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いま運送業界は、多くの企業が「現状のままでは立ち行かない」と実感する時代を迎えています。さらに2024年4月から施行された働き方改革関連法(いわゆる「2024年問題」)により、従来の運行体制では事業継続が難しくなりつつあります。
本記事では、運送業界が抱える課題と今後の見通し、そしてこれから生き残る企業に共通する取り組みを整理し、企業担当者として押さえておくべきポイントもわかりやすく解説します。なお以下の記事では2024年問題の多面的な影響をわかりやすく解説しています。
持続可能な物流を実現するためには、業務効率やコストだけでなく、働きがいや社会的責任も含めた全体最適が求められます。いま運送業界に必要なのは、従来の延長線上にはない選択を、自社なりに見極めていく姿勢です。
こうした状況を「危機」として受け止めるだけでなく、テクノロジーの活用や多様な人材の登用、共同配送など、業界内に広がりつつある新しい動きにも注目すべきです。
たとえば、AIによって配車業務の自動化を行う自動配車システムでは、従来属人化していた運行計画の作成を効率化し、経験の浅いスタッフでも一定の品質を保った運行管理が可能になります。
このように、変化に対応しながら企業の競争力を高めていくには、既存の常識にとらわれない柔軟な発想と、現場と経営層が一体となって変革を進める実行力が不可欠です。
運送業界は、経済を支える重要なインフラである一方、古くから慢性的な課題を抱えています。その構造的な問題は複雑に絡み合い、多くの企業や働くドライバーに大きな負担を強いています。
ここでは、運送業界を取り巻く深刻な構造課題について解説します。
ドライバー不足が深刻化する中で、構造的な要因としてまず挙げられるのが著しい高齢化です。総務省の「労働力調査(平成27年)」によると、道路貨物運送業では50歳以上の就業者が全体の45.2%を占めており、全産業平均34.7%を大きく上回っています。一方で、若年層(15~29歳)の割合はわずか9.1%にとどまり、業界全体の高齢化と若手の定着不足が顕著です。
加えて、ドライバー職における女性の進出も極めて限定的であり、女性比率はわずか2.5%(乗務職全体)〜2.4%(ドライバーに限る)にとどまっています。就業者全体では43.2%が女性であることを踏まえると、運送業界の人材構成は極めて偏っていると言えます。
運送業界のもうひとつの深刻な構造課題が、長時間労働の常態化です。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、平成28年時点における中小型トラックドライバーの年間労働時間は2,604時間、大型トラックでは2,484時間と、全産業平均(2,124時間)を大きく上回る状況が続いています。
このような過酷な労働環境は、若年層の就職離れや離職の一因となり、ドライバー不足の慢性化を招いています。また、長時間労働は事故リスクの増加や健康被害にも直結しており、企業の安全管理やコンプライアンスにも重大な影響を及ぼしかねません。
加えて、こうした就労環境が改善されない限り、女性や未経験者など新たな人材の参入も進みにくいのが現実です。今後、労働時間規制が厳格化される中で、「人に依存する働き方」の限界があらためて問われています。
経済産業省のデータによると、2022年以降、ガソリン価格は補助金を含めても170〜180円台で高止まりしており、本来の価格は200円を超える水準で推移しています。国の燃料価格抑制策により小売価格は一定程度抑えられているものの、補助金の縮小や撤廃が現実化すれば再び高騰するリスクも残されています。
このような不安定な状況下で、利益率の低い中小運送業者ほど影響を受けやすく、運賃転嫁が進まない企業では赤字運行が常態化する恐れもあります。また、車両の維持費や保険料などの固定費も年々上昇傾向にあり、全体的なコスト構造の見直しを迫られています。
安定した輸送力を維持するためには、燃料費変動への耐性を高める仕組みづくりと、価格交渉力の強化が不可欠です。
運送業界では、元請から1次下請、2次下請と委託が繰り返される多重下請け構造が深く根付いています。
国土交通省が示す実態図(上記の図)では、実運送を担う事業者が3次・4次下請けにまでおよぶ例も珍しくなく、元請から末端までに運賃が大きく目減りする構造が明らかになっています。
この構造が放置されれば、末端の実運送事業者は採算割れの低運賃での受託を強いられ、燃料費や人件費の高騰を反映できない状況が常態化します。実際に、国交省の調査では標準的な運賃を希望通りに収受できた事業者は全体の2割程度にとどまり、特に下請けの立場にある中小事業者は深刻な収益悪化に直面しています。
