画システムの種類
配送計画システムには、大きく分けてクラウド型とオンプレス型の2種類があり、それぞれ異なった特徴を持っています。ここでは、配送計画システムの種類を解説します。
(1)クラウド型
クラウド型は、配送計画のデータをオンラインで管理・共有するシステムです。
データの即時共有や柔軟なアクセスが可能なため、ドライバーの業務効率化や導入コストの削減に貢献でき、以下の利便性を備えます。
リアルタイムアクセス | 配送計画を即時に確認・更新できる |
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スマートフォン対応 | 一部のシステムでは、スマートフォンで確認可能 |
コスト削減 | 専用機器の導入費用を抑えられる場合がある |
クラウド型でスマートフォンから閲覧に対応しているアプリは、常に移動しているドライバーにとって特に有効です。
リアルタイムで配送情報を確認・更新できるため、配送ルートの変更や緊急対応にも柔軟に対応でき、業務の効率化を図ることができます。
(2)オンプレミス型
オンプレミス型は「インストール型」とも呼ばれ、事務所内に専用端末やサーバーを設置して利用するタイプです。主に管理者向けに以下の業務で活用されます。
- 配送計画の作成
- ドライバーの勤怠管理
- 車両の整備・点検日報の把握
ドライバーは帰社後、ドラレコ(ドライブレコーダー)やデジタコ(デジタルタコグラフ)などの端末からメモリーカードを取り出し、事務所内の端末に差し込むことで、運行データを簡単に取得できます。
さらに、運行日報の自動作成機能を搭載しているシステムもあり、データ入力の手間を省くことでドライバーの業務負担軽減にも貢献します。
5.配送計画をシステムで最適化した事例
(1)運行状況の可視化による業務効率化
株式会社豊田自動織物機では位置情報を一元管理できる動態管理サービスの導入により、運行状況の可視化が進み、業務効率化が実現しています。
運行ダイヤの検証時間が毎月12時間から6時間へと大幅に短縮され、運行終了時間を早めることで残業時間の削減にもつながっています。
(2)AIマッチングによる輸送網の形成
共同輸送AIマッチングサービスは物流ビッグデータを活用し、AIが最適な輸送経路や共同輸送の組み合わせを自動でマッチングする仕組みです。
導入した企業のモニタリング結果によると、AIがマッチングした輸送経路の平均実車率は93%と高い水準を達成しました。
(3)自動配車機能により配車計画の効率化
AIを活用した自動配車システム輸送管理システム(TMS)は、配車計画の効率化を支援するツールとして注目されています。
運行パターンを詳細に設定できるため、1か月先までの計画を自動で作成することが可能です。
自動配車機能の導入により、担当者の作業負担を軽減するとともに、積載効率の向上やドライバーの業務効率化にも大きく貢献します。
6.まとめ
今回は、配送計画の最適化について、その主な課題や取り組むメリット、実際に最適化を実現した事例をご紹介しました。
人手不足や輸送物量の増加などの課題を解決するためには、属人化から脱却し、配送業務全体の効率化を図ることが不可欠です。