さらに、いわゆる水屋と呼ばれる取次専業の利用運送事業者が関与することで、輸送責任の所在が不明確になり、安全性や品質管理の観点でもリスクが高まります。現場では運行指示すら不十分なまま、単なる横流しによる業務委託が行われる例も少なくありません。
このような状況を是正するため、現在は業界全体で「下請けは2次までに制限すべき」というルールの徹底が提言されています。荷主や元請が責任を持って取引構造を見直し、実運送事業者に適正な報酬を支払える仕組みを構築することが、持続可能な物流を守るための急務です。
2024年4月1日以降、トラックドライバーの年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによる影響は、運送業界のみならず、経済全体に波及する懸念があります。ここでは、2024年問題の概要と運送会社や荷主等への影響について解説します。
制限内容 | 2024年3月31日まで | 2024年4月1日以降 |
---|---|---|
1年の拘束時間 | 3,516時間以内 | 原則:3,300時間以内 例外:3,400時間以内(※1) |
1か月の拘束時間 | 293時間以内※労使協定により最大320時間まで延長可(6か月まで) | 原則:284時間以内 例外:310時間以内(6か月まで)(※1) |
1日の休息期間 | 継続8時間以上 | 原則:継続11時間の付与を努力義務ただし9時間未満にならないことが下限(※2) |
上記のように労働時間が短縮されることで、1人あたりの輸送能力が低下し、輸送コストの増加やドライバー収入の減少につながる懸念があります。特に長距離輸送や複数日運行が必要な業務への影響が大きいと予測されており、運送会社の経営戦略の見直しが急務となっています。
経済産業省等の推計によると、2024年時点で全体の14.2%の輸送能力が不足し、それは約4.0億トン分の営業用トラック輸送が行えなくなることを意味します。この傾向はさらに進行し、2030年には34.1%、9.4億トンの輸送力が不足するという深刻な見通しが示されています。
この輸送力の空白は、単に一部の配送を断念せざるを得ないという話ではありません。
収益の減少、ドライバーの収入減、雇用の不安定化、取引先との信頼関係の損失といった、事業運営全体に波及するリスクをはらんでいます。
もはや個別の業務改善や一時的な増員で乗り切れる段階ではなく、運送会社には事業モデル全体の再構築と、長期的な視点での人材戦略が求められています。
2024年問題が突きつける影響は、荷主や一般消費者といった「物流の受け手側」にも、確実に波及していきます。
影響対象 | 想定される影響内容 |
---|---|
荷主企業 | ・必要なときに輸送が確保できない ・納品遅延や発注調整の必要性が増大 |
一般消費者 | ・当日・翌日配送の遅延または中止 ・生鮮食品や水産品の入手難・鮮度低下 |
まず荷主企業にとっては、必要なときに必要な量を確保できない、いわゆる「輸送断」が現実のものとなりつつあります。これまで当たり前のように委託できていた輸送業務において、運送会社から配送を断られるケースが増える可能性があります。生産スケジュールや店舗在庫の調整など、事業運営全体への影響は避けられません。
物流の滞りは、企業活動の生産性低下だけでなく、消費者の「買いたい・受け取りたい」を叶えられない社会的損失にもつながります。
業界再編に向けた取り組みについて、以下のようなものが挙げられます。
取組項目 | 主な目的 | 具体例 | 期待される効果 |
---|---|---|---|
テクノロジーによる効率化 | 業務の省人化・属人化の解消 | 自動配車システム、AIによるルート最適化、運行管理システム | 作業の自動化・運行精度の向上・残業削減 |
多様な人材の受け入れ | 人手不足の補完・職場の多様化 | 女性ドライバー、高齢者、外国人、異業種からの転職者 | 離職率の改善・人材層の拡大・職場定着率向上 |
働き方改革:柔軟な就業と労働環境整備 | 長時間労働の是正・就業魅力の向上 | 時間帯別配送、週休3日制、休憩所の設置 | 採用力の強化・健康リスクの低減 |
共同配送・物流DXの導入 | 輸送効率の最大化・コスト削減 | 地域内企業との連携配送、倉庫シェア、電子伝票管理 | 積載率の向上・車両削減・温室効果ガス削減 |
ここからは、業界再編に向けた“攻め”の取り組みについて、実例も踏まえながら具体的に解説します。
これからの運送業には、業務効率化とドライバーの負担軽減を実現するため、デジタル技術を積極的に活用することが求められます。具体的には、以下のようなシステムが効果的です。
配送ルート管理システム | AIやGPSを活用して最適な配送ルートを自動算出 |
---|---|
労務管理システム | 労働時間や休憩時間をデジタルで管理し、長時間労働の防止や労働環境の改善につなげる |
車両管理システム | 車両の位置情報や燃費、整備状況をリアルタイムで把握し、安全運行とコスト管理の効率化 |
協栄流通株式会社では新しい物流センター立ち上げ時に配車計画システムを導入し、最適な配送エリアをシミュレーションし、配車業務をパターン化したことで、作業時間を1センターあたり7~8時間から2~3時間に短縮し、効率化を実現しました。
運送業界が持続的に発展するためには、労働環境の改善を通じて、多様な人材が活躍できる場を整えることが重要です。担い手の多様化を推進する取り組みには、トラック免許取得のサポートや柔軟な働き方の提供などが挙げられます。
取り組み | 期待できる効果 |
---|---|
トラック免許の取得支援 | 未経験者や若年層の参入を促進 |
働きやすいシフト制度の導入 | 女性やシニア層の活躍を促進 |
現場サポート体制の充実 | 人材の定着率の向上 |
多くの企業が女性ドライバーの活躍を推進するため、女性専用休憩室の整備や残業・泊りのない勤務時間の設定、普通免許で運転可能な2t箱車やオートマ車の導入など、女性が働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
運送業における働き方改革は、長時間労働の是正だけでなく、労働時間管理の適正化やハラスメント防止、相談しやすい環境整備といった多角的な視点が重要です。
多様な価値観を持つ人材が安心して働けるよう、柔軟な勤務体系や福利厚生の充実、キャリアパスの明確化など、労働環境全体の質的向上を目指すことが、人材確保と定着に繋がります。
株式会社ジャスト・カーゴでは、ドライバーが運送と付随作業をすべて1人で担う従来のスタイルから脱却し、役割を分担する新たな体制の構築を検討しています。運転は女性、作業は男性が担当するなど、空き時間を活用したシフト制を導入することで、多様な人材の活躍と業務効率の両立を図っています。
さらに、定着率向上のためには就業者本人だけでなく家族への理解と配慮も重視されています。無事故運転へのインセンティブ制度や退職金制度の整備に加え、福利厚生を通じた家族とのコミュニケーション支援が定着率向上につながっている。
共同配送は、ドライバー不足や配送コストの高騰が深刻化するなかで、物流効率を抜本的に高める手段として注目されています。とくに複数の荷主の物流拠点を統合し、共通のルートで配送するモデルは、単なるコスト削減にとどまらず、CO₂排出量削減などの環境面でも成果が期待されています。
実際に、佐川急便が大分県内で実施したパンメーカー4社(フジパン・リョーユーパン・フランソア・タカキベーカリー)の共同配送プロジェクトでは、次のような効果が報告されています。
指標 | 効果 |
---|---|
トラック運行台数 | 約36%削減 |
CO₂排出量 | 約18.7%削減 |
各メーカーの物流コスト | 約8〜10%削減 |
この取り組みでは、各工場からの集荷や納品時間の調整、商品の識別・仕分け管理を共同配送センターで一括対応。運送会社が調整役を担うことで、競合関係にある荷主同士でも協調可能な仕組みを成立させました。
つまり、今後の物流体制においては、単なる業務委託を超えた「パートナーシップとしての物流共創」が、企業の持続性を左右するでしょう。
構造的な課題や2024年問題の影響が顕在化する中で、逆境にあっても、事業を継続・発展させている企業は少なくありません。生き残っている企業には、いくつかの共通点が見られます。ここでは、厳しい時代に生き残る会社の共通点を解説します。
ドライバーの高齢化が進行する中で、運送業界は今、「人を採る」だけでなく「人が定着する環境」をつくることが企業存続の前提となりつつあります。特に若手世代は、給与や安定性だけでなく、働きがい=やりがい・成長実感・評価の納得感を重視する傾向が強く、従来の職場環境では人材の流出が加速しかねません。
このような時代において、公正な評価制度の導入、キャリアパスの提示、スキルアップのための研修機会の提供といった取り組みは、単なる人事施策ではなく、経営戦略の一部です。これにより、ドライバーのみならず運行管理者や事務職などすべての従業員のモチベーション向上と定着促進が期待できます。
たとえば、三重県の株式会社カワキタエクスプレスでは、全社員の75%が10代・20代を占めており、若手未経験者の採用と定着に成功しています。
大型免許取得前に引越しスタッフとして経験を積める体制を整えており、段階的なキャリア設計が働きながら成長できる実感につながっていることが特徴です。
厳しい競争環境下で収益性を維持し、持続可能な事業運営を実現するには、経験や勘に頼った属人的な業務からの脱却が不可欠です。業務を標準化し、再現性のある手順を確立することで、運行計画の最適化、積載率の向上、待機時間の削減などが可能になり、人に依存しない安定したオペレーションが構築されます。
宅配業界でもこうした動きが進んでおり、たとえば再配達の削減に向けて「置き配」の標準化が注目されています。
国土交通省によると、大手宅配事業者6社の再配達率は依然として8.4%(参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000908.html)にとどまり、政府目標の6%には届いていません。あるドライバーは「1回で届けても3回で届けても報酬は同じ。再配達が減るメリットは大きい」と語り、業界全体でのルール統一と設備投資(宅配ボックスの普及)が現場の生産性向上と負担軽減につながることを示唆しています。
標準化された業務プロセスは、単なるコスト削減だけでなく、属人化リスクの排除による持続的な運用体制の構築にも直結します。長期的には、従業員の教育コスト削減や品質の安定、そして働き手の多様化にもつながる取り組みです。
価格競争が激化する中、単なる運搬機能だけでは利益を確保することが難しくなってきています。今後、生き残る運送会社には、「モノを運ぶ」だけでなく「価値を届ける」発想が求められます。
たとえば、以下の動画のような消費者に商品を直接届ける「ラストワンマイル」特化型のサービスは、差別化につながる代表的な例です。
実際、ラストワンマイルに特化した協同組合では、大手が対応しにくいきめ細かな要望(例:容器の中身だけを置いて回収)に応えることで、IKEAや有名スポーツブランドなどの大口クライアントとの取引拡大に成功しています。
また、セブン-イレブンやソフトバンクが実証しているように、ロボットによる社内配送のような非接触型の取り組みも、コロナ禍以降の消費行動にマッチした付加価値として注目を集めています。
このように、顧客の“本当に欲しい体験”に応えるサービス設計ができる企業こそが、価格競争に巻き込まれず、安定的な利益を確保し続ける存在となるでしょう。
運送業において、安全性と環境配慮は単なる社会貢献ではなく、評価基準そのものになりつつあります。特に、Gマーク(安全性優良事業所認定)やエコドライブの導入状況は、企業間取引の信頼性や選定判断に直結する要素です。
国や業界団体が推進するエコドライブ管理システム(EMS)はその象徴的な取り組みであり、急発進・アイドリングなどをリアルタイムで可視化・指導する仕組みとして導入が進んでいます。
国土交通省や経産省は、EMS用車載機器や分析ソフトなどに対し補助金を交付しており、継続的な燃費改善やCO₂排出量削減につながる体制づくりが後押しされています。
また、安全運転の記録や省エネ目標の達成状況を可視化し続けることで、荷主に対して“責任ある物流パートナー”としての信頼感を高める効果も期待されます。Gマークの取得やEMSによる運行管理は、輸送品質の担保はもちろん、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する荷主企業との取引維持・拡大に欠かせない条件となりつつあります。
「安全と環境に取り組んでいるか」ではなく、「どのように取り組み、それを証明できるか」という姿勢とその実行力こそが、今後の企業競争力を大きく左右します。
今、企業に求められているのは、経営層が先頭に立ち、未来から逆算した意思決定を行う力です。
国の「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」では、物流の社会的役割の再認識に加え、物流のデジタル化・標準化の加速や労働環境の改善と人材定着などが重点施策として示されています。これは、物流業界全体が今まさに変革期にあることを明確に示すメッセージでもあります。
こうした変化に対応するには、現場と密に連携し、実態に即した改善策を継続的に実行できる体制が欠かせません。あわせて、脱炭素社会やSociety 5.0といった社会的潮流とも整合を取りながら、中長期的な視野での投資判断とパートナーシップ構築を進めていく必要があります。
変化を待つ側”ではなく、“変化を動かす側”としてリードする。そんな姿勢を持つ経営層こそが、これからの物流を支える主役となるのです。
運送業界は今、厳しい構造課題と「2024年問題」という大きな壁に直面しています。しかし、これは業界全体が変革を迫られる一方で、新しい働き方やビジネスモデルを構築するチャンスでもあります。
テクノロジー導入、多様な人材活用、働き方改革、そして高付加価値サービスの提供など、積極的な取り組みを行う企業が、この変革期を乗り越え、持続的な成長を遂げるでしょう。経営層のリーダーシップのもと、社会の変化に対応し、物流の未来を切り拓くことが求められています。
企業間物流に詳しい!運行管理のプロ監修「運行管理ナビ」編集部です。